恋人たちの帰り道 〜すれ違った青春が、今、重なり合う〜

Bataro

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第18章:恋人達の帰り道(リプライズ)

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伊丹空港に直行便A139便GA滑らかに到着した。
晶子は初めての空港に勝手がわからず、
何度もインフォメーションに聞きながら、
やっと、宝塚行きリムジンに乗ることができた。

宝塚に着くとその足で、宝塚ホテルに向かって、
クロークにスーツケースを預けた。
明日にはまた伊丹経由で帰ることを決めていた。

宝塚ホテルから、歩いて宝塚高校に向かった。
この道は松岡と二人で歩いた道。思い出に耽り
ながら校舎へと向かった。

20年前と同じように
「いつもの資料室で待っています」
と丁寧にメモを書き下駄箱にそっと入れた。

資料室に向かうと何故か鍵はあいていた。
ゆっくりと部屋に入り、静かに外を見ながら
椅子に腰を下ろした。
「お母さん、見守っていてね」
と心の中で呟きながら。

一方、松岡は案内状を手に、母校の
体育館へ向かっていた。
毎回欠かさず出席している同窓会だったが、
今年は合同大同窓会のため、参加者がいつもより多かった。
人混みの中、下駄箱に向かった。
あれから、同窓会で下駄箱を開けるのが
習慣になっていた。

過去20年、何も起こらなかった。
(…今回もきっと何もないだろう)
そう思いながら扉を開けると、ひらりと貼りつく
ように小さな紙切れが目に入った。

「いつもの資料室で待っています」

松岡は目を見張り、一瞬立ち尽くした。
そして次の瞬間、大急ぎで体育館を飛び出し、
廊下を駆け抜けた。
途中、小林と、はじめて同窓会に来ていた西村と
すれ違ったが気づかぬふりをして、資料室へ急いだ。

資料室のドアを開けると、窓の外を静かに見つめる
一人の女性がいた。
肩まで垂れた髪、見覚えのある横顔――

「沢井さん…アッコだよね…?」

女性ははっと肩を跳ねさせ、少し俯いた
まま振り返った。
「…青空が眩しくて、涙が出ちゃった。」
晶子は振り返り、涙を隠すように微笑んだ。

泣いたことを悟らせないように、茶化しながら言った。
「廊下、走ったらだめだよ。
高校の時、よく、愛瀬に叱られていたよね」

しばらく間を置いたあと、彼女は静かに尋ねた。
「“アッコ”って、私のことだよね?」

「うん、そうだよ?そうずっと呼びたかったから」
ポケットから古びた写真を取り出して、晶子手渡した。
「この言葉ずっと心に留めていたよ」

溢れる涙を隠しもせず、
「…やっと、名前で呼んでくれた」
「高校の頃、夢見ていたの。松岡くんに『名前で』呼ばれること」

「私も、あの頃ずっと心の中で“しっちゃん”って呼んでいたよ」

潤んだ瞳で、晶子は滋昭を見つめながら言った。
「しっちゃん…会いたかった!」

窓の向こうに沈みゆく陽が、二人の間を淡く染めていた。

突然、学校のチャイムが鳴り響き、
廊下のスピーカーからアナウンスが流れた。
放送:「卒業生の皆さん、最後のバスも出発しました。
15分後には校舎から退出してください」

沢井がじっとみつめながら言った。
「ホテルまで送ってくれるよね?アメリカでは
あたりまえで慣れちゃったから…」

校舎裏の並木道に出ると、かつて二人で歩いた
“恋人たちの帰り道”が静かに延びていた。

晶子はそっと滋昭の手首を取る。
ぎこちないけれど、確かな温もり。
滋昭もそっと掌を開き、二人の指先が触れ合った。
二人はほとんど言葉を交わさずに歩いた。

長い年月の隙間を埋めるように、
静かな足音だけがホテルへの道を紡いでいった。
校舎の明かりが遠ざかる頃、晶子の手はしっかりと
滋昭の腕を包んでいた。

再び巡り合った二人の距離は、確かに昔よりも
ずっと近づいていた。

“恋人たちの帰り道”は、待ち焦がれていたように
2人を優しく包んでいた。
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