『桜魂の継承者』-BLOOM OF ETERNAL BONEDS-

第66話 「装具のささやきと無意識の連鎖」

午後の桜舞う団地内。
福田朋広は20歳姿で、天然鈍感のまま日常を過ごしていた。
落とした荷物を拾い、階段で軽く支える――その無意識な行動のすべてが、59才姿の内面から発せられる優しさの証であった。

桐生さくらの手元のペン型アクセサリーが小さく振動し、御影紫苑の髪飾りが微かに光る。
鴉谷りつのピック型ペンダント、香椎天音の腕輪、如月ほのかのチャーム、伏見美琴や九条つばめの小物もそれぞれ反応し、微細な音や光を放った。

その反応は桜環に伝わり、20才姿の滞在時間がさらに延び、力も微かに上昇する。
しかし主人公本人は気づかず、いつも通り天然鈍感のまま。

桜舞う階段の角、喫茶店のカウンター、団地の廊下。
ヒロインたちの無意識の好意は装具を通じて桜環に伝わり、小さな奇跡の連鎖を生み続ける。

桐生さくらはペンを握る手を少し強め、御影紫苑は視線を離せずに抹茶をそっと置く。
鴉谷りつはギターを弾きながら微かに笑み、香椎天音は荷物を支えられた瞬間、頬を赤らめる。
如月ほのかはノートを閉じ、ちらりと主人公に視線を向ける。
伏見美琴と九条つばめも、軽い会話や仕草の中で自然に心が揺れる。

目に見えぬ小さな力が、日常の中で確かに変化を起こしていた。
主人公は相変わらず無自覚で、天然鈍感のまま日常を過ごすだけ。
しかし、桜環に宿る微細な変化は、着実に蓄積されていく。