島流し聖女はモフモフと生きていく

こまちゃも

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第十九話

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第十九話


「ホォ~! ここがお前さん達の家かぁ」

いつの間にか船に乗り込んでいたクリュさんを、家にご招待しました。

「クリュさんは聖獣、でしょうか」
「うむ。もうかれこれ何百年、いや、何千年生きておったか‥‥はて」

シロさん達が、長く生きると年を数えるのが面倒になってくると言っていました。十年も百年もそう大して変わらないらしい。

「それで? 儂が聖獣だったら、嬢ちゃんはどうする?」

クリュさんは目を細め、まるで全てを見透かしているかのように私をじっと見つめました。

「どう、と言いますか、お出しするのはお水かお茶かで迷っていました。食事にミミズをご所望でしたら、今から取りにいこうかと。あ、止まり木は必要でしょうか?」

会話が出来ると言う事は、クリュさんも聖獣なのだろうと思っていましたが、同じく会話できたレイルーンさんは精霊だと言っていましたし。人の食べ物は動物にとっては時に毒となりうる。
私とシロさん達は同じ物を食べていますが、それは彼等が聖獣故だ。

「変わった嬢ちゃんじゃのぉ。聖獣と言えば、使役して己の力としようとするか、希少な素材が採れると殺そうとするかだが。あ、止まり木は欲しい」

ピヨさん用にと作ったものの、あまり必要が無く(ピヨさんはベッドで寝るので)、部屋の隅に置いたままにしてあったのを持ってきました。

「聖獣を使役だなんて、そんな恐れ多い事は考えてもいませんでした。それに、素材と言われても‥‥困りますね」

そもそも、聖獣を使役するなんて出来るのでしょうか? 

「困る、か。そうだのぉ。そこの毛玉!」

クリュさんがビシッと羽で指したのは、双子の抜け毛を丸めておいた毛玉。昨夜、毛をとかして出た。私の拳よりも少し大きい。

「あの毛玉一つで金貨数枚!」

え、毛玉が?

「そのヒゲ!」

今度はシロさんから抜け落ちた、髭を指しました。
捨てるのは少し嫌だったので、見つけたらつい集めるのが癖になってしまいました。

「一本で金貨一枚!」

え、髭が?

「そして、その産毛!」

全部「毛」ですね。
今度はピヨさんから抜け落ちた、小さなフワフワな羽毛。
これもつい、綺麗なままの物は集めて瓶にいれてある。

「その瓶いっぱいで城が建つ!」

城! 段違いの高価さに、ピヨさんが「ふふん」と鼻を鳴らしています。

「‥‥皆さん、凄いですね!」
「まぁ、な」
「「ふふ~」」
「当然ね」

圧倒的に数が少ない聖獣。一生に一度、影すらその目に入れば幸運な方だと言われている。そんな聖獣が、ここに四体。クリュさんも入れれば、五体もいる。

「えっと‥‥(祀った方が‥‥祠、神殿‥‥あ、ご神体は‥‥毛?)」

それとも、石像か木彫りか。教会にあった女神フォーナの像は、石だったはず。耐久性を考えると、やはり石の方が良いのかもしれない。

「ちょっと、メェちゃ~ん」
「‥‥」
「また考え込んだな」
「こうなると、なかなか帰って来ないのよねぇ。ったく! あんたがアホみたいな事言うからよ、ジジイ!」

空を見つめ、何やらブツブツと良い始めたメェ。彼女は考え始めると、ほぼほぼ周りが見えなくなる。
今のうちだと言わんばかりに、ピヨが文句を言い始めた。

「本当の事じゃろが。人は‥‥欲深い。それは長く生きるお前達も知っておるだろう」
「メェちゃんに助けられたくせに」
「しかり。だが、それはそれ。これはこれじゃ」
「はぁ~~~⁉」

頑ななクリュの言葉にピヨが羽をバサバサと動かして怒るが、クリュはプイッとそっぽを向くだけだ。

「確かに人間は欲深い。腹を満たす為でもなく、生き物を狩る」

長く生きると言う事は、その目に映る物が綺麗な事ばかりではない。
森の中、爪や牙のみをはぎ取られ、無残に打ち捨てられた骸をいくつも見てきた。
他者の住処を土足で踏み荒らすくせに、己の住処に魔物が近付けば、森ごと焼き払う。
長い時を生きる者ほど、人との係わりを絶つ。

「だが、そんな者ばかりではないのも、事実」
「そうよ! 特にメェちゃんはね!」
「「メェちゃん、すき~」」
「メェは、表情はほぼ無いし口数も少ない。放っておくと寝食を忘れるし、己の事には驚く程に無頓着だ」
「それ、褒めてないわよ?」

ピヨがツッコミを入れるが、ほぼほぼ同意見なので止めない。

「ふむ‥‥メェは、金など無くても生きて行けるぞ」
「ちょっと、メェちゃんを野生動物みたいに言わないでちょうだい。本当の事だけれど」
「先程からごちゃごちゃと。ならば、お前が説明すればよかろう」
「はぁ? そんな必要ないわ」

ピヨは両足を踏ん張り、胸を張る。

「そこの化石フクロウがどう思おうと、関係ない。私はメェちゃんが好き。以上!」
「「すき~」」

完結過ぎるピヨの答えに、シロとフクロウがあんぐりと口を開けたまま止まった。そして数秒後、フクロウの笑い声が部屋に響いた。

「ふぉっふぉっふぉっ! なんとまぁ、単純明快。ふむふむ、お主達の気持ちはよぉ分かった。年を取ると、どうも心配症になっていかん」
「フン!」
「‥‥まぁ、害をなす者ではないのは、分かる」

周りの喧騒が一切聞こえていないのか、未だに考え込んでいるメェを見て、クリュが目を細めた。
すると、メルリアが突然何かを思いついた様に顔を上げた。

「ミスリルで作れば、数百年はもちますね」
「「「「「?」」」」」
「いえ、やはり世界一硬いとされるアダマンタイトでしょうか? ですが、それだと彫るのが‥‥いや、彫る道具もアダマンタイトで作れば可能で‥‥」

どこからどうなって「毛」から「彫る」になったのか、シロ達にはさっぱりわからない。だがいつもの事なので、考えがまとまったら話してくれるだろうと待つ事にした。

「なんとも不思議な娘よ」

そして、その娘に寄りそう己と同じ聖獣たち。彼等よりも長く生きてきた身として、使役されていないか、傷付けられているのではと心配でついて来たが‥‥安心した。と言うより、思っていたものとは程遠い居心地の良い空気に、もう少しここにいても良いかもと思い始めてしまっている己に驚く。
まぁ、元の場所にはいつでも戻れる。もう少しだけ、様子を見るとするか。
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