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緑静けき鐘は鳴る【上】
16.徒歩
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音は続く。荒々しい。
恋愛成就キャンペーンが始まっていないのに、何故鳴っているのだろう?
とりあえず境内を見回す生祈。
彩舞音と並んで歩き、陳ノ内は前方を歩いている。
何回か友葉に連絡を試みているようだが成果がないようだ。
一方こちらも竹箒で掃除している人いないかなーと思っているのにそう簡単にはいない。
何人か、アルバイトだろうか巫女さんの姿が目に入る。
「先輩と連絡取れない?」
「全然返信ないよー、せんぱい本当に何処行っちゃったんだろう」
陳ノ内が立ち止まり、三人で並ぶ形になった。
「アルバイトの巫女さんもゴロウなら似合うかもねって話していたんですよー」
彩舞音が陳ノ内に言った。
「恋愛成就キャンペーンだけじゃなくて?」
「そうです」
「慈満寺って人気なの?」
陳ノ内がそう言うので生祈と彩舞音は苦笑した。
「あたしたちは廃墟研究会にいたりするので……、所謂マニアの域に入っちゃっているのかもしれません」
生祈は言った。
「生祈のあだ名はゴロウ」。
そんな話題になり、
「俺は堂賀にアツって呼ばれるよ」
陳ノ内は言った。
手水舎前のベンチへ腰掛け、三人が三人、朝比と友葉に連絡を取ろうとしつつ休憩も兼ねつつ。
参拝客が手水舎で跳ねかす水飛沫は夏の日差しに『涼』を添えている。
新聞で見たビルの屋上の二人が朝比堂賀さんと陳ノ内さんで、その人たちと接触している自分。
今は調査も含めて慈満寺に乗り込んでいるとすれば、朝比さんの行き先は何処だろう。
『友葉先輩と朝比堂賀さんを同時に探しているんですけれど、今どこですかあ~』
彩舞音は友葉にそう送った。
「写真とかあればな~」
陳ノ内は朝比に連絡を取るのをやめたのか、何やらファイルをめくっている。
『新聞』の時も、朝比さんは結構深く入り込んでいたらしい。
例えば、凄腕音楽プロデューサーだった故・美野川嵐道氏はじめ『美野川』の一族に。
『美野川嵐道を偲ぶ会』という仕事のこともあったかもしれないけれど、嵐道氏から朝比さんは別の仕事も請け負っていたらしい結果、陳ノ内さんは脚を怪我するし、新聞には廃墟のようなビル群が写るし……。
そのほか大月住職とも何かあって、
「葬儀の定義が幅広いとああなる」
というのが、陳ノ内さんの中の結論らしい。
生祈にはさっぱり分からずだ。
「写真、ないですねー」
彩舞音がファイルを見ながら言った。
「友葉せんぱいは堂賀さんの写真をご所望だって」
「それ返信きたの?」
生祈は彩舞音に尋ねる。
「ううん、あたしが送るより前にきたやつ。でもいろんな写真がありますね」
「一応慈満寺の関係者をまとめているよ」
「ふうん。堂賀さんは情報をご所望ってことですね」
陳ノ内は苦笑。
確かに情報量が多そうだ。
ということはまた、調査に深く入り込みたいということ?
なら、慈満寺の地下に朝比さんがいる可能性が高いかも。
と生祈は思った。
僧侶の写真。
頭を剃っている。
そこに『円山梅内、田上紫琉、岩撫衛舜』。
それから『大月紺慈、大月深記子』。
何故か学者然とした顔写真も。
『八尾坂宗次郎』。
その五名以外にもいろんな人の情報がありそうだが、いま生祈たちが話している中ではメインの五名。
さっきまで荒々しかった梵鐘の音は止んで、そして僧侶が三人急いでいるのが生祈たちの目に留まる。
恋愛成就キャンペーンが始まっていないのに、何故鳴っているのだろう?
とりあえず境内を見回す生祈。
彩舞音と並んで歩き、陳ノ内は前方を歩いている。
何回か友葉に連絡を試みているようだが成果がないようだ。
一方こちらも竹箒で掃除している人いないかなーと思っているのにそう簡単にはいない。
何人か、アルバイトだろうか巫女さんの姿が目に入る。
「先輩と連絡取れない?」
「全然返信ないよー、せんぱい本当に何処行っちゃったんだろう」
陳ノ内が立ち止まり、三人で並ぶ形になった。
「アルバイトの巫女さんもゴロウなら似合うかもねって話していたんですよー」
彩舞音が陳ノ内に言った。
「恋愛成就キャンペーンだけじゃなくて?」
「そうです」
「慈満寺って人気なの?」
陳ノ内がそう言うので生祈と彩舞音は苦笑した。
「あたしたちは廃墟研究会にいたりするので……、所謂マニアの域に入っちゃっているのかもしれません」
生祈は言った。
「生祈のあだ名はゴロウ」。
そんな話題になり、
「俺は堂賀にアツって呼ばれるよ」
陳ノ内は言った。
手水舎前のベンチへ腰掛け、三人が三人、朝比と友葉に連絡を取ろうとしつつ休憩も兼ねつつ。
参拝客が手水舎で跳ねかす水飛沫は夏の日差しに『涼』を添えている。
新聞で見たビルの屋上の二人が朝比堂賀さんと陳ノ内さんで、その人たちと接触している自分。
今は調査も含めて慈満寺に乗り込んでいるとすれば、朝比さんの行き先は何処だろう。
『友葉先輩と朝比堂賀さんを同時に探しているんですけれど、今どこですかあ~』
彩舞音は友葉にそう送った。
「写真とかあればな~」
陳ノ内は朝比に連絡を取るのをやめたのか、何やらファイルをめくっている。
『新聞』の時も、朝比さんは結構深く入り込んでいたらしい。
例えば、凄腕音楽プロデューサーだった故・美野川嵐道氏はじめ『美野川』の一族に。
『美野川嵐道を偲ぶ会』という仕事のこともあったかもしれないけれど、嵐道氏から朝比さんは別の仕事も請け負っていたらしい結果、陳ノ内さんは脚を怪我するし、新聞には廃墟のようなビル群が写るし……。
そのほか大月住職とも何かあって、
「葬儀の定義が幅広いとああなる」
というのが、陳ノ内さんの中の結論らしい。
生祈にはさっぱり分からずだ。
「写真、ないですねー」
彩舞音がファイルを見ながら言った。
「友葉せんぱいは堂賀さんの写真をご所望だって」
「それ返信きたの?」
生祈は彩舞音に尋ねる。
「ううん、あたしが送るより前にきたやつ。でもいろんな写真がありますね」
「一応慈満寺の関係者をまとめているよ」
「ふうん。堂賀さんは情報をご所望ってことですね」
陳ノ内は苦笑。
確かに情報量が多そうだ。
ということはまた、調査に深く入り込みたいということ?
なら、慈満寺の地下に朝比さんがいる可能性が高いかも。
と生祈は思った。
僧侶の写真。
頭を剃っている。
そこに『円山梅内、田上紫琉、岩撫衛舜』。
それから『大月紺慈、大月深記子』。
何故か学者然とした顔写真も。
『八尾坂宗次郎』。
その五名以外にもいろんな人の情報がありそうだが、いま生祈たちが話している中ではメインの五名。
さっきまで荒々しかった梵鐘の音は止んで、そして僧侶が三人急いでいるのが生祈たちの目に留まる。
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