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緑静けき鐘は鳴る【上】
17.装束
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どうやら慌てているらしい三人の僧侶。
突然梵鐘が鳴りだしたことに関係しているのかな?
と生祈は思う。
「あの眼鏡の人、一回見たことあるよ。あたしの場合もっとかもしれないけれど」
彩舞音は苦笑して言った。
生祈は眼をぱちくり。
「テスト終わった後にマリウィルに行って、堂賀さんと会ったでしょう。その前にお坊さんが二人通った、そのうちの一人。たぶん円山さんって人」
彩舞音は陳ノ内のファイルの写真を示しながら言う。
円山梅内。
「セキュリティ担当らしい」
「IDロックのですよね。友葉先輩もIDロックのこと言ってました~」
専攻は経済学。陸奥谷大学卒。BOTNを経て慈満寺のIT部門担当
とある。
田上紫琉、岩撫衛舜。
「彩舞音の言っていた円山さんの他の二人かな」
生祈は言った。
陳ノ内はページを捲る。
八尾坂宗次郎。
陸奥谷大学の考古学教授。
「慈満寺のセキュリティに一役買った人」
「あれ、専攻違う感じじゃないですか」
「大学の特色上ってことなんじゃないかな」
「アバウトですね」
陳ノ内と彩舞音。
生祈は陸奥谷大学のことを多少、塾とか大学説明会のパンフレットで見ていたことがある。ITや技術の工学系で有名。
桃ノ染高校からも受験する学生がいる。
「大月住職! ねえマリウィルでゴロウも見てるよ、同じ人」
彩舞音にそう言われたが生祈はぼんやりしか思い出せなかった。
一方で、確かに彩舞音が見せてくれた慈満寺のパンフレットに写っていた顔のような気もした。
いかつい感じ。
彩舞音が言っていた「鍛えたんじゃない」かと思われる大月紺慈の写真。
浅野崎大学修了、三年桔梗院で修行の後、慈満寺へ
とある。
一方の大月深記子はいかついイメージが一切ない。
「すっごい美人さんだあ」
彩舞音は言った。
長いであろう黒髪、白い肌。
生祈は眼をぱちくりやって深記子の写真を見つめた。
「大月……てことは大月住職の」
「嫁さんだろう」
彩舞音と生祈はファイルの上に身を乗り出して深記子の写真を凝視。
陳ノ内は苦笑。
生祈は我に返った。
「あ、あの、慈満寺で鐘が鳴ると人が死ぬんだっていう噂……」
陳ノ内と彩舞音が真っ直ぐ見返してきたので生祈はたじたじした。
「さっきのお坊さんたち慌てていましたけれど、それってもしかして地下のことを気にして慌てていたんじゃないかって思ったんです。その円山さんてセキュリティ担当なら、何かしに……」
生祈はちょっと考えて
「あと、先程陳ノ内さん仰っていましたけれど、朝比さんも調査に乗り込んでいるとすれば、その地下にいる可能性が高いんじゃ……」
陳ノ内はスマホを見てみる。
「電波がってことか」
立ち上がる。
「三人の後を追う感じ? ねえその前にさ、写真撮ろうよ。友葉先輩に送る堂賀さんの写真ないからその代わり」
生祈と陳ノ内は眼をぱちくり。
「なんかこう、その深記子さんの写真に影響されちゃった」
彩舞音は照れながら言った。
「撮ってあげましょうか?」
三人はびっくりした。
「撮ってあげましょうか」と言ったのは当の深記子さんその人。
立派な装束姿、白と赤の巫女服姿だった。
にこやかな笑顔。
突然梵鐘が鳴りだしたことに関係しているのかな?
と生祈は思う。
「あの眼鏡の人、一回見たことあるよ。あたしの場合もっとかもしれないけれど」
彩舞音は苦笑して言った。
生祈は眼をぱちくり。
「テスト終わった後にマリウィルに行って、堂賀さんと会ったでしょう。その前にお坊さんが二人通った、そのうちの一人。たぶん円山さんって人」
彩舞音は陳ノ内のファイルの写真を示しながら言う。
円山梅内。
「セキュリティ担当らしい」
「IDロックのですよね。友葉先輩もIDロックのこと言ってました~」
専攻は経済学。陸奥谷大学卒。BOTNを経て慈満寺のIT部門担当
とある。
田上紫琉、岩撫衛舜。
「彩舞音の言っていた円山さんの他の二人かな」
生祈は言った。
陳ノ内はページを捲る。
八尾坂宗次郎。
陸奥谷大学の考古学教授。
「慈満寺のセキュリティに一役買った人」
「あれ、専攻違う感じじゃないですか」
「大学の特色上ってことなんじゃないかな」
「アバウトですね」
陳ノ内と彩舞音。
生祈は陸奥谷大学のことを多少、塾とか大学説明会のパンフレットで見ていたことがある。ITや技術の工学系で有名。
桃ノ染高校からも受験する学生がいる。
「大月住職! ねえマリウィルでゴロウも見てるよ、同じ人」
彩舞音にそう言われたが生祈はぼんやりしか思い出せなかった。
一方で、確かに彩舞音が見せてくれた慈満寺のパンフレットに写っていた顔のような気もした。
いかつい感じ。
彩舞音が言っていた「鍛えたんじゃない」かと思われる大月紺慈の写真。
浅野崎大学修了、三年桔梗院で修行の後、慈満寺へ
とある。
一方の大月深記子はいかついイメージが一切ない。
「すっごい美人さんだあ」
彩舞音は言った。
長いであろう黒髪、白い肌。
生祈は眼をぱちくりやって深記子の写真を見つめた。
「大月……てことは大月住職の」
「嫁さんだろう」
彩舞音と生祈はファイルの上に身を乗り出して深記子の写真を凝視。
陳ノ内は苦笑。
生祈は我に返った。
「あ、あの、慈満寺で鐘が鳴ると人が死ぬんだっていう噂……」
陳ノ内と彩舞音が真っ直ぐ見返してきたので生祈はたじたじした。
「さっきのお坊さんたち慌てていましたけれど、それってもしかして地下のことを気にして慌てていたんじゃないかって思ったんです。その円山さんてセキュリティ担当なら、何かしに……」
生祈はちょっと考えて
「あと、先程陳ノ内さん仰っていましたけれど、朝比さんも調査に乗り込んでいるとすれば、その地下にいる可能性が高いんじゃ……」
陳ノ内はスマホを見てみる。
「電波がってことか」
立ち上がる。
「三人の後を追う感じ? ねえその前にさ、写真撮ろうよ。友葉先輩に送る堂賀さんの写真ないからその代わり」
生祈と陳ノ内は眼をぱちくり。
「なんかこう、その深記子さんの写真に影響されちゃった」
彩舞音は照れながら言った。
「撮ってあげましょうか?」
三人はびっくりした。
「撮ってあげましょうか」と言ったのは当の深記子さんその人。
立派な装束姿、白と赤の巫女服姿だった。
にこやかな笑顔。
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