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緑静けき鐘は鳴る【上】
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スマホを持って構える深記子。
彩舞音と生祈は並んだ。
陳ノ内はとりあえずベンチに腰掛け、生祈と彩舞音は立って陳ノ内が写るように並ぶ。
「撮るわよー! 準備はいいー!」
「はーい!」
何故か身振りを大げさにする深記子。
彩舞音はそれに反応したのか前に乗り出した。
「ちょっと!」
「あ」
で、彩舞音が前に乗り出した写真が出来上がった。
生祈は慌てた表情のままだ。
「送るんだっけ」
「友葉先輩に!」
「でも朝比堂賀さんじゃないよ」
「堂賀さんの代わり」
生祈は苦笑した。
「よく撮れたかしら? あらなんだかとってもぶれている」
「だ、大丈夫ですありがとうございました!」
深記子が言うのを生祈は礼で返した。
笑みを湛える深記子。
「あなたたち、恋愛成就キャンペーンで?」
「そ、そうです。あ、その人は……」
生祈は陳ノ内と顔を見合わせた。
「いつだったか、お会いしたかしら?」
「ええまあ」
陳ノ内はそう言った。
「あなたも参拝客?」
「そんなところです」
「そう。そうねえキャンペーンはいいのだけれど……」
深記子は頬に手を当てたまま言い始める。
「大きな音で梵鐘が乱暴に鳴らされていたのはご存知?」
「ええ。山門すぐ近くで聴きましたよ。あれは想定外だったということですか?」
と陳ノ内。
「そうなの。驚いてしまって。恋愛成就キャンペーンを始める前に梵鐘を鳴らすというのは、あまりないことなのよ。何かあったんじゃないかって。何の断りも私たちは受け取っていなかったから」
「や、やっぱり……」
と言いかけて生祈はやめた。
慈満寺の鐘と人が死ぬ噂のことを気にしているんですか、なんてとても訊けない。
「いえ、あの、さっき僧侶の方々も急いであちらへ行かれていたみたいですけれど」
「それはきっと円山たちね。私は大月深記子。あなたがたは?」
「あたしは沢田です! その子は根耒で、そしてこの人は……」
と言って彩舞音は陳ノ内を見る。
「記者さんです」
「そう」
深記子は苦笑した。
「何か話していなかったかしら。例えば、慈満寺には地下があってね。その地下に関して円山たちが話していた、とか……」
「あんまり急いでいたようだったから、何を話していたかは聞こえませんでしたよ」
陳ノ内は言った。
「ああそう思い出したわ! あなたもしかして九十九社から来ている朝比堂……」
陳ノ内は制した。
「朝比がどうかしましたか」
「やっぱりそうね! じゃあ陳ノ内さん」
肯く。
「その朝比の姿と、あと息子の姿も見えないのよ。何か見かけたりしていないかしら」
生祈と彩舞音は顔を見合わせた。
「あの、さっきちっちゃい男の子が、竹箒持って眼鏡掛けてバーッて行っちゃいましたけれど」
彩舞音はそう言った。
「それよそれ! どっちへ行ったか分かる?」
四人は歩き出す。
彩舞音と生祈は並んだ。
陳ノ内はとりあえずベンチに腰掛け、生祈と彩舞音は立って陳ノ内が写るように並ぶ。
「撮るわよー! 準備はいいー!」
「はーい!」
何故か身振りを大げさにする深記子。
彩舞音はそれに反応したのか前に乗り出した。
「ちょっと!」
「あ」
で、彩舞音が前に乗り出した写真が出来上がった。
生祈は慌てた表情のままだ。
「送るんだっけ」
「友葉先輩に!」
「でも朝比堂賀さんじゃないよ」
「堂賀さんの代わり」
生祈は苦笑した。
「よく撮れたかしら? あらなんだかとってもぶれている」
「だ、大丈夫ですありがとうございました!」
深記子が言うのを生祈は礼で返した。
笑みを湛える深記子。
「あなたたち、恋愛成就キャンペーンで?」
「そ、そうです。あ、その人は……」
生祈は陳ノ内と顔を見合わせた。
「いつだったか、お会いしたかしら?」
「ええまあ」
陳ノ内はそう言った。
「あなたも参拝客?」
「そんなところです」
「そう。そうねえキャンペーンはいいのだけれど……」
深記子は頬に手を当てたまま言い始める。
「大きな音で梵鐘が乱暴に鳴らされていたのはご存知?」
「ええ。山門すぐ近くで聴きましたよ。あれは想定外だったということですか?」
と陳ノ内。
「そうなの。驚いてしまって。恋愛成就キャンペーンを始める前に梵鐘を鳴らすというのは、あまりないことなのよ。何かあったんじゃないかって。何の断りも私たちは受け取っていなかったから」
「や、やっぱり……」
と言いかけて生祈はやめた。
慈満寺の鐘と人が死ぬ噂のことを気にしているんですか、なんてとても訊けない。
「いえ、あの、さっき僧侶の方々も急いであちらへ行かれていたみたいですけれど」
「それはきっと円山たちね。私は大月深記子。あなたがたは?」
「あたしは沢田です! その子は根耒で、そしてこの人は……」
と言って彩舞音は陳ノ内を見る。
「記者さんです」
「そう」
深記子は苦笑した。
「何か話していなかったかしら。例えば、慈満寺には地下があってね。その地下に関して円山たちが話していた、とか……」
「あんまり急いでいたようだったから、何を話していたかは聞こえませんでしたよ」
陳ノ内は言った。
「ああそう思い出したわ! あなたもしかして九十九社から来ている朝比堂……」
陳ノ内は制した。
「朝比がどうかしましたか」
「やっぱりそうね! じゃあ陳ノ内さん」
肯く。
「その朝比の姿と、あと息子の姿も見えないのよ。何か見かけたりしていないかしら」
生祈と彩舞音は顔を見合わせた。
「あの、さっきちっちゃい男の子が、竹箒持って眼鏡掛けてバーッて行っちゃいましたけれど」
彩舞音はそう言った。
「それよそれ! どっちへ行ったか分かる?」
四人は歩き出す。
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