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緑静けき鐘は鳴る【中】
39.表向きはオリエンテーション
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廊下にまだいる。
根耒生祈と、岩撫衛舜。
とりあえず生祈は、朝比堂賀に言われていたことで。
大月に話を訊く、ということで。
実際に聞いたわけだった。
とりあえず話を聞いた。
とりあえずである。
朝比に何かしら手渡せる情報?
多少は手に入れた、のかもしれない。
「資金の流れがあったとして」
と生祈。
「田上さんが慈満寺へ、いらした時は既に経営難ではなかった」
岩撫。
「恋愛成就キャンペーン、なんていう企画が持ち上がりましたからね」
岩撫という人は、恋愛成就キャンペーンに対して?
どう思っているのだろう。
少し話を聞いていれば、なんだか慈満寺内でキャンペーンに対する肯定なのか、それとも否定か。
キャンペーンをやるという割の、それに対する様々な意見。
その辺りでも、遺体に関する何かとつながってくるのだろうか。
とか生祈は思いつつ聞き。
続ける岩撫。
「慈満寺の展覧会って言いましょうか、土偶と埴輪と近しいのが陸奥谷大学でしょう。大月住職はそういう方面に、アドバイスを求めることが多いんでしょうかね。なんて思いますがね」
「アドバイス、ですか」
「その考古学の教授といい。キャンペーンも確か大学が関わっていると言ったかな。いえ、それはうちの寺の御利益に関することだから……。あくまでIDロック盤と土偶方面ですね。大学だったか円山さんだったか、大月住職のアドバイスを求めやすい方に、そっちの白羽の矢が立った」
岩撫は苦笑する。
生祈は首を傾げる。
「円山さん?」
「ええ。その教授と彼は懇意だそうですね。確か恋愛成就キャンペーンの発案は円山さんだったはず」
「確か、円山さんは地下のIDロック盤のことも」
「そうです。私も実際には専門ではないですが、携わっています」
「慈満寺のITの方面に」
「そう。寺のITについては特に円山さんがね。麗慈さんの機械いじりについては御住職よりむしろ、円山さん。彼の方が詳しいかも分からない」
「それは……」
ということは麗慈くんの機械いじりは意外と有名で。
かつ大月紺慈氏には伝えられていないということ?
ITの円山さんなら、麗慈くんの機械いじり方面。
それから大月氏が知らなかったとされていても、機械いじりゆえの防犯カメラ映像の入手アクセスその他を、多少疑える余地はあるが。
遺体と麗慈くんの関連性については、何もない。
「それは円山さん自身、麗慈くんに関して御住職に伝えなくて、いいんでしょうか」
「さあ、それは」
岩撫は苦笑。
「分かりませんねえ」
生祈はちょっと話題を変えてみる。
「資金面って先程。岩撫さん仰いましたが」
「ええ」
「土偶や出土品にも値段が」
「恐らくね」
そこで資金面の、その一。
「今も交流は慈満寺と大学側であるとして、展示会はやっていなくて。恋愛成就キャンペーンはやっている。というお話でしたが」
と生祈。
岩撫。
「檀家さんとしてはね。突拍子もない何事だと反対意見もあったそうです。キャンペーンなんてネーミングですからね」
ネーミングか。
と生祈は思うがよく分からない。
ネーミングはともかく、檀家さんが反対したのも今は頷けるかも。
現に亡くなった人は出ているし。
とか思いつつ、生祈。
岩撫はそのまま。
「ただイベント形式にして金儲け見え見えじゃないかってね。私が入った時には既にキャンペーンがやっていた。でも熱心な檀家さんや信徒さんには反対する方も多かったそうです。キャンペーンに対して。年齢層がおかしいネーミングセンスだろう。とかね。ただ実際、反響はありましたからね」
「キャンペーン以後に経営難が解消したのも、そうなんですよね」
廊下の途中。
生祈と岩撫は違う方角で。
オリエンテーションのあとの予定。
朝比さん、采さんその他の人たちと合流出来るかどうか。
確か昨日の夜中、朝比さんは円山さんも誘っていなかったっけ。
検死に行くとき?
いや陸奥谷大学へ行くとき、それから劒物大学病院。
倒れた友葉先輩にお見舞い名目で話を聞く。
朝食の席で話していた追加である。
オリエンテーションに全て出ている暇はあるだろうか。
合流するに際しての時間は大丈夫だろうか。
生祈は早足になった。
ランドリー、それから部屋、駆け足。
慈満寺で、経営難の時に人が亡くなっていたかどうか。
という情報は今のところ、誰の口からも出ていない。
あくまでも、過去二人とそれから今回の死亡の件は。
いずれも恋愛成就キャンペーンと絡むもの。
キャンペーン以後に。
慈満寺の資金面で何かが解消されたということ。
しかし人も死んでいる。
生祈の中では、キャンペーン時間の間に起きた何かの出来事。
その他どうと言うのに限らず。
敢えて亡くなった人を、地下へ誘導した人が居たのでは。
とか、そういうことがあったのでは。
という説で。
慈満寺の資金面で何かが解決したことで、陳ノ内さんの話を借用すれば「都合の悪い」人物も居た。
という可能性。
とすると、キャンペーン以前になにか資金面での取引、その他のあった。
土偶や出土品についてはどういうことになるか。
慈満寺側。
あるいは、大月紺慈氏や大月深記子さん側にとっては。
土偶や出土品の類は、資金源としても大切なものだったはずだ。
とか思い。
生祈は、寺の事務所にあたる社務所へやって来た。
廊下をぐるぐるした、挙句。
朝比と朝に見た見取り図での場所確認もあってか。
割とスムーズに着き。
当日。
アルバイト前オリエンテーションとあって。
想像以上に人が居る。
だが実際にはまだ、その時間よりちょっと早い。
学生のような面々も、何人か居る。
生祈はコピー機へ向かう。
そのコピー機の周りには、どうやら人の手で撮られたであろう数枚の写真。
全て白黒だ。
コピーか何かか?
刑事の姿も見られた。
コピー機の周りに。
そうか、刑事さん関連……。
と生祈はハッとする思い。
機の台数は五台ほど。
横に並ぶ。ズラリ。
そしてパソコンやデスクトップが置かれているのも、多数見受けられ。
事務所らしいと言えば、事務所らしい。
寺らしいかと言えば、寺らしくはない。
あくまでこの場は、事務所といった雰囲気。
刑事たちと何言か交わしている大月深記子は、白い着物。
白黒コピー。
たぶん調査。
とするとこれは、地下の写真のコピーか何かか?
生祈は咄嗟に、土偶や出土品の写真がないかと眼で追って探してしまった。
そしてぶつかったのは深記子の視線と。
白い着物。
うっすらとした化粧。
唇の紅がそれ故か目立っている。
「一回十円よ」
笑顔で深記子は言った。
それから、刑事たちと再度何事か交わすのに戻っていく。
アルバイトのオリエンテーションには違いない日だ。
ただ。
どちらかといって寺全体のメインもまだ、昨日に引き続いたものが残っていて、生祈もそれは同じ。
亡くなった人が出たというのは大きい。
慈満寺でなくとも、どこでもそういうのは同じかもしれない。
社務所内はどちらも並行してある雰囲気。
各々の持っている、何かしらの感情は隠しきれていない。
緊迫と並行する日常の仕事。
調査と並行で、アルバイトに関するオリエンテーション。
機にてコピーしようとしているのは。
生祈自身の書いたメモ。
オリエンテーションが終わったあとに合流が出来れば。
朝比に渡す。
そのつもりで。
白黒コピーは一回十円。
生祈の場合は一枚で済むから、十円でこと足りる。
並ぶための時間は、一方で消費されていく。
「昨日はよく眠れたかしら」
ということは。
生祈はそう深記子に言われて思う。
麗慈も含めて参加しつつの昨夜深夜の非公式会合。
そこには生祈と岩撫も居た。
一方で大月深記子さんには、その非公式会合について分かられていない。
ということ、か。
大月紺慈氏と同様に。
生祈は深記子を見て思う。
生祈と岩撫は麗慈に関しては、大月氏両者ともどもに口外していない。
かつ、麗慈はやっぱり上手くやったのだろう、か。
今朝の朝比さんと麗慈くんの、地下探訪についてはどうだったのだろう。
とか生祈は思いつつ。
「ええまあ」
と生祈は言っておくことにした。
よく眠れたとは正反対。
実際には睡眠不足に輪をかけた状態である。
「昨日から、刑事さんの捜査も忙しくなっている感じでしょうか」
「そうなの」
と深記子。
「たぶん私も疑われているわね」
と言って深記子。
その眉をしかめて見せ、すぐに笑顔に戻る。
生祈は深記子を視界の真ん中に見ている状態だ。
だが、その背後の背景に眼がいった。
社務所内は、確かにパソコンやデスクトップはある。
しかし、朝比さんと見取り図で見た部屋。
「裏の部屋」とやらは、どうやらここではなさそうで。
「社務所へ置いてあるパソコンは……」
と生祈は尋ねてみた。
深記子。
「ああ。確かにアルバイトの方々に、使ってもらう機会はあるわ」
生祈の番が回って来た。
コピー。
深記子。
「ところで、それは?」
手元のメモ。
生祈は咄嗟に隠したかったが、やめた。
「ああ、ええと……」
と言いながら機の蓋を開ける。
先にメモを入れて仕舞う。
生祈。
「ちょっと忘れっぽいので、何かメモしたこととかいろいろ……」
「アルバイトについて?」
「そ、そうです」
確かにそれっぽい感じ。
だが実際にはアルバイトではなく、朝比の非公式調査用である。
「分かったわ。じゃあこれ。今日のオリエンテーションの分はこっちね」
言いながら深記子は、生祈へ紙片を渡す。
紙片はコピーだろうか?
原本ではなさそう。
一回十円。
生祈のメモ、コピーが出て来て。
それも一枚。
根耒生祈と、岩撫衛舜。
とりあえず生祈は、朝比堂賀に言われていたことで。
大月に話を訊く、ということで。
実際に聞いたわけだった。
とりあえず話を聞いた。
とりあえずである。
朝比に何かしら手渡せる情報?
多少は手に入れた、のかもしれない。
「資金の流れがあったとして」
と生祈。
「田上さんが慈満寺へ、いらした時は既に経営難ではなかった」
岩撫。
「恋愛成就キャンペーン、なんていう企画が持ち上がりましたからね」
岩撫という人は、恋愛成就キャンペーンに対して?
どう思っているのだろう。
少し話を聞いていれば、なんだか慈満寺内でキャンペーンに対する肯定なのか、それとも否定か。
キャンペーンをやるという割の、それに対する様々な意見。
その辺りでも、遺体に関する何かとつながってくるのだろうか。
とか生祈は思いつつ聞き。
続ける岩撫。
「慈満寺の展覧会って言いましょうか、土偶と埴輪と近しいのが陸奥谷大学でしょう。大月住職はそういう方面に、アドバイスを求めることが多いんでしょうかね。なんて思いますがね」
「アドバイス、ですか」
「その考古学の教授といい。キャンペーンも確か大学が関わっていると言ったかな。いえ、それはうちの寺の御利益に関することだから……。あくまでIDロック盤と土偶方面ですね。大学だったか円山さんだったか、大月住職のアドバイスを求めやすい方に、そっちの白羽の矢が立った」
岩撫は苦笑する。
生祈は首を傾げる。
「円山さん?」
「ええ。その教授と彼は懇意だそうですね。確か恋愛成就キャンペーンの発案は円山さんだったはず」
「確か、円山さんは地下のIDロック盤のことも」
「そうです。私も実際には専門ではないですが、携わっています」
「慈満寺のITの方面に」
「そう。寺のITについては特に円山さんがね。麗慈さんの機械いじりについては御住職よりむしろ、円山さん。彼の方が詳しいかも分からない」
「それは……」
ということは麗慈くんの機械いじりは意外と有名で。
かつ大月紺慈氏には伝えられていないということ?
ITの円山さんなら、麗慈くんの機械いじり方面。
それから大月氏が知らなかったとされていても、機械いじりゆえの防犯カメラ映像の入手アクセスその他を、多少疑える余地はあるが。
遺体と麗慈くんの関連性については、何もない。
「それは円山さん自身、麗慈くんに関して御住職に伝えなくて、いいんでしょうか」
「さあ、それは」
岩撫は苦笑。
「分かりませんねえ」
生祈はちょっと話題を変えてみる。
「資金面って先程。岩撫さん仰いましたが」
「ええ」
「土偶や出土品にも値段が」
「恐らくね」
そこで資金面の、その一。
「今も交流は慈満寺と大学側であるとして、展示会はやっていなくて。恋愛成就キャンペーンはやっている。というお話でしたが」
と生祈。
岩撫。
「檀家さんとしてはね。突拍子もない何事だと反対意見もあったそうです。キャンペーンなんてネーミングですからね」
ネーミングか。
と生祈は思うがよく分からない。
ネーミングはともかく、檀家さんが反対したのも今は頷けるかも。
現に亡くなった人は出ているし。
とか思いつつ、生祈。
岩撫はそのまま。
「ただイベント形式にして金儲け見え見えじゃないかってね。私が入った時には既にキャンペーンがやっていた。でも熱心な檀家さんや信徒さんには反対する方も多かったそうです。キャンペーンに対して。年齢層がおかしいネーミングセンスだろう。とかね。ただ実際、反響はありましたからね」
「キャンペーン以後に経営難が解消したのも、そうなんですよね」
廊下の途中。
生祈と岩撫は違う方角で。
オリエンテーションのあとの予定。
朝比さん、采さんその他の人たちと合流出来るかどうか。
確か昨日の夜中、朝比さんは円山さんも誘っていなかったっけ。
検死に行くとき?
いや陸奥谷大学へ行くとき、それから劒物大学病院。
倒れた友葉先輩にお見舞い名目で話を聞く。
朝食の席で話していた追加である。
オリエンテーションに全て出ている暇はあるだろうか。
合流するに際しての時間は大丈夫だろうか。
生祈は早足になった。
ランドリー、それから部屋、駆け足。
慈満寺で、経営難の時に人が亡くなっていたかどうか。
という情報は今のところ、誰の口からも出ていない。
あくまでも、過去二人とそれから今回の死亡の件は。
いずれも恋愛成就キャンペーンと絡むもの。
キャンペーン以後に。
慈満寺の資金面で何かが解消されたということ。
しかし人も死んでいる。
生祈の中では、キャンペーン時間の間に起きた何かの出来事。
その他どうと言うのに限らず。
敢えて亡くなった人を、地下へ誘導した人が居たのでは。
とか、そういうことがあったのでは。
という説で。
慈満寺の資金面で何かが解決したことで、陳ノ内さんの話を借用すれば「都合の悪い」人物も居た。
という可能性。
とすると、キャンペーン以前になにか資金面での取引、その他のあった。
土偶や出土品についてはどういうことになるか。
慈満寺側。
あるいは、大月紺慈氏や大月深記子さん側にとっては。
土偶や出土品の類は、資金源としても大切なものだったはずだ。
とか思い。
生祈は、寺の事務所にあたる社務所へやって来た。
廊下をぐるぐるした、挙句。
朝比と朝に見た見取り図での場所確認もあってか。
割とスムーズに着き。
当日。
アルバイト前オリエンテーションとあって。
想像以上に人が居る。
だが実際にはまだ、その時間よりちょっと早い。
学生のような面々も、何人か居る。
生祈はコピー機へ向かう。
そのコピー機の周りには、どうやら人の手で撮られたであろう数枚の写真。
全て白黒だ。
コピーか何かか?
刑事の姿も見られた。
コピー機の周りに。
そうか、刑事さん関連……。
と生祈はハッとする思い。
機の台数は五台ほど。
横に並ぶ。ズラリ。
そしてパソコンやデスクトップが置かれているのも、多数見受けられ。
事務所らしいと言えば、事務所らしい。
寺らしいかと言えば、寺らしくはない。
あくまでこの場は、事務所といった雰囲気。
刑事たちと何言か交わしている大月深記子は、白い着物。
白黒コピー。
たぶん調査。
とするとこれは、地下の写真のコピーか何かか?
生祈は咄嗟に、土偶や出土品の写真がないかと眼で追って探してしまった。
そしてぶつかったのは深記子の視線と。
白い着物。
うっすらとした化粧。
唇の紅がそれ故か目立っている。
「一回十円よ」
笑顔で深記子は言った。
それから、刑事たちと再度何事か交わすのに戻っていく。
アルバイトのオリエンテーションには違いない日だ。
ただ。
どちらかといって寺全体のメインもまだ、昨日に引き続いたものが残っていて、生祈もそれは同じ。
亡くなった人が出たというのは大きい。
慈満寺でなくとも、どこでもそういうのは同じかもしれない。
社務所内はどちらも並行してある雰囲気。
各々の持っている、何かしらの感情は隠しきれていない。
緊迫と並行する日常の仕事。
調査と並行で、アルバイトに関するオリエンテーション。
機にてコピーしようとしているのは。
生祈自身の書いたメモ。
オリエンテーションが終わったあとに合流が出来れば。
朝比に渡す。
そのつもりで。
白黒コピーは一回十円。
生祈の場合は一枚で済むから、十円でこと足りる。
並ぶための時間は、一方で消費されていく。
「昨日はよく眠れたかしら」
ということは。
生祈はそう深記子に言われて思う。
麗慈も含めて参加しつつの昨夜深夜の非公式会合。
そこには生祈と岩撫も居た。
一方で大月深記子さんには、その非公式会合について分かられていない。
ということ、か。
大月紺慈氏と同様に。
生祈は深記子を見て思う。
生祈と岩撫は麗慈に関しては、大月氏両者ともどもに口外していない。
かつ、麗慈はやっぱり上手くやったのだろう、か。
今朝の朝比さんと麗慈くんの、地下探訪についてはどうだったのだろう。
とか生祈は思いつつ。
「ええまあ」
と生祈は言っておくことにした。
よく眠れたとは正反対。
実際には睡眠不足に輪をかけた状態である。
「昨日から、刑事さんの捜査も忙しくなっている感じでしょうか」
「そうなの」
と深記子。
「たぶん私も疑われているわね」
と言って深記子。
その眉をしかめて見せ、すぐに笑顔に戻る。
生祈は深記子を視界の真ん中に見ている状態だ。
だが、その背後の背景に眼がいった。
社務所内は、確かにパソコンやデスクトップはある。
しかし、朝比さんと見取り図で見た部屋。
「裏の部屋」とやらは、どうやらここではなさそうで。
「社務所へ置いてあるパソコンは……」
と生祈は尋ねてみた。
深記子。
「ああ。確かにアルバイトの方々に、使ってもらう機会はあるわ」
生祈の番が回って来た。
コピー。
深記子。
「ところで、それは?」
手元のメモ。
生祈は咄嗟に隠したかったが、やめた。
「ああ、ええと……」
と言いながら機の蓋を開ける。
先にメモを入れて仕舞う。
生祈。
「ちょっと忘れっぽいので、何かメモしたこととかいろいろ……」
「アルバイトについて?」
「そ、そうです」
確かにそれっぽい感じ。
だが実際にはアルバイトではなく、朝比の非公式調査用である。
「分かったわ。じゃあこれ。今日のオリエンテーションの分はこっちね」
言いながら深記子は、生祈へ紙片を渡す。
紙片はコピーだろうか?
原本ではなさそう。
一回十円。
生祈のメモ、コピーが出て来て。
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