転生するならチートにしてくれ!─残念なシスコン兄貴は乙女ゲームの世界に転生しました─

シシカイ

文字の大きさ
70 / 83
三章 薄藍の魔導書(アルファルド編)

15.犬猿の仲?

しおりを挟む
「嗚呼、もう焦れったいですね!」
 うっとおしい雨音を吹き飛ばすように俺は叫んだ。

 アルファルドとミモザの仲が全く進展しないからだ。このままだと、何の進展もないまま、社交界のシーズンが終わり、二人ともそれぞれの家の領地に戻ることになる。

 何としてでも、手紙のやり取りができるくらいの仲に進展をさせたいところだが、いくつかの問題があった。何とかしてその問題を解決したいものだが、俺の力不足もあり、何ともならない。

 ミモザがこんなにもツンデレだとは思わなかった。甲斐甲斐しくお世話をするくせに、興味は無いと言って好意ををひた隠しにしているのだ。

 もっとも俺がもっと上手くミモザの言動を引き出してやればこんなことにはならなかったはずだ。俺が百戦錬磨の恋愛マスターだったら良かったのに。

 そもそも、そうであれば、レグルスとの婚約問題も即行解決。ミモザとアルファルドもラブラブ。悩みの大半は消え、俺は自由な転生ライフを送っていたのかもしれない。

 しかし、現実の俺はクソヘタレの恋愛下手野郎なのだ。全く無力すぎる。

 いや、俺がダメでも、せめてアルファルドがもう少し女性に積極的だったら話は別だったはずだ。しかし、残念ながらアルファルドは所謂、草食系男子だったようで、ミモザが現れるだけで俺の後ろに隠れるのだった。

 少しは慣れてくれ、アルファルド。そう思うものの、やはり人は自分で変わろうとしない限り、変わらないものだ。そして、アルファルドは変わる気があまりないらしい。

 俺のこの焦れったい気持ちが分かるだろうか。九話かけてやっと想いが通じたと思いきや、やっぱり最終話の終わる時間ギリギリまですれ違う恋愛ドラマを見せられているような気分だ。

(俺は気が短いんだよ! さっさとくっつくならくっつけ!)

「ああ、もう!!」

「アルキオーネ?」
「アル?」
 気づけば、リゲルとアルファルドは驚いたようにこちらを向いている。

 まずい。今、叫ぶことじゃなかった。俺は後悔しながら口を押さえた。

 因みに、今日は珍しくミモザはおらず、代わりのようにリゲルが遊びに来ていた。

 どうやらミモザは何処かのお茶会にお呼ばれしているらしい。ミモザがいればこれをきっかけに恋が進展なんてことがあったかもしれないが、そうはいかないようだ。

「何、何? どうしたの?」
「ちょっと、しんぞうがとまった」

 二人は口々にそう言った。

 そして、互いの顔を見合わせてから、何故か同時に不機嫌な顔をする。

「お前、アルキオーネが人殺しみたいに言うのはやめろよ」
「いってない」
「はぁ? お前の心臓が止まったらアルキオーネが人殺し扱い受けるんだぞ?」
「ひゆがわからないのはばか」
「比喩なら分かりやすく言うんだ。分かりにくい比喩は比喩ではないんだよ」

 見ての通り、最近分かったことだが、アルファルドとリゲルは相性が最悪だった。

 これはアルファルドとミモザをくっつける上でも非常に大きな問題だ。

 リゲルはアルファルドの言動に明らかに苛立つし、アルファルドは言わなくていいことまで言ってくれる。義理の兄弟になったら恐ろしいことになりそうだ。アルファルドとミモザの仲を取り持つよりも先にコイツら二人の仲もなんとかしてやらなければならない。

「すみません。わたくしが急に大きな声を出すからいけないんです」

 俺は慌てて頭を下げた。俺の頭一つで雰囲気が変わるのなら安いものだ。

「アルキオーネは、」
「アルは、」
「「わるくない!」」
 二人の声が重なる。

「真似するなよ」
「まねしてない」

 リゲルとアルファルドは睨み合う。俺が頭を下げたことを二人揃って無に帰してくれるな。息がぴったりなくせに本当に仲が悪いんだから。

「嗚呼、もうやめてください。分かりましたから。リゲルも、アルファルドも、わたくしも、皆悪くないです。これ以上喧嘩をするなら、わたくしを倒してからにしてください。剣でも、カードゲームでも、何でも相手になってやりますよ!」

 俺は二人を睨みつけてやった。

「カードゲームならまだしも剣だなんて、アルキオーネとそんなことする気ないよ」

 慌てた様子のリゲル。片やアルファルドの方はぼうっとした顔で俺を見つめた。

「カードゲーム?」

 アルファルドが首を傾げる。

「七並べとか、ババ抜きとか、神経衰弱とかやったことないですか? アルファルドはあまり顔色が変わらないからダウトとか、インディアンポーカーとか向いてると思いますよ」

 アルファルドはピンと来ていないらしく、首を傾げたままだ。アルファルドはカードゲームをしたことがないらしい。

 そこで俺は思いつく。ここでカードゲームの一つや二つをして、上手く仲を取り持ってやるのはどうだろう。二人の仲が少しでも良くなれば、ミモザだってやりやすくなるかもしれない。

 俺は微笑みを浮かべた。

「やってみたら分かると思うんですけど……」

 俺はちらりとリゲルを見る。

 リゲルは少し嫌そうな顔をしてからため息を吐く。

「じゃあ、試しにやってみる? 言っておくけど、初めてでも俺は手加減しないよ」

 アルファルドも一瞬嫌そうな表情をするが、カードゲームによほど興味があったのだろう。ゆっくり大きく頷く。

「じゃあ、カードゲーム大会でも始めますか! 人数は多ければ多いほど盛り上がりますからね。メリーナとアントニスも誘いましょう」

 俺はメリーナとアントニスを誘いに行くため、部屋を飛び出した。

 *

 カードゲームなんて子どもの遊びと思っていたが、皆夢中になってやるものだから白熱した。中でも意外だったのが、メリーナだった。

「みなさん、思った以上に弱いですね」

 メリーナは困ったように微笑みながらカードを切る。

 神経衰弱、七並べ、ババ抜き、ダウトなどルールが簡単なものは一通りやってみたが、メリーナは何をやっても一位か二位だった。しかも、二位だったのはババ抜きだけだ。ほぼ無敵と言ってもいいほどの強さだった。

 メリーナが唯一最初に上がれなかったババ抜きで一番に上がったのはアルファルドだ。アルファルドは奇跡的に配られた手札が良く、直ぐに上がってしまったのだ。

 それ以外に関しては、アルファルドは初めてだということもあり、ルールを覚えるところから始めなければならなかったので苦労しているようだ。しかし、最下位になってしまっても楽しんでいるような様子だった。

「次は、大富豪で勝負を!」

 リゲルは真剣な表情でメリーナにそう言った。

 手加減しないと言っていたリゲルは実は強くも弱くもない。いつも二位から四位を行ったり来たりしているような調子だ。

 ただ、少々負けず嫌いなようで、時々目つきが鋭くなることがあった。勿論、その顔は直ぐに笑顔に変わるのだが、俺はリゲルがいつブチ切れるのかと戦々恐々としていた。

「大富豪は細かいルールがあるし、ローカルルールも多いから、覚えるのが大変ですよ。やめときませんか?」

 アントニスが嫌そうな顔をする。アントニスはカードゲームが苦手らしい。大抵、四位か最下位になってしまう。

 確かに俺に誘拐を阻止されたり、憲兵に誤解されたり、普段から運も良くないようだ。大富豪なんて運の要素も強いもの、勝てる気がしないのだろう。

「嗚呼、初心者には荷が重いもんね」

 リゲルは憐れむようにアルファルドを見る。明らかな挑発だった。

「やる」

 アルファルドはリゲルを見ることなく、即答した。

「無理だって」
「アル、おしえて」

 アルファルドはリゲルを無視して俺を見つめた。

「仕方ないですね。一番簡単なルールで行きましょう」

 俺はため息を吐き、皆にルールを確認しながら、大富豪のやり方を教えた。

「わかった」

 アルファルドは物覚えがいいようで、直ぐにルールを覚えて頷く。そういえば、神経衰弱のときも二番目に多くのカードを取っていた。

「おまえにはまけない」

 アルファルドは宣言するようにリゲルに向かって指を突き付けた。

「いい度胸だね」

 リゲルの顔は笑顔だったが、目には怒気がこもっていた。

 仲を取り持つつもりがとんだことになった。俺はひやひやとしながら、大富豪を始めた。

 結果はやはりメリーナの圧勝で、富豪が俺、平民はアルファルド、貧民がリゲル、大貧民がアントニスと並んだ。ギリギリであったが、宣言通り、アルファルドはリゲルに勝った。

 アルファルドは冷たい目でリゲルを見た。

 リゲルの瞳には怒りの炎が青く灯る。

「もう一度!」

 今度はリゲルがアルファルドに指を突き付ける。

「じょうとう」

 アルファルドは呟く。

 この後も数回、大富豪は続いた。勿論、一度もメリーナは負けることがなかったし、アルファルドとリゲルは平民と貧民を行ったり来たりするのは変わらなかった。

 でも、なんだかんだゲーム中、二人は時折悪口や憎まれ口を叩いていたが、まるで犬や猫が戯れているようにも見えた。本当に仲が良いのか悪いのか分からない。 

 でも、二人とも何だか楽しそうだからいいか。俺は二人を見て微笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴
恋愛
 魔王が討伐されて20年人々が平和に暮らしているなか、徐々に魔物の活性化が再び始まっていた。  聖女ですか?わたしが世界を浄化するのですか?魔王復活?  は?ツガイ?5人とは何ですか?足手まといは必要ありません。  主人公のシェリーは弟が騎士養成学園に入ってから、状況は一変してしまった。番たちには分からないようにしていたというのに、次々とツガイたちが集まってきてしまった。他種族のツガイ。  聖女としての仕事をこなしていく中で見え隠れする魔王の影、予兆となる次元の悪魔の出現、世界の裏で動いている帝国の闇。  大陸を駆け巡りながら、世界の混沌に立ち向かう聖女とその番たちの物語。 *1話 1000~2000文字ぐらいです。 *軽い読みものとして楽しんでいただけたら思います。  が…誤字脱字が程々にあります。見つけ次第訂正しております…。 *話の進み具合が亀並みです。16章でやっと5人が揃う感じです。 *小説家になろう様にも投稿させていただいています。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

処理中です...