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第一章
1-3 凡人の意地
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「ここからの景色は絶景です!」
「すごいわね」
「この店はなにを食べても美味しいです!」
「本当においしいわ」
「あそこのおやっさんは、鎧作りでは王都一なんです!」
「綺麗な鎧ね」
「あの爺さんは魔法使いですが、たまに使う魔法を間違えます!」
「それは大丈夫なの?」
なにを話しても勇者様の反応は鈍く、表情はそんなに変わらない。たまにくすりと笑う程度だ。
しかし、この数日で気付いたのだが、顔に出ないだけで楽しんでくれているようだ。俺には勇者様の、微細な感情の変化が分かるようになってきていた。
この数日、勇者様に頼まれた通りに、色々なところを案内した。町や町の外だけでなく、城内のおすすめスポットも教えてもらい、そういった場所にもだ。
派手な催しなどは遠慮したい。そう言った勇者様のお言葉に合わせ、派手なことは何一つしていない。だがそれでも、俺は精一杯頑張ったつもりだ。
「とてもいい国ね……」
茜色の空の下。靡く髪を手ですかしながら、勇者様はそう言った。
先ほども言ったが、俺には勇者様の変化が分かるようになってきている。……だからこそ、すぐに分かってしまった。彼女の気持ちを変えることはできなかったのだと。
そのまま俺たちは、どちらからともなく歩き始め、玉座の間へと赴く。どこか期待した顔をしていた陛下は彼女を見て、ただ静かに頷いた。
「……準備は整っております。いつでも帰れますが、いかがいたしますかな?」
「では、ご迷惑でなければ明日の昼に。ちょうどあちらでは昼休みだったので、同じ時間に戻りたいと思います」
「かしこまりました」
勇者様は深々と頭を下げ、さらに告げた。
「それと、お力になれず申し訳ありません。この国は素晴らしい国です。誰もが優しく、守りたいと思うのは当然です。……ですが、わたしにはその力が有ったとしても、勇気がありません。本当に――」
「それ以上の言葉は必要ありません。そこまで真摯に考えていただけただけで、あなたが勇者として召喚されて良かった。ラックスよ、勇者様をお部屋にご案内してくれ」
「ハッ!」
玉座の間から勇者様へ先に出てもらった後、俺は両膝をついて、額を地面に叩きつけた。
こうする以外にできることが、謝罪する方法が思いつかなかったからだ。
「良い。早く行きなさい。怪しまれるぞ」
「……ハッ!」
最後に見た陛下の顔は、とても穏やかでありながら、決意を深めているようにも思えた。
勇者様を部屋にお連れし、他愛もない話をする。これが最後だと思えば、妙に胸が苦しくなった。
「ラックスさんには本当にお世話になりました」
「いえ、大したことは――」
答える途中で、城が大きく揺れて轟音が響き渡る。急ぎ、廊下へと出た。
通りがかった兵に声をかける。
「なにがあった!」
「分からん! 音は中庭のほうらしい! 我々は陛下の元へ向かう! ラックスは勇者様を宝物庫に連れて行け!」
「分かっ……らん! なぜ宝物庫!?」
「玉座の間の次に頑丈だからだ! 早くしろ!」
「なるほど、了解!」
言われた通りに勇者様を連れ、宝物庫へ向かう。その途中、ヘクトル様ともすれ違った。
「ヘクトル様!」
「魔族の襲撃だ! 勇者様に気付いたかは定かではないが、すぐに避難を!」
「宝物庫へ連れて行くよう言われております!」
「確かにあそこなら安全だ。見張りの者には、ヘクトルが許可を出したと伝えて入りたまえ!」
「そういえば許可をもらっていませんでした! ありがとうございます!」
「陛下を救出次第、僕もそちらに向かう。頼んだ!」
中庭へ向かうヘクトル様とは逆方向、宝物庫へ辿り着く。見張りにヘクトル様の名前を出すと、快く扉を開いてくれた。
二人で中へ入り、奥で明かりを灯す。薄っすらと周囲が映し出されたが、剣や鎧から、よく分からないものまで、色々と乱雑に置かれていた。
「……宝物庫って簡単に入れるの? それと、思っていたよりも物が少ないのね」
目を瞬かせている勇者様に、笑いながら答える。
「まさか、俺は始めて入りましたよ。それだけ大事にされているってことです」
「……」
勇者様は唇を絞り、胸元を握りしめている。責任を感じているのかもしれないが、勝手に呼び出したこちらが悪い。できれば気にしないでもらいたい。
彼女に背を向けて前に立ち、槍を強く握る。なにかあったとき、勇者様を守れるのは俺だけだ。気を緩めるわけにはいかない。
安心してもらおうと、振り向かずに勇者様へ声をかけた。
「まぁ大丈夫ですよ。敵の狙いは陛下のはずですから、こっちには来ません。宝物庫にある目ぼしいものは大体使ってしまったと聞きましたから、価値のある物は少ない。それに――」
「それに?」
ほんの少し気恥ずかしさを覚えながらも、俺は言葉を紡いだ。
「自分が、あなたを守ります」
「……膝、震えているわよ?」
「そこは見過ごしてください!」
強張った表情をしていた勇者様が、くすくすと笑ってくれている。それだけで、カッコつけた甲斐もあったというものだ。
後はヘクトル様たちが事態を片付けるのを、ゆっくりと待つだけ。大した仕事ではない。
『一歩下がれ』
その声は良く知っている声だった。いつも危機になると、短く伝えてくれる少女の声。俺は【妖精】さんと呼んでいる。
疑う余地などはなく、すぐに一歩下がった。
途端、なにかが破裂するような音が響き、目の前の壁になにか大きな物が刺さる。慌てて確認すると、それは頑丈な宝物庫の扉だった。
もう一歩前にいたら、と想像してしまい、唾を飲み込んだ。
「ゆ……ミサキ様、そこの陰に隠れてください」
無言のまま勇者様が頷き、俺は一度大きく深呼吸をした後、兜のバイザーを下ろしてから足を進ませた。名前で呼んだのは、勇者がいると気付かれないための配慮だ。
物影から覗き込むと、入口辺りには、周囲をキョロキョロと見ている人影。額には一本の角、青い肌、執事服。こいつが犯人だろうと、考えるまでもなく分かった。
相手に気を払いすぎてしまったのだろう。足元の瓦礫を蹴ってしまい、物音が鳴る。
当然の如く目が合うと、相手はニコニコと笑みを浮かべながら言った。
「やはりこちらが本命でしたか。初めまして、下級魔族のベーヴェと申します」
ベーヴェと名乗る魔族は静かに告げた後、頭を下げた。
魔族とはモンスターを統治する存在。そして魔族の中でも階級があり、下級は一番下だ。さらに上には中級、上級、貴族、王といるのだから、そういった点ではまだマシだろう。
しかし、ついている、などと考えてはならない。出会ってしまった時点で、俺たちの運は最悪だ。 もし魔族がその程度の相手であったのならば、この世界はこんなに追い詰められてはいないのだから。
うまく息を整えられぬまま、ベーヴェへ答える。
「ハジメマシテ。ワタシ、ジブン……チョット待ッテクレル?」
「五秒くらいなら」
「ドウモ」
割と親切な魔族に礼を告げ、五秒かけて息を整える。先ほどよりは幾分かマシになり、今度こそと口を開いた。
「魔族が泥棒とはな! 恥を知れ! ……後、初めまして!」
「盗むほど価値があるものは少ないように思えますが? ……それよりも、あなたの命のほうが、よっぽど価値がある。そうは思いませんか、勇者様?」
奥でガタリと物音。それを誤魔化すために、目の前に転がっている高そうな壺を蹴り飛ばした。派手に割れた。後で怒られるかもしれない。忘れよう。
少しやらかした気持ちのまま、ベーヴェの言葉を鼻で笑い飛ばしてやった。
「ハンッ! 勇者なんて伝説だけの存在を、まさか信じているのか?」
「えぇ、信じていますとも。『異世界勇者召喚術』。先日の異常な魔力反応。我々魔族もバカではありませんので」
鋭い目で見られ、背筋が冷たくなる。どうやら誤魔化すことはできないようだ。
ならばと、俺は兜の中で――ニヤリと笑った。
「ふっ、ふはっ、ふーっはっはっはっはっはっはっはっ! ゴホッゴホッ……。よ、よくぞ見抜いたな下級魔族! 我が名はミ、ミラ、ミラックス=ニノミヤ! この世界を救う運命を背負いし勇者様だ!」
危うくミサキ=ニノミヤと名乗ってしまうところだった。
しかし、ギリギリ誤魔化せたので問題は無い。なんせ、ベーヴェは信じてくれたみたいだからな。
その証拠に、ベーヴェは両手を握り合わせ、天を仰ぎ見ていた。
「やはり! やはりあなたが勇者! あぁ、他の魔族たちを騙し、先んじて良かった! これで手柄は独り占め。そうなれば、自分にも魔王としての権利が与えられる!」
他の魔族を騙して手柄を独り占め。とても小物臭がする。
だが、その後の意味が分からない。魔王は復活したと聞いているのに、魔王の権利とはどういうことだ?
いや、後で考えよう。今は時間稼ぎだけを――腹部に、そして背中に強い衝撃。体が前から地面に落ちた。
「……あなた、弱いですね。本当に勇者ですか?」
殴り飛ばされ、壁に叩きつけられたのだろう。強すぎるなんてもんじゃない。土下座して見逃してもらいたいくらいだ。
そんな弱音を押し殺し、槍を杖代わりにして立ち上がった。
今の俺は勇者ミラックス=ニノミヤ。変な名前で言い辛いが、とりあえず勇者だ。倒れているわけにはいかない。
「今度はこちらの番だ!」
訓練通りに槍を真っ直ぐに突き出す。だがベーヴェは避けることもせずに腹で受けた。
まさか仕留めた!? と思ったが大間違いだ。そもそもベーヴェには、避ける必要も無かったらしい。
穂先はベーヴェの執事服を貫くこともできず、ただ少し皺を寄せただけ。全力の一撃は、服すら破れぬものだった。
「まぁ、勇者でも召喚されて数日では、こんなものなんですかねぇ」
軽く払うようにベーヴェが手を動かす。たったそれだけのことで、俺の槍は先が無くなっていた。
「さっさと終わりにしましょうか」
ゆっくりとベーヴェが手を伸ばす。それを防ごうと剣を抜いて斬りつけたが、同じく払われ、剣は後方へと飛んで行った。
「ひゃっ」
「ん?」
「ひゃあああああああああああああああ!」
思い切り叫び声を上げる。
ご、誤魔化せたかな? ドキドキしながら顔を窺ったのだが、ベーヴェはニタァと笑っていた。
「もう一人いたんですね。そうか、そういうことですか。あなたは弱すぎると思ったんですよ! そっちが勇者ですかぁ!」
――バレた。
勇者様は立ち上がることもできず、ズリズリと後ろへ下がって行く。もうバレているのであれだが、それならまだ物影で動かないほうがマシだ。
「う、うおおおおおおおおおおおお!」
抱き着いて動きを止めようと、真っ直ぐ走り出す。それに対し、ベーヴェは腕を振るった。
「邪魔です」
しかし、それは予想できていた。
身を屈めて潜り抜け、ベーヴェの腰に抱き着く。本当はそのまま押し倒すつもりだったが、ビクともしない。化物め。
「ちょ、邪魔ですって。もうあなたに興味はありませんから」
「勇者様! 逃げてください!」
「で、でも」
「いいから逃げふっ! 俺たちの身勝手で呼び出して、さらに死なれたら最悪じゃないか! ヘクトル様と合流しがはっ! 急いで元の世界に返してもらえぶふぁっ!」
「ですから邪魔ですって」
言葉を告げるたった数秒の間に、何度も、何度も鎧の上から殴られた。
その度に強い衝撃があり、鎧がへこんでいることが分かる。口から吐き出しているものも食事や胃液だけではなく、血が混じっていると分かっていた。
――だがそれでも、この手を放すことはできない。
ようやく立ち上がった勇者様が逃げ出すまでは、絶対に止めなければならない。
そんな決死の覚悟を持った俺に対し、ベーヴェは呆れたように息を吐いた。
「あなた今、勇者を返すって言っていましたよね? まさか、送り返すって意味ですか? 冗談ですよね? 他に縋れるものがなく、国の全てを賭けて呼び出した勇者を、本気で送り返すつもりですか?」
「……え?」
「聞かないでください!」
足を止めてしまった勇者様に叫ぶ。だが、ベーヴェは勇者様の異変に気付いたのだろう。機を得たとばかりに話を続け、勇者様も聞いてしまっていた。
「えぇ、本当に驚きですよ。そもそも勇者を呼び出す余力が、ミューステルム王国には無い! に・も・関・わ・ら・ず! 勇者を呼び出した。世界のために! さすがはお人好し国家! しかも勇者の事情を尊重して送り返すとは、もうお人好しどころか、ただのバカですねぇ!」
勇者様は目を見開き、口元に手を当てている。
ベーヴェは高笑いをして、とても楽しそうにしていた。
……ただ一人、不愉快でしょうがない俺は、両足まで使ってベーヴェにしがみつく。まるで子供のような抱き着き方で情けない。
だが怒りのせいか、痛みが和らいでいるような気がした。
「ちょ、まだ続ける気ですか!? あなた一人くらいなら見逃してあげてもいいですから、さっさと離れてください!」
「……っ」
絶対に離れないぞ、と力を振り絞る。
だがそんな俺に対し、勇者様が言った。
「ラックスさん……。もういいから、逃げて」
「ほら、勇者もこう言って」
「断る!」
お前の言うことなんて聞いてたまるか。
引き剥がそうとしているベーヴェに抗っていると、勇者様が泣きそうな声で言う。
「どうして……。たった数日間、一緒にいただけの他人じゃない! わたしの気が変わるのを待っているの? それとも、責任を感じているから!?」
確かにそういった気持ちがゼロだとは言わない。だが、一番大事なのはそこじゃないんだ。言いたくないし、俺のことはいいから逃げてほしい。なのに、勇者様はどうしても逃げてくれない。
だから仕方ないと、叫ぶように本音を告げた。
「俺が! あなたを守ると! 言ったじゃないか! ……くそっ! 口に出しちゃったらカッコ悪いじゃないですか! 言わせないでくださいよ、恥ずかしい!」
恐らく顔は真っ赤だろう。バイザーで隠れていて本当に良かった。
さぁ、これで心残りはないだろう。逃げてくれ、勇者様。後は俺が、どうにか時間を稼ぐ。そして勇者様は、君は元の世界に帰る。それで、全て終わりだ。
なぜか殴るのを止めていたベーヴェが感心した声で言う。
「カッコいいじゃないですか。雑魚扱いしていたことを謝罪しますよ」
「そりゃどうも! ついでに二人とも見逃してもらえないかね!?」
「残念ながら、二人とも見逃せませんねぇ」
背筋がゾクリとする。顔を上げると、笑み一つ無いままベーヴェは片手を上げていた。
その片腕には黒いなにかが纏わりついており、見るだけでヤバいと分かる。
防ぐことはできない。避けなければならない。だがあれを避ける技量が俺には無い。
そして食らえば必ず死ぬ。あれは、そういった一撃だと頭が理解していた。
「さようなら、誇り高き一兵士」
「逃げて、勇者様!」
振り下ろされようとしている腕には目もくれず、勇者様へ叫ぶ。
だが目にした彼女は、逃げようとしていなかった。
震えながらも剣を拾い上げ、強く握り、目からは涙が零れ――地面へ落ちるよりも早く、駆けていた。
「――やあああああああああああああ!」
地面へポタリと涙が落ち、丸い染みを作る。同時にベーヴェの腕も落ち、地面を紫色の血で染め上げていた。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ベーヴェが叫び声を上げる。暴れ出したので慌てて離れると、俺の元へ勇者様が近づいて来た。
「ラックスさん! 大丈夫!?」
「それはこっちの台詞です! ……でも良かった。よし、今なら大丈夫です。俺のことはいいから、早く逃げてください!」
「逃げるなら二人一緒よ!」
離れるので精一杯だった俺に、立ち上がる力は残っていない。それを理解していたのだろう。勇者様は肩を貸してくれ、二人で逃げようとしていた。
引きずられているような状態で体を進ませ、宝物庫の扉の近くまで辿り着く。
だが、ベーヴェが正気を失っていたのは、そこまでだった。
「オノレ、オノレェ! 勇者アアアアアアアアアアア!」
いや、明らかにまだ正気では無い。腕を失ったショックが大きかったのだろう。弓で放たれたかのように、こちらへ突撃して来た。
……まぁ、一度は捨てた命だ。
俺は勇者様を突き飛ばし、笑いかけた。さようなら、ありがとう、勇者様。
「ラックスさ――」
「――死ねぇっ! 魔族!」
俺の真横を誰かが通り抜け、シュッと音がし、地面に重いものが落ちた。転がっていたそれは、俺の足に当たって止まる。……ベーヴェの頭だ。
「えっ」
「遅くなってすまない。二人とも、どうにか無事なようだな」
先ほど、めちゃくちゃ物騒な言葉を口にしていた我が国の王子様は、朗らかに笑いながら、剣でベーヴェの体をめった刺しにしていた。確実に殺すという意志が伝わってくるようだ。正直、魔族より怖い。
「陛下の方は陽動だと気付いてはいたのだが、モンスターの数が多くてね。処理に時間がかかってしまった。本当にすまなかったね」
どうやら本当の本当に助かったらしい。俺は呆然としている勇者様に笑いかけた後、ヘクトル様に視線を戻した。
「ヘクトル様、一つお願いがあります」
「なんでも言ってくれたまえ」
「倒れます」
「許そう。よくやった」
仰向けにぶっ倒れた俺に、勇者様が駆け寄る。
とても、とても長い一日だった……。
「すごいわね」
「この店はなにを食べても美味しいです!」
「本当においしいわ」
「あそこのおやっさんは、鎧作りでは王都一なんです!」
「綺麗な鎧ね」
「あの爺さんは魔法使いですが、たまに使う魔法を間違えます!」
「それは大丈夫なの?」
なにを話しても勇者様の反応は鈍く、表情はそんなに変わらない。たまにくすりと笑う程度だ。
しかし、この数日で気付いたのだが、顔に出ないだけで楽しんでくれているようだ。俺には勇者様の、微細な感情の変化が分かるようになってきていた。
この数日、勇者様に頼まれた通りに、色々なところを案内した。町や町の外だけでなく、城内のおすすめスポットも教えてもらい、そういった場所にもだ。
派手な催しなどは遠慮したい。そう言った勇者様のお言葉に合わせ、派手なことは何一つしていない。だがそれでも、俺は精一杯頑張ったつもりだ。
「とてもいい国ね……」
茜色の空の下。靡く髪を手ですかしながら、勇者様はそう言った。
先ほども言ったが、俺には勇者様の変化が分かるようになってきている。……だからこそ、すぐに分かってしまった。彼女の気持ちを変えることはできなかったのだと。
そのまま俺たちは、どちらからともなく歩き始め、玉座の間へと赴く。どこか期待した顔をしていた陛下は彼女を見て、ただ静かに頷いた。
「……準備は整っております。いつでも帰れますが、いかがいたしますかな?」
「では、ご迷惑でなければ明日の昼に。ちょうどあちらでは昼休みだったので、同じ時間に戻りたいと思います」
「かしこまりました」
勇者様は深々と頭を下げ、さらに告げた。
「それと、お力になれず申し訳ありません。この国は素晴らしい国です。誰もが優しく、守りたいと思うのは当然です。……ですが、わたしにはその力が有ったとしても、勇気がありません。本当に――」
「それ以上の言葉は必要ありません。そこまで真摯に考えていただけただけで、あなたが勇者として召喚されて良かった。ラックスよ、勇者様をお部屋にご案内してくれ」
「ハッ!」
玉座の間から勇者様へ先に出てもらった後、俺は両膝をついて、額を地面に叩きつけた。
こうする以外にできることが、謝罪する方法が思いつかなかったからだ。
「良い。早く行きなさい。怪しまれるぞ」
「……ハッ!」
最後に見た陛下の顔は、とても穏やかでありながら、決意を深めているようにも思えた。
勇者様を部屋にお連れし、他愛もない話をする。これが最後だと思えば、妙に胸が苦しくなった。
「ラックスさんには本当にお世話になりました」
「いえ、大したことは――」
答える途中で、城が大きく揺れて轟音が響き渡る。急ぎ、廊下へと出た。
通りがかった兵に声をかける。
「なにがあった!」
「分からん! 音は中庭のほうらしい! 我々は陛下の元へ向かう! ラックスは勇者様を宝物庫に連れて行け!」
「分かっ……らん! なぜ宝物庫!?」
「玉座の間の次に頑丈だからだ! 早くしろ!」
「なるほど、了解!」
言われた通りに勇者様を連れ、宝物庫へ向かう。その途中、ヘクトル様ともすれ違った。
「ヘクトル様!」
「魔族の襲撃だ! 勇者様に気付いたかは定かではないが、すぐに避難を!」
「宝物庫へ連れて行くよう言われております!」
「確かにあそこなら安全だ。見張りの者には、ヘクトルが許可を出したと伝えて入りたまえ!」
「そういえば許可をもらっていませんでした! ありがとうございます!」
「陛下を救出次第、僕もそちらに向かう。頼んだ!」
中庭へ向かうヘクトル様とは逆方向、宝物庫へ辿り着く。見張りにヘクトル様の名前を出すと、快く扉を開いてくれた。
二人で中へ入り、奥で明かりを灯す。薄っすらと周囲が映し出されたが、剣や鎧から、よく分からないものまで、色々と乱雑に置かれていた。
「……宝物庫って簡単に入れるの? それと、思っていたよりも物が少ないのね」
目を瞬かせている勇者様に、笑いながら答える。
「まさか、俺は始めて入りましたよ。それだけ大事にされているってことです」
「……」
勇者様は唇を絞り、胸元を握りしめている。責任を感じているのかもしれないが、勝手に呼び出したこちらが悪い。できれば気にしないでもらいたい。
彼女に背を向けて前に立ち、槍を強く握る。なにかあったとき、勇者様を守れるのは俺だけだ。気を緩めるわけにはいかない。
安心してもらおうと、振り向かずに勇者様へ声をかけた。
「まぁ大丈夫ですよ。敵の狙いは陛下のはずですから、こっちには来ません。宝物庫にある目ぼしいものは大体使ってしまったと聞きましたから、価値のある物は少ない。それに――」
「それに?」
ほんの少し気恥ずかしさを覚えながらも、俺は言葉を紡いだ。
「自分が、あなたを守ります」
「……膝、震えているわよ?」
「そこは見過ごしてください!」
強張った表情をしていた勇者様が、くすくすと笑ってくれている。それだけで、カッコつけた甲斐もあったというものだ。
後はヘクトル様たちが事態を片付けるのを、ゆっくりと待つだけ。大した仕事ではない。
『一歩下がれ』
その声は良く知っている声だった。いつも危機になると、短く伝えてくれる少女の声。俺は【妖精】さんと呼んでいる。
疑う余地などはなく、すぐに一歩下がった。
途端、なにかが破裂するような音が響き、目の前の壁になにか大きな物が刺さる。慌てて確認すると、それは頑丈な宝物庫の扉だった。
もう一歩前にいたら、と想像してしまい、唾を飲み込んだ。
「ゆ……ミサキ様、そこの陰に隠れてください」
無言のまま勇者様が頷き、俺は一度大きく深呼吸をした後、兜のバイザーを下ろしてから足を進ませた。名前で呼んだのは、勇者がいると気付かれないための配慮だ。
物影から覗き込むと、入口辺りには、周囲をキョロキョロと見ている人影。額には一本の角、青い肌、執事服。こいつが犯人だろうと、考えるまでもなく分かった。
相手に気を払いすぎてしまったのだろう。足元の瓦礫を蹴ってしまい、物音が鳴る。
当然の如く目が合うと、相手はニコニコと笑みを浮かべながら言った。
「やはりこちらが本命でしたか。初めまして、下級魔族のベーヴェと申します」
ベーヴェと名乗る魔族は静かに告げた後、頭を下げた。
魔族とはモンスターを統治する存在。そして魔族の中でも階級があり、下級は一番下だ。さらに上には中級、上級、貴族、王といるのだから、そういった点ではまだマシだろう。
しかし、ついている、などと考えてはならない。出会ってしまった時点で、俺たちの運は最悪だ。 もし魔族がその程度の相手であったのならば、この世界はこんなに追い詰められてはいないのだから。
うまく息を整えられぬまま、ベーヴェへ答える。
「ハジメマシテ。ワタシ、ジブン……チョット待ッテクレル?」
「五秒くらいなら」
「ドウモ」
割と親切な魔族に礼を告げ、五秒かけて息を整える。先ほどよりは幾分かマシになり、今度こそと口を開いた。
「魔族が泥棒とはな! 恥を知れ! ……後、初めまして!」
「盗むほど価値があるものは少ないように思えますが? ……それよりも、あなたの命のほうが、よっぽど価値がある。そうは思いませんか、勇者様?」
奥でガタリと物音。それを誤魔化すために、目の前に転がっている高そうな壺を蹴り飛ばした。派手に割れた。後で怒られるかもしれない。忘れよう。
少しやらかした気持ちのまま、ベーヴェの言葉を鼻で笑い飛ばしてやった。
「ハンッ! 勇者なんて伝説だけの存在を、まさか信じているのか?」
「えぇ、信じていますとも。『異世界勇者召喚術』。先日の異常な魔力反応。我々魔族もバカではありませんので」
鋭い目で見られ、背筋が冷たくなる。どうやら誤魔化すことはできないようだ。
ならばと、俺は兜の中で――ニヤリと笑った。
「ふっ、ふはっ、ふーっはっはっはっはっはっはっはっ! ゴホッゴホッ……。よ、よくぞ見抜いたな下級魔族! 我が名はミ、ミラ、ミラックス=ニノミヤ! この世界を救う運命を背負いし勇者様だ!」
危うくミサキ=ニノミヤと名乗ってしまうところだった。
しかし、ギリギリ誤魔化せたので問題は無い。なんせ、ベーヴェは信じてくれたみたいだからな。
その証拠に、ベーヴェは両手を握り合わせ、天を仰ぎ見ていた。
「やはり! やはりあなたが勇者! あぁ、他の魔族たちを騙し、先んじて良かった! これで手柄は独り占め。そうなれば、自分にも魔王としての権利が与えられる!」
他の魔族を騙して手柄を独り占め。とても小物臭がする。
だが、その後の意味が分からない。魔王は復活したと聞いているのに、魔王の権利とはどういうことだ?
いや、後で考えよう。今は時間稼ぎだけを――腹部に、そして背中に強い衝撃。体が前から地面に落ちた。
「……あなた、弱いですね。本当に勇者ですか?」
殴り飛ばされ、壁に叩きつけられたのだろう。強すぎるなんてもんじゃない。土下座して見逃してもらいたいくらいだ。
そんな弱音を押し殺し、槍を杖代わりにして立ち上がった。
今の俺は勇者ミラックス=ニノミヤ。変な名前で言い辛いが、とりあえず勇者だ。倒れているわけにはいかない。
「今度はこちらの番だ!」
訓練通りに槍を真っ直ぐに突き出す。だがベーヴェは避けることもせずに腹で受けた。
まさか仕留めた!? と思ったが大間違いだ。そもそもベーヴェには、避ける必要も無かったらしい。
穂先はベーヴェの執事服を貫くこともできず、ただ少し皺を寄せただけ。全力の一撃は、服すら破れぬものだった。
「まぁ、勇者でも召喚されて数日では、こんなものなんですかねぇ」
軽く払うようにベーヴェが手を動かす。たったそれだけのことで、俺の槍は先が無くなっていた。
「さっさと終わりにしましょうか」
ゆっくりとベーヴェが手を伸ばす。それを防ごうと剣を抜いて斬りつけたが、同じく払われ、剣は後方へと飛んで行った。
「ひゃっ」
「ん?」
「ひゃあああああああああああああああ!」
思い切り叫び声を上げる。
ご、誤魔化せたかな? ドキドキしながら顔を窺ったのだが、ベーヴェはニタァと笑っていた。
「もう一人いたんですね。そうか、そういうことですか。あなたは弱すぎると思ったんですよ! そっちが勇者ですかぁ!」
――バレた。
勇者様は立ち上がることもできず、ズリズリと後ろへ下がって行く。もうバレているのであれだが、それならまだ物影で動かないほうがマシだ。
「う、うおおおおおおおおおおおお!」
抱き着いて動きを止めようと、真っ直ぐ走り出す。それに対し、ベーヴェは腕を振るった。
「邪魔です」
しかし、それは予想できていた。
身を屈めて潜り抜け、ベーヴェの腰に抱き着く。本当はそのまま押し倒すつもりだったが、ビクともしない。化物め。
「ちょ、邪魔ですって。もうあなたに興味はありませんから」
「勇者様! 逃げてください!」
「で、でも」
「いいから逃げふっ! 俺たちの身勝手で呼び出して、さらに死なれたら最悪じゃないか! ヘクトル様と合流しがはっ! 急いで元の世界に返してもらえぶふぁっ!」
「ですから邪魔ですって」
言葉を告げるたった数秒の間に、何度も、何度も鎧の上から殴られた。
その度に強い衝撃があり、鎧がへこんでいることが分かる。口から吐き出しているものも食事や胃液だけではなく、血が混じっていると分かっていた。
――だがそれでも、この手を放すことはできない。
ようやく立ち上がった勇者様が逃げ出すまでは、絶対に止めなければならない。
そんな決死の覚悟を持った俺に対し、ベーヴェは呆れたように息を吐いた。
「あなた今、勇者を返すって言っていましたよね? まさか、送り返すって意味ですか? 冗談ですよね? 他に縋れるものがなく、国の全てを賭けて呼び出した勇者を、本気で送り返すつもりですか?」
「……え?」
「聞かないでください!」
足を止めてしまった勇者様に叫ぶ。だが、ベーヴェは勇者様の異変に気付いたのだろう。機を得たとばかりに話を続け、勇者様も聞いてしまっていた。
「えぇ、本当に驚きですよ。そもそも勇者を呼び出す余力が、ミューステルム王国には無い! に・も・関・わ・ら・ず! 勇者を呼び出した。世界のために! さすがはお人好し国家! しかも勇者の事情を尊重して送り返すとは、もうお人好しどころか、ただのバカですねぇ!」
勇者様は目を見開き、口元に手を当てている。
ベーヴェは高笑いをして、とても楽しそうにしていた。
……ただ一人、不愉快でしょうがない俺は、両足まで使ってベーヴェにしがみつく。まるで子供のような抱き着き方で情けない。
だが怒りのせいか、痛みが和らいでいるような気がした。
「ちょ、まだ続ける気ですか!? あなた一人くらいなら見逃してあげてもいいですから、さっさと離れてください!」
「……っ」
絶対に離れないぞ、と力を振り絞る。
だがそんな俺に対し、勇者様が言った。
「ラックスさん……。もういいから、逃げて」
「ほら、勇者もこう言って」
「断る!」
お前の言うことなんて聞いてたまるか。
引き剥がそうとしているベーヴェに抗っていると、勇者様が泣きそうな声で言う。
「どうして……。たった数日間、一緒にいただけの他人じゃない! わたしの気が変わるのを待っているの? それとも、責任を感じているから!?」
確かにそういった気持ちがゼロだとは言わない。だが、一番大事なのはそこじゃないんだ。言いたくないし、俺のことはいいから逃げてほしい。なのに、勇者様はどうしても逃げてくれない。
だから仕方ないと、叫ぶように本音を告げた。
「俺が! あなたを守ると! 言ったじゃないか! ……くそっ! 口に出しちゃったらカッコ悪いじゃないですか! 言わせないでくださいよ、恥ずかしい!」
恐らく顔は真っ赤だろう。バイザーで隠れていて本当に良かった。
さぁ、これで心残りはないだろう。逃げてくれ、勇者様。後は俺が、どうにか時間を稼ぐ。そして勇者様は、君は元の世界に帰る。それで、全て終わりだ。
なぜか殴るのを止めていたベーヴェが感心した声で言う。
「カッコいいじゃないですか。雑魚扱いしていたことを謝罪しますよ」
「そりゃどうも! ついでに二人とも見逃してもらえないかね!?」
「残念ながら、二人とも見逃せませんねぇ」
背筋がゾクリとする。顔を上げると、笑み一つ無いままベーヴェは片手を上げていた。
その片腕には黒いなにかが纏わりついており、見るだけでヤバいと分かる。
防ぐことはできない。避けなければならない。だがあれを避ける技量が俺には無い。
そして食らえば必ず死ぬ。あれは、そういった一撃だと頭が理解していた。
「さようなら、誇り高き一兵士」
「逃げて、勇者様!」
振り下ろされようとしている腕には目もくれず、勇者様へ叫ぶ。
だが目にした彼女は、逃げようとしていなかった。
震えながらも剣を拾い上げ、強く握り、目からは涙が零れ――地面へ落ちるよりも早く、駆けていた。
「――やあああああああああああああ!」
地面へポタリと涙が落ち、丸い染みを作る。同時にベーヴェの腕も落ち、地面を紫色の血で染め上げていた。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ベーヴェが叫び声を上げる。暴れ出したので慌てて離れると、俺の元へ勇者様が近づいて来た。
「ラックスさん! 大丈夫!?」
「それはこっちの台詞です! ……でも良かった。よし、今なら大丈夫です。俺のことはいいから、早く逃げてください!」
「逃げるなら二人一緒よ!」
離れるので精一杯だった俺に、立ち上がる力は残っていない。それを理解していたのだろう。勇者様は肩を貸してくれ、二人で逃げようとしていた。
引きずられているような状態で体を進ませ、宝物庫の扉の近くまで辿り着く。
だが、ベーヴェが正気を失っていたのは、そこまでだった。
「オノレ、オノレェ! 勇者アアアアアアアアアアア!」
いや、明らかにまだ正気では無い。腕を失ったショックが大きかったのだろう。弓で放たれたかのように、こちらへ突撃して来た。
……まぁ、一度は捨てた命だ。
俺は勇者様を突き飛ばし、笑いかけた。さようなら、ありがとう、勇者様。
「ラックスさ――」
「――死ねぇっ! 魔族!」
俺の真横を誰かが通り抜け、シュッと音がし、地面に重いものが落ちた。転がっていたそれは、俺の足に当たって止まる。……ベーヴェの頭だ。
「えっ」
「遅くなってすまない。二人とも、どうにか無事なようだな」
先ほど、めちゃくちゃ物騒な言葉を口にしていた我が国の王子様は、朗らかに笑いながら、剣でベーヴェの体をめった刺しにしていた。確実に殺すという意志が伝わってくるようだ。正直、魔族より怖い。
「陛下の方は陽動だと気付いてはいたのだが、モンスターの数が多くてね。処理に時間がかかってしまった。本当にすまなかったね」
どうやら本当の本当に助かったらしい。俺は呆然としている勇者様に笑いかけた後、ヘクトル様に視線を戻した。
「ヘクトル様、一つお願いがあります」
「なんでも言ってくれたまえ」
「倒れます」
「許そう。よくやった」
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