35 / 51
第二章
5-2 厄介ごとを惹きつける、よくありがちな体質
しおりを挟む
ベーヴェに案内されるまま進むこと数日。
辿り着いた先は、一見すると普通の農村だった。
「あぁ、補給に寄ったのね。補給はできるときにするべきだ、ってなにかで読んだことがあるわ」
「慧眼です、勇者様!」
勇者様は補給の大切さを分かっていらっしゃる。特に速度が求められているわけでもないのだから、物資は余裕を持って補充していくべきだろう。
感心していると、ベーヴェが笑いながら村へ向かって歩き出す。慌てて肩を掴んで止めた。
「待て待て。まだお前に死なれたら困る。普通に村へ入ろうとするな」
「……今、まだって言いませんでしたか?」
「気のせいだ」
ベーヴェはめちゃくちゃ不服そうだったが、手を開いて説明をしてくれた。
「まぁ面倒なので端的に言いますが、この村と我々は協力関係にあります。というか、この村には戦いたくない魔族と、それに同調した人間が住んでいるのですよ」
「ハッハッハッ、なんだそれ、面白いな」
「冗談じゃありませんからね!?」
冗談じゃないんですか? と勇者様を見る。勇者様が、冗談じゃないの? とエルを見る。エルは、うむ、と頷いた。
いまだ信じられないまま、ベーヴェを先頭にして後へ続く。もしかしたら罠の可能性もあるのではと、周囲を警戒していた。
しかし、予想に反してなにも起きず、誰かに声をかけられることすらないまま村の奥へ進む。そしてやけに大きな扉の小屋の前で止まった。……いや、これはどちらかと言えば馬小屋などの類ではないだろうか?
「馬小屋の、中にあるのは、転移点」
勇者様は、なにか語感の良い言葉を口にして、満足げに頷いていた。
「後は季語をいれれば完璧ね」
よく分からないが、少し足りないらしい。学のある人の考えは難しいものだ。
「まぁ見た目は馬小屋ですが、中に馬は……馬がいますね!?」
このベーヴェというやつは、一人でなにを遊んでいるのか。面白いやつだなと見ていたら、彼は一人慌てながら奥へ行き、ホッとした顔を見せた。
「ちゃんとここは空いていたようですね。それにしても、先日使ったときは馬がいなかったのですが……」
「……見て分かる場所に転移点があるのは良くない。使用されると分かれば、当然、隠蔽くらいはするだろう」
「姉上の仰る通りです。村のものたちグッジョブですね」
薄々思ってはいたのだが、このベーヴェという男は、姉の意見を肯定するだけである。決して逆らわず、否定をしない。なんとも都合の良いやつだ。
男児として情けなくないのか、それでも忠臣かと、少しだけ憐れんでしまった。
「いや、ラックス。お主も人のことを言えんぞ……?」
「エル? 俺がなんだって?」
「……そうか、自分では気付いていないのだな」
なぜだ。心を読んだらしいエルは、憐れむように俺を見ている。オロオロしながら勇者様を見ると、似た顔をしていた。
え? もしかして、俺もあいつと同じようなところがあるの? 憐れまれちゃう感じ?
そんなはずはない、と勇者様を真っ直ぐに見た。
「自分は、ベーヴェとは違います」
「ラックスさん。お手」
「なにかの遊びですか? はい」
「お座り」
「……?」
「右手上げ、左手上げ、左手下げ、右手下げ」
よく分からないまま言われた通りにしていると、勇者様に頭をわしゃわしゃと撫でられた。
「ベーヴェよりは可愛げがあるわね!」
「うむ、ベーヴェよりは可愛げがあるな」
「どうしてあいつと比べるんですか!?」
なにか釈然としない感じで、俺は眉間に皺を寄せる。理由は結局分からなかった。
そんな間にも奥でなにかをしていたベーヴェが、こちらを呼んだ。
「準備が整いましたよ」
「ほうほう……ほう?」
そこには、歪んだ水面のような壁があった。触れれば吸い込まれ、もう二度と出てこられない。見ているだけで、そういった錯覚を覚える。
一歩後ずさると、ベーヴェが嬉しそうに笑った。
「おっやぁ? もしかして怖いんですか? 分かります、分かりますよ。未知を恐れるのは当然のことです。手を繋いで一緒に通り抜けてあげましょうか!? なんなら勇者、も……」
物凄い勢いで煽ってきたベーヴェは、前を見て唖然としていた。視線の先を追って、俺も同じように唖然とした。
――そこには、平然と腕を突っ込んでは引っ込める勇者様の姿があったからだ。
「へぇー! これがよくゲームとかであるやつね。興味深いわ! 距離はどれくらいまでいけるのかしら? 時間はどれくらいかかるの? 高さや重量の制限は? 無制限にいけるのかしら?」
あのよく分からないものを潜ったら、暗黒大陸へ辿り着く。それってなにか、こう、物凄い怖くないだろうか?
俺はそう思っているのに、勇者様は新しい玩具を見つけた童の如く笑っていた。
そうか、とここで気づく。
勇者様は、一度似たような経験をしているではないか。……そう、異世界転移だ。
一人納得し、勇者様の後ろへ立った。
「では、行きましょう。このラックス。不肖の身ながら、どこまでもお供させていただきます」
「えぇ、行きましょう! 楽しみだわ!」
あ、あれぇ? もしかして、俺はなにか勘違いをしていないだろうか? どうにも勇者様は心の底から楽しんでいるように思える。
同じことを疑問に思ったのか、エルが言った。
「ミサキのいた異世界には、転移点のようなものがすでにあったのかもしれんな」
「それか!」
「え? 無いわよ?」
エルの言葉に納得したが、勇者様に即否定された。
一体どういうことだ? ほとほと不思議だったのだが、勇者様が後ろへ回り、俺の背中を押し出した。
「早く行きましょう! ワープよワープ! 旅の扉よ! どんな風になるのか楽しみだったの!」
「お、押さないでください! お願いです! 押さないで!」
「……あのね、ラックスさん」
「なんですか!? とりあえず押すのをやめて話し合いましょう! 別にビビッているわけではありませんけどね!」
「わたしの世界では、『押すなよ』は『押せ』って意味にもなるのよ。それぇ!」
「そんな世界あるはずないでしょおおおおおおおおおおおお!?」
反論空しく背中を突き飛ばされ、揺らめく水面のような鏡に似たなにかへ体が入り込む。
ずぶり、ではない。薄い膜を潜り、空気や質感の違う場所へ入った感触。背筋がゾッとして鳥肌が立つ。
……そして、見知らぬ声が聞こえた。
「――あれぇ? 人間ですかぁ?」
どこか抜けた明るい声。周囲に一人はいる、いつも笑っていて、みんなを和ませるタイプだ。
姿は見えない。だが声は聞こえる。
「ここ、空間の狭間なんですよぉ。わたくし、たまにここで休憩しているんですぅ。一人になるには最適ですよねぇ。……でも、わたくしたち以外に、魔族でも使っている人がいるんですよねぇ。あれ? 人間が通ったことはあったかなぁ? うーん、覚えてないですぅ」
この空間はほぼ白く、所々に赤や青に緑と様々な色が点在している。彼女の姿が見えない理由は分からないが、輪郭だけはおぼろげに分かる感じだった。
「背中に、四枚の羽根……?」
人と似たような形。だが背の羽根だけが、決定的に違うことを示している。
彼女はにんまりと笑った――気がした――後、背の羽根を一枚抜いて、俺の兜へ差した。
「幸運のお守りですぅ。あなたに祝福あれ。……大事にしてくださいねぇ?」
「あぁ、うん……? ありがとう?」
「それでは引き留めるのもあれなので、さよならしますぅ。良き旅路を。ばいばーぃ」
ほんの少し体が押され、彼女から離れて行く。手を振っている少女は、一体何者だったのか――。
「ラックスさん!」
「はい! かしこまりました!」
目を開き、勇者様に答える。なにをかしこまったのかは分からないが、とりあえずかしこまっておいた。
「大丈夫? ラックスさんとエルだけ、中々出て来ないから心配したのよ?」
「これはご心配をおかけしました。しかし、なにも問題はありません。少し夢見心地ではありましたが……あれ?」
答えつつ、兜に触れて気付く。滑らかな肌触りをした柔らかい羽根が、兜へ刺さっていた。
「それは……っ!」
「落ち着け、ベーヴェ」
「しかし!」
「良い。……それより、これを使うこともできるのではないか?」
「なるほど、さすが姉上です」
この姉弟は二人で訳の分からない話をして、勝手に納得をしていた。
勇者様も不思議そうに羽根へ触れ、顔をほころばせる。
「柔らかくて、温かいわね」
「えぇ、そうですね。幸運のお守りと言ってくれました」
「へぇー……。えっ、誰が?」
「さぁ……」
そういえば名前も聞いていなかったなぁと思ったところで、勇者様がハッとした表情で言った。
「まさか、有翼人!?」
「大当たりだ。いい読みをしているな、ミサキ」
え? どうして有翼人がいたんだ? そして、なぜ俺に羽根を?
困惑していると、エルが言った。
「どうやらラックスは惹きつけるところがあるようだな」
「惹きつける? なにをだ?」
俺の問いに対し、彼女は鼻を鳴らして答える。
「――厄介ごとを、だ」
ベーヴェとオルベリア以外に厄介ごとを惹きつけたことがあっただろうか?
「よくあるやつね! 分かるわ!」
勇者様は腕を組み納得していたが、俺はよく分からず、首を傾げるのだった。
辿り着いた先は、一見すると普通の農村だった。
「あぁ、補給に寄ったのね。補給はできるときにするべきだ、ってなにかで読んだことがあるわ」
「慧眼です、勇者様!」
勇者様は補給の大切さを分かっていらっしゃる。特に速度が求められているわけでもないのだから、物資は余裕を持って補充していくべきだろう。
感心していると、ベーヴェが笑いながら村へ向かって歩き出す。慌てて肩を掴んで止めた。
「待て待て。まだお前に死なれたら困る。普通に村へ入ろうとするな」
「……今、まだって言いませんでしたか?」
「気のせいだ」
ベーヴェはめちゃくちゃ不服そうだったが、手を開いて説明をしてくれた。
「まぁ面倒なので端的に言いますが、この村と我々は協力関係にあります。というか、この村には戦いたくない魔族と、それに同調した人間が住んでいるのですよ」
「ハッハッハッ、なんだそれ、面白いな」
「冗談じゃありませんからね!?」
冗談じゃないんですか? と勇者様を見る。勇者様が、冗談じゃないの? とエルを見る。エルは、うむ、と頷いた。
いまだ信じられないまま、ベーヴェを先頭にして後へ続く。もしかしたら罠の可能性もあるのではと、周囲を警戒していた。
しかし、予想に反してなにも起きず、誰かに声をかけられることすらないまま村の奥へ進む。そしてやけに大きな扉の小屋の前で止まった。……いや、これはどちらかと言えば馬小屋などの類ではないだろうか?
「馬小屋の、中にあるのは、転移点」
勇者様は、なにか語感の良い言葉を口にして、満足げに頷いていた。
「後は季語をいれれば完璧ね」
よく分からないが、少し足りないらしい。学のある人の考えは難しいものだ。
「まぁ見た目は馬小屋ですが、中に馬は……馬がいますね!?」
このベーヴェというやつは、一人でなにを遊んでいるのか。面白いやつだなと見ていたら、彼は一人慌てながら奥へ行き、ホッとした顔を見せた。
「ちゃんとここは空いていたようですね。それにしても、先日使ったときは馬がいなかったのですが……」
「……見て分かる場所に転移点があるのは良くない。使用されると分かれば、当然、隠蔽くらいはするだろう」
「姉上の仰る通りです。村のものたちグッジョブですね」
薄々思ってはいたのだが、このベーヴェという男は、姉の意見を肯定するだけである。決して逆らわず、否定をしない。なんとも都合の良いやつだ。
男児として情けなくないのか、それでも忠臣かと、少しだけ憐れんでしまった。
「いや、ラックス。お主も人のことを言えんぞ……?」
「エル? 俺がなんだって?」
「……そうか、自分では気付いていないのだな」
なぜだ。心を読んだらしいエルは、憐れむように俺を見ている。オロオロしながら勇者様を見ると、似た顔をしていた。
え? もしかして、俺もあいつと同じようなところがあるの? 憐れまれちゃう感じ?
そんなはずはない、と勇者様を真っ直ぐに見た。
「自分は、ベーヴェとは違います」
「ラックスさん。お手」
「なにかの遊びですか? はい」
「お座り」
「……?」
「右手上げ、左手上げ、左手下げ、右手下げ」
よく分からないまま言われた通りにしていると、勇者様に頭をわしゃわしゃと撫でられた。
「ベーヴェよりは可愛げがあるわね!」
「うむ、ベーヴェよりは可愛げがあるな」
「どうしてあいつと比べるんですか!?」
なにか釈然としない感じで、俺は眉間に皺を寄せる。理由は結局分からなかった。
そんな間にも奥でなにかをしていたベーヴェが、こちらを呼んだ。
「準備が整いましたよ」
「ほうほう……ほう?」
そこには、歪んだ水面のような壁があった。触れれば吸い込まれ、もう二度と出てこられない。見ているだけで、そういった錯覚を覚える。
一歩後ずさると、ベーヴェが嬉しそうに笑った。
「おっやぁ? もしかして怖いんですか? 分かります、分かりますよ。未知を恐れるのは当然のことです。手を繋いで一緒に通り抜けてあげましょうか!? なんなら勇者、も……」
物凄い勢いで煽ってきたベーヴェは、前を見て唖然としていた。視線の先を追って、俺も同じように唖然とした。
――そこには、平然と腕を突っ込んでは引っ込める勇者様の姿があったからだ。
「へぇー! これがよくゲームとかであるやつね。興味深いわ! 距離はどれくらいまでいけるのかしら? 時間はどれくらいかかるの? 高さや重量の制限は? 無制限にいけるのかしら?」
あのよく分からないものを潜ったら、暗黒大陸へ辿り着く。それってなにか、こう、物凄い怖くないだろうか?
俺はそう思っているのに、勇者様は新しい玩具を見つけた童の如く笑っていた。
そうか、とここで気づく。
勇者様は、一度似たような経験をしているではないか。……そう、異世界転移だ。
一人納得し、勇者様の後ろへ立った。
「では、行きましょう。このラックス。不肖の身ながら、どこまでもお供させていただきます」
「えぇ、行きましょう! 楽しみだわ!」
あ、あれぇ? もしかして、俺はなにか勘違いをしていないだろうか? どうにも勇者様は心の底から楽しんでいるように思える。
同じことを疑問に思ったのか、エルが言った。
「ミサキのいた異世界には、転移点のようなものがすでにあったのかもしれんな」
「それか!」
「え? 無いわよ?」
エルの言葉に納得したが、勇者様に即否定された。
一体どういうことだ? ほとほと不思議だったのだが、勇者様が後ろへ回り、俺の背中を押し出した。
「早く行きましょう! ワープよワープ! 旅の扉よ! どんな風になるのか楽しみだったの!」
「お、押さないでください! お願いです! 押さないで!」
「……あのね、ラックスさん」
「なんですか!? とりあえず押すのをやめて話し合いましょう! 別にビビッているわけではありませんけどね!」
「わたしの世界では、『押すなよ』は『押せ』って意味にもなるのよ。それぇ!」
「そんな世界あるはずないでしょおおおおおおおおおおおお!?」
反論空しく背中を突き飛ばされ、揺らめく水面のような鏡に似たなにかへ体が入り込む。
ずぶり、ではない。薄い膜を潜り、空気や質感の違う場所へ入った感触。背筋がゾッとして鳥肌が立つ。
……そして、見知らぬ声が聞こえた。
「――あれぇ? 人間ですかぁ?」
どこか抜けた明るい声。周囲に一人はいる、いつも笑っていて、みんなを和ませるタイプだ。
姿は見えない。だが声は聞こえる。
「ここ、空間の狭間なんですよぉ。わたくし、たまにここで休憩しているんですぅ。一人になるには最適ですよねぇ。……でも、わたくしたち以外に、魔族でも使っている人がいるんですよねぇ。あれ? 人間が通ったことはあったかなぁ? うーん、覚えてないですぅ」
この空間はほぼ白く、所々に赤や青に緑と様々な色が点在している。彼女の姿が見えない理由は分からないが、輪郭だけはおぼろげに分かる感じだった。
「背中に、四枚の羽根……?」
人と似たような形。だが背の羽根だけが、決定的に違うことを示している。
彼女はにんまりと笑った――気がした――後、背の羽根を一枚抜いて、俺の兜へ差した。
「幸運のお守りですぅ。あなたに祝福あれ。……大事にしてくださいねぇ?」
「あぁ、うん……? ありがとう?」
「それでは引き留めるのもあれなので、さよならしますぅ。良き旅路を。ばいばーぃ」
ほんの少し体が押され、彼女から離れて行く。手を振っている少女は、一体何者だったのか――。
「ラックスさん!」
「はい! かしこまりました!」
目を開き、勇者様に答える。なにをかしこまったのかは分からないが、とりあえずかしこまっておいた。
「大丈夫? ラックスさんとエルだけ、中々出て来ないから心配したのよ?」
「これはご心配をおかけしました。しかし、なにも問題はありません。少し夢見心地ではありましたが……あれ?」
答えつつ、兜に触れて気付く。滑らかな肌触りをした柔らかい羽根が、兜へ刺さっていた。
「それは……っ!」
「落ち着け、ベーヴェ」
「しかし!」
「良い。……それより、これを使うこともできるのではないか?」
「なるほど、さすが姉上です」
この姉弟は二人で訳の分からない話をして、勝手に納得をしていた。
勇者様も不思議そうに羽根へ触れ、顔をほころばせる。
「柔らかくて、温かいわね」
「えぇ、そうですね。幸運のお守りと言ってくれました」
「へぇー……。えっ、誰が?」
「さぁ……」
そういえば名前も聞いていなかったなぁと思ったところで、勇者様がハッとした表情で言った。
「まさか、有翼人!?」
「大当たりだ。いい読みをしているな、ミサキ」
え? どうして有翼人がいたんだ? そして、なぜ俺に羽根を?
困惑していると、エルが言った。
「どうやらラックスは惹きつけるところがあるようだな」
「惹きつける? なにをだ?」
俺の問いに対し、彼女は鼻を鳴らして答える。
「――厄介ごとを、だ」
ベーヴェとオルベリア以外に厄介ごとを惹きつけたことがあっただろうか?
「よくあるやつね! 分かるわ!」
勇者様は腕を組み納得していたが、俺はよく分からず、首を傾げるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる