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第二章
32:スタンピード
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魔石エンジンの作動音が鳴り響く中、錬は汗の滲む手でハンドルを握っていた。
沈みゆく夕陽の中、風が草の匂いを運んで来る。川が近いせいだろう、空気には湿気が含まれていた。
「もうじきマーサ・ローダン橋が見える頃です」
ノーラが大きなポーチから単眼鏡を出し、覗く。
「人の名前みたいな橋だな」
「過去の偉人の名前から付けられたものですから。交易の要衝となるアーチ橋を架けた偉人マーサと、それに協力した盗賊の首領ローダンの二人ですね」
「盗賊が偉人なのか?」
「偉人マーサによって改心したんです。童話にもなっていますよ」
「やれやれ、そんな事も知らんとは学のない男だ」
カインツが嫌味ったらしく言ってくる。
「知らなくて悪かったな……」
「偉大なるマーサ様とローダンに感謝しながら橋を渡るがいい」
「はいはい、感謝しますよ」
ふてくされながら言うと、ジエットが苦笑した。
「その話なら知ってるけど、マーサはその後シャルドレイテを名乗って、侯爵になったんだよね」
「お前の先祖かよ!? 感謝して損した!」
「なっ……無礼だぞ貴様!?」
「お二人とも落ち着いてください……。スタンピードの最中ですよ」
「そうは言っても何もいないしなぁ」
王都の最外壁の門を出てしばらく経ったが、拍子抜けするほど何も起きない。本当にスタンピードが起きているのかと疑うほどだ。
「気を抜かないでください。魔獣はいます」
ノーラが緊張をはらむ声音で告げた。
「スタンピードが起きてまだそう時間が経っていませんし、川があるのでこちら側に渡ってきた魔獣は少ないんでしょう」
「そうは言ってもな……。ずっと警戒してたんじゃ疲れてしょうがない」
「すべてを警戒する必要はありません。危険な魔獣は数多くいますけど、スタンピードの今特に気を付けるべきはあの大砂蟲を除くと、森狼、岩猪、それから小鬼の三種類です」
そう言って指を三本立てる。
「森狼は騎竜より速く走り、群れで襲ってくる危険な魔獣です。岩猪は突進するだけなので危険度は高くありませんが、ぶつかれば竜車は一撃でバラバラにされるでしょう。中でも一番気を付けないといけないのは小鬼です」
「どういう奴なんだ?」
「小鬼は――」
「……いる!」
話をぶった切るようにジエットが叫ぶ。
指で示す先には石造りの大きなアーチ橋があった。
こちら側には杖と本を手にした女性、反対側には剣と盾を持つ男性の石像がそれぞれ設置されている。手前にあるのが偉人マーサを象ったものなのだろう。
「ギギィ……ッ!」
耳障りな声を発した直後、草むらから複数の人影が飛び出す。
姿を現したのは、茶色い肌をした子どものような何かだった。
「人間……?」
「エルト・ラ・バルセタ・オーラ・フロギス!」
刹那、視界が炎に染まった。石橋の周囲が爆炎に飲まれ、人影を消し飛ばす。
錬のすぐそばでは、カインツが短杖を構えていた。
「おい……!? あれいいのか!?」
「あれとは何だ?」
「いや、さっき子どもみたいなのが複数……」
「小鬼の事か? それなら問題ない。文句があるならこれを見ろ」
カインツが親指で自動車の壁を指し示す。
そこには棒が一本突き立っていた。
木の枝に尖った石や羽根を括り付けただけの粗雑な作り。だが間違いないそれは矢だ。
「攻撃されてたのか……」
「そういう事だ。面倒な事になる前にまとめて焼き払った方がいい」
「カインツ様の仰る通りです」
ノーラが足元から顔を出して言う。どうやら隠れていたようだ。
「小鬼は足が遅くて力も人間に劣り、単体だと弱いです。でも魔獣にしては頭が良く、森狼に乗って棍棒や弓矢を使い、ごくまれに詠唱魔法を使う個体もいる危険な魔獣です。普段は森の奥深くに集落を作っているので人里まではあまり出てきませんが、スタンピードで住処を追われて人家を襲う例が数多く報告されています」
「集落を作れるほどの知能があるなら、共存はできないのか?」
「人を好んで食べる種族と共存はさすがに……」
「人を食うのか……」
思わず錬は身震いする。
「小鬼相手に対話を試みたり、捕まえて飼い慣らそうとしたりした記録を学園の図書館で読んだ事がありますけど、どれも失敗に終わっています。自分より格下と見れば親兄弟すら奴隷にするという話ですから、もし共存するなら人間か小鬼のどちらかが奴隷、もしくは家畜になるんじゃないでしょうか」
「なるほど……」
魔力なしの同族や獣人達を平然と奴隷にする人間がとやかく言えたものではないが、少なくとも小鬼と友達にはなれそうもない。
幸いにも石橋に損傷はなかった。二つの石像も変わらずそびえている。
「あんな爆発があってよく壊れなかったな」
「それだけ頑丈な造りなんでしょう。交易の要衝なので簡単に壊れると困りますしね」
「魔獣の群れが来たよ!」
マーサ・ローダン橋を渡りきったところでまたもジエットが声を上げた。
薄闇の向こうから獣の唸り声や足音が響いてくる。
「あれは岩猪です!」
たしかに一見すると猪である。しかし目は一つしかなく、額に顔の半分を占めるほどのごつい角が生えていた。
「いかにも魔獣って感じだな!」
「囲まれたぞ! 一旦引き返すか!?」
カインツの言う通り、前方は埋め尽くすような岩猪の群れだ。逃げ道は元来た石橋しかない。
だがノーラはまっすぐ前を指差した。
「下がってもこの先へは進めません! それならいっそ突っ切りましょう!」
「本気か貴様、大丈夫なんだろうな!?」
「岩猪はあたし達を狙っているというより、ただ暴走しているだけです! レンさんの魔石銃があればいけます!」
「信頼どうも! ぶつかりそうな奴だけ倒していくぞ!!」
錬はハンドルを片手に魔石銃のトリガーを引き絞った。燃え盛る円輪が前方の岩猪を吹き飛ばす。ジエットも隣で援護射撃し、敵を消し炭に変えてゆく。
だが群れの数が凄まじい。
よく見れば岩猪だけでなく、目が四つもある狼や頭部がトゲトゲの蝙蝠、人間サイズの巨大な蜘蛛などなど、様々な魔獣が混じっている。
「おいおい……いくらなんでも多すぎないか!?」
「魔樹の森に住んでいた魔獣の大部分が逃げてきたのでしょうね……」
「何匹かこっちに来るよ!?」
ジエットに言われて見ると、四つ目の狼達がこちらへ進路を変えていた。
「森狼です! 素早いので気を付けてください!」
数にすればたかだか十数匹だが、その足は異様なほどに速い。魔獣達の隙間を縫うように駆け抜け、瞬く間に後ろに付かれた。前から魔獣、後ろから森狼だ。
「挟み撃ちされたぞ! カインツ、後ろを頼む!」
「様を付けろ、無礼者が! エルト・ラ・シュタル・ダーテス・ウィンダーレ!」
スコールのように風の矢が敵群に降り注いだ。岩猪達の悲鳴が草原に消え、血しぶきと共に死骸が転がる。
だが森狼には一発も当たっていない。魔法を放った瞬間に避けているのだ。
「ならばこうだ! エルト・ル・パステ・ウォーラ・フロギス!」
カインツの魔法で後方に炎の壁が生み出された。
けれど森狼は炎の壁へためらいなく飛び込み、火がつく間もなくすり抜けてくる。
風や水の壁も試すが、それらをものともせず突破される。足が速すぎて物理障壁でないと止められないのだ。
「おい、土魔法は使っていいのか!?」
「いけませんカインツ様! 土魔法は大砂蟲を呼び寄せる可能性があります!」
「ならばどうする!?」
「さっき橋でやったみたいに爆発の魔法で吹き飛ばしたらどうだ!?」
「死にたいのか貴様!? こんなボロ車が至近距離で僕の爆発魔法に耐えられるわけ――」
会話を遮るようにして、森狼が後部座席に飛び乗ってきた。
四つの目を向けられ、ノーラが青ざめる。
「チィッ……!!」
カインツが慌てて金の短杖を構えたが、しかしここで魔法を使えば自動車がバラバラになりかねない。
そんな一瞬の迷いを好機と踏んだのだろう。森狼はノーラの喉笛を引き裂かんと牙を剥いて襲い掛かる。
「グルォォォォッ!!」
「ひ……っ!?」
「ギャンッ!?」
――森狼がぶっ飛んだ。
外れたあごからよだれをまき散らし、毛むくじゃらの体が車外へと放り出される。
ノーラの前には、ガウンを着た半獣の少女が右手を構えて立っていた。
ジエットがフルスイングでビンタをかましたのだ。
「はぁっ……はぁっ……」
「二人とも大丈夫か!?」
錬の問いかけにも応えず、ジエットは肩を上下させている。よほど必死だったのだろう。おかげで誰も怪我はなさそうだ。
ならばと後続の敵襲を警戒するも、追撃はなかった。魔獣の群れを抜け、十数匹いた森狼も散り散りになる。
「何とかなったか……」
安堵の息をつき、錬は額の汗を拭う。
カインツも短杖を下ろし、鼻を鳴らした。
「奴ら諦めたようだな。さては半獣女に恐れをなしたか」
「あ、あのね、これは違うの……」
わたわたと慌てるジエットだが、皆口々に褒めそやす。
「謙遜するな。先ほどの平手打ちは見事だったぞ」
「そうだな。あの素早い森狼に一撃食らわせるとは大したもんだよ」
「ジエットさんすごいです……!」
「あぅぅ……」
ジエットは真っ赤になった熊耳を手で隠すようにしてうずくまるのだった。
沈みゆく夕陽の中、風が草の匂いを運んで来る。川が近いせいだろう、空気には湿気が含まれていた。
「もうじきマーサ・ローダン橋が見える頃です」
ノーラが大きなポーチから単眼鏡を出し、覗く。
「人の名前みたいな橋だな」
「過去の偉人の名前から付けられたものですから。交易の要衝となるアーチ橋を架けた偉人マーサと、それに協力した盗賊の首領ローダンの二人ですね」
「盗賊が偉人なのか?」
「偉人マーサによって改心したんです。童話にもなっていますよ」
「やれやれ、そんな事も知らんとは学のない男だ」
カインツが嫌味ったらしく言ってくる。
「知らなくて悪かったな……」
「偉大なるマーサ様とローダンに感謝しながら橋を渡るがいい」
「はいはい、感謝しますよ」
ふてくされながら言うと、ジエットが苦笑した。
「その話なら知ってるけど、マーサはその後シャルドレイテを名乗って、侯爵になったんだよね」
「お前の先祖かよ!? 感謝して損した!」
「なっ……無礼だぞ貴様!?」
「お二人とも落ち着いてください……。スタンピードの最中ですよ」
「そうは言っても何もいないしなぁ」
王都の最外壁の門を出てしばらく経ったが、拍子抜けするほど何も起きない。本当にスタンピードが起きているのかと疑うほどだ。
「気を抜かないでください。魔獣はいます」
ノーラが緊張をはらむ声音で告げた。
「スタンピードが起きてまだそう時間が経っていませんし、川があるのでこちら側に渡ってきた魔獣は少ないんでしょう」
「そうは言ってもな……。ずっと警戒してたんじゃ疲れてしょうがない」
「すべてを警戒する必要はありません。危険な魔獣は数多くいますけど、スタンピードの今特に気を付けるべきはあの大砂蟲を除くと、森狼、岩猪、それから小鬼の三種類です」
そう言って指を三本立てる。
「森狼は騎竜より速く走り、群れで襲ってくる危険な魔獣です。岩猪は突進するだけなので危険度は高くありませんが、ぶつかれば竜車は一撃でバラバラにされるでしょう。中でも一番気を付けないといけないのは小鬼です」
「どういう奴なんだ?」
「小鬼は――」
「……いる!」
話をぶった切るようにジエットが叫ぶ。
指で示す先には石造りの大きなアーチ橋があった。
こちら側には杖と本を手にした女性、反対側には剣と盾を持つ男性の石像がそれぞれ設置されている。手前にあるのが偉人マーサを象ったものなのだろう。
「ギギィ……ッ!」
耳障りな声を発した直後、草むらから複数の人影が飛び出す。
姿を現したのは、茶色い肌をした子どものような何かだった。
「人間……?」
「エルト・ラ・バルセタ・オーラ・フロギス!」
刹那、視界が炎に染まった。石橋の周囲が爆炎に飲まれ、人影を消し飛ばす。
錬のすぐそばでは、カインツが短杖を構えていた。
「おい……!? あれいいのか!?」
「あれとは何だ?」
「いや、さっき子どもみたいなのが複数……」
「小鬼の事か? それなら問題ない。文句があるならこれを見ろ」
カインツが親指で自動車の壁を指し示す。
そこには棒が一本突き立っていた。
木の枝に尖った石や羽根を括り付けただけの粗雑な作り。だが間違いないそれは矢だ。
「攻撃されてたのか……」
「そういう事だ。面倒な事になる前にまとめて焼き払った方がいい」
「カインツ様の仰る通りです」
ノーラが足元から顔を出して言う。どうやら隠れていたようだ。
「小鬼は足が遅くて力も人間に劣り、単体だと弱いです。でも魔獣にしては頭が良く、森狼に乗って棍棒や弓矢を使い、ごくまれに詠唱魔法を使う個体もいる危険な魔獣です。普段は森の奥深くに集落を作っているので人里まではあまり出てきませんが、スタンピードで住処を追われて人家を襲う例が数多く報告されています」
「集落を作れるほどの知能があるなら、共存はできないのか?」
「人を好んで食べる種族と共存はさすがに……」
「人を食うのか……」
思わず錬は身震いする。
「小鬼相手に対話を試みたり、捕まえて飼い慣らそうとしたりした記録を学園の図書館で読んだ事がありますけど、どれも失敗に終わっています。自分より格下と見れば親兄弟すら奴隷にするという話ですから、もし共存するなら人間か小鬼のどちらかが奴隷、もしくは家畜になるんじゃないでしょうか」
「なるほど……」
魔力なしの同族や獣人達を平然と奴隷にする人間がとやかく言えたものではないが、少なくとも小鬼と友達にはなれそうもない。
幸いにも石橋に損傷はなかった。二つの石像も変わらずそびえている。
「あんな爆発があってよく壊れなかったな」
「それだけ頑丈な造りなんでしょう。交易の要衝なので簡単に壊れると困りますしね」
「魔獣の群れが来たよ!」
マーサ・ローダン橋を渡りきったところでまたもジエットが声を上げた。
薄闇の向こうから獣の唸り声や足音が響いてくる。
「あれは岩猪です!」
たしかに一見すると猪である。しかし目は一つしかなく、額に顔の半分を占めるほどのごつい角が生えていた。
「いかにも魔獣って感じだな!」
「囲まれたぞ! 一旦引き返すか!?」
カインツの言う通り、前方は埋め尽くすような岩猪の群れだ。逃げ道は元来た石橋しかない。
だがノーラはまっすぐ前を指差した。
「下がってもこの先へは進めません! それならいっそ突っ切りましょう!」
「本気か貴様、大丈夫なんだろうな!?」
「岩猪はあたし達を狙っているというより、ただ暴走しているだけです! レンさんの魔石銃があればいけます!」
「信頼どうも! ぶつかりそうな奴だけ倒していくぞ!!」
錬はハンドルを片手に魔石銃のトリガーを引き絞った。燃え盛る円輪が前方の岩猪を吹き飛ばす。ジエットも隣で援護射撃し、敵を消し炭に変えてゆく。
だが群れの数が凄まじい。
よく見れば岩猪だけでなく、目が四つもある狼や頭部がトゲトゲの蝙蝠、人間サイズの巨大な蜘蛛などなど、様々な魔獣が混じっている。
「おいおい……いくらなんでも多すぎないか!?」
「魔樹の森に住んでいた魔獣の大部分が逃げてきたのでしょうね……」
「何匹かこっちに来るよ!?」
ジエットに言われて見ると、四つ目の狼達がこちらへ進路を変えていた。
「森狼です! 素早いので気を付けてください!」
数にすればたかだか十数匹だが、その足は異様なほどに速い。魔獣達の隙間を縫うように駆け抜け、瞬く間に後ろに付かれた。前から魔獣、後ろから森狼だ。
「挟み撃ちされたぞ! カインツ、後ろを頼む!」
「様を付けろ、無礼者が! エルト・ラ・シュタル・ダーテス・ウィンダーレ!」
スコールのように風の矢が敵群に降り注いだ。岩猪達の悲鳴が草原に消え、血しぶきと共に死骸が転がる。
だが森狼には一発も当たっていない。魔法を放った瞬間に避けているのだ。
「ならばこうだ! エルト・ル・パステ・ウォーラ・フロギス!」
カインツの魔法で後方に炎の壁が生み出された。
けれど森狼は炎の壁へためらいなく飛び込み、火がつく間もなくすり抜けてくる。
風や水の壁も試すが、それらをものともせず突破される。足が速すぎて物理障壁でないと止められないのだ。
「おい、土魔法は使っていいのか!?」
「いけませんカインツ様! 土魔法は大砂蟲を呼び寄せる可能性があります!」
「ならばどうする!?」
「さっき橋でやったみたいに爆発の魔法で吹き飛ばしたらどうだ!?」
「死にたいのか貴様!? こんなボロ車が至近距離で僕の爆発魔法に耐えられるわけ――」
会話を遮るようにして、森狼が後部座席に飛び乗ってきた。
四つの目を向けられ、ノーラが青ざめる。
「チィッ……!!」
カインツが慌てて金の短杖を構えたが、しかしここで魔法を使えば自動車がバラバラになりかねない。
そんな一瞬の迷いを好機と踏んだのだろう。森狼はノーラの喉笛を引き裂かんと牙を剥いて襲い掛かる。
「グルォォォォッ!!」
「ひ……っ!?」
「ギャンッ!?」
――森狼がぶっ飛んだ。
外れたあごからよだれをまき散らし、毛むくじゃらの体が車外へと放り出される。
ノーラの前には、ガウンを着た半獣の少女が右手を構えて立っていた。
ジエットがフルスイングでビンタをかましたのだ。
「はぁっ……はぁっ……」
「二人とも大丈夫か!?」
錬の問いかけにも応えず、ジエットは肩を上下させている。よほど必死だったのだろう。おかげで誰も怪我はなさそうだ。
ならばと後続の敵襲を警戒するも、追撃はなかった。魔獣の群れを抜け、十数匹いた森狼も散り散りになる。
「何とかなったか……」
安堵の息をつき、錬は額の汗を拭う。
カインツも短杖を下ろし、鼻を鳴らした。
「奴ら諦めたようだな。さては半獣女に恐れをなしたか」
「あ、あのね、これは違うの……」
わたわたと慌てるジエットだが、皆口々に褒めそやす。
「謙遜するな。先ほどの平手打ちは見事だったぞ」
「そうだな。あの素早い森狼に一撃食らわせるとは大したもんだよ」
「ジエットさんすごいです……!」
「あぅぅ……」
ジエットは真っ赤になった熊耳を手で隠すようにしてうずくまるのだった。
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