召喚勇者の俺が剣聖かラスボスを敵に回した時の生還法を述べよ。ただし俺はレベル1とする!

えいちだ

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第二章

17:剣聖

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「俺はグラミーじゃないです!」
 俺の全力の否定に、セリムと名乗った剣聖は眉をひそめた。
「死霊使いグラミーではない?」
「違います」
「では別の邪帝王軍四天王か?」
「人違いです」
「ならばこの死霊の群れはどう説明する? 奴らはお前を襲わないようだが?」
「俺の配下のゾンビだからです」
「やはり死霊使いではないか!」
 セリムの目が鋭く光る。今にも飛びかかって来そうだ。
「待った待った! こいつらはスキルでグラミーから奪ったゾンビなんだって! グラミーは俺が倒したの!」
 チリン、とどこからか鐘の音が聞こえた気がした。
「嘘だな。本当の事を言え!」
「マジで倒したんだって! 証拠もあるぞ。こっちに来い、グラミー!」
「アァ~……」
 虚ろな目でフラフラと、グラミーゾンビが骨の大鎌を引きずって来る。
 肉体的な損傷はほぼないけど肌が紫色になっているし、これなら明らかに死んでいるとわかるはずだ。
 でもまぁ念のため彼女自身にも証言してもらおう。
「お前は邪帝王軍四天王の死霊使いグラミーだな?」
「アァ~……」
 うなずく。
「グラミー、お前は俺に倒されたよな?」
「アァ~……」
 ふるふる、とグラミーゾンビは首を横に振る。
「違うと言っているようだが?」
「えぇっ!?」
 倒しただろ!? なんで!?
 ……いや待て、そうだ。戦いはしたけど、厳密に言えば俺が倒したわけじゃなかった。
「間違えた! 俺がっていうか、アレクサンダーがトドメを刺したんだ!」
「アレクサンダー?」
「こいつ! このアルパカみたいなやつ!」
 ズイッとアレクサンダーを前に押し出す俺。
「そのベルベルゾンビがか?」
「そうだ。アレクサンダー、お前がグラミーを倒したんだよな?」
「グオッ」
 右目玉をぶらぶら揺らしてうなずくアレクサンダー。
 セリムは何だか渋い顔をしていた。あ、これまったく信じてくれてないわ。
「ベルベルゾンビが何をどうやったら邪帝王軍四天王を倒せるというのだ!?」
「本当なんだよ! な、グラミー? 俺と戦ってアレクサンダーにトドメを刺されたんだよな!?」
「アァ~……」
 ウンウン、とグラミーゾンビが首を縦に振る。
「烈光斬ッ!」
 その一瞬、視界が白く閃いた。
 耳をつんざく金属音が鳴り響き、砂煙がブワッと舞う。
 気付けば俺の目の前にセリムがいた。まるで瞬間移動したかのように剣を打ち出し、グラミーゾンビの鎌で防がれている。
「ふぁっ!?」
「……なるほど。僕が光の神ルーメニス様より授かった加護『神速剣』、その中でも最速の剣技である烈光斬を受け止めるか。こいつは死霊使いグラミーと見て間違いないようだ」
 何が起きたかまったくわからなかった。
 状況から見て、セリムがすごい速さで剣を振り、グラミーゾンビはそれを受け止めたって事かな……?
 つーかあの剣速に対応できるグラミーゾンビつえぇな。さすが元四天王だぜ。
「な? な? 四天王グラミーだろ? そんで倒されてゾンビ化してるだろ?」
「それはそうだが……しかし……」
 まだ納得してねぇの? これ以上何をどう説明すりゃいいんだよ!
「イサム様の仰る通りです!」
 ラーティが助け船を出してくれた。教会から駆け寄り、俺の横に並び立つ。
「何者だ?」
「わたくしは聖アルデム教団の聖女、ラーティと申します。そしてイサム様は異世界の勇者です」
「異世界の?」
 セリムは剣を下ろし、俺をまじまじと見つめた。
「この男が勇者だというのか? まるで覇気を感じないが」
 大きなお世話だよチクショウ。こちとらただのレベル1受験生なんだよ。
「それと聖アルデム教団の聖女と言ったな。聞いた事のない教団名だが、光の神ルーメニス様を信仰しているわけではないのか?」
「違います。わたくしもイサム様と同様、あなた方とは異なる世界より召喚されたのです」
「……ふむ」
 セリムは目を細めて俺とラーティを交互に眺める。まるで品定めしているみたいだ。
「事情は理解した。それで? お二方は人間と邪帝王、どちら側・・・・だ?」
 来た。クリティカルな質問。
 俺は元の世界へ帰るため、邪帝王ドロメアと契約を交わした。
 その内容は剣聖の殺害――つまりセリムを亡き者にする事だ。
 でも俺達が本当に元の世界へ帰れるかもわからない現状では、あまり邪帝王を信頼するのは危険。状況によってはセリムに荷担する必要が生じる事もありえる。
 最終的にどちら側に付くにせよ、この場でセリムと敵対するのは下策中の下策だろう。
 だからここは嘘を言わず、かつ正々堂々とはぐらかす!
 俺はキリッと大真面目な顔で応えた。
「俺は自分の信じた道を進むだけだ。どちらに与するべきかはこの目で確かめてからにする」
「……そうか」
 セリムは横目で教会から出てきた人々を見て、フッと口元を緩めた。
 手慣れた動きで剣を収め、俺とラーティに一礼する。
「先ほどまでの無礼な振る舞いを謝罪する。事情もわからず召喚され、この世界の人間を信じろという方が無理な話だ。自分の目で確かめてから決めるという貴殿の考え、僕は尊重しよう」
「ご理解いただけたなら良かったです」
 セリムは首に提げていたらしい手のひらサイズの鐘を取り出した。
「ちなみにこれは真実の鐘という。嘘偽りを見破ると音が鳴る魔道具だ。これのおかげで貴殿の言葉に嘘がないと判断した」
 あっぶねぇぇぇぇ!!!! 嘘ついてたら俺死んでたんじゃねぇの!? はぐらかしてよかったぁ!
 そんな俺の内心をよそに、セリムは右手を差し出してきた。
「勇者殿が自分の目で見て確かめるというのであれば、僕はそれに応えられる人間でありたい。どうだろう、貴殿らさえよければ仲間に加えてくれないだろうか?」
 清々しい人だな。少なくとも悪い奴ではなさそうだし、どう転ぶにせよそばに置いた方がメリットが大きそうだ。
 俺は差し出されたセリムの手を握り返した。
「もちろんです。剣聖が仲間になったとあれば俺達も心強い」
 チリン、と鐘の音が鳴った。
「おいぃぃぃっ!?」
 何だよこの嘘をばらすクソアイテムは! 確かに心強さより不安の方が大きいけどさぁ!
「はは、今のはお世辞という事か。勇者殿に認めてもらえるよう僕もより剣を磨いておくとするよ」
 どうかお手柔らかに、という喉から出かけた言葉を俺は呑み込むのだった。
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