召喚勇者の俺が剣聖かラスボスを敵に回した時の生還法を述べよ。ただし俺はレベル1とする!

えいちだ

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第三章

24:正体

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「やっぱり女性の下着ですよねぇ」
 みょんみょん、とパンツを引っ張るラーティ。
 セリムの荷物袋から出てきたのは、どこからどう見ても女物のパンツだった。
「あいつ、まさか女だったのか? 確かに中性的な顔立ちだとは思ってたけど……」
「もしくはセリム様が女性の下着を好む殿方だったという可能性も考えられます」
 その可能性はあんまり考えたくないなぁ……!
「いやぁでも、可能性を考えるならこの世界の男はこういうパンツをはく文化って事もあり得るんじゃない?」
「確かめてみましょう」
 ぴらっとラーティがグラミーのスカートをめくった。
「何やってんの!?」
「ですから確認です。四天王のくせに意外と可愛らしい下着をはいているようですね」
「アァ~……」
 グラミーは抵抗こそしないが、殺意の込められた目付きをしていた。
 もしかしてこいつ意識あるんじゃねぇ?
 ラーティはまじまじとグラミーのパンツを観察した末、俺に向き直った。
「これを見る限りでは、やはりこの世界でも女性の下着と思ってよいかと」
「だからっていきなりスカートめくってやるなよ。グラミーのやつめっちゃ嫌そうな顔してんぞ?」
「邪悪な死体はいたぶりつくせと神も仰っておりますので」
 そういやそうだったな! ほんとブレねぇわ!
「でも仮にセリム様が女性だったとして、性別を隠している理由は何でしょう?」
「……わからん。門番が顔を知らない事と関係があったりするのかもな。何にしても、今グダグダと考えるより本人に聞いた方が早いだろ」
「それもそうですね。ではそろそろ行きましょうか。大したものはありませんでしたし」
 ひどい言い草だな。早くパンツを仕舞ってやれよ。
「イサム様、こちらです」
 俺は荷物を抱え、ラーティの背中を追いかける。
 セリムの居場所はさほど遠くもなかった。
 地下牢の入り口が途中で三つに分岐しており、俺とラーティが入っていた以外の場所に収監されていたようだ。
 ほどなくしてセリムのいる牢へと辿り着いた。
「セリムさん、無事か?」
「イサム殿!?」
 セリムが慌てた様子で後ずさる。
 装備を全部没収されたため、下着姿で体を隠すように丸くなっていた。
「み、見ないでくれ!」
「あっ、ごめん!」
 思わず背を向ける俺。
 そこにあったのは、暗がりでもわかるほど丸みを帯びたシルエット。出るところが出てくびれるところはしっかりくびれている。
 どう見てもそれは女性の体型だった。
「セリム様、女性だったのですね」
「うぅ……」
 半泣きでくずおれるセリム。
 なんか可哀想だったので俺は自分の上着を脱いで差し出した。
「とりあえずこれで隠してくれ」
「……すまない」
 俺の上着で体を隠し、セリムは涙目で見上げてくる。
「許してくれ……。貴殿らを騙すつもりはなかったのだ」
「それはいいけど、どうして男装を?」
「剣聖とは、勇者と共に邪帝王を討ち倒す人々の希望だ。それが女などと知られては皆を失望させるだろう。だから生まれた頃から父上により男として育てられたのだ……」
「なるほど」
 男尊女卑の思想のせいか。性別を偽る理由としてはありがちな話だ。
「わたくしは能力が不足していなければ性別など関係ないと思うのですが」
「それは人も文化も住む世界さえも違うからな。俺達がとやかく言う問題じゃない」
「僕を許してくれるだろうか……?」
「許すも何も、性別なんて端から気にしてないぞ」
 むしろ俺としてはセリムがパンツ好きの変態野郎じゃなくてよかったよ。
「しかし、門番達はなぜ僕の事がわからなかったのだろうか……」
 何やら真剣に悩んでいるようだが、俺にはその理由が何となく予想がついた。
「セリムさんって今十九歳だったよな?」
「そうだ」
「最後にファーライト光国へ来たのって結構前だったりする?」
「ああ。十歳で旅に出たきりだから、もう九年になる」
 これはもうほぼ確定だな。
「門番がセリムさんを知らなかったのはたぶん第二次性徴のせいだと思う」
「第二次……何?」
「第二次性徴だよ。男は成長すれば声変わりするし、ヒゲも生える。でもセリムさんはそれがない。門番は剣聖が男だと思い込んでるはずだし、わからないって事もあり得るんじゃないか?」
「そう……なのか……」
 セリムはしょんぼりとうつむいた。
 生理現象だししょうがないと思うけどな。まぁそれはどうでもいい。
「そんな事よりここを出よう。ぐずぐずしてると衛兵が来るかもしれない」
「そ、そうだな」
 ラーティがピッキングで解錠し、扉を開けた。
 そして俺の荷物を受け取るや、セリムはいそいそと着替えを始める。
「……しかし、イサム殿の話を鑑みてもおかしな点がある」
「何が?」
「これだ」
 セリムは剣の鞘を見せてくる。
 そこには太陽をモチーフにしたような紋章が刻まれていた。
「たとえ顔がわからずとも、フェンドリック家の紋章を持つ僕を牢獄に閉じ込めるような真似をするだろうか?」
「盗んだって思われたんじゃないの? 門番もそんな事を言ってたし」
「剣聖から鞘を盗む事が並の者にできると思うか?」
「……まぁ無理だろうな」
 寝てても自動で反撃するスキルがあるらしいし、起きてたら光の速さで斬られるし、返り討ちにあうのが目に見えている。
「でも疑われてる以上は証明しなくちゃな。何か考えは?」
「僕はこのファーライト光国の法王から剣聖の称号を賜った。ならば法王猊下に直接面会できれば、あるいは――」
 その時、どこからか足音が聞こえた。
「おい、お前ら! なぜ外に出ている!?」
「やべっ」
 衛兵が剣を抜き、駆け寄ってくる。
「おのれ、脱走か!?」
「いや! これには事情があって……!」
「死ねぃ!」
 その瞬間、耳をつんざく金属音が鳴り響いた。
 繰り出された硬質の棘がセリムの鞘で受け止められている。
 目の前にいたのは人間じゃない。衛兵の鎧を着た異形、人型のカマキリのような怪物だった。
「な、なんだありゃっ!?」
「――烈光斬ッ!」
「ギィィッ!?」
 不快な金切り声。
 セリムの剣閃が無数に走り、カマキリ人間は七つに切り分けられた。
「うげ……」
 地面に広がる緑色の体液を見て俺は口元を押さえる。さすがに気持ち悪い。
「これは魔物……でしょうか?」
 ラーティのつぶやきにセリムは顔を強張らせ、うなずいた。
「邪帝王軍四天王、蟲王バゼルドの配下の魔物だ」
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