召喚勇者の俺が剣聖かラスボスを敵に回した時の生還法を述べよ。ただし俺はレベル1とする!

えいちだ

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第三章

29:正面突破

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 大神殿の建物は白く荘厳なものだった。
 周囲には衛兵がうろついており、不審者の侵入がないか目を光らせている。
 その様子を物陰から遠目に眺める俺達。どう見ても不審者だ。
「ラーティ、あいつらって人間?」
「人間かはわかりませんが、とりあえず寄生はされていないようですね」
「そうか。衛兵全員がカマキリ人間ってわけじゃないんだな」
 なら正面から平和的に行った方がいいだろう。
「ここは正面突破だ。付いてきてくれ」
「大丈夫か……?」
「安心してくれ。剣聖である僕の顔が通行手形だ」
「前もそんな事言ってダメだったろ」
「こ、今度こそ本当に大丈夫だ!」
 セリムが物陰から出たので、仕方なく俺達も後に続いた。
 そうして堂々と入口へ歩いて行くと、衛兵二人が槍を交差させる。
「ここから先は一般信徒は立ち入り禁止だ」
「わかっている。だが大至急法王猊下に謁見したい。お目通りを願おう」
「猊下への謁見? 失礼だが、あなた方は?」
 セリムは剣の鞘を突き出した。
「法王猊下より剣聖の称号を賜ったセリム=フェンドリックだ」
「け、剣聖殿……!?」
 まじまじと鞘の紋章を見つめる衛兵達。
「後ろのお二方は?」
「彼は勇者イサム殿。彼女は聖女ラーティ殿。二人とも異世界より来た僕の仲間だ」
「勇者様と聖女様……」
「ど、どうする?」
「どうするって、フェンドリック家の紋章だぞ。本物なら通すしか……」
 狼狽する彼らを尻目に、ドヤ顔を見せるセリムである。
「どうだ、僕の顔が利いただろう」
 利いたのは顔じゃなくて紋章だったけどな。まぁいいや……。
 俺はラーティに耳打ちする。
「最初の門番の対応とは全然違うな」
「やはり門番の兵も寄生されていたのでしょう。ステータスをちゃんと見ておくべきでした」
「そうだな。これからは寄生されてる奴がいたら俺に教えてくれ」
「わかりました。とりあえずこの場には一名いますね」
「どいつ?」
「イサム様です」
「俺の事はいいんだよ!?」


 そんなこんなで話がまとまり、俺達は大神殿に入る事を許された。
 建物の中は白を基調とした内装で、青白く光る石が室内を明るく照らしている。
 その最奥の扉が開かれた先に、青と白の祭服を身に着けた老人が待っていた。
「あれが法王か」
 何やら周りに際どい服を着た女達を侍らせ、ワイングラスを片手に恰幅のいい腹を揺らしている。ハーレムと料理に夢中で俺達が来たというのに目もくれない。
「すごい服装ですね。まるで紐です」
「そうだな」
「イサム様、鼻の下を伸ばさないでくださいね」
「の、伸ばしてねぇし!?」
 つーか暖簾付きマイクロビキニみたいな服を着てるお姉さんがいっぱいいたらついつい見ちゃうだろ!
「ほ、法王猊下……?」
「ん? 誰ぞ参った?」
 目が合った途端にセリムが膝をついたので、俺とラーティも同じように屈む。
「法王猊下、お久しぶりです。セリム=フェンドリックが参りました」
「セリム……はて、そのような者がおったかのう?」
「フェンドリック家の長子でございますわ、猊下」
「確か剣聖を輩出された家ですわね」
「おお、そういえばそんな者もおったのう。ならば後ろの二人は?」
 水を向けられ、セリムが顔を上げる。
「異世界の勇者イサム殿、そして同じく異世界の聖女ラーティ殿です」
「ほほう。という事は、レイマール王が行った勇者召喚の儀式が成功したのか」
「素晴らしいですわ、猊下」
「とっても賢いですわね」
「いい子いい子」
「むほほほほ!」
 美女達に頭や肩を撫でまわされ、デレデレと鼻を伸ばす法王。
「……なんか、あんまり法王っぽくないな」
「そうですね。教皇様以上に肥え太った豚を見るのは初めてです」
「辛辣!」
「あれで寄生されているなら同情もできますが、どうやらステータスは正常……救いようがありません」
「マジかよ……」
 そんな俺と同じく、セリムもまた驚きを隠せないようだった。
「猊下、その女性達は一体……?」
「こやつらはわしの愛人どもじゃ。可愛いじゃろう?」
「は、はぁ……」
 呆けたように生返事をするセリムだが、気を取り持つように頭を振った。
「猊下、火急の用件にて失礼致します。光国にはすでに虫の魔物が多数入り込んでいる事が確認されました故、報告に参りました。急ぎご対応を!」
「虫の魔物? それはまことか……?」
 オロオロと不安げに眉を垂れる法王。
 だがその周りにいる女達が甘やかすような声音で言う。
「そんなはずありませんわ、猊下」
「難攻不落の光国が魔物ごときに破れるはずがありませんもの」
「そ、そうであったな! 我が光国が魔物ごときに負けるはずないわ!」
「猊下! これは事実です! 地下牢に魔物の死骸があるので、ご自身の目でご確認ください!」
「そ、そうなのか……?」
「いいえ、猊下。そのようなもの、あるはずありませんわ」
「猊下の国は最強ですもの」
「そうですわね、猊下?」
「そ、そうだな! うぅむ、危うく騙されるところであったぞ!」
 くすくす笑う愛人達の甘言にまたも丸め込まれる法王。まるで洗脳でもされているみたいだ。
「なぁラーティ、あのお姉さん達は寄生されてないんだよな?」
「そうみたいですね」
 寄生されてはいない、か……。だからといってそれが人間を意味するとは限らないよな。
 痺れを切らして俺は立ち上がった。
「法王様。そのお姉さん達なんかおかしくないです?」
「どういう事じゃ?」
「どうって、明らかに普通じゃないでしょ。そいつら実は魔物なんじゃないの?」
「そ、そうなのか……?」
「いいえ、猊下。私達は人間ですわ」
「世界に誇る猊下の光国に魔物など入れるはずありませんもの」
「そうですわね、猊下?」
「そうだな! お前達が魔物であるはずがないな!」
「お利口さんですね、猊下。よしよし」
「むほほほほ!」
 だめだこりゃ、脳みそとろけてやがる。ちょっとうらやましいぞ。
「って、いやいや、絶対変ですって! 一旦そのお姉さん達を下がらせてくださいよ!」
「無駄じゃ。こやつはすでに我が傀儡よ」
 法王の椅子の向こうから、一人の女が現れた。
 太ももまで見えるスリットが入った赤いドレスを着た妖艶な姿だ。
「……あんたは?」
「わらわが蟲達の王バゼルドである。お望み通り出てきてやったぞえ」
 その瞬間、法王の周りにいたお姉さん達の目がギョロリと蠢いた。
 複眼だ! あいつらやっぱり虫かよ!?
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