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最終章
第79話 残酷な決着
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ドォォォォォォォォン!
ユピテルの足元が突然爆発し始めたのだ。ユピテルは瞬時に対応し魔力を防御に回したものの、完全に勢いを消すことはできず、その肉体が宙を舞う。
そしてやっとできたチャンス、サナが見逃すはずがない。
サナは一直線ではなく、何かをよけるように迂回しながら一気に接近。
ユピテルに対して連続攻撃を放つ。
ユピテルは最初こそ攻撃を防ぎきれず、何発か攻撃を食らってしまうものの、致命傷だけは食らわないように防ぐ。
そして無理やり体勢を立て直すが、勢いがあるサナの攻撃は止まらない。
ユピテルが押されていることに騒然となる会場。観客からは
ユピテルに対して負けるかもしれないという声が流れ始めた。
無駄に動けばそれだけ見えない攻撃を食らってしまう。
まるで地雷のように砲撃が仕込まれているのだ。
「お前が何かをよけるように移動している時点でよくわかった」
今まで俺はユピテルの戦いを見ていたからわかる。彼女の戦闘スタイルは、ほとんどが接近戦に持ち込んでからパワーで圧倒するというものであった。
もちろんパワーだけではなく、技術面や一つ一つの駆け引きも一級品のものだ。
さすがはユピテル。彼女はただの猪武者ではない。相手の作戦をすぐに見抜く戦術眼も兼ね備えている。
しかし、それだけではまだ半分だ。相手の戦術がわかっても、それを攻略する方法を見つけなければ意味がない。
彼女は接近戦を得意とする以上、サナに近づかなければならない。
自分のプレイスタイルを捨てて遠距離戦、そうなればユピテルの持ち味が消えてしまう。
何より、彼女のプライドが許さないだろう。
それでも、ユピテルの思い通りにさせていないことには変わりない。自由にさせていないことに変わりはない。
これならいけるかもしれない。
「……ふぅ」
ユピテルは一度だけため息をついてから再びサナを見つめる。
明らかにユピテルの目つきが変わった。
「なるほどな。成長したじゃないかサナ」
「当たり前だよ。勝つためだもん!」
その言葉にユピテルの表情に笑みが浮かびだす。それも、自身に満ち溢れた──。
「よく言うよ。まあ、勝つのは俺たけどな!」
その言葉をユピテルが発した瞬間、サナの体がピクリと動く。
叫んだユピテル、左の方向にステップをとった後、虚空の空間を薙ぎ払う。すると──。
ドォォォォォォォォォォォォン!
突然その空間が爆発し始めたのだ。その光景にサナは驚愕して言葉を失う。
「うそ……なんで」
おそらくサナの地雷を切り刻んだのだろう
「こんなもの気配を察知すればすぐにわかる。俺を対したかったら、最初の一撃で仕留めるくらいでなければ意味がない」
「こんな小細工で、俺を倒せるとおもっていたのか?」
サナの表情に焦りが生まれていることがわかる。
おそらく、一度設置したら場所を変えることができないんだ。
ユピテルは堂々と歩きまわり一つづつ地雷を消していく。
おまけにこっちから接近すればユピテルの斬撃がサナを襲う。だからユピテルが地雷を処理するのを止める手段はない。
残念だが、接近戦では彼女に勝ち目はない。
そして、その瞬間は訪れた。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!
「これで、お前の策は敗れた」
その言葉に、サナが絶望しているのがわかる。
恐らく、地雷はすでに消しつくされてしまったのだろう。
もう、サナの地雷を使ってユピテルの機動力を封じるという戦術は使えない。
だったら、逃げているだけではだめだ。
このまま遠くで縮こまっていてもじり貧にしかならない。
それでも、行くしかない。それしか、サナに勝機はない。
近距離では最強といわれた彼女を相手にだ。
(行くしかない。それしか、勝てないんだ)
サナは強く手に力を入れた後、一気に攻め込む。
そして最後の可能性をかけて勇猛果敢にユピテルに対して切り込んでいった。
ここから先は想定なんてしていない。というか勝てるシミュレーションなど存在しない。
俺だって、ここにいる誰だってどうなるかを理解している。
ユピテルは、サナの勢いに任せた攻撃を後ずさりしながら難なくかわわしていく。
その姿は、どこかサナの実力をうかがっているようだった。
そしてしばらく軽快なステップを踏みながら攻撃をかわしていくと──。
「ふっ、その程度か。それなら、勝負はあった──」
そう囁いて反撃に転じる。
マシンガンのような圧倒的な速さの連続攻撃。おまけに、威力もサナが放ってきた一撃より、ずっと強力な攻撃。
勝負は、一方的だった。
ユピテルの強力な斬撃の前に、サナは防ぐのがやっとの状態であった。
誰もが、この試合の勝者が誰であるかを理解した。
「やっぱりユピテルはすごいなー、もう勝負は決まったろ」
「サナって子もいい線は言ってたけど、力不足だな……」
周囲からも、そんなあきらめの声が囁かれる。
サナは、すでに逃げるので精いっぱい、勝負が決まるのは時間の問題だと、
そんな時、観客席の一部から叫び声が聞こえだす。
「「「サナちゃーん。頑張って、負けないで!」」」
他の人と比べてどこかボロボロの服を着ている子供たち。多分サナの生まれた地域「サテライト」の子供たちだ。
サナのこと、応援しているんだ。
すると、サナが戦いながらその方向を振り向く。
サナの瞳に、再び力が戻っているのがわかる。
「ごめんね、私、最後まで頑張る!」
そう叫んだサナ、その力に勇気をもらったのか再びユピテルへと距離を縮めていく。
その姿にユピテルもにやりと笑みを浮かべた。
「そうだサナ。最後までかかってこい」
サナは渾身の力で剣を振り下ろす。憧れていた相手、どれだけ実力差があっても、最後まであきらめるわけにはいかない。
その最後の力を込めた剣を、解き放たれたユピテルの斬撃は一瞬で弾き飛ばす。
今までもそうであったかのように、サナの覚悟と願いを、──たった一撃で切り捨てた。
──バタリ。
サナの肉体は、その気持ちを裏切り、力なく倒れていく。
そして、無情にも、勝敗を決する声が響く。
「サナ選手。戦闘不能。この戦い、ユピテル選手の勝利!」
ユピテルの足元が突然爆発し始めたのだ。ユピテルは瞬時に対応し魔力を防御に回したものの、完全に勢いを消すことはできず、その肉体が宙を舞う。
そしてやっとできたチャンス、サナが見逃すはずがない。
サナは一直線ではなく、何かをよけるように迂回しながら一気に接近。
ユピテルに対して連続攻撃を放つ。
ユピテルは最初こそ攻撃を防ぎきれず、何発か攻撃を食らってしまうものの、致命傷だけは食らわないように防ぐ。
そして無理やり体勢を立て直すが、勢いがあるサナの攻撃は止まらない。
ユピテルが押されていることに騒然となる会場。観客からは
ユピテルに対して負けるかもしれないという声が流れ始めた。
無駄に動けばそれだけ見えない攻撃を食らってしまう。
まるで地雷のように砲撃が仕込まれているのだ。
「お前が何かをよけるように移動している時点でよくわかった」
今まで俺はユピテルの戦いを見ていたからわかる。彼女の戦闘スタイルは、ほとんどが接近戦に持ち込んでからパワーで圧倒するというものであった。
もちろんパワーだけではなく、技術面や一つ一つの駆け引きも一級品のものだ。
さすがはユピテル。彼女はただの猪武者ではない。相手の作戦をすぐに見抜く戦術眼も兼ね備えている。
しかし、それだけではまだ半分だ。相手の戦術がわかっても、それを攻略する方法を見つけなければ意味がない。
彼女は接近戦を得意とする以上、サナに近づかなければならない。
自分のプレイスタイルを捨てて遠距離戦、そうなればユピテルの持ち味が消えてしまう。
何より、彼女のプライドが許さないだろう。
それでも、ユピテルの思い通りにさせていないことには変わりない。自由にさせていないことに変わりはない。
これならいけるかもしれない。
「……ふぅ」
ユピテルは一度だけため息をついてから再びサナを見つめる。
明らかにユピテルの目つきが変わった。
「なるほどな。成長したじゃないかサナ」
「当たり前だよ。勝つためだもん!」
その言葉にユピテルの表情に笑みが浮かびだす。それも、自身に満ち溢れた──。
「よく言うよ。まあ、勝つのは俺たけどな!」
その言葉をユピテルが発した瞬間、サナの体がピクリと動く。
叫んだユピテル、左の方向にステップをとった後、虚空の空間を薙ぎ払う。すると──。
ドォォォォォォォォォォォォン!
突然その空間が爆発し始めたのだ。その光景にサナは驚愕して言葉を失う。
「うそ……なんで」
おそらくサナの地雷を切り刻んだのだろう
「こんなもの気配を察知すればすぐにわかる。俺を対したかったら、最初の一撃で仕留めるくらいでなければ意味がない」
「こんな小細工で、俺を倒せるとおもっていたのか?」
サナの表情に焦りが生まれていることがわかる。
おそらく、一度設置したら場所を変えることができないんだ。
ユピテルは堂々と歩きまわり一つづつ地雷を消していく。
おまけにこっちから接近すればユピテルの斬撃がサナを襲う。だからユピテルが地雷を処理するのを止める手段はない。
残念だが、接近戦では彼女に勝ち目はない。
そして、その瞬間は訪れた。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!
「これで、お前の策は敗れた」
その言葉に、サナが絶望しているのがわかる。
恐らく、地雷はすでに消しつくされてしまったのだろう。
もう、サナの地雷を使ってユピテルの機動力を封じるという戦術は使えない。
だったら、逃げているだけではだめだ。
このまま遠くで縮こまっていてもじり貧にしかならない。
それでも、行くしかない。それしか、サナに勝機はない。
近距離では最強といわれた彼女を相手にだ。
(行くしかない。それしか、勝てないんだ)
サナは強く手に力を入れた後、一気に攻め込む。
そして最後の可能性をかけて勇猛果敢にユピテルに対して切り込んでいった。
ここから先は想定なんてしていない。というか勝てるシミュレーションなど存在しない。
俺だって、ここにいる誰だってどうなるかを理解している。
ユピテルは、サナの勢いに任せた攻撃を後ずさりしながら難なくかわわしていく。
その姿は、どこかサナの実力をうかがっているようだった。
そしてしばらく軽快なステップを踏みながら攻撃をかわしていくと──。
「ふっ、その程度か。それなら、勝負はあった──」
そう囁いて反撃に転じる。
マシンガンのような圧倒的な速さの連続攻撃。おまけに、威力もサナが放ってきた一撃より、ずっと強力な攻撃。
勝負は、一方的だった。
ユピテルの強力な斬撃の前に、サナは防ぐのがやっとの状態であった。
誰もが、この試合の勝者が誰であるかを理解した。
「やっぱりユピテルはすごいなー、もう勝負は決まったろ」
「サナって子もいい線は言ってたけど、力不足だな……」
周囲からも、そんなあきらめの声が囁かれる。
サナは、すでに逃げるので精いっぱい、勝負が決まるのは時間の問題だと、
そんな時、観客席の一部から叫び声が聞こえだす。
「「「サナちゃーん。頑張って、負けないで!」」」
他の人と比べてどこかボロボロの服を着ている子供たち。多分サナの生まれた地域「サテライト」の子供たちだ。
サナのこと、応援しているんだ。
すると、サナが戦いながらその方向を振り向く。
サナの瞳に、再び力が戻っているのがわかる。
「ごめんね、私、最後まで頑張る!」
そう叫んだサナ、その力に勇気をもらったのか再びユピテルへと距離を縮めていく。
その姿にユピテルもにやりと笑みを浮かべた。
「そうだサナ。最後までかかってこい」
サナは渾身の力で剣を振り下ろす。憧れていた相手、どれだけ実力差があっても、最後まであきらめるわけにはいかない。
その最後の力を込めた剣を、解き放たれたユピテルの斬撃は一瞬で弾き飛ばす。
今までもそうであったかのように、サナの覚悟と願いを、──たった一撃で切り捨てた。
──バタリ。
サナの肉体は、その気持ちを裏切り、力なく倒れていく。
そして、無情にも、勝敗を決する声が響く。
「サナ選手。戦闘不能。この戦い、ユピテル選手の勝利!」
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