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敵の罠

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「そうです、私の故郷はバードランドです」

 そしてリルカが今までの自分たちの事を話し始める
 ここから馬車で5日ほど北へ進んだフェンロー県の県北にある都市、そこはかつては世界で10本の指に入るほどの平和で争いも起きない天空の楽園ともいわれる都市だった。しかし、国が近代化するとともに彼らの中に格差が生じ、彼らは争うようになった。

 そして前皇帝が即位すると彼は私たちを力ずくで弾圧しはじめた、私の父はそれに反対し天空の楽園を取り戻すため「レジスタンス」を結成し戦った、しかし父さんは戦死、それを目の前で見たお兄様のミリートは復讐に燃えるようになった。
 時を同じくして、この地方に冥王という存在が現た。それは心に憎しみを持っている者を強大な力を与える代わりに自身の虜にし寄生して活動させる敵──

 そう、その虜にして寄生したがリルカの兄ミリートだった、冥王のお兄様のミリートはその憎しみの心を利用して憑依するようになった。
 そしてリルカ達の敵となって立ちはだかるようになった。

「天空の書にはそれを打ち破るための力が記されています、思想を超えて、亜人も人間も超えるだけの力、そしてそれを指し示す精霊が──」

「私では出来ませんでした、お前ではその力に心を支配される、と── だからそんな人を探す旅なのでもありました」


 そして話が終わるとリルカはせつなさそうにうつむき始める。すると、まるで彼女の気持ちを代弁するかのようにベルが話し始める。

「だったら私が阻止します、欲望丸出しのあなたがそんな力を手にしてしまったらどうなる事か?絶対皆を不幸にしてしまいますからね、幸乃さん、力を貸してください!!」

「当ったり前じゃん、友の頼みだよ、ベルちゃんも、リルカも、私が守るよ!!」

「べぇぇぇぇっちゅに~~??知るかよ!!貴様らを痛めつけようと!!貴様らがどんな苦しみを受けようと私は痛くもないし、興味なんてあるかよ!!」

「さぁ!!俺様の栄華のため、痛い目あってもらおうか?」

 そして自身が持っていた十字架上の剣を2人に向ける、それに応じて2人をデバイスを召喚し出す。

「幸乃さん、行きましょう、勝ちますよ!!」

「うん」

 そう言葉を交わし、2人は剣を握り、戦う準備をする


「来い!!帝王の十字剣エンペラーズクロス!!貴様らなど3分で粗引きハンバーグだ!!来い!!」

 そう叫び彼女は自身の剣を召喚する。

「アクア・バスター!!」

 幸乃のその言葉を皮切りに戦闘が始まる。まず幸乃が能力を発動させ彼女が砲弾状の水を3発繰り出す、
 それはまるで鉄球が襲いかかるような威力でバルディビアに襲いかかる。しかしその攻撃をバルディビアはその攻撃を容易く薙ぎ払う。

「何だ!! お遊戯ですかァ?? よぇぇなあ!!」

 そのスキにベルが一気に間合いを詰める、そして接近したベルは彼女をめがけて一気に剣を振り下ろす。

「やるねぇ」

 バルディビアはその一撃を自身の剣でその一撃を受ける、するとベルは右の体を反転し体を反転させながらバルディビアに切りかかる。バルディビアはそれを上に弾くようにかわし、そのまま上から切り下ろす、だがベルはそれを予知していてそれを横にかわす、そして自身の剣を振り上げる。

 何とか彼女がそれを防ぐとその瞬間すぐに手首を返してもう一撃の薙ぎ払いの一撃をくらわせる。その瞬間バルディビアは背後に飛んでかわそうとするがベルの攻撃にほうが早く腹のあたりに剣の先端が直撃する。

  魔力を纏っているので出血はしないもの彼女に一撃をくらわせる。通常魔術を使う者は出血を伴う怪我をした時自身の魔力を無意識のうちにその場所に集中させ出血を避けるため、その分魔力は浪費されることになる。

「アクア・バスター」

 そのタイミングでさらに幸乃が攻撃を繰り出し追撃する、しかし帝王の十字剣エンペラーズクロスを彼女は一振りさせその攻撃を振り落とす。

「やるねえ、じゃあ本気を出させてもらうよ……」

 バルディビアは腹の切られた部分を押さえながら剣をベルに向ける、そして……

「全ての反逆者よ我の圧倒的な力の前に跪け!!帝王なる空間エンペラーズフィール!!」

 そう叫び彼女は自身の剣を地面に突き刺す。するとこの礼拝堂一体の床が紫に光り出す、そして一気にベルに間合いを詰める。

 そしてベルに向かって剣を振り上げる、ベルはそれを受け止めるがそこからさらに連突き、を繰り返す、ベルはそれもすべて反応し攻撃を直撃させない、今度はさらにベルに向かって剣を上げ振り下ろす、ベルは今度もそれに対応するためそれを払い置けようとするが……

「圧倒的なる力、抗う愚者の踏みつけろ!!帝王なる聖剣エンペラーズソード!!」

 今までとは違う始めて感じるくらいの圧倒的な魔力の量にベルは払い切れずそのまま転倒、すぐに体勢を立て直そうとしたところにバルディビアは下から剣を振り上げる。直感的に危険を感じかわそうとするがよけきれず、右わき腹のあたりの部分を直撃する。

「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 その激痛にベルは大きな叫び声を上げる。この礼拝堂にベルの悲鳴がこだまし、彼女の体がピンポン玉のように吹き飛ぶ。そして痛みを抑えようとわき腹を抑え始める。

 今度はバルディビアは幸乃に間合いを詰め始める、直感的に危険を感じた幸乃はすぐの防御の構えに入るが彼女の圧倒的なトからの前に攻撃を防ぎきれず左の二の腕に攻撃をもらう。

「ああああああああああああああああああああああああああ」

 激痛に悲鳴を上げる幸乃。幸乃も困惑しながらバルディビアに抉られた左の二の腕を抑える、パニックになりそうな感情を抑えながら……

 そのベルの右のわき腹と幸乃の左腕から通常ならあり得ないはずの出血が起こっていた……
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