アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

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バードランド編

突き離される、それでも……

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 足場の悪い岩場の地帯で──
 そして……





 ズルッ、ズデッ、ズドォォン


 喜びのあまり軽くジャンプして着地する際にその場所が足場が悪い岩礁地帯だったため
 転倒してしまう、幸い捕らえたウサギは手を離していなかったため無事だったが。

「いたたたたた……」

 そこで岩に肩をぶつけて肩を押さえながらなんとか幸乃は立ち上がる。

「ほら、言った通りだろ、気を抜いた時こそが注意だって、人間も一緒だよ」

 ベナリーが半ば苦笑いをして注意をする、幸乃はすいませんと謝りゆっくりと立ち上がる、そしてベナリーに捕らえたウサギを渡してこの場を後にしていった。

 同行していたカラブロが慌てて鞄を開け出して消毒液を取り出し、幸乃の傷口に塗り始めた。幸乃は涙目になりながら消毒液のシミを我慢する。

「ちょっと、沁みるじゃない!! けっこう刺激が強い、これ」

「我慢しろ、お前が感染症にさせるわけにはいかん、怒りなら好きなだけ俺にぶつけろ」

「別に、あんたは私のためにやっているんでしょ、そんなことしないわ」

「まったく、もう調子に乗るなよ……」

 幸乃は強く沁みるのを我慢し、何とか消毒を終える。
 そして猟を再開、4匹ほどウサギを捕まえた後狩りを終え、リルカやベルと再会した。

 そしてベナリーは採取の指揮を部下に任せて幸乃達と共に遺跡の方へ向かうために道を北上していった。



 ※

「ベナリーさん、本当にありがとうございます、本当は採取だってしなくてはいけないのに私たちの都合に手伝ってもらって」

 ベルがいつもの寡黙な表情ながら、どこか申し訳なさそうにベナリーに謝る、彼らは半分は農耕をしているが半分が狩りをして食料を手に入れている半狩猟民族である以上、この採取は生きるためにとっても重要なこと、それを差しおいて自分たちの都合に合わせて行動してくれたことにベルはお礼を言いたかったのであった。

「気にするな、今のミリートに打ち勝つことだってそれに負けないくらい大事なことだ、お前さんたちは自分の役目を果たせ」

 それに対して彼の答えは簡単だった、今のことも大事だが彼を打倒すことだって同じくらい大事だと、利益にはならなくても誰かがやらなければならないのだと……
 ベルはやはり彼には指導者としての器があると感じた。

 目先の人気だけでなく、なにが今必要かを判断できる指導者なのだと……




 ※


 そして幸乃達4人とベナリーは40分ほど歩き、目的の遺跡に到着した。
 その遺跡は高原の草原地帯が広がる中にぽつんと存在していて、まるでチチェン・イッツァのようピラミッドに近い外見をしていた。 また東西南北から、ピラミッドの中心に通じる階段がありその上に頂上があるといった作りになっていた。その階段の上に人が5人くらい入れる広さの入口があった
 3人は互いに視線を送った後階段を上り始めるそしてその入り口にあるドアを開ける。

 ドアを開け、中に入る幸乃達そこはリルカと幸乃、ベルが最初に出会ったロヴァニエミ遺跡にそっくりな作りをしていた。

 壁には幸乃達が知らない文字がぎっしりと書かれていて部屋の中には亜人達の銅像が軟体かおかれている。
 幸乃達はここでどうすればいいのかを考えた。周囲を探すなどをして手掛かりを探す。

 しかし何も手掛かりはない、ベナリーに聞いても周りを探しても何一つ手掛かりが見つからなかった。そんな中リルカは天空の書の存在を思い出す。
 そしてリルカが持っていた天空の書を手の上にかざし自身の魔力をその書物に込めてみるすると……

 シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 と天空の書が白く光り出す、そして……

「シェルリ??」

 背後からの音に思わず幸乃は驚いて後ろを振り向く、するとシェルリが突然消えたのだった、そして正面から突然声がした。

「わしがシェルリじゃ!!」

 その生き物は宙に浮いていてシェルリを大きくしたような、地に降ろしたら膝くらいの高さのアルパカがそこにいた、しかしさっきまでのシェルリとは違いピリピリとした魔術の気配、鋭い威圧感と眼光を感じる存在だった。
 幸乃達はその突然の出来事にただ驚くばかりであった。

「え?どういうことなの?」

「だから今言ったろう、シェルリはわしが生み出した分身だったんじゃ!」


 その動物は自らを精霊のシェリンと名乗る、話によるとシェルリは奈美からの指示で幸乃に
 で自らの分身のようなものでテレパシーを通じて幸乃と話していたと説明する

 すると幸乃はもじもじとしながら自身の頼みごとを話し始める。

 私に力を貸してほしい、と──
 シェリンはその言葉に毅然として言葉を返した。

「口もききたくない」

 シェリンは幸乃をにらみつけるような表情でそう叫ぶように言葉を返す。 当然であった、シェリンの力は自分一人だけで気付きあげてきたわけではなかった、歴代の冒険者たちが平和を守りたいという声によって彼は存在し、そして共につらい思いを精霊として経験しながら、時には生死をさまよいながら友に強くなり、今日的な敵を打ち破り、旅をしてきた……

 そんな彼は目の前の幸乃の言動に対して怒りを感じていた……
 大した苦労もしていない、ただ強い力に乗っかりたいだけ、シェリンにはそうしか感じなかった。そんなタダで貴様などに勝利をやる、ただ強い力に便乗したいだけの便乗勇者、少なくてもシェリンには幸乃はそう映っていた。

 幸乃はその帰ってきた言葉に唖然とした、分身とはいえ今まで旅をしてきてシェリンが自分に対してそこまで憎しみを抱いているとは思いもしなかったからであった……

「それでもシェリンの力が欲しい、私は今強くなりたい!! 友のために、一緒に旅をしてきたシェリンならわかるでしょ!!」
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