アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

文字の大きさ
50 / 112
バードランド編

相手のスキを付け

しおりを挟む
 彼の企画は「おはよう英気君」と呼ばれており、街を歩いている人に英気を養ってもらうために下はズボン、上はTシャツだが乳首の部分だけが丸出しになっておりその姿で大声を上げながら全国の都市の繁華街でひたすら走りまわるという企画だった。
 そしてそのたびに警察に捕まり事情聴取を受ける姿が視聴者に受けていて番組の中でもトップクラスの人気を持っていた。

 それ以外にもコザックダンスでいろいろな国の領事館に無断で侵入したり、総理大臣にヒゲをそらさせてほしいと首相官邸に無断で突撃したり体を張ったロケをしていた。 

 それを見て幸乃はひしひしと感じ取る。

(みんな真剣なのね……)

 そうだ、みんな数少ないチャンスをものにするため必死に体を張っていた、幸乃も負けてられないのである。

 次にファンからの手紙を見てみる、1人目はエドゥアルドとの戦いでファンになったという女性、さらにゲントナーとの別れから見続けている男性、幸乃が異世界に来る前から幸乃のファンだった高校生など様々だった

(私のファンは……増えてきたのかな?)

 今まででもこんな数のファンレターはもらった事がなかった。
 元々認識魔法によってこのコーナーを見ている人は幸乃が異世界に行っていることに何の疑問を持っていない、また、どんなに傷ついてもそれを不審に思うことはない。
 それでもファンレターが届いたのは明るくて一生懸命な幸乃のキャラクターが人気を博しているともいえた。



 馬車は道を進み森林限界を超えたこの場所では低木状のダケカンバが所々に生えているほかは露出した岩が各所に広がっていて風景は荒々しさを増していて来ていた


「リルカちゃん、どうしたの?」

 リルカの隣を歩いていた幸乃が彼女に心配そうに話しかける、リルカはどこか苦しそうに今の自分の症状を説明し出す。

「すいません、さっきから頭痛とめまいがひどくって……」

 リルカは具合が悪そうな表情をしながら右手で頭を押さえている、それを見て幸乃はリルカに何が起こっているかを理解した。

「多分高山病よそれ──」

 高山病とは標高が高い山で酸素が平地と比べて薄くなるため起こる病気である。
 嘔吐、吐き気、めまい、頭痛などがその症状でリルカの今起こっている症状とよく似ていた。

「ちょっと休みましょう……」

 ベナリーに幸乃がリルカの事情を説明すると彼はここが鷹狩りの場所だと説明する。
 そして何とか2~3分歩いて採取をする拠点の小屋にたどり着いた。
 彼らは荷物をまとめた後すぐに採取を行った。

 あるものは亜種であることを生かして空を飛びそのまま飛んでいる鷹などの鳥を捕まえていた。
 皆が手慣れていてすぐに獲物を何事もなく捕らえていた。


 幸乃とベルは小屋に着くとその中のベッドにリルカを寝かせる、2人でリルカの看病をしているとそこに割って話す人が1名。

「つまんねえな、幸乃、あいつらと行動してなんかやってこい」

 ぶっきらぼうに彼は話しかける、カラブロであった。

「しょうがないでしょ、リルカの憔悴した表情見てそれが分からないの?」

 幸乃は両手を腰に当て反論する、流石に旅仲間を放っておいてそんなことをする気にはなれないと、すると同じくリルカのそばにいたベルが幸乃に話しかける。

「看病なら私はするので大丈夫です、幸乃さんは自分がやるべきことをやった方がいいと思います」

 元気が無い中作り笑いをしながらリルカも幸乃を説得し始める

「私は大丈夫です、ベルさんもいますし、だから心配ないです、お仕事でしたら行っても大丈夫ですよ」

「ああ、分かったわよ……」

 幸乃は思い出す、他のモザイクに出ている連中も負けじと数字を取るため体を張っていることを。
 リルカの説得に幸乃は応じ、カラブロ、シェルリと一緒にベナリーと共に採取に行く事となった。

 まず2人が挑戦するのはウサギの採取だった。


 なかなかうまくいかない幸乃。
 するとベナリーがアドバイスをし始める。



 また、ウサギは足の構造上登るときより下る時の方が足が遅いらしくウサギを狩るときは斜面の上から坂を下るようにして追いかけるのが最善策だと語る。

 そして幸乃はその通り坂の上からウサギを刈ってみる、しかし……

「うまくいかない……」

 幸乃は思わず愚痴を漏らす、言った通りにやればできるほど甘くなんてなかった。
 追いかけては逃げられ、追いかけては逃げられの連続、捕まえるなんて全くできなかった。

「ベナリーさん、うまくいかないよ、なんかこう、他にコツなんかないの?」

 幸乃が疲れを見せながら彼に聞いてみる、他に狙い目のようなタイミングはないのかと……

 彼はゆっくりと語り始める、猟をするときは相手が警戒を緩める時にするのが基本なのだと、相手が何かに気を取られている間はその分そこに意識が集中している。 その瞬間を狙えばその分相手は逃げるのが遅れ捕まえやすくなるらしい。

「まあ、それもそうね」


 幸乃はどこか納得し、視線の先の斜面にいるウサギにそっと狙いを定める。
 そしてそのウサギがそばにある草に手を伸ばし口にくわえた瞬間──

 すぐに幸乃は全速力でがけを下る、それに気付いたウサギはすぐにその草を手放して逃げ出す。


 そして──

「おおっ捕まえた!!」

 幸乃が喜びのあまり思わず叫ぶ、幸乃の両手には捕らえたウサギの右足がつかんであった。
 シェルリの方を向いてカメラ目線になり喜びのあまりウサギのようにピョンピョンとはねた。


 足場の悪い岩場の地帯で──
 そして……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

処理中です...