アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

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バードランド編

それでも叫びかける

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(ッッーー!)

 ミリートはその攻撃にただならぬ力の気配を感じる、その速さではよけきることは出来ない。

 とっさに目の前に障壁を張り、両腕をクロスさせ攻撃に備える。
 そして振りかぶった幸乃の拳が障壁を破りミリートに襲いかかった、そして──

「ぐはっ、うっ……」

 想定をはるかに上回る重く硬い衝撃がガード越しにミリートを殴りつける。
 それは両腕のガードだけでは完全に受け切れず、全身に衝撃が駆け抜け、体が後方に吹き飛ばされる。

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 その痛みにミリートが悶絶する、その衝撃はまるで巨大な鉄の塊が時速200kmで直撃したような強さだった。

 一方幸乃も──

(痛い!! 何これ?)

 ミリートを殴りつけた瞬間心臓が破裂する様な激痛が走り始める。
 とっさに幸乃は心臓を抑える、するとシェリンは語り始める。

(わしの魔力の強さは人間には負担が多すぎるのじゃ、使い続ければ人間の体は耐えられなくなり破壊される)

(だから、使うときはここぞというとき、まあ3回くらいじゃのう……)

「わかった、後2回ってことね……」

 そう話した矢先、再びミリートが接近してくる。
 雨あられのような斬撃の連続攻撃。

 それを幸乃は懸命にかわす

 幸乃の剣はミリートの心臓を貫いていた。

 オーラを纏った人間は出血をせず、そのダメージでは死ぬことはない、だが心臓を貫いた痛みがミリートを襲い思わず悶絶する

 だがまともに攻撃をくらった幸乃も無事では済まなかった

 通常ならそのダメージでオーラが切れてミリートの剣は直接幸乃の胴体を貫通し間違いなく死んでいた。

 しかしあれだけの魔力切れを十分狙えるだけの威力で切り裂いた幸乃の体、しかし幸乃から1滴も血は流れていない
 そのわけをミリートは理解する。

 傷どころかあり得ない速度で傷がふさがっていく。

「今度は回復したのか……」

 ミリートは激痛を走らせる中、懸命に思考を働かせ、そう推理した。これは正解だった。
 この回復の力はシェリンの力だった、シェリンの力を今度は回復に使った

 幸乃は思い出していた、ベナリーさんとの兎猟を、そこで相手が獲物をとっている瞬間にこっちが兎を捕まえていた事を思い出した。

 彼との戦いをする中でミリート相手では簡単に攻撃を当てる事は出来ない事を幸乃は理解していた。
 それでも幸乃は勝利のために彼に有効な1撃を与える手段を考えた。その技がこれだった。

 ミリートはさっき相対し剣を心臓に刺した瞬間勝利を確信していた、その瞬間心のスキが生まれ防御の準備を怠っていた、そこを幸乃は利用したのである。

 しかし幸乃も無事ではなかった、胴体を貫く痛みが幸乃を襲い、思わず膝をつく。
 両者痛みを耐えながら相対する。 すると幸乃は語り出す。

「リルカは言っていたわ」

「それでもリルカは乗り越えた、その悲しみから立ち上がって
 だったら、あんただって乗り越えないでどうするのよ!! つらくたって乗り越えていかなきゃしょうがないでしょ」

 それはミリートが過去のトラウマから立ち直るよう懸命に想いを込めて幸乃は叫ぶ。
 ──すると

「……ふざけるな」

 ミリートは歯ぎしりをしながら言い返す。

「俺の味わった悲しみ、父を失った悲しみ…… それはそんな言葉ごときで簡単に言い表せられるようなものじゃない、簡単に人の痛みを知ったきでいるなよ、こ






















 ミリートは激高し出した、人のトラウマという物は、闇というものは、簡単に乗り越えられるものではない、ましてや見ず知らずの赤の他人に言葉を投げかけられたところでそれは彼にとっては侮辱でしかなかった。

「今の言葉で俺は踏ん切りがついた、貴様という人間を、殺してもかまわないとな!!」

「わかっているわ、でもそれでもあんたに叫びかけるわ!! それが私の親友を救う唯一方法なんだからね」

 そしてそう怒りを込めて叫ぶと幸乃も負けじと反論する、幸乃だってそれは理解していた、それでも幼馴染のために、ここで世話になった人たちのために闘わなければいけないのだから。

 そう考えた刹那ミリートは一瞬で間合いへ飛び込む、そして魔力を込めて剣を振り下ろす
 ミリートの放った攻撃を幸乃も剣で応戦し振り下ろされた1撃をガードする。
 しかしその攻撃はおとりだった、幸乃がガードをしたスキに無防備となった幸乃の胴体をめがけてミリートが蹴りを入れる、

 蹴っ飛ばされた幸乃の体ははるか上空に打ち上げられる、ミリートは両足に魔力を込めてジャンプし上昇する。

 両足に魔力を込めて空中移動をするミリートを見て幸乃はとっさに閃く。

(そうか、あいつか出来るなら私にだって……)

 そう考えた幸乃は自分で魔力を放出し、なんとかミリートのように体制を整える、すると──

 ミリートが急接近し、接近戦に持ち込む。

 そして2人の戦いの主導権はミリートが握っていた。
 幸乃の空中での戦いに慣れておらず、熟練度が不十分であった、地面が無いため踏ん張りが利かず、自身のパワーが行かせなかった。

 結果、縦横無尽に攻撃していくミリートに対し、幸乃は防戦一方だった。

(あれ?)
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