アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

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エンド・オブ・ザ・ノースランド

ザバイカル

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 フィテアトル発ザバイカル行き乗合馬車で幸乃達の旅が再び始める。
 進んでいくにつれて気温も肌寒くなっていく、幸乃達はそれを感じ最初は半そでだった服の上に1枚1枚洋服を羽織っていった。

 乗合馬車に乗っていると窓側に乗っていた幸乃が隣のベルに高いテンションで話しかける。

「ねえねえ景色すごいよこれは見て見て!!」

「う~~ん景色ですか……、確かにすばらしいですねぇ」

 疲労がたまりうたた寝をしていたベルは目をこすり辺りを見回す、幸乃もその風景に


 ステップと呼ばれる平らな乾燥した土地が続く地帯で足首くらいまでの背丈が低い草が生い茂っている地帯に馬車は入っていた。
 そしてそれが360度見渡す限り遮るものが無く全てが草原のように続いているのだった。
 幸乃はさらにシェリンにカメラを回させ実況を始める。

「これすごいよすごいよ」

「幸乃さん、確かに景色はいいですがあまり騒がないようにしてくださいよ、他に乗客もいるんですから」

 ベルが幸乃をたしなめるように注意する。確かにこの乗合馬車には他に10人ほどの乗客がいた、リルカとミリートも離れた場所になっていたが二人ともいて隣同士中よく寝ていた。他の乗客も半分くらいは目をつぶって寝ている状態だった。

「じゃあベルちゃんはいっ!!」

 そう話すと幸乃はカメラをベルの顔の目の前につける。
 どこか寝ぼけた表情で唇によだれがついていた、幸乃にとってはとってもかわいく見える表情だったのでカメラいっぱいに映される。するとベルはその事に気づいて顔を真っ赤にして叫ぶ。

「ちょっと、恥ずかしいからやめてくださいよーー」

「うるさいぞ!!寝ているんだから静かにしろ!!」

 ローブをかぶった冒険者が2人を大声で注意し、2人は沈黙する。



 フィテアトルから乗合馬車で5日後ザバイカルといわれるこの国の中心都市へ到達する。

 乗合馬車自体はこのザバイカルまでしかなくここからは馬を借りて進む事となる。サバイカルでは雪が降っていた。
 冷たい空気に身震いした、街の家屋は極寒の冬で寒さから身を守るため分厚い石造りになっていた。
 それが幸乃達にとっては新鮮に見えてそんな建物に彼女たちはしばらく見とれていた。
 そして街の散策にはいった、散策をしながら目的の店を見つけリルカとミリートが話しかける。

「あそこじゃないですか?」

「ああそうだ、入るぞ」

 中心街から外れた場所で馬小屋のような場所がある、その店の4人は入っていく・
 幸乃達はここでフィテアトルで皇帝ヴェラッティからもらった報奨金を使い馬を借りていく、簡単な乗馬の方法を教わりさらに食糧などを買い込み今日はホテルに泊まった。




 そして出発となった、4人は荷物を持ち馬車に乗りザバイカルを出発していった。

 進んでいくにつれて寒さがさらに厳しくなっていく、幸乃達は防寒具を来て寒さをしのぐ。
 景色も麦畑からタイガと呼ばれるカラマツ属の落葉針葉樹を中心とした明るい針葉樹林の純林の地帯に入っていく、そこは見渡す限り大平原となっていて湿地帯が多くその間の道を 池や森が存在する。
 タイガの森が織りなす美しい風景をみて幸乃達は感激した。

「ああぁ、これすごいです~~」

 リルカが思わずつぶやく。

「シェリン、これ撮ろうよ」
 そう言ってシェリンにカメラを回させる、そしてナレーションを始める。これならテレビを見ている人にもうけそうだと感じたからである。


 そして幸乃達は次なる目的地であったハイカロフスクに到着した。

「ふうー、着いた~~」

「とりあえずこれから先の物資を補給しないといけないですね」
 ベルのその一言で幸乃はこの街でやるべきことを思い出す。

 フィテアトルにいた時の調べたのだが、この先の地理を調べるとここから北にはストレンセやフィテアトルのような大きな都市は存在しない、小さい町が最果ての町エンド・オブ・ザ・ノースランドへの道にぽつぽつと並んでいるだけである。
 なので必要な物資はフィテアトルで購入した、また、この国の最北端にある極寒の地であることから氷点下まで気温が下がるらしく防寒具も購入した。
 おかげで皇帝からもらった謝礼がかなり無くなってしまったのだが。

 幸乃はその間単独でギルドに行って仕事がないかを探した。

 そして仕事も受け持った、雉の狩猟と加工の仕事だった。みんなにこの仕事の経験があるかどうか聞いてみる。
 すると幸乃とベルは未経験だがミリートとベルにそういった経験があり捕まえ方や捌き方のコツなどを教えてもらった。

 その事でベルが幸乃に問いただす。

「もっと報酬の多い仕事ってなかったんですか?強力な動物を倒すような仕事でもよかったと思うのですけれど」

 確かに幸乃達の実力ならもっと強い動物と戦って高い報酬を得るような仕事をもらった方がよかった、しかし幸か不幸か北の地方は治安もよくあまりそういった仕事はあまりない。

 たまに熊が現れる事はあるがそれは地元のハンターたちがすべて退治してしまうのでギルドの方には仕事が回ってこないというのだった。

 また、缶詰などはまだしばらく持つからもっと食料がとりにくい北の方で使った方がいいということになり、なので捕まえた雉の肉の一部を売らずに今後の保存食として使う意味でもこの仕事は有効だった。

「それはしょうがないですよ、まあ治安がいいというのはいいことですし早く狩りの準備をしましょうよ」

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