アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

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フィテアトル編

もし勇者になったら……

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そんな言葉を発しながら彼らはこの戦いの勝利の余韻に浸っていた。


 その3日後、幸乃達の一通りの治療が終わった。そしてヴェラッティによってベルやリルカ、リルカの兄ミリートと共に宮殿に召集された。

 幸乃達は宮殿にたどり着くと案内の兵士に連れられて中を歩いていく。豪華な飾り品や模様が描かれている天井、規則正しく並んでいる大理石の柱、この宮廷は何度か入ったことはあるが本当に豪華な宮殿だった。

 そしてその部屋にたどり着くとそこには皇帝のヴェラッティとその妹のシャレーがいた。
 会議室のような場所でアンティークな雰囲気の机といすが並べてあった。
 そして4人は椅子に座るとヴェラッティが話を始める。

「まずはギルガスを倒してくれてありがとう、感謝この上ない」


「そしてこれからの事なんだが」

 そう言うとヴェラッティはこれからの事を話し始める。

 もう調べはついていた、冥王たちがいる場所、それはここから馬車を使い、ひたすら北上、馬車も使えない年中雪まみれの地に入りそこからは犬ソリで移動長い移動を繰り返したそこは永久凍土で世界で最も極寒ともいえる人間が存在できる中で最も緯度が高く最北の土地、エンド・オブ・ザ・ノースランドであった。
 そしてそこへ行くための方法をメモとして幸乃に渡す。

「もし本当に冥王を倒して勇者になれたら、この街にずっといてほしい、新しい勇者として、そしてこの街の平和のシンボルになって活動してほしいんだ」

 幸乃の世界の事はある程度知っているらしく魔法は使えないうえにこの世界と比べても争いも少ない、だからもしよければここにいて平和のために活動してほしいということだった。
 さらにそのための報酬も既に決めていた、価格にして一月40万aeu、幸乃達が今までに稼いだ金額 そして望みならば別荘なども用意するとのことだった。

 そう、新たな勇者としてこの街にいてほしいというのだ。

「え?でもそれって……」

 その言葉に幸乃は戸惑い始める、幸乃としてはこの戦いが終わったら自分の世界に帰ると考えていたからである。

「ちょ、ちょっと考えさせてほしいかな、私、帰ってやりたいことだってあるし」

 幸乃の心に迷いが生じていた、今までは目の前の敵を倒しておくのに精一杯でそんなこと考える暇がなかった、しかしここに来て残りの冒険は冥王との戦いとその移動を残すのみ、終わりが見えてきて幸乃は今後どうすればいいのか迷いが見えたのであった。
 ヴェラッティはもっと押しを強くして幸乃にここにずっと残ってもらいたくてさらに強く推そうとする。

「わかった、ずっとここにいなくてもいい、基本は元の世界にいてもいい、何か異変があったら知らせるからその時だけ来てくれてもかまわないんだ、だからお願いできないかな?」

「ヴェラッティ様、あなたの皇帝としての立場は理解できます、でも少し強引過ぎる気がします私たちだっていますもう少し幸乃さんの意見も尊重しないと」

「そうですよ、幸乃さんだって帰りたい気持ちはありますし」

「私もリルカさんとベルさんの意見に同感」

 ベル、シャレー、リルカが強引に誘う彼を注意する。
 だがヴェラッティとしてはまたいつ敵が襲ってくるかわからない、だからそのための戦力が多く必要だった、この地を守る彼としてはもっともな意見でもあった。

「あのぅ、みんな……私のためにそこまで熱くなってくれてありがとう、少し考えさせてよ、今までそんなこと考えて、それから結論を出しても遅くはないでしょ?」

 幸乃が話に割るように入ってとりあえず考えさせてほしいと待ったをかける。当の本人の言葉にみんな納得せざる追えなくなりとりあえず保留にし、またあとで回答を出すということになった。

 続いて報奨金の話しになる、しかしそれもバードランドの時のように全てもらうのではなくみんなで相談してこれからエンド・オブ・ザ・ノースランドで使用する額を計算して念のためにそれより少し多くいただくために留まった。


 それぞれの思いを乗せて話し合いを終えた幸乃達はこの場を去っていく。幸乃の結論は出ない、帰るべきか──それともここに留まるべきか──

 そしてシンクレアやジャミア達にあいさつを済ませた後幸乃達は最後の旅へ出る。

 最強の敵のもとへ──
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