──破滅回避の悪役令嬢── 世界を救うため「書記長」というハズレ職業から成り上がります

静内燕

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第37話 ハイドへの制裁

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 数日後、私達は最後の行動に出る。
 貴族たちと打ち合わせが終わった後。

 時間はすでに夕方。夕焼けの射す光が宮殿の中を照らし、白い壁がオレンジ色にうっすらと光る時間帯。

 いろいろと息が詰まる話が多くて疲れた。私は思わず背伸びをする。

「う~~ん、疲れたねライナ」

「はい。けれど、これからが一番大変そうです」

 隣にはライナ。ライナもどこか疲れている。けれどライナの言う通りだ。
 私は宮殿の出口に向かって歩きながら、後ろにいるセンドラーと話をする。

(じゃあこの後は、アイツをとっちめに行くわよぉ)

(ああ、ハイドね。居場所は分かってるの?)

(ええ、ミットが昨日言ってくれたわ。数日後、飲み屋で一緒に飲もうって誘われたんだって)

 そう、エンゲルス達は何とか片付いた。しかし、ハイドがまだだ。
 一応、あの議会の後、エンゲルス達の行動を把握させていた。魔王軍とのかかわりを絶つという名目で。
 調べた結果、ハイドにこの情報は流れていないというのは分かった。

 奴は今でもエンゲルスが守ってくれると思っているのだろう。
 といってもお間もどこかに潜伏していて、どこにいるか見当もつかないが──。

 ──が今の言葉に私は驚く。そんな事全く知らなかったからだ。
 驚いた表情で言葉を失っていると、センドラーがにやりと笑みを浮かべ、答える。

(ごめん、あんたがベッドについた後、勝手に体を借りてミットから話を聞いたの)

 へぇ~~。抜け目ないわね……。

(じゃあ、私が案内するからそこまで、よろしくね。その前にやることがあるの)

(わかったわ、一緒に行きましょう)

 そして私達は再び街へと向かっていく。
 あと少し、あと少しで事件は解決しそう。



 この世界のために、私は最後まで戦う──。




 そして私は宮殿の外へ。
 ハイドとの最終決戦。絶対に逃がしたりしない。絶対に捕まえて見せる。

 そう強く覚悟を決め、目的の場所へ。



 ラストピアの街に出た私達。
 日もすっかり落ち、夜。

 仕事帰りの人たちでにぎやかな街の中。私達は夜の繁華街へと向かう。



 夜のネオンが眩しいくらいに明るい。酒を飲んですっかり出来上がっている人たちが大声で街中を歩いている。

 そんなにぎやかな街を私達は進んでいく。場所は、先日とは違うクラブ。
 お忍びで行くようなクラブではなく、街のお金持ちなどの裕福だったり身分が高い人が騒いだりするクラブだ。

 金色に光る豪華そうな看板が視界に入る。
 無駄ともいえる豪華さ、成金の人が好みそうなデザインだと感じる。


「ここみたいね──」

「そうですね、センドラー様」

 そう。ミットの言葉によると、今日ここで飲み明かそうとハイドが言っていたのだ。
 私が店の前に行くと、スーツを着た男の人が話しかけてくる。

 先日行ったクラブより、スーツが寄れている。目つきも悪くて、態度もどこかいい加減。

「はいいらっしゃいまで。お客様ですか?」

「そうよ。大丈夫かしら?」

「はい、喜んで」

 そして金の飾りがついた黒い扉が開く。
 そこには薄暗いランプで照らされた赤絨毯の道、その奥にもう一つドア。


 そしてそのドアを開け、店内をのぞいてみる。

 豪華そうなシャンデリアによるとは思えないほどの明るい空間。
 いくつかのふかふかの豪華そうなソファー、そこにいかにも裕福そうな人と、ど派手で露出度の高い服を起きた若い女性たちが座っていて。ワイングラスを片手に大声でいろいろな話をしていた。
 中央の机にはシャンパンタワーがあり、従業員らしき人が上からシャンパンを入れている。

「おお、お前さん可愛いねぇ」

「そんなことないですぅ~~」

 先日のバーと比べると、ど派手で派手さを見せつけるような服の人が多く、大声で口説いたり、自分のすごさを見せつけるような自慢話が多い。

(趣味の悪い成金さんの好みそうね店ねぇ秋乃)

(うん。わたしの趣味じゃないわ……)

 腕を組んで呆れる私とセンドラー。せっかく飲むなら、ゆっくりと静かに飲む方が、私の好みだ。ライナも、どこか嫌そうな表情をしている。

「ハイドが、好きそうな店です……」

 ──ってそんなことしてる場合じゃない。ハイドを捜さないと。私は店内の様子を見る。

(センドラー、あれ)

 私は右端の席に視線を置く。

(いたわね、のんきに女をはべらかせて──痛い目見してやるわ!)


 右端にある大きめのソファー。
 キャーキャー騒ぐコンパニオンの女の子の中心に目的の人物はいた。

 女の子たちをはべらかせながらワインを片手に談笑をしている。
 ──隣にはミット。ハイド達の会話に全く入らず、ちょこんと座っていた。

 時々胸を触ってセクハラをしている姿に呆れている、従業員の人が話しかけてきた。

「席は、どうなさいますか?」

 するとセンドラーが私を押す様にして体に入る。体に入ったセンドラーはハイドの隣を選択した。

(とりあえず、私に任せて!)

 了解──。

 こういう事なら、私よりセンドラーの方がよさそうだ。
 そしてライナとセンドラーが席に着く。差し出された水代わりのワインを優雅に飲みながら打ち合わせ。

「先ずライナは──の話をする。そしたら私は──」


 私は、この場がうるさかったこと、ハイドの方へ意識が行っていたせいでてよく聞こえなかった。
 けれど、あの二人ならやってくれるだろう。
 不思議と、不安はなかった。
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