49 / 135
二つの王国編
第48話 そして「全国代」の始まり
しおりを挟む
数分ほどするとフォッシュは交渉を終え、どこか機嫌がよさそうな表情で私のところに戻ってきた。
「センドラー様。大丈夫なようです。行きましょう」
「そ、そうだね……」
兵士の中にフォッシュのことを知っている人がいたらしく、その人のおかげで顔パス同然だったみたい。よかったよかった。
そして私達は王宮の中へと乗り込んでいく。
一応フォッシュの付き人という設定なので、フォッシュの後ろをかしこまった態度で歩く
「ここです」
「よくわかるじゃん」
一応リムランドの言葉で会話しているので、会話自体はいつものままだけど。
「この王宮。子供のころによく言ったことがあるので、間取とかわかるんですよ」
「へぇ~~」
顔なじみだったんだっけ。それなら、信頼関係とかも築けそうだ。
階段を登って少し歩く。
手入れがあまりされていなくて、どこか古びた赤絨毯の道を歩き、大きな扉の前で立ち止まる。
「ここが部屋です」
「分かったわ。じゃあ行きましょう」
そして私達はノックした後、ドアを開け中へ。
「皆さん、よろしくお願いします」
大きなシャンデリアで照らされた広い部屋。
中は会議室の様に大きな机があり、それを取り囲むようにいろいろな人が座り込んでいた。
エルフの耳を付けていたり、ウサギや猫の毛耳を付けた人。獣人なんかもいる。
服装も、各人種の伝統服を着ているようでバラバラだ。
その姿を見ていると、フォッシュがひしひしと耳打ちして話しかけてくる。
「彼らが、この国の亜人の代表たちです」
私達は彼らの姿を視界に入れた後、指定された席に座る。
聞くところによると、マリスネスは現国王の下に主要亜人の各代表がいて、彼らと一緒に手を取って運用しているらしい。
国王は彼らの代表みたいなもので、彼らの利害を調整したり、争いが起こった時の調停などが主な仕事のようだ。
さらに、この国の制度についても教えてくれた。
この国は七つの亜人がそれぞれ自治区をもって暮らしている。
そして法律を決めるときや、予算の執行、国の方向性を決めるときなどはその七つの亜人が一票、国王が一票をそれぞれ持っていて、多数決で投票を決めるのだそうだ。
合計八票これだと四対四になった場合何も話が進まず、会議が空転してしまうので、各亜人に対して損が出ないように各利害を調整したりしているそうだ。
また、この国は元々一貴族が何もない所から作り上げた国ということで国王の権威が高くない。おまけに武力も貧弱なので、各亜人達の協力がないと国を収めきれないのだ。
「国王様は、この不安定な基盤の国で、みんなが安心して暮らせるよう、努力しているのです」
「確かに、大変そうね」
私は思わずため息をついた。権力が集中しすぎるのも問題だが、分散しすぎも問題だ。
各自が好き勝手に動き、調整が難航する。そして互いが損をしてしまい、貧窮するのだ。
(なるほどねぇ。もうわかったわぁ)
センドラーが彼らが座っている姿を見て何かに気付いたらしい。
みんな、むっとしていたり不機嫌そうな表情で腕を組んだりしている。
確かに、みんな仲が悪そうだ。そういうことなのかな?
(何が? 彼らの仲が、悪そうってこと?)
(それもそうだけど、もっと大事な事よ──)
センドラーがそこで言葉を切ると、ふたたび入口の扉が開く。
(あとでわかるわぁ。とりあえず話を聞きましょう)
すると警備の兵士数人と、それに囲まれて一人の人物が出て来た。
若くて黒髪、ツンツン頭の髪型をしている。
ここにいる中では、一番に豪華そうな服装をしている長身の男の人だ。
白を基調としたマントは、ややこばんでいる。額に手を当て、どこか焦りが生まれているように見えた。
「彼が、マリスネスの現国王、ペタンです」
一瞬フォッシュと彼の目が合う。彼女はその瞬間席から立ち上がった。
(ほら、秋乃も立って! 付き人の設定、忘れたの?)
(あ、はいはい)
私も一緒に立ち上がると、ペタンはこっちに視線を向けてきた。
「お久しぶりです。貴方に助け舟を出そうと、この場に来ました」
フォッシュの微笑を浮かべた表情。ペタンがそれを見ると、一瞬だけ驚いて動きが止まる。
全員が一斉に礼をする。
ペタンは一度舌打ちをした後、要人たちをにらみつけて椅子に座った。
「では、恒例の全国国民代表会議を始める」
ペタンの掛け声に、亜人の代表たちはコクリとうなづいたり、あくびをしたり。
どこか、イラついたような声色。要人たちも、机を肘についたり態度が悪い。
私が見てもギスギスした雰囲気だというのがわかる。
亜人の人たちは、ため息をついてペタンをただ見ていた。
舌打ちの声にあくび。ペタンへの敬意がないことは、一目で明らかだ。
「ふぁ~~あ。早く終わらせてくれよ。もう俺たち、お前の奴隷なんかじゃないんだからさぁ──」
一人のオオカミの獣人の代表が両手を頭の後ろに置き、椅子に寄りかかりながらしゃべりだす。
すると、ペタンはその人物を強くにらみつけ、バンと大きく机を叩いた。
「このガルフのクソ野郎。お前だ。どういうことだこれは!」
「センドラー様。大丈夫なようです。行きましょう」
「そ、そうだね……」
兵士の中にフォッシュのことを知っている人がいたらしく、その人のおかげで顔パス同然だったみたい。よかったよかった。
そして私達は王宮の中へと乗り込んでいく。
一応フォッシュの付き人という設定なので、フォッシュの後ろをかしこまった態度で歩く
「ここです」
「よくわかるじゃん」
一応リムランドの言葉で会話しているので、会話自体はいつものままだけど。
「この王宮。子供のころによく言ったことがあるので、間取とかわかるんですよ」
「へぇ~~」
顔なじみだったんだっけ。それなら、信頼関係とかも築けそうだ。
階段を登って少し歩く。
手入れがあまりされていなくて、どこか古びた赤絨毯の道を歩き、大きな扉の前で立ち止まる。
「ここが部屋です」
「分かったわ。じゃあ行きましょう」
そして私達はノックした後、ドアを開け中へ。
「皆さん、よろしくお願いします」
大きなシャンデリアで照らされた広い部屋。
中は会議室の様に大きな机があり、それを取り囲むようにいろいろな人が座り込んでいた。
エルフの耳を付けていたり、ウサギや猫の毛耳を付けた人。獣人なんかもいる。
服装も、各人種の伝統服を着ているようでバラバラだ。
その姿を見ていると、フォッシュがひしひしと耳打ちして話しかけてくる。
「彼らが、この国の亜人の代表たちです」
私達は彼らの姿を視界に入れた後、指定された席に座る。
聞くところによると、マリスネスは現国王の下に主要亜人の各代表がいて、彼らと一緒に手を取って運用しているらしい。
国王は彼らの代表みたいなもので、彼らの利害を調整したり、争いが起こった時の調停などが主な仕事のようだ。
さらに、この国の制度についても教えてくれた。
この国は七つの亜人がそれぞれ自治区をもって暮らしている。
そして法律を決めるときや、予算の執行、国の方向性を決めるときなどはその七つの亜人が一票、国王が一票をそれぞれ持っていて、多数決で投票を決めるのだそうだ。
合計八票これだと四対四になった場合何も話が進まず、会議が空転してしまうので、各亜人に対して損が出ないように各利害を調整したりしているそうだ。
また、この国は元々一貴族が何もない所から作り上げた国ということで国王の権威が高くない。おまけに武力も貧弱なので、各亜人達の協力がないと国を収めきれないのだ。
「国王様は、この不安定な基盤の国で、みんなが安心して暮らせるよう、努力しているのです」
「確かに、大変そうね」
私は思わずため息をついた。権力が集中しすぎるのも問題だが、分散しすぎも問題だ。
各自が好き勝手に動き、調整が難航する。そして互いが損をしてしまい、貧窮するのだ。
(なるほどねぇ。もうわかったわぁ)
センドラーが彼らが座っている姿を見て何かに気付いたらしい。
みんな、むっとしていたり不機嫌そうな表情で腕を組んだりしている。
確かに、みんな仲が悪そうだ。そういうことなのかな?
(何が? 彼らの仲が、悪そうってこと?)
(それもそうだけど、もっと大事な事よ──)
センドラーがそこで言葉を切ると、ふたたび入口の扉が開く。
(あとでわかるわぁ。とりあえず話を聞きましょう)
すると警備の兵士数人と、それに囲まれて一人の人物が出て来た。
若くて黒髪、ツンツン頭の髪型をしている。
ここにいる中では、一番に豪華そうな服装をしている長身の男の人だ。
白を基調としたマントは、ややこばんでいる。額に手を当て、どこか焦りが生まれているように見えた。
「彼が、マリスネスの現国王、ペタンです」
一瞬フォッシュと彼の目が合う。彼女はその瞬間席から立ち上がった。
(ほら、秋乃も立って! 付き人の設定、忘れたの?)
(あ、はいはい)
私も一緒に立ち上がると、ペタンはこっちに視線を向けてきた。
「お久しぶりです。貴方に助け舟を出そうと、この場に来ました」
フォッシュの微笑を浮かべた表情。ペタンがそれを見ると、一瞬だけ驚いて動きが止まる。
全員が一斉に礼をする。
ペタンは一度舌打ちをした後、要人たちをにらみつけて椅子に座った。
「では、恒例の全国国民代表会議を始める」
ペタンの掛け声に、亜人の代表たちはコクリとうなづいたり、あくびをしたり。
どこか、イラついたような声色。要人たちも、机を肘についたり態度が悪い。
私が見てもギスギスした雰囲気だというのがわかる。
亜人の人たちは、ため息をついてペタンをただ見ていた。
舌打ちの声にあくび。ペタンへの敬意がないことは、一目で明らかだ。
「ふぁ~~あ。早く終わらせてくれよ。もう俺たち、お前の奴隷なんかじゃないんだからさぁ──」
一人のオオカミの獣人の代表が両手を頭の後ろに置き、椅子に寄りかかりながらしゃべりだす。
すると、ペタンはその人物を強くにらみつけ、バンと大きく机を叩いた。
「このガルフのクソ野郎。お前だ。どういうことだこれは!」
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる