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二つの王国編
第77話 再びマリスネスへ、それからもひと悶着
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早馬で駆ける事こと4日程。
私達はマリスネスに到着。できるだけ早くつこうと睡眠時間や休憩時間を削り気味だったため、疲れが残っているが、贅沢は言っていられない。
馬車で宮殿に乗り込み、早足でペタンのところへ。
「おひさ! 鉱山の方、取り戻したよ」
「ありがとう、センドラー」
いつもより簡易的なあいさつ。悠長にしている場合じゃないというのが、互いに理解している。
すぐにフォッシュやライナたちともども政務室へ。
政務室も、以前着た時とは違い、本が散らかってたり、ごちゃごちゃしている。かなり慌てているのが理解できる。
政務室についた瞬間、センドラーを人格を交代。すぐに話し合いが始まる。
「日付は?」
「すでに査察団を送っていて、5日後には到着するそうだ」
その言葉に私は驚く。これじゃあ準備が間に合わないじゃない。
「そんなすぐ?」
「多分、こっちが準備する時間を与えないように奇襲みたいな形できているんだとおもう」
「──すぐに準備をしないと」
「とりあえず、書類関係持ってきて。この国に関するいろいろな書類」
そう関係者に詰め寄っていった。
問題がないか、確認しなきゃ。何しろこの監査は私たちを陥れるためのものだ。 重箱の隅をつついて、こちらの不手際や不備を指摘してくるだろう。
そして、宮殿内を急いで回ること一時間ほど。
「とりあえず、これがバルティカや協定に関する書類ね」
「……そうです」
書類の山。これ、全部見なきゃいけないのか……。思わずため息が出て、見ているだけで気疲れしてしまう。
しかし、嘆いてはいられない。
日程に余裕がなさすぎる。
「すぐに幹部の人たちを集めて。私が対策をするから」
「わかった」
私達はすぐに資料つくりに奔走。その後、宮殿の人たちを急いで集める。
みんな周囲をキョロキョロしていたり、戸惑っている様子だった。
さらに、困難は続く。
「何? 今忙しいから、手短に話をお願い」
昼食のパンを急いで食べてペタンがいる事務室へ。
私とライナ、フォッシュが呼ばれたためだ。
机の上には、整理中の書類が山になっている。そしてペタンはどこかピリピリした様子で、机に肘をつき、指を組みながら話し始めた。
「すまんな、クソ忙しい時に。けど、こっちもそれに負けないくらい重要な事だったんだ
」
「監査より重要──ですか?」
「ああ」
私の質問に重い声色で答えるペタン。そして、その内容に絶句した。
「ガルフの奴がこの国を抜けるって?」
「ああ。四日後、つまり監査の日にここにある書類などを引き取って、もうこの国からいなくなるってことだよ」
「一大事じゃない!」
思わず叫んでしまう。
ガルフたちとは国家として彼らを守るための協定を結んだ。
国家の運営に尽くす代わりに、国家はガルフたちコボルトを守るという先日交わした協定だ。
協定によりいかなる時でも我がマリスネスにガルフたちコボルトを守らなければならない。
なのだが、その協定から抜ける通知を突き付けてきたというのだ。
「理由は?」
「一つ目、一時の利益のためとはいえこの国を裏切ってしまったことに罪悪感を感じていること」
フォッシュの言葉に頭を抱えてしまう。
「罪悪感を感じているなら、なおさら出ていってもらったら困るんだけど……」
「ああ、そんなことしたら、他国からの信用に響く」
「そうですよ」
そうだ、いくら彼らに非があるとはいえ、彼らを見捨てるという事実は変わらないし、他国はそう事実を認識する。
面目は丸つぶれ。排除を嫌悪し、どんな人でも受け入れるというこの国の信条は有名無実化してしまう。
少なくとも、外からは、そう感じられてしまうだろう。
どんな人でも受け入れるというこの国の心情は、言葉だけのものだと言われてしまうだろう。
「だからガルフが来る日に説得しようと交渉をするつもりなんだが、それをするには……」
「監査、絶対に出れなくなりますよね」
ライナの言葉通りだ。この国の命運がかかる監査、国王であるペタンが監査に参加するのは当然だし、私もそれを前提で動いていた。
「いいわけないじゃない。日をずらして、今は一緒に監査を乗り越えましょうよ」
「やれるものならやってるよ、ガルフがここに来るのが前日で、書類を次の日一日で全部持って帰っちまうんだってよ。日程も、ずらす気はないと聞いた。だからその日しかガルフを説得できる日がないんだ」
「一日で? できるわけないでしょ」
(多分理解してると思うの。それで、私達に会いたくないから、わざわざ監査がある日一日だけを指定して、それが終わると同時にここから去ってしまおうってことなんだと思う)
(それはつまり……)
(鼻から私達と話し合う気がないってこと)
まじかい……。予想もしなかった事態に頭を抱えてしまう。
次から次へと……本当に頭抱えるなぁ……。
それでも、行かないわけにはいかない。これは、ペタンでないと絶対にできない。それは彼にやってもらって……。監査の方は──仕方がない。
「わかった。監査は私達がやるから、あなた達はガルフの説得をお願い」
「了解。お前ならできる。信じてるぜ」
私達はマリスネスに到着。できるだけ早くつこうと睡眠時間や休憩時間を削り気味だったため、疲れが残っているが、贅沢は言っていられない。
馬車で宮殿に乗り込み、早足でペタンのところへ。
「おひさ! 鉱山の方、取り戻したよ」
「ありがとう、センドラー」
いつもより簡易的なあいさつ。悠長にしている場合じゃないというのが、互いに理解している。
すぐにフォッシュやライナたちともども政務室へ。
政務室も、以前着た時とは違い、本が散らかってたり、ごちゃごちゃしている。かなり慌てているのが理解できる。
政務室についた瞬間、センドラーを人格を交代。すぐに話し合いが始まる。
「日付は?」
「すでに査察団を送っていて、5日後には到着するそうだ」
その言葉に私は驚く。これじゃあ準備が間に合わないじゃない。
「そんなすぐ?」
「多分、こっちが準備する時間を与えないように奇襲みたいな形できているんだとおもう」
「──すぐに準備をしないと」
「とりあえず、書類関係持ってきて。この国に関するいろいろな書類」
そう関係者に詰め寄っていった。
問題がないか、確認しなきゃ。何しろこの監査は私たちを陥れるためのものだ。 重箱の隅をつついて、こちらの不手際や不備を指摘してくるだろう。
そして、宮殿内を急いで回ること一時間ほど。
「とりあえず、これがバルティカや協定に関する書類ね」
「……そうです」
書類の山。これ、全部見なきゃいけないのか……。思わずため息が出て、見ているだけで気疲れしてしまう。
しかし、嘆いてはいられない。
日程に余裕がなさすぎる。
「すぐに幹部の人たちを集めて。私が対策をするから」
「わかった」
私達はすぐに資料つくりに奔走。その後、宮殿の人たちを急いで集める。
みんな周囲をキョロキョロしていたり、戸惑っている様子だった。
さらに、困難は続く。
「何? 今忙しいから、手短に話をお願い」
昼食のパンを急いで食べてペタンがいる事務室へ。
私とライナ、フォッシュが呼ばれたためだ。
机の上には、整理中の書類が山になっている。そしてペタンはどこかピリピリした様子で、机に肘をつき、指を組みながら話し始めた。
「すまんな、クソ忙しい時に。けど、こっちもそれに負けないくらい重要な事だったんだ
」
「監査より重要──ですか?」
「ああ」
私の質問に重い声色で答えるペタン。そして、その内容に絶句した。
「ガルフの奴がこの国を抜けるって?」
「ああ。四日後、つまり監査の日にここにある書類などを引き取って、もうこの国からいなくなるってことだよ」
「一大事じゃない!」
思わず叫んでしまう。
ガルフたちとは国家として彼らを守るための協定を結んだ。
国家の運営に尽くす代わりに、国家はガルフたちコボルトを守るという先日交わした協定だ。
協定によりいかなる時でも我がマリスネスにガルフたちコボルトを守らなければならない。
なのだが、その協定から抜ける通知を突き付けてきたというのだ。
「理由は?」
「一つ目、一時の利益のためとはいえこの国を裏切ってしまったことに罪悪感を感じていること」
フォッシュの言葉に頭を抱えてしまう。
「罪悪感を感じているなら、なおさら出ていってもらったら困るんだけど……」
「ああ、そんなことしたら、他国からの信用に響く」
「そうですよ」
そうだ、いくら彼らに非があるとはいえ、彼らを見捨てるという事実は変わらないし、他国はそう事実を認識する。
面目は丸つぶれ。排除を嫌悪し、どんな人でも受け入れるというこの国の信条は有名無実化してしまう。
少なくとも、外からは、そう感じられてしまうだろう。
どんな人でも受け入れるというこの国の心情は、言葉だけのものだと言われてしまうだろう。
「だからガルフが来る日に説得しようと交渉をするつもりなんだが、それをするには……」
「監査、絶対に出れなくなりますよね」
ライナの言葉通りだ。この国の命運がかかる監査、国王であるペタンが監査に参加するのは当然だし、私もそれを前提で動いていた。
「いいわけないじゃない。日をずらして、今は一緒に監査を乗り越えましょうよ」
「やれるものならやってるよ、ガルフがここに来るのが前日で、書類を次の日一日で全部持って帰っちまうんだってよ。日程も、ずらす気はないと聞いた。だからその日しかガルフを説得できる日がないんだ」
「一日で? できるわけないでしょ」
(多分理解してると思うの。それで、私達に会いたくないから、わざわざ監査がある日一日だけを指定して、それが終わると同時にここから去ってしまおうってことなんだと思う)
(それはつまり……)
(鼻から私達と話し合う気がないってこと)
まじかい……。予想もしなかった事態に頭を抱えてしまう。
次から次へと……本当に頭抱えるなぁ……。
それでも、行かないわけにはいかない。これは、ペタンでないと絶対にできない。それは彼にやってもらって……。監査の方は──仕方がない。
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