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ネフィリムフィア編
第44話 大丈夫。ルナならできる
しおりを挟む「信一君。もう、お昼みたいだね。なんか、恥ずかしい……」
「そ、そうだね。とりあえず、昼ご飯を食べに行こうか──」
「うん──賛成! 私さっき道を通った時のおしゃれなパスタ屋さんあったじゃん。そこ行ってみたい」
そして俺たちはそのお店に向かっていく。
おしゃれなカフェという感じでとてもいい雰囲気の店。
「すごい、おいしいよこれ。村じゃ見たことがないよ」
出て来たパスタは、白いクリームが乗っかったパスタ。クリームがとてもおいしかった。おまけに、みんなで楽しく会話しながらの食事は、その食事自体をより一層おいしくさせた。
それから、俺たちはいろいろな場所を回った。この街の美術館や博物館など。
地方の村では見ることのできないようない貴重な絵画や展示品を見たり。
途中、露店でおいしそうなパフェを食べながら生活の話をする。
互いに困ったことや楽しいこと。
ちなみに、教会で子供たちと暮らしていることを告げると。「へぇ、すごいなぁ。楽しそう」と興味しんしんに食いついてきた。
それからも、いろいろな所を巡り歩く。
すこしだけど、彼女と打ち解けることができたのがわかる。
彼女の表情が、しだいにかしこまった作り笑顔ではなくて、本心から喜んでいるのがよくわかる。
何より、俺だけじゃなくメルアやダルクともよい関係を気づけた。
最初は内気で、怖がりな性格で大丈夫かなと思ったけれど、問題はなかった。
「ふぅ~~、歩き疲れちゃった。もう日が暮れ始めてるね。次で最後にしよっか」
「夕方かー、じゃあ最後はあそこで決まりかな!」
そして夕方、ルナが突然「3人に連れていきたい場所がある」と言い始め。目的地へ。
そのルナがどうしても見せたかった場所。それは──。
「これは、海だよね」
「正解。みんな、山奥の村生まれってことはこういうの見たことないと思ってたんだけど、どう?」
ルナが連れ来たのは、海岸の公園だった。
「これが海かあ。夕日に染まっているのが素敵~~。私初めて見た」
「すっげぇ。おっきくて綺麗だなー」
夕日の光に染まる海がとてもきれいだ。というかこの世界に来て初めて見た海。
ダルクとメルアもその光景にとても喜んでいる。
「どう? ここ、この街の名物なの。海に沈む夕日は、誰が見ても感動ものだって有名だよ
」
「そうだよ。本当にきれい!」
そして2人とも、生まれて初めて見た光景をまじまじと目に焼き付けた。
ほどなくして夕日は沈み、俺たちはルナの家へと帰っていく。
大都市だけあって、夜でも大通りはランプの光で明るく照らされている。そして人がにぎやかだ。いろいろな人が仕事の愚痴や、仕事での成果を自慢したりしている。
世界は違うけれど、俺たちの世界の東京に近いものがある。
そしてそんな明るい道を歩いながら俺はルナに話しかける。
「ルナ。今日、どうだった?」
「私、楽しかった。本当に楽しかった」
ルナはいつもよりテンションを高くして答える。きらきらとした目つきがその言葉が心からの本心であることを示している。
「うん。それは何よりだよ。私も、本当に楽しかったよ!」
メルアにとっては初めての大都市。明るい彼女にこういうにぎやかな地はとてもにあっていると思う。
「楽しかった。楽しかった。けど──」
するとルナはは表情を暗くしてうつむき始める。
うるうると目を湿らせ、その美しい瞳から1敵の涙を出し始めた。
俺も、メルアも、ダルクを理解していた。彼女が何を思い出しているのかを──。
「私、魔王軍なんかなりたくない。信一君も、メルアも、この街も、みんな大好き。だから──、それを壊したくなんかない」
「その気持ちは、俺もわかる。俺だって、故郷の奴らが傷つく姿なんて見たくない。ましてや、それをやっちまったのが自分だったなんて、考えたくもねぇ……」
ダルクの言う通りだ。いくら操られていたとはいえ、自分で周囲を傷つけてしまったなんて知ったら相当落ち込む。
ましてや気弱なルナならその気持ちは大きい。下手をしたらトラウマを追って、一生立ち直れなくなってしまうことだってあり得る。
そんなこと、絶対にさせてたまるか!
俺は、行動に出た。
優しく、ぎゅっと彼女の右手を握る。柔らかくて、繊細で、冷たい手。そしてルナの眼をじっと見つめる。彼女が持っている不安や、イヤな思いを吹き飛ばす様に──。
そしてそのまま強く語り掛ける。
「大丈夫だルナ。お前は、俺たちが絶対に守る。魔王軍になんか、絶対にさせない」
俺がメルアとダルクに向けると、2人とも相槌を打つ。
「そうだよ。約束するよ。今日一緒にいて、ルナちゃんの事よくわかった。魔王軍に入るような人じゃないって。だから、私たち、協力するよ」
「ああ。あんな奴ら、ぶっ飛ばしてやるからよ!」
2人の勇気づけるような言葉に、ルナの瞳から涙が止まり始め、2人の顔を見上げる。
すこしは、勇気を取り戻せたみたいだな。
「──うん。わたし、頑張る」
かすれた声、しかしその中に、自分の運命に立ち向かっていくという強さがほんの少しだけ感じたような気がする。
大丈夫。ルナならできる。そう強く叫び、俺たちは彼女の家へと帰っていった。
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