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撤退不能
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「この敗北主義者の根性なしめ!」
「やはり、貴様のような軟弱者に国は任せられん。その立場から降りてもらおうか!」
以前、少しでも撤退や戦いを避けることをいうものにはこんな罵声を浴びせてきた」今回も、同じようなことをしているのだろう。部下に責任を押し付けて、自分は悪くないと。本当にあきれる。しかし、嘆いても仕方がない。
衝突はするだろうが、やるしかない。そんなことを考えながら周囲を見る。
雨が強くなってきて、川の水もだんだん嵩が増してきている。このままじゃ、このままだと川が氾濫しそう。
「さすがにまずいって……。川、渡らなきゃいけないんですよね」
マンダレー王国側は、この川の向こう。よく見ると、家畜たちが流されているのが見える。
橋はいくつかあるが、小さいものばかりで大群や部隊が通るには不十分。
「これ、いろいろと破綻してますよね」
冒険者の一人が言う。私もそれは同意だ。しかし──。
「でも、だからと言って取れる手立てがないんですよ」
冒険者はともかく、正規の兵士にとって上官の命令は絶対だ。敵前逃亡なんてしたら、処罰が下る。でも、どうやってこの状況を伝えて撤退を決めさせればいいのか。
「最前線ではないから、どうしても指示を出すのが遅れる。おまけに指揮官で会議をして──こっちに戻ってなんかやっていたら間に合わない──」
軍の奴らは自分に責任が降りかかるのを極端に嫌う。撤退なんてしたら自分たちの責任になるから壊滅的な被害が出ないかぎり誤りを認めることはない。
「やっぱり、私達の独断で動くしかないのかな??」
「そうねミシェウ」
私達なら──身分を考えればみんな従ってくれるかもしれない。後でモメは「するだろうけど──。
そんなことを考えた時、背後から剣を持った男が数人ほど突っ込んできた
甲冑を着た人。
また奇襲だ──直ちに戦闘体制に入って退治するが、2人ほど怪我をしてしまった。
そして、他の冒険者達は周囲をきょろきょろとみて警戒していたり、怯えたりしていた。
どこから奇襲されるかわからない恐怖に、神経をすり減らしているのがわかる。
色々な可能性を考えながら、行くしかない。彼らが処罰されるのは見たくはない。
橋まではまだ距離がある。明日までかかりそう。警戒しながら、ずっと歩いた。
歩きながらいろいろな人とすれ違う。みんなダメージを受けていそう。
痩せこけた人の姿。明らかに食料不足だというのがわかる。それだけじゃない──。
「熱出してるじゃない! 大丈夫??」
高熱を出して、衰弱しきっている人もいた。ジャングルというのは──見たこともない動物も多い。だからこうした病気とは隣り合わせなのだ。
「ちょっとこれは、戦える状態じゃないわ」
「返すしかないわね……」
振り返ると、兵士や冒険者の中には弱ったり座り込んでいる人が多数。
「事後報告になってしまいますが──私とミシェウのサインをあげるから撤退して」
比較的元気な兵士を、伝令係に任命。紙に戦場の現状をうまくまとめる。一人、伝令係として前線の現状を伝えるためにホーネルカーのところに向かわせた。
話を聞いてくれるかは望み薄ではあるが、まずは正規の手段で訴える。それで断られたら、何か言えばよい。
「王都で、また絶対会いましょう? ありがとうね、王国のために頑張ってくれて」
「絶対、生きて帰ってね」
去っていく人たちは、申し訳なさそうな表情をしてたり頭を下げたりしてきた。もう少し待ってて、あなたたちのその想い、無駄にはさせないから。
さらに道を進んでいると、木の幹に倒れこんでいる人を見かける。みんな、衰弱していたり怪我をしていたりしている。応急措置をしてから、ラングーンの方に逃がしていった。
そして、次の日に細い川を渡る橋へ到達。川は茶色く濁ってゴォォォと音を立て流れている。
今にも、崩れてしまいそう……そしたら流されて終わりかもね。でも、行かないわけにはいかない。
ミシェウの方を向く。真剣な表情。
同じタイミングで、コクリとうなづいた。歩くだけで10分はかかりそう。しかし、橋は各橋げたにひびが入っているくらいぼろぼろで濁流に橋流されてもおかしくはないくらい。
それでも橋を渡る。後ろには数十人の人たち。
途中、ミシミシと音を立てながらもなんとか橋を渡り切った。渡り切って、大丈夫かどうか声を掛けようとした次の瞬間──。
ドォォォォォォォォォォン!!
突然爆発音が後ろから聞こえる。振り向いてみると、私たちが渡ってきた橋、こっちよりの下駄の部分が爆発し、周辺が崩れていった。
「え──」
予想もしなかった事態。そして、それを待っていたかのように敵兵士が草むらから出てきた。
これで、私たちの退路はなくなった。逃げ場がない──。
「行くしかないわね──」
「はい」
おそらく、作戦だったのだ。この川にかかる橋は少ないが、必ずどこかで渡らなければいけない。だからジャングルに隠れて橋を渡ったところを四方八方から奇襲。同時に橋を破壊すれば逃げ場を奪うこととなりそのまま殲滅できる。
幸い、戦えそうにない者は橋を渡る前に返した。
さっきよりは戦いになれそう。
周囲に視線を送って、コクリと頷いた。
冒険者も、ミシェウも強気な表情で首を縦に振る。
「やはり、貴様のような軟弱者に国は任せられん。その立場から降りてもらおうか!」
以前、少しでも撤退や戦いを避けることをいうものにはこんな罵声を浴びせてきた」今回も、同じようなことをしているのだろう。部下に責任を押し付けて、自分は悪くないと。本当にあきれる。しかし、嘆いても仕方がない。
衝突はするだろうが、やるしかない。そんなことを考えながら周囲を見る。
雨が強くなってきて、川の水もだんだん嵩が増してきている。このままじゃ、このままだと川が氾濫しそう。
「さすがにまずいって……。川、渡らなきゃいけないんですよね」
マンダレー王国側は、この川の向こう。よく見ると、家畜たちが流されているのが見える。
橋はいくつかあるが、小さいものばかりで大群や部隊が通るには不十分。
「これ、いろいろと破綻してますよね」
冒険者の一人が言う。私もそれは同意だ。しかし──。
「でも、だからと言って取れる手立てがないんですよ」
冒険者はともかく、正規の兵士にとって上官の命令は絶対だ。敵前逃亡なんてしたら、処罰が下る。でも、どうやってこの状況を伝えて撤退を決めさせればいいのか。
「最前線ではないから、どうしても指示を出すのが遅れる。おまけに指揮官で会議をして──こっちに戻ってなんかやっていたら間に合わない──」
軍の奴らは自分に責任が降りかかるのを極端に嫌う。撤退なんてしたら自分たちの責任になるから壊滅的な被害が出ないかぎり誤りを認めることはない。
「やっぱり、私達の独断で動くしかないのかな??」
「そうねミシェウ」
私達なら──身分を考えればみんな従ってくれるかもしれない。後でモメは「するだろうけど──。
そんなことを考えた時、背後から剣を持った男が数人ほど突っ込んできた
甲冑を着た人。
また奇襲だ──直ちに戦闘体制に入って退治するが、2人ほど怪我をしてしまった。
そして、他の冒険者達は周囲をきょろきょろとみて警戒していたり、怯えたりしていた。
どこから奇襲されるかわからない恐怖に、神経をすり減らしているのがわかる。
色々な可能性を考えながら、行くしかない。彼らが処罰されるのは見たくはない。
橋まではまだ距離がある。明日までかかりそう。警戒しながら、ずっと歩いた。
歩きながらいろいろな人とすれ違う。みんなダメージを受けていそう。
痩せこけた人の姿。明らかに食料不足だというのがわかる。それだけじゃない──。
「熱出してるじゃない! 大丈夫??」
高熱を出して、衰弱しきっている人もいた。ジャングルというのは──見たこともない動物も多い。だからこうした病気とは隣り合わせなのだ。
「ちょっとこれは、戦える状態じゃないわ」
「返すしかないわね……」
振り返ると、兵士や冒険者の中には弱ったり座り込んでいる人が多数。
「事後報告になってしまいますが──私とミシェウのサインをあげるから撤退して」
比較的元気な兵士を、伝令係に任命。紙に戦場の現状をうまくまとめる。一人、伝令係として前線の現状を伝えるためにホーネルカーのところに向かわせた。
話を聞いてくれるかは望み薄ではあるが、まずは正規の手段で訴える。それで断られたら、何か言えばよい。
「王都で、また絶対会いましょう? ありがとうね、王国のために頑張ってくれて」
「絶対、生きて帰ってね」
去っていく人たちは、申し訳なさそうな表情をしてたり頭を下げたりしてきた。もう少し待ってて、あなたたちのその想い、無駄にはさせないから。
さらに道を進んでいると、木の幹に倒れこんでいる人を見かける。みんな、衰弱していたり怪我をしていたりしている。応急措置をしてから、ラングーンの方に逃がしていった。
そして、次の日に細い川を渡る橋へ到達。川は茶色く濁ってゴォォォと音を立て流れている。
今にも、崩れてしまいそう……そしたら流されて終わりかもね。でも、行かないわけにはいかない。
ミシェウの方を向く。真剣な表情。
同じタイミングで、コクリとうなづいた。歩くだけで10分はかかりそう。しかし、橋は各橋げたにひびが入っているくらいぼろぼろで濁流に橋流されてもおかしくはないくらい。
それでも橋を渡る。後ろには数十人の人たち。
途中、ミシミシと音を立てながらもなんとか橋を渡り切った。渡り切って、大丈夫かどうか声を掛けようとした次の瞬間──。
ドォォォォォォォォォォン!!
突然爆発音が後ろから聞こえる。振り向いてみると、私たちが渡ってきた橋、こっちよりの下駄の部分が爆発し、周辺が崩れていった。
「え──」
予想もしなかった事態。そして、それを待っていたかのように敵兵士が草むらから出てきた。
これで、私たちの退路はなくなった。逃げ場がない──。
「行くしかないわね──」
「はい」
おそらく、作戦だったのだ。この川にかかる橋は少ないが、必ずどこかで渡らなければいけない。だからジャングルに隠れて橋を渡ったところを四方八方から奇襲。同時に橋を破壊すれば逃げ場を奪うこととなりそのまま殲滅できる。
幸い、戦えそうにない者は橋を渡る前に返した。
さっきよりは戦いになれそう。
周囲に視線を送って、コクリと頷いた。
冒険者も、ミシェウも強気な表情で首を縦に振る。
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