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3章
聞き取り
しおりを挟む「ああ……」
アルルの質問に、おじさんは空の方を見上げた。何か心当たりがあるのだろうか。
「これは、商人から聞いたんだけどさ──国境の先でさ、食糧の買い占めが起こってるんだって。それで、何かあったのかって聞いてみたんだよ。そしたらさ」
買占めみたいなことが流行ってるみたいで、値上がりが止まらないんだと。不穏な動きね。
「聞いたところだと、軍が買い占めているんだって。急に上層部から集めてくれって命令が来てるんだってよ。さすがに、理由は教えてくれなかったみたいだけど」
「相手も、有事が近いって踏んでるってことみたい」
まあ、物資というのは準備するのに時間がかかるからね。いくら秘密裏にとはいっても、隠すには限界があってこういった所からバレるようになっているのよね。
やっぱり、相手にとって戦いは規定事項なのだろうか。
あんまりいても商売の邪魔になっちゃうし、他行こうか。
「ありがとうございました」
「いえいえ。気を付けるんだよ」
それからも、色々な人に聞いてみる。
今度は、金物屋。天然パーマをかけたおばさんの人が…住みたいね。
さっきまでみたいに、店の商品のことを聞いてから最近何か変わったことが起きてないかを聞いてみた。
「まあ、色々起こってるよ。私達だって生活が懸かってるし、場合によってはもっと安全な地へ避難しなきゃいけないからねぇ。攻撃が飛んでくる前に」
「確かにですね」
それから、商品の取引で以前と比べて変わったことがないか聞いてみた。
やはり金属類も、高騰してきているとか。特に武器などに使う器具が品薄になってきているのだと。
「金属自体もそうだけど、色々なものに使う、ネジみたいな器具が品薄になってるみたいね。どうしてこうなってるかは──言わずもかな」
「まあ、そうよね」
ララーナが呆れたように言葉を返してため息をついた。
こうしてみると、私たちが直接発表しなくたって周囲の状況から色々と察せるのよね。いくら周囲に情報は伏せることはできても、実際にモノを動かさなきゃ物理的に戦うことはできない。
そして、身の回りの情報統制は出来ても不審な動きはどこかで噂になってしまう。
誰にもバレないように大規模に人や物を動かすというのは、かなり難易度が高いのだ。
「じゃあ、また来るかもしれないから──何かあったらどんな些細な事でも教えてくれたら助かるわ」
「わかったわ。また会おうね」
2.3件店を回ったところで次はどうしようかと考えていた。
色々と、面白い情報が聞けた。
その中で実際に北ローランドに親戚がいる人から聞いたのは──ここ最近、兵士の求人やスカウトが増えている。さらに、囚人たちを兵役を務めることで罪を開放するという動きが出ていることかな。
「囚人の開放? そこまで兵士を集めようとしているのね」
「ええ。個人的には治安のこととか不安なんだけどねぇ」
「多分、激戦地に送られて消耗品にされて終わりだと思うわ」
まあ、誰だって治安の事とかはわかっているだろうし戦争になったら誰かが激戦地で戦わなくてはならない。
今回はそれが──囚人になるってことね。それならだれも悲しまないだろうし。
「特に、死刑囚の人の応募が殺到してるんだって」
「まあそうよね。黙って死ぬよりは、生き残りをかけて激戦地でも飛び込んで行った方がいいもんね」
死刑囚か──もし攻めてきたら略奪とか犯罪がすごいことになりそう。その分進軍の速度が遅くなったり反感を買って統治に影響が出来そうだけど。
色々な人と直接話してみると、それなりに情報は入ってくる。やっぱり、戦いが近くなっているってことがよーくわかった。
「一般の人に、聞いてみるのもわるくないとおもう」
「そうね」
次はどんな人に話開けてみようか。
そう考えて周囲を見回していると横から誰かが話しかけてきた。
「こんなところで、何をしているのですか?」
さっきの人だ。確か──。王宮でいた髪の長い騎士の格好をした男の人。こんなところで会うなんて偶然ね。
「名前は?」
「カルモナです、アルルさん」
カルモナは口元に人差し指を当て、言葉を返してくる。
「ちょっと、今の状況を街の人に聞いてみただけ」
「そうなんですね。けど、説明自体は王宮でもしているはずですよね」
確かにそうだし、ローランドの状況についての資料ももらっていてすでに目を通している。
けど、資料や人から聞いた言葉だけじゃあ足りないのよね。
「政府の人間だけだと、情報としては不十分だわ。自分たちを良く見せようと、偽りの数字を上げるとかよくあるのよ」
「ああ、ミシェウ様のところでもあるんですね」
「ええ。ほとんどの人は、まじめに国のことを考えてくれている。でも、どうしても一部、そういった悪い人が出てくるわ。そして、一部そういった人がいるだけで、国というのは亀裂が入ってしまうの。
だから、面倒だけど自分たちで人々を直接見って聞いてしないと」
ララーナの言葉通りだ。私は──国民の99%は、周囲のことをよく考え、善悪の判断ができる善人だと思っている。けれど、どうしても悪に手を染めてしまう人間というのは一定数いてしまう。そして、ほんの少しの人間がそれを行って、許してしまえば簡単に王国にひびが入ってしまう。だから、自分で見て、目を光らせなきゃいけないのだ。
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