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3章
エジョフ
しおりを挟むゾイガ―。
吊り上がった目つき、筋肉質な肉体。焦げ茶色で、猛獣のような牙を持つ獣人のような姿をした男。ああ見えて人当たりが良く勝手に派閥を作る。
気付いたら俺の言う事に背いて、勝手に財産をため込む困った奴。どうせ金の話かなんかだろ。まあ、真正面から反抗でもしてこないなら切り捨てることもない。
それよりエジョフだ。
ノーデンがお辞儀をしてこの場から去るとコンコンとノックの音。「入れ」と言葉を返し、エジョフが入ってきた。
小柄で、小太り。中年でいつもにやにやとした笑みを浮かべている男。
瓶に入った飲み物をぐびぐび飲みながらこっちへ向かう。完全なアルコール依存症だと聞いているからアルコールだな。ま、成果を出しているならいい。あまり模範的過ぎて、我より人を引き付ける存在になっても困るしな。
「魔王様、こんにち──」
「おい、下らぬ挨拶はいい。ローランドへの進駐計画はどうなってる?」
特殊警察長官「エジョフ」多少強引なところがあるが外国からのスパイの一層、そして囚人たちを奴隷として扱い極寒の、利用価値がないと言われた土地を次々と開発。
我が国に多大な利益をもたらした人物。まあ、囚人や敵対勢力を酷使しし過ぎて多大な犠牲を払ってしまったが。
まあ、我に逆らったり国の利益に反するやつにはお似合いの末路だ。
エジョフは、ふらふらと酔っ払いながらバッグから書類を取り出し始める。
「今のところ計画通りとなっております。しかし、あまりに強引すぎる計画に反発がある」
「流石だ、おまえはこっちに都合の悪い事実もすべて教えてくれている」
都合の悪い事実。それを包み隠さず報告ができるものは少ない。皆、自分の評価を少しでも上げようと都合よ良い情報を捏造して嘘に嘘を塗り重ね、気が付いたら手遅れといったことがよくある。
仲間とて幹部とて信頼できるかどうかはわからん。こいつらは、保身のために平気でうそをつく。
どれだけ危険と分かっていても、自分の身分が危ういとみるや都合の悪いことは当たり前のように事実を隠す。ゾイガ―のような幹部クラスでさえだ。
だから、信頼できる人物による秘密警察が必要なのだ。
こいつには、それがない。真に我の忠実なしもべ。
そして、組織を掌握する手腕も一流といってもいい。
特殊警察を動員して──秘密を知らないと確実に判断を誤る。嘘偽りない事実を、私に告げてくれるものが。
すでに、秘密警察を駆使して組織内の人物のあらゆる情報を手に入れている。
どんなスキャンダルを持っているか。どんな不当な取引をしてどれだけの
利益を得たか。あるいは、どんな女と寝て、どんな性癖を持っているか。
そして、その女とのパイプさえも。
だから、こいつに逆らえる奴は私以外にいない。そして、嘘偽りない情報を教えてくれる。重要な話は、全てこいつから情報を仕入れているのだ。
「あと、ローデシアへの進駐計画でしたね。こちらのようになっております」
そしてエジョフは再び書類を取り出し机に置いた。我は置かれた書類をこっちに向け、1枚1枚丁寧に読む。周囲の奴らが我に情報をひた隠ししているせいで、我は出されたものは疑う癖がついてしまっている。
「すでに出来上がりつつあります。食料や弾薬の準備や手配も完了。後は、計画を進めて戦うだけです
「その理由つけはどうだ? 形だけでも、話はしておかなければなるまい。」
「明日、書類をまとめて外務大臣がローランドへ行って交渉をしてきます」
「それから?」
「確実にローランド側は要求を拒絶してくる。それから──国境沿いのうちの建物がローランドによって、破壊される予定……です」
「確実に、破壊される予定なんだな。ローランド側が原因という事実で」
「確実に、です。事実はそうなる予定です。すでに準備はできています」
エジョフは残りの酒を飲み干して、にやりと笑っていった。そうだ、確実──事実かどうかは関係ない。我々が作り出したものが世界にとっての真実なのだから。
そしてこの表情。今までのこいつからして、成功を確信めいている。われも思わず握っているグラスを強く握った。
「わかった。お前が言うなら嘘偽りはないと信じる」
「ありがとうございます」
酒癖の悪さを除けばこいつは王国でも一番優秀だと言ってもいい。
そしてエジョフの肩にポンと手を置き最後の言葉を掛ける。
こいつがそう言ってるのだから、そうなのだろう。準備は出来ている。後は、それを実行するだけだ。
「今度こそ、手に入れるのだ。われらが世界を手に入れるために。この戦いは、その一歩となる。必ず、成功するのだ」
「御意」
エジョフはそう言って頭を下げた。成功する以外に、我々が生き残る道はない。
敗北と、我々の消滅は等しい。
エジョフは、かなり酒を飲んだな、このアル中め。顔が真っ赤になりふらふらとした足取りでこの場を去っていった。
まあ、あいつも粛正や無実の罪を着せての強制労働など、やり過ぎている部分はあるが──世界の発展に犠牲は付きもの。強制労働がなければ、極寒で偏狭な土地に住む我らに生活が成り立たない。
彼らから搾り取らねば、全員死んでいた。必要な犠牲だったのだ。そんな彼らに報いるためにも、我々たちを虐げてきたやつらに復讐してやるためにも、負けるわけにはいかぬのだ。
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