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第35話 ネフィリムらしい攻略
しおりを挟むバチバチと火花を散らす2人。その一方で、俺はザインの動きを考えていた。どんな原理なのか、それに対応するにはどうすればいいのか。
璃緒もかなり疑問を持っているのがわかる。こっちへ近づいて、耳打ちしてきた。
「璃緒、どうしたんだ?」
「これ、チートじゃないですか?」
「え──」
「ちょっと、聞いてみます」
その言葉は、聞こえていたようだ。ザインがこっちに視線を向けてくる。
「どうしたの? あまりに勝てないから『卑怯だ』とか負け犬みたいなことを言い始めたの?」
「いいえ。まったく悪いとは感じてません。真剣勝負ですし──ただ、種はわかりました」
「どうしてそう感じたの?」
「髪の毛です。私たちよりずっと早く動いているはずなのに、なびいていませんまるでゆっくり動いているかのようでした。時間を増やしているかのかのような感じがします」
真剣な表情。疑念ではない確信を持っているのがわかる。俺も、戦っていた時の記憶を手繰り寄せた。確かに、なびく髪がゆっくりだった気が。そこまで目が届いてなかった、さすがは璃緒だ。
その言葉真実の可能性は十分ある。
あの反射速度、通常の生き物では絶対に不可能なはず。それなら、今まで疑問に思っていたことがすべて解決する。本当なのか──。
ザインはクククと言わんばかりに笑い声をあげ、顔を上げて右手で抑える。
「すごいね、こんな簡単に種がバレちゃうなんて。実力はあるなって思ってたんだ」
「からすみさんとの戦いの中で、よく2人の戦いを観察して気になったんです。最初はどこか違和感があって、それからずっとあなたを見て理解しました」
「どんなからくりなのじゃ?」
「僕はね──身に着けたんだよ。澄人の負けて以降何度も修行して、身に着けたんだ。自分の1秒を、2秒に変える力をね」
何だそれ。まさしくチートだ。単純にスピードや反射神経を上げたわけじゃないのか。
どう対抗すればいいものか。
「ネタバラシ、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。それだけじゃ50点だし? だって、種がわかっただけでどう止めるかわからないじゃん」
余裕そうな表情で、自分が負けるなんて微塵も思っているのがわかる。そんな中、ネフィリムは真剣な表情でじっとザインを見つめていた。
「気にするな。貴様を倒す手段は、既についておる」
「ハッタリかな? 急造チームでどう戦うのさ?」
確かに。何か手でもあるのか──そう考えた瞬間、ネフィリムかこっちに近寄ってひそひそと耳打ちしてきた。
「させるわけないじゃん!!」
すぐにザインが突っ込んできた。やはり攻撃が早い。すぐに話を聞くのを中止して対応しようとしたその時。
「させません!」
そう璃緒が叫んで、寸前で攻撃を止めた。すぐにザインは連続攻撃に入り、視界にとらえるのがやっとの攻撃をぎりぎりで防いでいく。だが防戦一方。長くはもたなそう。
「話を聞くのじゃ」
そして、ネフィリムが作戦を耳打ちしてきた。そうだ、璃緒だってザインを倒すために必死に戦っている。璃緒の頑張りを無駄にするわけにはいかない。
「なるほど、難しいけどやってみるよ」
「澄人なら絶対できるのじゃ。信じておるぞ」
ネフィリムが自信をもって親指を立ててきた。この作戦、ネフィリムの負担も多いけど──自信に満ちた表情をしている。それ以外策はないのだからやってみよう。
「これで終わりだよ!!」
「きゃぁぁぁぁっ!!」
防戦一方だった璃緒だが、ザインの手数に抗しきれずとうとう攻撃を受けてしまう。無防備に吹き飛ばされる肉体。
そこに追い打ちを掛けようとさらに突っ込んでくるザイン。まずい、早く対応しないと。
ネフィリムと同じタイミングで、俺は右、ネフィリムは左から切りかかる。
「甘いよ」
同時だった攻撃を素早い身のこなしで対応される。それは織り込み済み、防がれてもさらに攻撃を仕掛けていく。
「どうしたの? 恋人同士なのにバラバラじゃない?」
「黙れ」
「そうなのじゃ。これから強くなるのじゃ!」
本来、連携というものな長い時間かけて経験を積んで行うもの。即席でやったところでどうしたってスキができる。それなら、スキができないくらい全力で突っ込む。互いにずっと敵同士だったが故に攻撃パターンが読める。もちろんネフィリムもだってわかっている。これがネフィリムが提唱した策だった。さっき、ネフィリムが耳打ちした言葉。
「そちは、わらわの攻撃パターン理解してるじゃろ?」
「ああ」
「わらわもじゃ。じゃから、同時に攻撃を仕掛ける。全力で戦うぞ」
互いに全力でぶつかっていく。動きは──わかってるだろ。荒いけど、なんともネフィリムらしい。左右同時にザインに攻撃を仕掛けるが、本当にネフィリムの攻撃パターンがわかる。俺はそれにかぶらないように攻撃を仕掛けていく。
「ふ~~ん、やるね。それなら、これはどう?」
そして、ザインはネフィリムの攻撃を受けた直後体を回転させ、俺に向かって思いっきり剣を振り下ろしてきた。さっきまでの速さを意識した攻撃とは違う力任せの攻撃。
しかし、突然の戦闘スタイルの変化に戸惑い威力を殺しきれなかった。
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