35 / 103
第35話 元勇者 思わぬ敵に出会う
しおりを挟む
「わかったわ、私が答えてあげる。あなたたちが納得する内容を──」
そしてルシフェルは握りこぶしをしながら叫び始める。
「あなたたち、人々の痛みを、幸せを奪われる痛みを知りなさい。どんな人にも素晴らしい人生があるの。そして一人ひとりの人間が持つ幸福を、喜びを、希望や愛その権利を奪う権利は誰にもないの。そして残された遺族に悲しもや苦しみや痛みを与える権利は誰にもないわ」
「だから、命を奪うのは、人を殺すのはいけないことなのよ。逃げたとしても、罪悪感にむしばまれる。今は何も感じていない素振りをしているけれど、心のどこかでその負い目を感じているはずよ」
「うっ──」
その言葉にセリカの身体がピクリと動く。彼女も心当たりがあるのだろう。他の少年兵も自然にヤジの言葉を叫ばなくなる。懸命なルシフェルの叫び声だけがこの場を支配していた。
「そして罪を犯した人間は必ず報いがやってくるわ。逃げたとしても一生その呵責から逃れることは出来ない。まともな人間からは見放される。あなたに幸福な人生は絶対にやってこないわ。だから──、大切な人のために、あなたたち自身のために大切な命を、絶対に!!!!」
ルシフェルの圧倒的な迫力に少年達は言葉を失う。
キョロキョロと互いに顔を見合わせている。まさかの迫力ある言葉にどうすればいいのかわからないのだろう。
そりゃそうだ。
きれいごとばかり言っている頭にお花畑がついているバカ政治家や聖人気取りじゃない元魔王の言葉だ。
重みが違う
そして真ん中にいるリーダー格の少年に話しかける。
「あなた、名前は?」
「グラだ……」
グラはルシフェルの眼力に圧倒され、1,2歩後ずさりしながら答える。ルシフェルは彼を見つめながらゆっくりと接近、そして──。
ギュッ──!
ルシフェルはグラのもとに接近、そして自分の想いを込めるように強く抱きしめる。
「絶対に約束するわ──。私は絶対にあなた達を見捨てない」
「だから、もうやめなさい──」
少年兵たちはうなだれる。自分たちが犯した罪の重さに。
俺はその光景を見て心の底からほっとした。
いくらなんでも次から次へと処刑台に彼らを運ぶわけにはいかない。将軍様の恐怖国家じゃあるまいし──、
まともな教育を受けていない少年兵がどうすれば立ち直るか悩んでいた。
確かに彼らは罰せられることになってもおかしくはない。
しかしどれだけ罰を与えても、そもそも悪い事をしたと考えていないので何故こんな目にあわなきゃいけないんだという反発心と感情だけが残り、逆恨みの原因になってしまう。
そしてまた似たような事を繰り返すだろう。
「わかったよ、もうこんなことはしないよ……」
「その一言が、私は聞きたかったわ──」
少年たちの心の底からの一言、グラを抱きしめながらルシフェルは周囲を見渡しほほ笑む。
俺も嬉しい気持ちだ、まずは彼らが自分の罪を理解してくれて嬉しかった。
その事に俺はほっと胸を撫で下ろす。
まあ、政府の奴らから言われたら罪には問われるだろうけど──。それは司法が解決することだ、俺達が口を出すことじゃない。
「とりあえず、これで住民たちの安全は守られた。後は黒幕を見つけるだけだな」
「そうか、それなら私も協力したい。力になってもいいか?」
「そうだな、一緒に力を合わせて解決しよう」
そして安堵の雰囲気がこの場を包んでいたその時──。
「何だ? この音は……」
後ろから何か音が聞こえる。そしてその音が少しずつ近づいている事に気付き後ろを振り向く。
誰かがこっちに向かって歩いてくるのがかる。
その人物は俺と同じくらいの背、マントはおっていて小さな笛を吹きながら歩いてくる。後ろには漆黒に光る塊がついてくるように存在している。
前にもこんな奴、俺は見たことあるぞ……。
っていうかあいつ、思い出した!!
「貴様、ハイドか。こんなところにいたのか──」
ルシフェルもあまりに驚愕したせいか言葉を失ってしまう。まあ、あいつの姿を見て一番驚くのはルシフェルだもんな──。
「ほう、元勇者にルシフェル。あれほどいがみ合っていた2人がくっつくとはな」
「ハイド、あんたならやりかねないと思っていたけど。こんなことをしていたのね──」
ルシフェルがその少年をギッと睨みつけ言い放つ。
ハイドリヒ・ダリューゲ、通称ハイド。
なのを隠そうこいつは魔王軍の元幹部だった。
圧倒的な種族値から来る戦闘力は数ある強い冒険者をなぎ倒し、倒した冒険者達に<ソウルドレイン>を使い魂を奪い自らのエネルギーに変えた。
散々手を焼かされたあと、俺との死闘での末、ギリギリで俺が勝利したんだっけ。
魔王軍の中でも1.2を争うくらいの実力者だ。
そしてハイドはグラ達に視線を移す。
「残念だったな。話はすべて聞いた。俺と貴様たちが袂を分れる事になるとは、しかし残念だったよ」
その眼光に圧倒されるグラ達、しかし何とか勇気を出して震えたような声色で言い返した。
「ハイド、すまないがもう俺達はお前のいいなりにはならない。もうあんなことはしない──」
「だったら貴様たちは用済みだ。使い終わったボロ雑巾のように始末するだけだ」
そしてルシフェルは握りこぶしをしながら叫び始める。
「あなたたち、人々の痛みを、幸せを奪われる痛みを知りなさい。どんな人にも素晴らしい人生があるの。そして一人ひとりの人間が持つ幸福を、喜びを、希望や愛その権利を奪う権利は誰にもないの。そして残された遺族に悲しもや苦しみや痛みを与える権利は誰にもないわ」
「だから、命を奪うのは、人を殺すのはいけないことなのよ。逃げたとしても、罪悪感にむしばまれる。今は何も感じていない素振りをしているけれど、心のどこかでその負い目を感じているはずよ」
「うっ──」
その言葉にセリカの身体がピクリと動く。彼女も心当たりがあるのだろう。他の少年兵も自然にヤジの言葉を叫ばなくなる。懸命なルシフェルの叫び声だけがこの場を支配していた。
「そして罪を犯した人間は必ず報いがやってくるわ。逃げたとしても一生その呵責から逃れることは出来ない。まともな人間からは見放される。あなたに幸福な人生は絶対にやってこないわ。だから──、大切な人のために、あなたたち自身のために大切な命を、絶対に!!!!」
ルシフェルの圧倒的な迫力に少年達は言葉を失う。
キョロキョロと互いに顔を見合わせている。まさかの迫力ある言葉にどうすればいいのかわからないのだろう。
そりゃそうだ。
きれいごとばかり言っている頭にお花畑がついているバカ政治家や聖人気取りじゃない元魔王の言葉だ。
重みが違う
そして真ん中にいるリーダー格の少年に話しかける。
「あなた、名前は?」
「グラだ……」
グラはルシフェルの眼力に圧倒され、1,2歩後ずさりしながら答える。ルシフェルは彼を見つめながらゆっくりと接近、そして──。
ギュッ──!
ルシフェルはグラのもとに接近、そして自分の想いを込めるように強く抱きしめる。
「絶対に約束するわ──。私は絶対にあなた達を見捨てない」
「だから、もうやめなさい──」
少年兵たちはうなだれる。自分たちが犯した罪の重さに。
俺はその光景を見て心の底からほっとした。
いくらなんでも次から次へと処刑台に彼らを運ぶわけにはいかない。将軍様の恐怖国家じゃあるまいし──、
まともな教育を受けていない少年兵がどうすれば立ち直るか悩んでいた。
確かに彼らは罰せられることになってもおかしくはない。
しかしどれだけ罰を与えても、そもそも悪い事をしたと考えていないので何故こんな目にあわなきゃいけないんだという反発心と感情だけが残り、逆恨みの原因になってしまう。
そしてまた似たような事を繰り返すだろう。
「わかったよ、もうこんなことはしないよ……」
「その一言が、私は聞きたかったわ──」
少年たちの心の底からの一言、グラを抱きしめながらルシフェルは周囲を見渡しほほ笑む。
俺も嬉しい気持ちだ、まずは彼らが自分の罪を理解してくれて嬉しかった。
その事に俺はほっと胸を撫で下ろす。
まあ、政府の奴らから言われたら罪には問われるだろうけど──。それは司法が解決することだ、俺達が口を出すことじゃない。
「とりあえず、これで住民たちの安全は守られた。後は黒幕を見つけるだけだな」
「そうか、それなら私も協力したい。力になってもいいか?」
「そうだな、一緒に力を合わせて解決しよう」
そして安堵の雰囲気がこの場を包んでいたその時──。
「何だ? この音は……」
後ろから何か音が聞こえる。そしてその音が少しずつ近づいている事に気付き後ろを振り向く。
誰かがこっちに向かって歩いてくるのがかる。
その人物は俺と同じくらいの背、マントはおっていて小さな笛を吹きながら歩いてくる。後ろには漆黒に光る塊がついてくるように存在している。
前にもこんな奴、俺は見たことあるぞ……。
っていうかあいつ、思い出した!!
「貴様、ハイドか。こんなところにいたのか──」
ルシフェルもあまりに驚愕したせいか言葉を失ってしまう。まあ、あいつの姿を見て一番驚くのはルシフェルだもんな──。
「ほう、元勇者にルシフェル。あれほどいがみ合っていた2人がくっつくとはな」
「ハイド、あんたならやりかねないと思っていたけど。こんなことをしていたのね──」
ルシフェルがその少年をギッと睨みつけ言い放つ。
ハイドリヒ・ダリューゲ、通称ハイド。
なのを隠そうこいつは魔王軍の元幹部だった。
圧倒的な種族値から来る戦闘力は数ある強い冒険者をなぎ倒し、倒した冒険者達に<ソウルドレイン>を使い魂を奪い自らのエネルギーに変えた。
散々手を焼かされたあと、俺との死闘での末、ギリギリで俺が勝利したんだっけ。
魔王軍の中でも1.2を争うくらいの実力者だ。
そしてハイドはグラ達に視線を移す。
「残念だったな。話はすべて聞いた。俺と貴様たちが袂を分れる事になるとは、しかし残念だったよ」
その眼光に圧倒されるグラ達、しかし何とか勇気を出して震えたような声色で言い返した。
「ハイド、すまないがもう俺達はお前のいいなりにはならない。もうあんなことはしない──」
「だったら貴様たちは用済みだ。使い終わったボロ雑巾のように始末するだけだ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる