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第36話 元勇者 魔王軍の元幹部と出会う

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「ハイド、すまないがもう俺達はお前のいいなりにはならない。もうあんなことはしない──」

「だったら貴様たちは用済みだ。使い終わったボロ雑巾のように始末するだけだ」

 ハイドは無表情でそう言い放つと右手に魔力を込め始める。少年は戦わなければいけないと理解し戦闘態勢に入る。

「まて、俺達も参加する。こいつはお前たちがまともに戦えるような相手じゃない」

「そうよ、落ち着いて。無駄死にするだけよ」

 しかしグラは一歩も引かない。

「ダメだ、これ俺達の戦いだ。2人は手出ししないでくれ」

 そして俺達の制止を聞かずに少年たちが一斉にハイドに向かって飛びかかる。


 しかし──。


「貴様たちガキめらが、俺と対等に戦えると思うな!!」


 ハイドは右手をかざす。そしてグラが殴りかかり攻撃がハイドに直撃するが──

「何だこれ!!」

「かてぇ」

 ハイドは障壁を展開。グラ達は障壁に激突し跳ね返される。


「今度は俺の番だ。立ち向かうというのならこの一撃くらいは耐えてみるんだな──」

 そう囁くとハイドは右手に魔力を込めてグラに向かって殴りかかった。
 グラはその迫力に恐怖するもすぐにシールドを作りハイドの攻撃を受けきろうとしている。


(まて、奴の攻撃はそんなんじゃ──)


「そんなガラス細工、俺には通用しない!!」

 ハイドはシールドに魔力を込めて殴りかかった。


 ガッシャァァァァァァン!!


 グラのシールドがカラスだったかのように割れ身体に直撃そのまま10メートルほど身体を吹き飛ばせ後ろにある壁に激突。ぐったりと力なく地面に倒れ干す
 勝負は一撃で決まった。予想通りだ。


 そして胸ポケットからタロットカードを繰り出した。やはりそうなるのか──。

 ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ──。


 断末魔の様な悲鳴を上げながら。もがき苦しむグラ。そして10秒ほどすると魂が抜けたようでばったりと彼の動きが止まりぐったりと倒れこむ。当然意識は内容で起き上がることなどない。

 そしてものの1分ほどで他の立ち向かって来た少年少女達を返り討ちにしカードにしてしまったのである。


「貴様、どういうつもりだ。なぜ今まで共に戦って来た者の魂を奪う??」

 セリカは叫ぶ、少なくても彼らに対しては同じ少年兵という境遇に生まれたこともあり。共に戦う戦友だと言う想いはあった。ルシフェルに説得されてからは彼らを救いたいと言う心も持っていた。

 しかしその夢はかなわなかった。そして男の持っているタロットカードに視線を移し睨みつける。同時にルシフェルも彼を睨みつけ叫ぶ。

「自分の仲間を、どういうことなの?」

「仲間? 俺にはそんな夢みたいな言葉俺の広辞苑にはない。こいつらは貴様らのくだらない理想論に惑わされ俺達を裏切ろうとした。その報いを俺が与えたんだ」


 今は貴様たちに興味はない。戦いたいと言うなら相手をするが、それはこれを見てから判断するんだな。ステータス、オン!!


 ランク S
 HP 80
 物理攻撃 115
 物理防御 120
 魔法攻撃 105
 魔法防御 115
 速度 70

「種族値の合計は600。600族よね、わざわざ言わなくてもわかってるわよ!」

 ルシフェルはにらみつけながら言葉を返すが、若干体が震えているのがわかる。


「ルシフェル、残念だが貴様では力不足だ」


「おいハイド、俺と戦え!!」

 だがそんなことは関係ない。あれだけ人々を苦しめている奴を黙って逃がすのは街かっている。
 俺はハイドを指差し叫ぶ。


「俺は貴様の事に興味はない。さらばだ」

 奴は素っ気ない態度で言葉を返す。

 ハイドが指をはじくと眩しいくらいの光がこの場を包み、俺は一瞬瞬きをしてしまう。そして──。

「しまった。いない──」

 そこにハイドの姿はいなかった。
 セリカは握りこぶしをしながら悔しそうな表情で囁く。

「あいつ、絶対に許さん」

 俺だって悔しい。彼らだって、ルシフェルのおかげで自分たちの過ちを理解したのに──。これからそのために変わろうとしたのに──。

 握りこぶしをしながらそう考えていると、ルシフェルがうずくまり顔に手を当てながら囁く。

「セリカ、魂を奪われたみんな。申し訳ないわ……」

「まて、どうした。どうして貴様が謝る?」

 セリカが困惑して言葉を返す。
 俺も少し戸惑う、するとルシフェルが虚ろな目をしながら話し始める。


「この事はすべて私が招いた結果よ。彼の性格を知っていて魔王軍に引き入れ力を渡したのも私、幹部という地位を与えたのも私。責任は私にあるわ」


「ちょっと待て、言い過ぎだ」

 確かに責任が無いとはいえない。
 魔王軍に入ったののもそれなりに闇を抱えていた理由があるからなのだろう

 それでも、ソウルドレインという術式に手を染め、人々を苦しめる選択肢を取ったのは彼だ。
 自分が不幸にあったのだから無実の人を苦しめてもいいなんて理由にはならない。

「この事件、決着は私がつけるわ」

 強い口調でそう言い放つ。強い覚悟が出来ているのが分かる。
 しかし奴は相当な実力者。とても一人で倒せる奴ではない。一緒に捜査をして奴を倒そう。


「とりあえず奴は帰ってしまった。ここにいる意味は無いと思うのだが──」

「ああ、セリカの言う通りだ。いったんホテルに帰ろう」

 俺は肩を落としているルシフェルになだめるように話しかける。気持ちはわかるが、一回帰ってローザとセフィラ、出来ればパトラさんにも知らせた方がいい。

「……わかったわ」

 素っ気ない返事でルシフェルが答える。絶対に解決しような──、そんな気持ちを胸に俺達はこの場を後にしていった。
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