【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

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最終章 建国祭編

第87話 元勇者 ローザをエスコートする

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 そして俺たちは外へ。


 昼前にしてもらった理由は、一緒に店に入ることだ。
 それもただの店ではなく、貴族たちなどの上流階級の人が入る店だ。

 辿り着いたのは行ったことがないいかにも高級そうな店。

 そんなかしこまった感じの店の中に入る。

「いらっしゃいませ」

 高級店という感じで、タキシードを着た紳士のような人が

 テーブルクロスが敷かれた上品な机に、高級そうな金属でできた椅子。


 周囲を見渡すと、落ち着いた様相で食事を堪能しているマダムや、上品なそぶりをしたセレブの人がいて、さすがはお金持ちの貴族御用達の店だと感じた。

 そしてタキシードを着た店員の人がメニューをこっちの方向に向けて渡してきた。1つ1つの仕草がとても気遣いができている店だと感じた。


 とりあえず、一番安いコース料理を頼む。
 この店は貴族御用達だけあって、値段も高級感がありすぎる。少し恥ずかしいが、仕方がない。

 注文を取ると、俺はローザと一緒に会話をする。

 日頃の生活で困っていること。セフィラとのこと。それからパトラさんと行動していた時のこと。

「セフィラちゃん。最近笑顔が増えて本当に嬉しい。昔は、私のことばっかり考えていて、どこか楽しそうじゃなかった。けど、今はどこか自分に自信を持っていて、明るくなってる。陽平君のおかげだと思う」

 そ、そうか。セフィラ、いつもかしこまっていたからな。それはよかった。
 心なしか、ローザの表情も以前より明るくなっている気がする。きっと自分の居場所ができたからなのだろう。それは、本当に嬉しい。

「俺を感じていたよ。2人とも、俺と出会った時より幸せそうな気がする。それが、本当に嬉しいよ」

「う、うん。陽君と出会って、私幸せ。ありがとうね……」

 ローザの顔がほんのりと赤くなる。このまま、幸せになるといいな。

 そんな話をしていると、コース料理が出てくる。
 最初に出て来たのは小さい皿に盛られた野菜サラダ。

 ローザがフォークを取り出し、出されたサラダを口にする。

「おいしい。初めて食べた。こんな味!」

 確かの、ローザの言う通りだ。野菜はどれも、味が市場で買ったものよりもおいしいし、ドレッシングもとても野菜にマッチしている。さすがは高級店だ。


 それから、前菜やパンなど、小皿に入った1つ1つの料理を食べていく。味はどれもおいしく、値段を出し他だけのことはある。


 そしてメイン料理が出て来た。

 脂身が乗っていそうな高級ステーキ。ローザのテンションが上がり、喜んでいるのがわかる。

「うわ~~。おいしそう!」

 俺もそう思う。早速俺はナイフとフォークを手に取り、食事を始めようとするが──。

 ローザがきょろきょろとして、困っているのがよくわかる。
「ローザ。どうしたんだ?」

「これ、ナイフで切るんだよね」

「そうだけど、習ったことないの?」

 ローザが困った顔で首を縦に振る。さらに聞いてみると、ローザは昔の王家でも見捨てられた存在で、そういう作法を習ったことがなかったのだ。

 俺も、やり方は知っているけど、どう口で説明すればいいかちょっと迷う。どうすれば……。

「仕方ない。ちょっとびっくりするだろうけどこれしかない」

「ど、どうするの?」

「一回体で教えるから、覚えてね」

 そして俺はローザの背後に立ち、両手をぎゅっと握る。彼女の柔らかくて少し冷たい体の感触が俺の腕を包む。

 ローザが理解できるように、ゆっくりとステーキを切っていく。
「よ、陽君──」

 ローザの顔が真っ赤になっているのがわかる。

「まあ、口で言うのは難しいけど、こんな感じだ」

 そして俺はローザの手を使ってステーキを切り終えた。正直恥ずかしいい。

「ど、どうかな……?」

「あ、ありがとう陽君。なんとなく、わかったかもしれない」

 ローザは顔を真っ赤にしながら、視線をきょろきょろとさせ答える。まあ、またみんなでこんな店に来て、やってみよう。

 そして俺たちはメインディッシュのステーキをいただく。

「すごい、柔らかくておいしい」

 ローザの言葉通りだ。ちょうどいい柔らかさ。それでいて脂身が少なくてくどくない。高級なものを使っているのがよくわかる。

 ローザは、話すことも忘れ、夢中になってステーキをほおばっている。
 元気よく、笑顔で。

「やっぱりローザには、こんな感じの方がいいな」

「ど、どういうこと?」

「変にお行儀よくするより、元気いっぱいで無邪気な方が似合ってるよ」

「あ、ありがとう……」

 ローザの表情が、ほんの少し明るくなる。
 ローザには、堅苦しいマナーに固執する姿より、元気いっぱいに食べている姿が似合う。

 これで少しは、明るさを取り戻せばいいんだけどね。

 そして食事の再開。
 食事をしながら、さっきの感触を思い出す。

 今でも残るローザの手を握った時の感覚。柔らかくて、髪の毛からは香水のにおいがしてドキッとした。思わず少しかいでしまった。

 あの匂いを思い出すだけで、顔が赤くなり、胸がドキドキする。子供っぽい姿をしながら、大人の色気もあるローザの魅力に、気付いてしまった。

 そんなことを考えながら、メインディッシュを食べ終え、デザートのフルーツが出て来た。
 柑橘類のような、見たことがないフルーツ。

「フルーツ、おいしいよ」

 満面の笑みのローザ。俺もフルーツを口にする。オレンジのような、レモンのような甘酸っぱい味。

「うん、おいしい」

 そしてデザートを間食すると、俺たちは会計を済ませて外に出る。

「う~~。お腹いっぱい。おいしかった」

「そうだね、ローザ」


 ちょっと高かったけど、いっぱいクエストをこなして、大金を得たらみんなで来よう。
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