国家魔術師をリストラされた俺。かわいい少女と共同生活をする事になった件。寝るとき、毎日抱きついてくるわけだが 

静内燕

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第6話 まさかの、裸エプロン

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「え? ちょ──」

 思わず動揺してしまう。
 絹のようになめらかで、冷たい…。

「手、握って下さい」

 ウィンの予想もしなかった言葉に、ぎょっとする。ウィンのその目は、出会った時のような死んだ魚のような目とは違う、きらきらとした意思を持った眼差し。

 ウィンが意志をもったことが、とても嬉しい。それなら、無下に扱うのも良くないな……。

「わかった」

 俺はウィンの気持ちに答えるようにウィンの手をぎゅっと握り返す。
 そして、俺達はそのまま歩き始める。

 どこか暖かさを感じる、ウィンの手。

 今までのウィンの過酷で不遇な人生。その、埋め合わせになることができるように、なれたらいいなと心から思った、そんな時間だった。



 その後、他の食料品の買い物も済ませ、服の整理や生活についての説明を行う。
 同じ部屋で暮らすのだから、わだかまりが生れないようにしっかりと。
 色々話してるうちにすっかり夜になってしまった。

 そして夜。夕飯を作ろうしたときに、事件は起こった。

「居候の身ですから、せめてそれくらいはさせてください」

 ウィンがぺこりと頭を下げて懇願する。

「今日くらいは、私が食事を作ります」

 その言葉通り、食事前になってウィンが自分で作ると言い出したのだ。
 最初は「大丈夫だ」と言おうとしたが、よくよく考えてみるとウィンは今まで俺達に何もしていない。

 何もさせないというのも、ウィンにとって悪い気がする。
 ウィンは幼く見えても17歳だ。甘えるばかりの年齢じゃない。

「そう、じゃあお願いできる?」

 ウィンは、はっと明るい表情になり、言葉を返す。思い切って任せてみるという判断は、成功だったようだ。

「わかりました。満足できるように、頑張ります」

 そしてエプロンを取り出して着ようとする。期待してるし、もしメシマズ系だったとしても、買い物直後だからまた作り直すことだってできる。

 果たしてどうなるのか。


 ──ちょっとトイレに行こう。

 俺はこの場から席を外す。


 そして用を足して、手を洗った後部屋に戻る。

 すると、ウィンの姿に違和感を覚える。
 どこかおかしい。服、あそこまで露出度高かったっけ?

「では、料理を作らせていただきます」

 そう言ってウィンはくるりとうしろを向き、厨房へと向かおうとした。

「ま、待てウィン!」

 そして後ろを振り向いた瞬間、さっきまで抱いていた違和感の正体に気付いた。
 服の露出度が高いんじゃない──、服を着ていないんだ。

 今のウィンの後姿。
 エプロンの後ろ紐以外、何もない。白くて柔らかそうな肌が露出してしまっている。

 そう、裸エプロンというやつだ。

 ほど良く膨らんだ大きいお尻に、適度な太さを持った太もも。両手ではつかめないくらいくらいの大きな胸。
 ウィンの露出した肌はどれも白くて美しい。

 芸術品のようで、それだけで男ならだれもが発情してしまうだろう。

 俺も思わず数秒ほど見入ってしまったが、すぐに顔を横に振り、タンスへ。

 ウィンの服がある棚を開け、顔を背けながら床に置いた。

「と、とりあえずエプロンっていうのは服を着てつけるものなんだ」

「そ、そうなんですか──。今までパーティーの人にエプロンは
 裸でつけるものだって言われていたので、つい……」

 おい、前のパーティー! どういう教育してるんだ!

「申し訳ありませんでした」

 そしてウィンの方からバサッとした音が聞こえた。恐らくエプロンを脱いだのだろう。

 それから俺が出した服を手に取るとガサゴソという音が聞こえ始めた。
 素直に服を着てくれているのがわかる。

 数十秒ほどすると、「着替えました」という声が聞こえたので、もう一度視線を
 ウィンに向けた。

「ありがとう」

「こ、こちらこそ……」

 そしてウィンは再び厨房へと向かっていった。
 なんて言うか、俺の理性──持つのだろうか……。不安になってきた。

 ウィンは限られた食材の中、料理を作っていく。

 慣れない調理具の中で、ちょっとあわあわした部分もあり大丈夫かといった所もあったが、うまく作れそうだ。

 俺は邪魔にならないようにテーブルを拭く。
 十分ほどすると、料理が机に出て来る。

 ジャガイモを煮たものと鶏肉のステーキ。そして野菜スープだ。
 ステーキには香りがつけられているらしく、食欲がわきそうな香ばしい匂いが部屋全体に漂っている。

「こんなものしか作れませんでしたが、どうぞ」

「いやいや、すごいよ。卑下しなくて大丈夫だって」

 その通りだ。豊かな食材ではないにも関わらず、おいしそうな食事だ。
 スープの盛り付けも、どこかおしゃれで限られた食材を精一杯生かして料理してくれたのだと理解できる。

「すごいセンスあるね、慣れてるの?」

「パーティーでは、よく料理を作っていました」

 そ、そうなんだ。

「最初のパーティーでは、料理は遠征先よく限られた食材を使い、料理をしていました。当然その時はエプロンなんて知りませんでした。しかし、拾ってもらったパーティーの人から、エプロンは本来、裸でつけるものだと教わって、ずっとこの姿で料理を作っていました」

 どういう思考回路してたんだか──。完全に下の方を当てにしていたな……。
 間違いに発展しなかったのが何よりだ。
 そして、机に料理を並べる。

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