国家魔術師をリストラされた俺。かわいい少女と共同生活をする事になった件。寝るとき、毎日抱きついてくるわけだが 

静内燕

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最終章

第119話 ニナの戦い

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ニナ視点

 今日は魔王軍との戦闘の日。

 水面がキラキラと輝く沼沢地や、小高い草原地帯を抜け、広いジャングルの中へと入った。
 密生した樹林が山肌を覆っている森林地帯。

 昼間なのに、生い茂る木のおかげで日が届かず薄暗い。
 加えて視界が悪く、時折至近距離から動物が襲ってくる。

 まあ、先輩たちが勘を聞かせて教えて食えるおかげで、大きな怪我がなくここにいる。


 そこに、私とビッツ先輩、エリア先輩。それから別のパーティー。計7人。
 近くにあるジャングルの小屋のような宿泊施設「ブンブン」に荷物を置いてから、その周辺で作戦が決行される。

 これは、別の場所で行われているもう一つの任務とも合わせて、とても重要な作戦だ。
 だから、ここに来るまでに綿密に計画を建てたり、もうひとグループのパーティーと話し合ったり実際に一緒に戦うシミュレーションまで行った。

 だから、私が足を引っ張るわけにはいかない。気を抜くことがあってはならない。

 わかってる。わかってる──けど。
 どうしたって意識してしまう。脳裏をよぎってしまうのだ。

 太い木の陰に隠れて、周囲を確認しながら弓を強く握る。地面からは、膝の高さくらいまで見たことがないような雑草が生い茂っている。他の人は、近くの場所で身を隠しながら同じように魔王軍を待ち構えている。

 私もどこにいるかわからない魔王軍の敵に見つからないよう、腰を低くして姿を隠しながら、考え込んでしまう。

 先輩のことを──。

 先輩は、別の任務のためいない。


 話は、しっかりと聞いている。なんと、ウィンちゃんと一緒だというのだ。
 話によると、作戦上どうしてもということらしい。

 それなら、仕方がない。私だって、そのくらいの分別はわきまえている。

 魔王軍との戦いは、いつだって命がけ。
 激しい戦いの末、命を落とすものだって実際にいる。

 それでも、私たちは戦わなきゃいけない。だから、戦いはいつだって全力勝負。
 強いものであっても、余裕ぶったりせずに全力で戦わなくちゃいけない。

 だから、私は文句を言わなかった。先輩が、私がミスをしても体を張ってカバーしてくれたように。

 でも、やっぱり思ってしまう。

 先輩と、一緒がよかった……。先輩と一緒に戦って、今度は私が先輩を引っ張って──。


 それがかなわなくて、感情がそれを許さなくて──。ついつい、顔を膨れさせてしまう。
 いけないいけない、今の役割に集中しないと。

 みんなが見ている。もう、みんなに頼られてる私じゃない。みんなを守る、引っ張る私なんだ。


「こっちだ、みんな来てくれ!」

 ビッツ先輩が後方から叫び始める。それから、剣がぶつかり合う音が聞こえだす。

「みんな、応戦するよ!」

 その瞬間、近くで隠れていたエリア先輩が立ち上がって叫ぶ。そして、別パーティーの人達は瞬時に立ち上がり、ビッツ先輩が戦っている方へと向かって行く。

「ほら、ニナちゃんも早く!」

 考え事をしてしまい、立ち上がるタイミングが遅れる。エリア先輩の言葉で、慌てて立ち上がり走る。しまった、いきなり遅れてしまった。走ってビッツ先輩の方へと向かって行く。

 ここで私がミスをしたら、みんなも──先輩も悲しませてしまう。
 それだけは、避けなきゃいけない。

 私はもう、先輩や周りに迷惑ばかりかけてばかりの私じゃない!!
 今回は、絶対に私がみんなを引っ張るんだ。

 そう強く意気込んで強くこぶしを握った。

 確かに、先輩は私を後輩としか見てくれないかもしれない。

 どれだけ私が頑張っても、先輩は私を異性としてみてくれないかもしれない。
 後輩としか考えていないのだ。

 ぶんぶんと首を振って、邪念をふりはらう。どうした私──今は、そんなことを考えてる場合じゃない。


 そして、森の中を進んでいくと、敵の姿が見えてきた。

「あれは──」

 その姿に、驚いて口をふさいでしまう。私の身長の、倍くらいはあろう巨体。
 茶色い動物の革のようなものをかぶっている。筋骨隆々で、体のサイズも腕の太さも私の倍くらいはあろうサイズ。

「あれは、アトラスね」

「アトラス──来たことがあります」

 以前戦って、大苦戦したことがある。名前はその時聞いた。魔王軍の中でも、トップクラスに肉弾戦が強いといわれる亜人の人たち。
 それだけでなく、強力な力を持ちながら決して脳筋ではなく集団で戦い、滑稽にわなを仕掛け、敵の隙をついてくるのだとか。

 今まで戦ってきたゴブリンとかよりかは、2ランクは上の相手。心してかからないと──。

 ビッツ先輩は、そんなアトラス7~8体ほどに囲まれながら戦っている。
 強力なパワーに押されて、いくら先輩といえども息を荒げて苦戦しているのがわかる。

 まずは、あいつらの注意を引いて先輩の負担を軽くしないと。
 弓矢を手に取り、まずは一番近いアトラスにめがけて放つ。

 魔力を込めて放った矢はアトラスの肩に直撃。とぼとぼと血が出ているものの、屈強な肉体のおかげであまり聞いていない。

 そして、そいつと隣のアトラスがこっちを振り向いてきて目が合う。
 強気な笑みを浮かべて、指を鳴らして挑発する。

「こっち! かかってきなさい!」
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