国家魔術師をリストラされた俺。かわいい少女と共同生活をする事になった件。寝るとき、毎日抱きついてくるわけだが　

静内燕

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最終章

第131話　ニナ……

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「ニナのことを気にかけていただいて、本当にありがとうございます」

　そう言って頭を下げて、俺はこの場を後にする。
　大変なことを聞いてしまった。絶対に、ニナを助ける。ニナだって、俺の大切な仲間なんだ。ニナが悲しむ姿なんて、絶対に見たくない。

　それから、みんなのところに戻る。ミーティングが始まるが、話に集中できない。どうしても、ニナのことが気になってしまう。

　今後のことを話す中で、時折ちらりとニナを視界に入れてしまう。ニナは、ん？といった感じでそれに目線を合わせてきた。

　ニナを見ただけで罪悪感を感じて胸が痛い。

　しばらくして、ミーティングが終わる。エリアとビッツがこの場を去り、ニナは立ち上がって反りかえって背伸びをした。

　キョロキョロと、ニナを見た後すぐに、ニナを呼び出した。

「ちょっと、話があるんだけどいいかな？」

「せ、せんぱい──にゃんでしょうかっ？？」

　ニナは、俺が話しかけた瞬間顔を真っ赤にして噛んでしまう。こうしてみると、ニナは俺を話すとき、顔を赤くしたり必要以上にかんだりしていたな……。

　俺が外に出ていき、ニナはその後についてくる。

　そして、ギルドの裏の人気がないところで、俺とニナは2人向き合う。人気はなく、物静かな雰囲気。

「何ですか？　先輩──」

　ニナの表情が、真剣なものになりコクリと頷く。どう切り出そうか、戸惑ってしまう。
　しかし何も言わないわけにはいかない。

　ごくりと息を飲んでから、じっとニナを見る目る。

「先輩──」

　ニナの心配そうな表情。行こう──。

「ニナ、聞いたよ。この前のフィアネさんとの話。その、本当にごめん」

「え……」

　俺は、そう言った経験がないからどうすればいいかよくわからない。
　だから、精一杯の誠意で頭を下げた。

　ニナは、突然の言葉に戸惑っているのか言葉を失って俺の方をじっと見た。

「ニナ──本当にごめん、ニナの気持ちに気付いてあげられなくて」

「それで、頭を下げに来たんですか？」

「う、うん……」

　その後、ニナはあからさまに不機嫌そうにプイッとそっぽを向く。明らかに、不機嫌なのがわかる。
　頬をぷくっと膨らませて言葉を返す。

「それで、どうするんですか？」

「え……」

　予想もしない言葉が返ってきて言葉を失う。ニナは、悲しそうな表情になり物静か──それでいて怒りのような感情をにじませながら言葉を返していく。

「誤って、どうするつもりなんですか？　私と一緒にいてくれるんですか？」

「そ、それは……」

　そう言って、ニナが俺に近づいてくる。
　どう答ええればいいかわからず、言葉を失ってしまう。

　その瞳からは、うっすらと涙がにじみ始めていた。

「そんな同情なんて、もらってもつらいだけです。どんなにされたって、先輩は結局私から離れて行ってしまったじゃないですか」

　目尻にたまっている涙が、ニナのほっぺに流れ落ちていた。ニナが、俺のことをどれだけ思っているか、そして俺がその気持ちに気付けなかったおかげでニナがどんな感情になっているかが理解できた。

　ニナとじっと見つめ合い、しばしの時間がたつ。

　やっぱり、俺は恋愛に関する知識も──女の子に対する接し方も未熟だ。
　それでも、ニナのことを諦めるわけにはいかない。

　そんな俺は考えた。不器用なりに、真正面からニナと向き合って、自分の気持ちを伝える。

「ニナ、本当にごめん」

　そう言って、俺はニナをぎゅっと抱きしめた。

　ニナの想いを最大限受け止めようと、ぎゅっと強く。ニナの温かい体の温もりと、ほんのりと甘い髪の香りを全身に感じる。

「え……」

　ニナは、俺の行動が読めなかったようで、大きく目を開けたまま言葉を失って正面に視線を向けていた。

　そして、抱きしめてたままさらに言葉を進めていく。

「ニナの気持ちに、気づいてあげられなくって、本当に悪いって思ってる。俺、恋愛には慣れていなくて、ニナの気持ちに気付けなかった」

「同情のつもりですか？」

「いいや、そんなんじゃないない」

　ニナの声が、涙で曇っている。それほどまでに、俺のことを好きでいてくれたのだろう。俺のことを持ってくれていたのだろう。

　その気持ちに答えられないことへの罪悪感で、胸が押しつぶれそうになる。

「じゃあ、何なんですか？　だって、本物なんでしょう？　先輩の、ウィンちゃんへの気持ちというのは」

「そうだ」

「じゃあ、何なんですか？　情けをかけられても、つらいだけです、わかりませんか？」

　確かに、そうだ。でも、俺がするのはただの同情なんかじゃない。

「これからも、ずっとニナの幸せを願っているし、応援してる。　　俺よりもいい人に出会って、素敵な恋をしてほしい。
　みんなから尊敬されて、みんなから好かれる人になって……そんな人になってほしいから」

　俺は、真剣な表情でニナをじっと見つめた。ニナは、ぽろぽろと涙を流したまま俺の方に身を寄せてくる。

　俺の胸にニナの顔がすっぽりと埋まる形になる。
　俺は──ニナの頭を優しく抱きしめて髪をなでる。

「ニナの本当の幸せを、願っているから」

「本当の、幸せ？？」

「うん」

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