国家魔術師をリストラされた俺。かわいい少女と共同生活をする事になった件。寝るとき、毎日抱きついてくるわけだが 

静内燕

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最終章

第135話 現れる、敵たち

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「なるほどな、よく見てたな」

 エリアは、他の冒険者たちの様子をよく見ていたのだ。今までとは比べ物にならないくらいの強敵の襲撃。
 だから、戦いに駆り出される冒険者の数も過去最大の数となっていた。

 その数、正確にはわからないが街の冒険者の中の半数以上が参加している。

 この場にいる冒険者たちの表情も、今までにないくらい引き締まっていた。さっきまでは戦うということもあって覚悟していたが、やはり実際に戦うということになってやはり恐怖心が少しずつ出てきたのだろう。



 空が、黒っぽい雲に覆われ始めた。それから、その雲から大きな魔力の気配。それが、少しずつ大きさを増していく。

 ゴロゴロと雲から音が出始め、冒険者たちはひそひそと会話を交わし始めた。

「いよいよ来るぞ……」

「マジかよ……どんな奴が来るんだろうな。生き残れるか不安だ」

 やはり、心配な感情があるのだろう。
 そして、そんな雰囲気が伝播し始め、他の冒険者たちも心配そうな表情をし始めた。

「ちょっと、元気づけてくる」

 そう言ってエリアは、他の冒険者の方へと向かって行く。
 そして、パンパンと自分の手を強く叩いてってから話しかけた。

「みんな、弱気になりすぎ。そんな腰が引けてちゃ自分たちの力が発揮できないわ!」

「エリアさん。でも……」

「今回の敵、今までよりも強いって聞くし……」

「俺たちが役に立てるかとても不安というか」

 冒険者たちが、一斉に弱音を吐く。やはり、彼らだって不安な感情はあったのだ。
 このまま無理やり戦わせたところで、そんな精神状態では力は発揮できない。

 エリアは、そう言ったところもよく見ていたのだろう。
 そして、ふっと微笑を浮かべ彼らに向かって言葉を発し始める。

「大丈夫。みんなで力を合わせれば絶対に勝てるわ。みんなら出来る。あなたたちの戦いっぷりをずっと見ていた私だからわかる。だから、一緒に頑張りましょ。街を守るためには、」あなたたちの力が必要なの。お願い」

「エリアさん──」

 エリアは、他の冒険者たちからも慕われている。
 太ももを露出したり、胸元を見せるような服をよく着て、憧れている人もそれなりにいるという面もあるが、社交的でよく他の人達に声掛けをしたり悩みを聞いたりしている部分も大きい。

「みんな、私たちがついてるわ。だから、安心して。何かあったら、私たちが守るから──」

 エリアの言葉に、周囲がざわつき始めた。そんなエリアが声掛けをしたことで、周囲は元気を取り戻し始めたのだ。
 さらに、今度はビッツが叫ぶ。

「そうだ、俺たちは逃げるわけにはいかないんだ。俺たちが逃げたら、こいつらが襲うのはお前らの家族や何の力もない一般人なんだ。だから、頑張ろう」

 その言葉に周りは覚悟が決まったのか、表情が引き締まる。

「確かに、そうだな」

「みんな、逃げないで戦おうぜ」

 俺も、何か勇気づけないと──。どう言葉をかけようか考えて、一言。

「大丈夫。俺たちが前線に立って戦う。だからみんなで頑張ろう」

「大丈夫。私たちだっているから──一緒に頑張りましょ」

 そう言って、エリアはにこっと笑みを浮かべてウィンクをした。

 さすがエリアだ。俺はニナやウィンのことにしか考えていなかった。俺じゃあまり気が利いた言葉を言えなかったけど、エリアとビッツが周りの雰囲気を変えてしまった。



「おう!」

「頑張ろうぜ!」

 俺は、ニナとウィンのことで手一杯だった。
 でも、エリアはこの戦場全体をしっかり見ていた。エリアの方が、周囲をまとめたりするのに向いているんだろうな。

 面倒見もよく、周囲からの人気もあるエリアの言葉だからこそ、みんな信じられるんだろうな。

 他の冒険者たちが、自信を取り戻しているのがわかる。
 これなら、みんなしっかりと戦ってくれそうだ。

 みんなが武器を手に取り、緊迫した空気が流れている。

 そして、その時はやってきた。

「何か、地響きがしないか?」

「そ、そうだな……」

 背後にいた冒険者の一部が、違和感に気付いて周囲をきょろきょろと伺う。
 確かに、軽く地面が揺れてゴゴゴと音がし始めた。

 そして、時間がたつごとに地面の揺れも地響きの音もだんだんと大きくなっていくのがわかる。

「来るぞ、みんな戦う準備を!」

 俺がそう叫ぶと、前方の荒野の地面から黒い煙が出現し始めた。
 そして、煙が吹いている場所から人型の何かが出現し始めた。

 それも、1体や2体ではない。

「何だよあれ」

「荒野を埋めつくす気かよ」

 今まで、見たことがないくらいの数。軽く、1000体は超えている。
 他の冒険者の言葉通り、見渡す限りの広大な荒野を埋め尽くくらいの数なのだ。

 アンデッドにデュラハン──今まで戦ってきた敵たちの姿。

「だ、大丈夫ですよ──いくら数が多いって言ったってこいつらはそこまで強くないですし……」

 震えながらニナがしゃべる。確かに、いつも戦ってる奴らなそうかもしれない。

「いや、漂っている魔力が違う。おそらく魔力が強化されている。いつもより、心してかからないと」

「そ、そうなんですか?」

 彼らから漂ってくる魔力もいつもの倍近くある。
 いつもの調子で戦っていると、痛い目を見ることになるだろう。

 しかし、逃げるわけにはいかない。敵兵たちは、コッコッと甲冑の音を鳴らしながらこっちへと向かって来る。

「みんな、戦いが始まるわよ。行きましょ!」

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