冒険者育成学園の日常 

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 校舎には無数の鬼たちが徘徊していた。その歩みは校長室へと向かっている。
 教師たちが必死の抵抗をしてるようだが多勢に無勢だ。このままでは全滅してしまうだろう。
 そんな中を一人の男が走り抜ける。アルフ・カリオンだ。彼は鬼たちの隙間を巧みにすり抜けながら目的地を目指す。
 途中、立ちふさがる鬼たちを斬り捨てながら突き進む。そしてついに目的の場所に到着した。屋上の扉だ。その扉を勢いよく開けると中に転がり込む。そしてその場の光景をみて息を飲み込む。
 そこにいたのは二人の女性。ぐったりと横たわっている。これを中心に青白い魔法陣のようなものが書かれていた。

「あれ、アルフ先生。どうしましたか?そんなに血相を変えて……」魔法陣の傍らにいた黒髪の少女が問いかける。
「お前……まさか……」震える声で言う彼に彼女は笑って答えた。
「ああ、これですか?大丈夫ですよ、まだ死んでませんから」
 その言葉にほっとする。そしてすぐに険しい顔になって尋ねる。
「一体何をしているんだ?」
「何って、わかりませんか?」首をかしげる彼女に重ねて言う。
「なぜこんなことをするんだ!?」
「先生は今、世界がどうなっているかご存じですか?」
 質問に対して質問で返す彼女に対し苛立ちを覚えながらも答える。
「各地でモンスターが発生して激しく暴れまわっているだろう?その原因はわかっていない。だが……」
「それ、私たちですよ」
 さらりと言ってのける彼女。一瞬何を言っているのか理解できなかった。だがすぐに我に返ると彼女を問い詰める。
「どういう意味だ!?説明しろ!」
 詰め寄るアルフ先生に彼女は答えた。
「言葉の通りです。私たちが世界各地のダンジョンを活発化させてスタンピートをおこしているんです」
「馬鹿な!そんなことができるわけがない!!」
 必死に否定する彼を見て彼女は笑う。
「ふふ、できるんですよそれが。陰陽術の真の力でね」「そんなもの聞いたことないぞ!」
「先生、陰陽術はね。実は陰陽師の技じゃないんですよ。陰陽術ってのは単なる模倣なんです」「どういうことだ……?」
「昔から伝わる陰陽術、それは古代中国の『道士』の技なんです。陰陽師はそれを自分たちが使えるようにアレンジしただけなんです」
 そう説明する彼女の顔は少楽しげだった。
「大昔だと模倣するのは中国しか無かったのです。大海を渡る術がなかったですからね。でも私の御先祖は海を渡って西洋魔術を知った」そんな話をしていると魔法陣が光り始めた。どうやら起動準備が整ったようだ。それを見て彼女は小さく呟いた。
「これでようやく終わります……」
「終わるとはどういうことだ?」
「この学園がダンジョンになるんですよ。彼女たちをコアにしてね」
 それを聞いたアルフ・カリオンは間髪入れず横たわる少女たちに駆け寄った――
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