新手の公爵令嬢ものがあらわれた! もううんざりだって? そう言わずに!

波桜みつき

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初等部一年

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 ふぅ……入学式、緊張したーっ!

 学園から帰るなり、自分の部屋に直行。
 帰りがけにもらった鞄をベッドに放り投げ、そのまま私もベッドにダイブ!
 鞄から適当に教科書を一冊引っ張り出す。

 寝転がりながら、手に取った教科書の表紙を眺めると――『魔法学』と書いてあった。

 魔法かー。最初はワクワクしてたんだけどなあ。

 私のいた世界とは違って、この世界には“魔法”っていうファンタジー要素が存在する。
 それを知ったときの私のテンションといったら、もう!

 「きた! 魔法チート! 日本人の強力な妄想力がついに本領発揮するとき!!」

 ――って、思ったのも束の間。

 調べてみたら、全然そんなのじゃなかった。ガックシ。

 魔法の発動には、正しい知識と道具、それに法則に基づいた“魔力回路”を刻む必要があるらしい。
 なにそれ? 全然チートじゃないじゃん。
 しかも発動には複数人必要って……めんどくさっ!

 そんなわけで、私の魔法チートの夢は早々に散りました。
 だってさ、実際には知識だけで滅多に使われない技術なんだよ? ロマンはあるけど日常じゃ役に立たないヤツ。古文かよ。こんなの覚える必要なくね?

 ……あ、でも一つだけ例外がある。回復魔法。

 これだけは特殊で、個人が思っただけで使えるという超便利スキル。
 小さい傷ならその場で治るし、何より道具も知識もいらない。……まあ、大きなケガには病院行けって感じだけど。

 こういうのでいいんだよ! ……まあ、私は使えないけどね!

 もし使えてたら、貴族も平民も関係なく入れるっていう「聖セレスティア女学院」に行くって道もあったんだけどなー。
 長年庶民やってた私としては、そっちのほうが気楽だったのに。

 「はぁ~……」

 ぶつぶつ文句を言いながらベッドの上でばたばたしていたら、部屋の扉から控えめなノック音が響いた。

 「お嬢様、夕食の準備が整いました」

 「……はい。今、向かいます」

 瞬時に切り替え、姿勢を正して返事をする。

 そう。今の私は、名門公爵家の令嬢――つまり“超お嬢様”。
 たとえ相手が屋敷の使用人でも、庶民っぽい姿は見せられない。


* * *


 翌日の学園。クラスの人と初顔合わせだ。

 私は、不安と期待と不安と微妙な眠気を胸に、教室の扉を開けた。

 「ごきげんよう」

 軽く一礼しながらそう言ってみたけれど──

 ……あれ? 誰も返事しない。いや、聞こえてなかっただけかも。まあいいか。

 とりあえず開いている後ろの方の席に向かいながら軽く周囲を見渡す。
 みんな荷物をチェックしてたりして視線が合わない。
 初日だし、人見知り発動してんのかなあ?

 そう思ってたら、いきなり声を掛けられた。

 「リシェリア様っ! ごきげんようっ!」

 振り返ると、ふわっとした金髪を結った少女が目の前に立っていた。
 続けざまに、もう一人の落ち着いた雰囲気の黒髪の少女も一礼する。

 「ごきげんよう、リシェリア様。入学式のとき、凛としていらして本当に素敵でしたわ」
 「本当に。立ち居振る舞いの一つ一つが洗練されていて、さすがですわ。ご実家のご教育の賜物でしょうか?」

 (えっ……誰? ってか何?)

 フリーズしかかっていた脳をなんとか動かして二人に問いかける。

 「ええと、おふたりは──」

 「あっ、申し遅れましたわ! わたくし、リディア・カーターと申します!」
 「わたくしはカレン・メリディスです」

 「ご、ごきげんよう、リディアさん、カレンさん。リシェリア・アルディアです。よろしくお願いしますね」

 にこっと笑って返したけど──

 ──正直、まだクラスの名簿すら見てなかったから、誰が誰だかさっぱりだ。

 (あー、昨日チェックしておけばよかったなあ……)

 なんて考えてたら、ふたりのテンションは止まらない。

 「リシェリア様、もしよろしければ、今日のお昼ご一緒していただけませんこと?」

 「わたくしたち、お手伝いできることがあれば何でもいたしますわ」

(えっ、えっ、なにこれ!? てか、なんでそんなに懐かれてるの私!?)
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