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初等部一年
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昼食を食べて教室に戻ったら、ホームルームをやって今日はおしまい。
挨拶を済ませたら、そそくさと校舎を後にする。
うーん、あれは予想外だったな。まさかこっちの世界にも存在してたなんて。
昼食に食べたアレは、まさしくカレーだった。全然辛くなかったけど美味しかった。
カレーって辛いから美味しいんじゃないんだね。コクっていうの?
香辛料の香りと、いくつもの食材の味が複雑に絡み合って、ぶわーって広がってくるの。
全然お子様カレーじゃないよ。すごい。あんなの初めて!
あのレベルの食事が食べられるなら、一生通ってもいいかもしれない。
いっそ教員めざそうかな? っていうか、なれるかな? 公爵家の娘が学園の教師って。
そんなことを考えながら、馬車が待つ場所へと向かう。
グレースが迎えに来ることになっているのだ。
「お嬢様、お迎えにあがりました」
優雅に馬車のドアを開けてくれたグレースが、いつものように微笑んでくれる。
「リシェリアお嬢様から、懐かしい香りがいたしますね」
「えっ……? 香り?」
思わず自分の制服に顔を近づけて嗅いでみる。うん。さっぱりわからん。
でもカレーだし、匂いは残っているだろう。
「学園の食堂で出たお昼ご飯の匂いですね。香辛料のスープは、初めて食べた料理でしたの(リシェリアとしては)」
「お屋敷に戻られたら、着替えとシャワーをおすすめいたします」
「やっぱりそんなに匂うの……?」
少し気恥ずかしくなって、私は胸元を押さえた。グレースはふっと笑みを浮かべる。
「わたくしには、懐かしくて心地よい故郷の香りですが……」
「懐かしいって……もしかしてグレースって、あの料理の国の人なの?」
「はい。この大陸の外。海を越えた南の国が、わたくしの故郷でございます」
グレースはそう言って、静かに馬車の扉を閉めると、前方の御者台へと歩いていった。
いやあ、昼食後すぐ下校で良かった。そっか、匂うか。
美味しかったけど、もうカレーは頼めないかな。
悲しいけれど、スパイス・ガールズは方向性の違いにより今日で解散します。ありがとうございました。
あ、でもグレースの故郷の料理なら作り方知ってるかも。
今度作り方聞いて料理長に作らせよう。そうしよう。
馬車が軽やかに動き出す。石畳の道をカタカタと進む音が、心地よいリズムを刻む。
それにしても……“海の向こうの国”か。どんなところなんだろ。
カレーの国だし、インドっぽいところかな?
* * *
シャワーを浴びて部屋着に着替えると、自分の部屋へと戻ってきた。
ふぅ~~~生き返った~。
仰向けにばふっとベッドに倒れ込む。
やっぱり制服ってさ、動きやすいようにできてるとはいえ、なんかこう、気を張る感じがあるんだよね。
背筋をピンって伸ばさなきゃっていう圧を感じる。私が小学生の頃は私服だったから楽だったよ。
天井をぼーっと見つめながら、ぐーっと手足を広げる。
はあぁ、猫になりたい。一日中ごろごろできるし。
時間にして二十数分ほどだろうか。
ベッドの上でうつ伏せになったり仰向けになったり、丸くなってみたり。
限界まで猫を満喫した私は、名残惜しさを噛みしめながらも身体を起こした。
よし……、令嬢モード、ON!
ベッドから立ち上がると、部屋にある姿見の前に立ち、髪の乱れを直す。
部屋着でも姿勢を崩しすぎるのはNG。いくら誰にも見られていなくても、それが“家の格”ってやつらしい。
ほんと、めんどくさいよねえ貴族様って……。
魂的にはリシェリアの時間より、庶民だった時間の方が遥かに長い。
私の中では、リシェリアになって五年か六年か、そんくらいしか経ってない。
慣れてきたとはいえ、純粋培養で育ってきた他の子達とは違い、私はその辺に生えている雑草みたいなものだ。
私の前世は――まあ、特筆するほどのものじゃない。
日本と言う平和な国で、ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の学校に通い、ごく普通の会社で、ごく普通に働いていた。
あまりに普通すぎて、逆に覚えてないくらい。
残念ながら、結婚して奥様(魔女)になった記憶はない。彼氏いない歴=年齢、推して知るべし。
で、気がついたら転生してたわけだけど……つまり、死んだんだよね? 私。
でも死因は不明。全く覚えてない。真っ白な空間で神様が土下座して謝ってきた記憶もない。
まあ、死に際に苦しんだ記憶がないだけマシだったと思おう。ラッキー。
明日の準備をしながら、前世のことをぼんやりと思い返していたら――
部屋の外から、誰かの帰宅を告げる物音が聞こえてきた。
あっ、純粋培養の誰かが帰ってきたのかな?
お出迎えしなくっちゃ。
挨拶を済ませたら、そそくさと校舎を後にする。
うーん、あれは予想外だったな。まさかこっちの世界にも存在してたなんて。
昼食に食べたアレは、まさしくカレーだった。全然辛くなかったけど美味しかった。
カレーって辛いから美味しいんじゃないんだね。コクっていうの?
香辛料の香りと、いくつもの食材の味が複雑に絡み合って、ぶわーって広がってくるの。
全然お子様カレーじゃないよ。すごい。あんなの初めて!
あのレベルの食事が食べられるなら、一生通ってもいいかもしれない。
いっそ教員めざそうかな? っていうか、なれるかな? 公爵家の娘が学園の教師って。
そんなことを考えながら、馬車が待つ場所へと向かう。
グレースが迎えに来ることになっているのだ。
「お嬢様、お迎えにあがりました」
優雅に馬車のドアを開けてくれたグレースが、いつものように微笑んでくれる。
「リシェリアお嬢様から、懐かしい香りがいたしますね」
「えっ……? 香り?」
思わず自分の制服に顔を近づけて嗅いでみる。うん。さっぱりわからん。
でもカレーだし、匂いは残っているだろう。
「学園の食堂で出たお昼ご飯の匂いですね。香辛料のスープは、初めて食べた料理でしたの(リシェリアとしては)」
「お屋敷に戻られたら、着替えとシャワーをおすすめいたします」
「やっぱりそんなに匂うの……?」
少し気恥ずかしくなって、私は胸元を押さえた。グレースはふっと笑みを浮かべる。
「わたくしには、懐かしくて心地よい故郷の香りですが……」
「懐かしいって……もしかしてグレースって、あの料理の国の人なの?」
「はい。この大陸の外。海を越えた南の国が、わたくしの故郷でございます」
グレースはそう言って、静かに馬車の扉を閉めると、前方の御者台へと歩いていった。
いやあ、昼食後すぐ下校で良かった。そっか、匂うか。
美味しかったけど、もうカレーは頼めないかな。
悲しいけれど、スパイス・ガールズは方向性の違いにより今日で解散します。ありがとうございました。
あ、でもグレースの故郷の料理なら作り方知ってるかも。
今度作り方聞いて料理長に作らせよう。そうしよう。
馬車が軽やかに動き出す。石畳の道をカタカタと進む音が、心地よいリズムを刻む。
それにしても……“海の向こうの国”か。どんなところなんだろ。
カレーの国だし、インドっぽいところかな?
* * *
シャワーを浴びて部屋着に着替えると、自分の部屋へと戻ってきた。
ふぅ~~~生き返った~。
仰向けにばふっとベッドに倒れ込む。
やっぱり制服ってさ、動きやすいようにできてるとはいえ、なんかこう、気を張る感じがあるんだよね。
背筋をピンって伸ばさなきゃっていう圧を感じる。私が小学生の頃は私服だったから楽だったよ。
天井をぼーっと見つめながら、ぐーっと手足を広げる。
はあぁ、猫になりたい。一日中ごろごろできるし。
時間にして二十数分ほどだろうか。
ベッドの上でうつ伏せになったり仰向けになったり、丸くなってみたり。
限界まで猫を満喫した私は、名残惜しさを噛みしめながらも身体を起こした。
よし……、令嬢モード、ON!
ベッドから立ち上がると、部屋にある姿見の前に立ち、髪の乱れを直す。
部屋着でも姿勢を崩しすぎるのはNG。いくら誰にも見られていなくても、それが“家の格”ってやつらしい。
ほんと、めんどくさいよねえ貴族様って……。
魂的にはリシェリアの時間より、庶民だった時間の方が遥かに長い。
私の中では、リシェリアになって五年か六年か、そんくらいしか経ってない。
慣れてきたとはいえ、純粋培養で育ってきた他の子達とは違い、私はその辺に生えている雑草みたいなものだ。
私の前世は――まあ、特筆するほどのものじゃない。
日本と言う平和な国で、ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の学校に通い、ごく普通の会社で、ごく普通に働いていた。
あまりに普通すぎて、逆に覚えてないくらい。
残念ながら、結婚して奥様(魔女)になった記憶はない。彼氏いない歴=年齢、推して知るべし。
で、気がついたら転生してたわけだけど……つまり、死んだんだよね? 私。
でも死因は不明。全く覚えてない。真っ白な空間で神様が土下座して謝ってきた記憶もない。
まあ、死に際に苦しんだ記憶がないだけマシだったと思おう。ラッキー。
明日の準備をしながら、前世のことをぼんやりと思い返していたら――
部屋の外から、誰かの帰宅を告げる物音が聞こえてきた。
あっ、純粋培養の誰かが帰ってきたのかな?
お出迎えしなくっちゃ。
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