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荒ぶる獣

2体目 女王〜遭遇〜

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 荒廃し、人気が消え去り灰色一色に塗りつぶされた都市を、周りが異様なほど静かなせいで何かのとどろきにさえ聞こえるエンジン音が駆け抜けていく。

 上は白いが下面は黒く塗ってあるパトカーのような配色の車が、サビのせいかこの都市で唯一赤い建造物である鉄骨の隣に止まる。

 旧東京タワー周辺、通称「鉄塔下」と呼ばれるこの場所は中位荒獣ちゅういあらけもの頻出地域ひんしゅつちいきだ。

 折れた鉄塔を支えるように生えた太い樹の下で車の中の少女はパソコンを起動させると、上空の無人機に接続した。

 高空10000mに位置する複数の無人偵察機は現日本政府が死守している各所の空港から飛び立ったものであり、荒獣の監視を行っている。
 これがなければ荒獣の早期発見は困難を極めるだろう。

 情報が表示されるまでにウェットシートで顔を拭いておく。したままの化粧が汗でグチャグチャになってしまっては、白狼を倒したとしても格好がつかないからだ。

 彼女達は軍の顔である。変な姿をメディアに晒す事はできない。

 化粧を落とした菜々の顔ははたして、基本は一切変わっていない。元々しなくても問題無い程の美少女だ。そんな顔をパソコンに近づけ、付近で確認されている荒獣の情報を見る。

 無人機によれば、白狼はいないものの『電鰐でんがく』が単独行動をしているという。

 白狼ほど知名度は高くないが中位の荒獣であることは間違いなく、基本スペックこそ白狼に劣るものの厄介な相手の一つとして数えられる。

 赤髪ツインテールの少女、菜々はお目当ての荒獣がいなかったことに舌打ちしつつも、電鰐だけでも討ち取って帰ろうと車から降りた。
 直後、もう一台が鉄塔下に到着する。慌てたように、つややかな黒髪を流した少女が降りてきた。

「ま、待て菜々……白狼は危なすぎる……」

「心配しなくていいわよ。電鰐しかいないもの」

「あれも充分危ないだろう……止めておけ」

「なによ。アンタ、一人だけ美味しい話を奪う気? そうはさせないわよ。見てなさい。アンタが証言者になるのよ! 私が一人で電鰐を倒したっていう話のね!」

 緑に話題を奪われたと思っている菜々は人の話など聞く由も無かった。ズンズンとひび割れたアスファルトの道を足早に歩いていく菜々を見て、緑は止めることを諦める。

 ここまで煽ってしまったのは自分のせいなのだから無駄に止めるのではなく、菜々の心意気を見届けようと思う。それに、ライバルとして「菜々ならできる」と感じてもいた。

 緑は周りに注意しながら菜々の後を付いて歩く。

大物狩りドラゴンスレイヤーの菜々」と呼ばれる彼女の視界は集中すると極端に狭くなる。今、電鰐を探し回っている菜々の目は、本当に電鰐しか見えないだろう。

 他の荒獣に注意するのは自然、緑の仕事だった。

「……?」

 それは廃墟の向こう側、巨木がそびえる小さな公園と化した水辺にいた。

 下位荒獣のデイビーズ。拳銃弾を受け止める黒く分厚い毛に覆われ、若干の恐怖心を抱かせる巨大な血走った目と大きな口、移動は上体と同じく毛皮に包まれた足のみで行う。

 それが一体のみ、草の上に鎮座している。

 この場合は報告だけして立ち去るのが無難だと思われた。しかし、緑には黒いはずの毛が光ったように見えたのだ。

(……青い? )

 そのせいか、思わず菜々を呼び止める。

「菜々、待ってくれ」

「なによ、諦めたんじゃなかったの?」

「違う、あれを見ろ」

 緑は割れかけのくすんだガラスと鉄枠の後ろに隠れ、菜々を隣に呼ぶと同時に青く見えるデイビーズを指さした。

「……デイビーズじゃない。あれがどうしたって言うのよ」

「色が違くないか?」

「色? ……青い……わね」

「メタリックブルーというやつだな。どうする」

「……HQ、ポイント8632-4662で青いデイビーズを発見。対処する」

 菜々は決して「不測の事態に対処し……」とは言わなかったものの、青いデイビーズから何かを感じたのか報告を行う。
 同時に上空の無人機が高精度カメラの一つを菜々達に向けた。

 司令室の方は、何があってもいいように装甲車と戦車を近くに待機させる。門を潜って物々しい車両が進軍を開始した。

 菜々と緑は報告をした後、顔を見合わせ服を脱いだ。
 たわわな雪化粧ゆきげしょう双丘そうきゅうと、まな板を彷彿させる、だが膨らみかけの胸。二つの相反する身体が廃墟の中に出来た安らぎの空間を歩いていく。

 木漏れ日が照らす中、二人と一匹は出会う。

 青い荒獣は一瞬身を震わせると妖美ようびな女性へと変貌した。

(やはり違う!)

 緑はその異形に驚く。デイビーズの女体と言えば一切の感情が感じ取れず、色は髪と下の毛は黒、それ以外は白が基本。

 しかし目の前のデイビーズは、静かに笑っているように見える。髪色もメタリックブルーで、色白なのは変わらないが血が通っている事は分かった。健康的な白さだ。

 青デイビーズは両手を広げる。その状態で粛々と、緑と菜々に近づき……二人の首筋に素早く何かを刺した。

「なっ……!」

「いっ……何すんのよ!」

 二人はそれ以上何かをされるのを警戒し、一歩下がる。だが既に何かをされた後。警戒するのが遅かったと言わざるを得ない。

 足はそれ以上動かなかった。いや、動かせないと言った方が近い。突如として身体の中からうずきが溢れ出し、子宮を激しく責め立てたのだ。
 ギュウと内側から押されるように全ての秘蕾ひらいが起き上がり、ジワリと甘酸っぱい蜜が秘孔ひこうを余すところなく濡らしていく。
 ジン……とした衝撃が頂点から全身に溶け込んでいった。甘い刺激に肌は赤らみ小刻みに揺れている。

 動けばイってしまう。そう思わせるほど、甘い電気が身体中の神経に作用していた。絶頂はイコールで体力の消耗となる。反撃ができず、そのせいでちる事も有り得る。

 だから僅かでも回復に力を入れる。これが、性闘本能で圧倒的に負けている人類が闘う事に特化させた消極的性技の一つ。だが、この荒獣には何の役にも立たない。

「んぁっ……な……に、これ……」

「ふぁあ……これ……まず、い……」

 身体を突き破りそうな快感に必死に耐える二人。だが、その奮闘むなしく青のデイビーズは近づいてくる。

「心配しないで。気持ちよくなるだけよ」

(喋った!?)

 女体化しても文字通り獣同然のデイビーズ。それが言葉を発した。

 その事実に驚き、意識を逸らされる。

 刹那、デイビーズの細肢ほそしが、ヒクついて物欲しそうにしていた花園を責め立てた。
 秘孔の中へうねる指が入り込み、膣壁ちつへきにトロトロと流れる愛液をまるで刷り込むように指先でなぞる。肉ヒダの奥まで塗り込むように、丁寧に。

 それだけで、腹の奥底で暴れ回っていた媚薬びやくが間欠泉のように吹き出し、身体中を駆けずり回る。指先まで痺れる快感に溺れ息すら出来なくなっていく。
 甘酸っぱい、少女の香りが急速に熱を増す膣口ちつくちからフワリと漂った。

 淫蕾いんらいが真っ赤に、完全に勃起ぼっきし快楽を享受する。爆ぜる快感に打ち震え、卑猥ひわいなダンスが繰り広げられる。勝手に指を締め付ける柔肉やわにくは、嬉しそうにブルブルと痙攣けいれんする。

 デイビーズはその様子を見て、満足そうに笑った。

「やっ! なん……あああぁぁあぁあっ!」

「く……やめ……はああああぁぁっ! くふううぅうんっ!」

 芝生の上に小さな音を立てて二人の愛液が降りかかる。木漏れ日を浴びてキラキラと光るそれは、間隔を空けずに量を増していった。
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