ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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地獄の黒狼

44体目 漆黒の烈狼8

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 ふと、楽は目を覚ました。清潔感を強調する白い天井を確認し、自分が救出されたのだと察する。隣を見ると奈津美が本を読んでおり、その奈津美にもたれ掛かるようにしてレモンが眠そうに首を傾げていた。

「……やあ」

「……ご主人様! 良かった!

「レモン、心配かけてごめん」

 眠気は完全に飛んだ様子で抱きついてきたレモンを優しく撫でる。次いで、大人しいままの奈津美に声をかけた。

「奈津美くん、大変だったね。お疲れ様。僕は結構寝てしまっていたのかい?」

 問いに、奈津美は読んでいた本を静かに閉じ、答えた。

「いいえ、まだ陽が暮れきってもいないわ」

「……い、いない『わ』?」

 口調に違和感を覚え、オウム返しになる。

「何か」

「な、何も……」

「ならいいわ。皇都全体に避難警報が出されたみたいだけど、今は解除されてる」

「そ、そうなんだ。ヘルハウンドも何とかできたみたいで良かったよ。ところで僕を助けてくれたのはきみかい?」

「ええ」

「ありがとう、助かったよ……ええと」

「何?」

「いや、まだ名前を聞いてないと思って」

 楽は奈津美ではない、姉妹かソックリさんか、ともかく違う人だと勘違いしたようだ。
 ややあって、全てを察した奈津美がドヤ顔でこう言った。

「愚問ね。奈津美は、奈津美よ」




「お、いたいた」

 先に訪問してきたのは菜々だった。つい先程まで撤退準備の後片付けを手伝わされ、やっと解放されたところなのだ。何も知らない菜々は奈津美の肩をバシバシと叩く。

「奈津美あんた凄いじゃん! どっちも手負いとはいえ、白狼とヘルハウンドを堕としたんでしょ? やるわね!

「ええ、まあね」

「どーしたのよ元気ないわねー!

「ちょっと……痛いから止めてもらえるかしら」

「……。……!?」

 口調がおかしい事に気づいた菜々が手を止める。

「えーと、奈津美?」

「何?」

「あれ、奈津美で合ってる」

「当たり前でしょう? 奈津美は、奈津美よ」

「んーと、じゃあ頭打った?」

「失礼ね。確かにあのアホっぽい方が素ではあるのだけれども」

「ほへ?」

「また同じ事を言わなければならないようね……」

 こうして菜々は、狂化とは何であるかを楽と菜々に教えた。


「ふーん……そういう事ね」

「僕も最初はビックリしたよ」

「私も最初は……」

「分かってもらえたかしら」

「何となく。なんか慣れないけど、暫くしたら戻るみたいだし」

「そうね、早く戻りたいものだわ。そして後もう一回説明しなければならないのね……面倒だわ」

「もう一人? ああ、そういえば緑はどこに?」

 楽が親友の事を思い出し菜々に聞くと、菜々は明らかに顔をしかめた。

「知らないわよ、あんな奴」

「お、おや?」

「これはもしかしなくても、喧嘩ね」

 二人は一言で勘づく。

「何があったんだい?」

「あんた達がヤバいって聞いて、あいつ出ようとしたから止めたの。そしたら私の事、自己中だって。誰のために言ってると思ってるのかしら」

 なぜ自己中と言われたのか経緯がさっぱり伝わってこないが、とにかく菜々が怒っているということだけは分かったので余計な口出しはせず黙って聞く。

「ほんっと腹立つわ……」

 その時、噂をすればなんとやらで病室のドアがノックの後開いた。

「見舞いに来たぞ! ……あ、な、菜々、いたのか……」

 凱旋した楽と奈津美の前では元気でいようとした緑だったが、それが凶と出てしまう。当然菜々にチクリと刺される結果となった。

「元気そうね」

「う……その、さっきは済まなかった……こ、これ置いておくから!」

 随分と気まずかったのか、手に持っていた箱を袋ごとテーブルの上に置いてどこかへ去ってしまう。

「……クッキー」

 菜々が一番に箱を開け、勝手に一つ取って食べ始めた。

「それは食べるんだ?」

「ん……怒ってるけど、嫌いになったわけじゃないから」

「違いがよく分からないわ」

「一過性ってこと。明日には許してるわよ」

「良かった。仲悪い姿はあまり見なくて済みそうだ」

「……いいえ、そうはいかないわ」

 菜々は楽の安堵を締め上げるような事を言う。

「ど、どうしてだい?」

「いつも緑は調子に乗りすぎなの。これを機に、少し懲らしめてやらないと。だからあなた達には悪いけど、一週間。そう、一週間私は緑に辛く当たるから、そこの所よろしく」

「一週間!?」

「随分と長いわね」

「そうかしら。頭を冷やすのに必要な時間よ」

 菜々の意思は固い。前々から胸の大きさについて言われていたのも気に食わなかったのか、そこを含めて仕返ししてやろうと画策しているようだった。
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