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少女達の守護者
58体目 少女と守護者の戯れ11
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「営みの街が暮れたら色めき風たちは運ぶわカラスと人々の群れ 意味なんかないさ暮らしがあるだけただ腹を空かせて君の元へ帰るんだ」
10番と割り振られた部屋で一番最初に歌い出したのは菜々。薄暗い空間の中、立って歌いその歌唱力を存分に発揮している。
他には緑、僧帽、良太郎・誠一郎ペアがいる。
菜々は大体何でも歌えるので一番人気の曲から選んだ。(年代としてはかなり古いのだが、荒獣侵攻後は歌を始めとした芸術活動がほぼ停滞したため、今も人気がある)
軽くウォーミングアップ程度に歌い終え、次は誰かと疑問に思って他四人を見るが……まだ次の曲を選んですらいなかった。
「……ちょっと、誰も歌わないの?」
菜々はそう言いつつも緑を見るが、どうしたのか彼女らしくなく決心がつかないようだった。
「い、いや私は……」
「俺は後で」
「私も、あまり喉の調子が良くないので……僧帽さんどうぞ」
催促は次から次へと回り、名指しされた僧帽は渋々曲を選んだ。
「えっ俺すか」
「さっさと選びなさいよー」
「うむむ……じゃあこれだ」
僧帽が曲を選び、楽し気なリズムが流れ出す。
「超天変地異みたいな狂騒にも慣れてこんな日常を平和と見間違う rambling coaster 揺さぶられながら見失えないものは何だ?」
落ち着いた低音で丁寧に歌い上げると、菜々が音のならない程度に小さく拍手した。
「あら意外と上手い」
「迷ってた癖に歌えてんな」
渋ってた割には普通に歌いきり、お鉢が残り三人に回ってくる。
「わ、私か!?」
影でじゃんけんをして負けた緑が歌うことになった。
一方11番室では、奈津美と楽、更に刀也、隼も合わさってカラオケ大合戦が起きていた。
暗いはずの部屋がなぜか眩しく見えるほど元気いっぱいに歌うのは、奈津美だ。誰かの当てつけのように胸を揺らして飛び跳ねながら叫び歌っている。
「ドュッピドュッピチュッパッパドピュドピュイェーイェー ドュッピドュッピチュッパッパドピュドピュイェー ×6 男性の皆さん奈津美のココは空いてますよ「暖めますか?」「お願いします。」今すぐチンしてぶっ込んで! あなたのバナナわたしのマンゴー皮をむいて食べちゃって まだまだ欲しいの? だけどもそれでも乱暴にしちゃ らめぇぇぇぇぇぇぇ!!イェエーーーー!!!」
「本当に歌うのかあ……」
「なんかおかしいですよ……」
「ダメだ……笑いが止まんねえ……」
(このメンツなら大丈夫と踏んで実は歌おうと思ってた)
早くも深夜テンションに入っている奈津美を楽とレモンはゲンナリとした様子で見つめ、隼はそれがツボに入ったのか笑い転げ、刀也はネタを取られて歌う曲を頑張って探している。
静かに歌う10番室とは反対に、カオスの様相を呈していた。
「うぇーい! 次楽ちんだよ! 約束通りアレな歌な!」
「……ああ、二言はない。もう決めているさ」
なぜか楽は奈津美と「奈津美が変なの歌ったら楽も変なの歌う」という約束を交わしていたのだ。交わしてしまったのだ。
こんなはずじゃなかったのに……と思いながらスッポン! で始まる曲を歌い始める。
「膨らんじゃったやばおぴ加減最高潮なのをくれてやる! 好きって言葉で嬲って迎え撃つから君のアイデンティティティティーン 侮らないで夢見がちボーイ意外とありなんだって 気づいて妄想フラストレイション毛頭暴走止まらないギガンティック よそ見厳禁見ててててね?」
低音のハスキーボイスが炸裂し、見事な歌声を披露する。しかし残念、歌の内容が内容なだけに歌手も目指せるのではないかというほどの声はただシュールさを増す要素であるばかりだった。
(はわわわ……楽様が……楽様がそんな事ぉ……!)
「いいゾ~これ。ナイスゥ!」
「くっそwww」
(歌えそうなアレな歌二曲とも歌われた……どうしよ)
レモンは顔を真っ赤にして「ボカロ」への偏った見識を持ち始め、奈津美ははやし立て、隼は笑いっぱなし、刀也は歌おうと思っていた二曲を取られて悩み……楽は心の中で涙を流した。
「奈津美くん……覚えてろ……」
「ちょっ、声のトーンガチめ!?」
レモンより顔を真っ赤にして楽は恥辱に悶える。後で奈津美に倍増して返す事だろう。
刀也は隣で腹を抱える隼の代わりに、ひとしきり悩んでから曲を入れた。
その曲名が表示されると、全員が渋い顔をする。
「……その曲は……いや知らないけど」
「名前がねー……」
「これは……」
「隊長……」
「いやいやいやいや? さっきまでアレな曲を流しといて、これはウケないとか無しだろ?」
最初は(歌詞を除いて)非常にまったりとした調子なのだが……すぐ何もかもが過激になった。
「よーしそれじゃ私が、貴様ら家畜どもをSかMかに分別してやる! 準備はいいか! よーし! 行くぞ! 縛られて嬉しいか(YES!)それならお前はMだ! 叩いて嬉しいか(YES!)それならお前はSだ! ん~特にどっちでもないかも? なんてやつは邪道だ 私から言わせれば全員***だ悦いぞ悦いぞー! *便器 *便器 肉 肉 *便器 肉** 肉便器 M奴隷ども喜べ ワハハハ」
「うっわ……」
「キツいねー」
「ちょっとこれは……」
「隊長セクハラー」
「何でだよ!」
一人だけ扱き下ろされる刀也。まあ彼も彼で、この立ち位置を気に入っている節があるのだが。
次は隼。さっさと決めるとマイクを持ち歌い出した。
アニソン好きとは言うものの、所謂萌え系は好まない。カッコイイ系のアニソン一択なのだ(もちろん他のロックやポップも普通に歌える)。
「ONE PUNCH! (Three! Two! One! Kill shot!) 参上! 必勝! 至上最強! ! なんだってんだ? フラストレーション 俺は止まらない」
そして、めちゃくちゃに上手い。思わず楽や奈津美から歓声が上がった程だ。
ともすると、彼もまた平和な時代であれば歌手を目指していたかもしれない……楽に続きそう思わせるほどである。
「おおっ! 凄い!」
「やばぁ! これは強敵の予感……!」
「私にも何となく上手いって分かります」
「あいつは何歌ってもさまになるからなあ」
こんな感じで大盛り上がりの11番であった。
さて、その頃10番はというと……。
「すーはー……い、いくぞ」
「どーんと歌っちゃいなさい!」
「う、うむ。だが期待はしないでくれよ……」
緑が曲を選び、歌い始めるところだった。
(まったく……上手くはないというのに、なぜ私はこの歌を選んでしまったのだ……)
曲が始まる。しかし緑は口を開かない。
「……」
「は、始まってるわよ」
(いいんだ、一番最初は)
緑はあえて一番最初の部分を歌わなかった。緊張していたというのもある。それに、あまり自分と合っているとは、思えなかったのだ。ただ音楽が流れるに任せる。
そうして一泊置いて、緑は歌い出した。
「あなたと出会い時は流れる思いを込めた手紙もふえる いつしか二人互いに響く時に激しく時に切なく 響くは遠く遥か彼方へやさしい歌は世界を変える ほらあなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるの ただあなたにだけ届いてほしい響け恋の歌 ほら ほら ほら 響け恋の歌」
「……み、緑?」
歌の途中から、緑は菜々に近づいていく。この歌を届けんとばかりに。
薄暗い部屋の中でも、緑の目が真剣に菜々を見ている事が見て取れた。やがて緑は菜々の座っている革張りのソファへ膝を乗せ、目の前で歌う。
「あなたは気づく二人は歩く暗い道でも日々照らす月 握りしめた手離すことなく思いは強く永遠誓う 永遠の淵きっと僕は言う思い変わらず同じ言葉を それでも足りず涙にかわり喜びになり言葉にできず ただ抱きしめる ただ抱きしめる」
「……」
歌詞にあわせて手を重ね、抱きしめる。座ったまま何も出来ない菜々に覆いかぶさるように、恋のうたを耳元で情熱的に叫ぶ。
「ほらあなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるの ただあなたにだけ届いてほしい響け恋の歌 ほら ほら ほら 響け恋の歌」
歌が区切れたところで緑は菜々を離し、もう一度目の前で歌う。今度は吐息を吐くように、切なく。
「夢ならば覚めないで……」
菜々が次の歌詞を遮る。強くハッキリと彼女らしく。
「夢ならば覚めないで!」
自然と二人は声を重ねる。
「「あなたと過ごした時永遠の星となる ほらあなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるの ただあなたにだけ届いてほしい響け恋の歌 ほらあなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるの ただあなたにだけ届いてほしい響け恋の歌 ほら ほら ほら 響け恋の歌」」
綺麗なデュエットにも終わりが来るように、二人にもいつかは終わりが訪れるだろう。それでも、緑は菜々と額を重ね合わせ、想いを伝える。
「菜々、さっき、私に好きだって言ってくれた。すごく嬉しかった。だから私も勇気を出す。女同士かもしれないが……私は……菜々、好きだ」
「……緑、あなたなんて事……うん、ありがと。おかげで私も決心付いたわ。緑! ……あなたの事、好きよ」
突然の告白にも関わらず、菜々もしっかりと愛の言葉を交わし、キスで一曲を締めくくった。
二人が抱きしめ合うと、三人から拍手が。
「ピュー!」
「幸せなこったな」
「まさか目の前で見せつけられるとは……いやはや、より一層、この仕事にやりがいが出るというものです」
それぞれに二人を祝う。
いきなりの、それも曲に合わせた告白。
緑は「好き」と言われてからどう返事をしようか考えを巡らせていた。何も人前で告白する事もないのではないかとも思ったが、帰った後では遅すぎると考えたのだ。
だから、歌に気持ちを乗せてここ一番の大勝負に出た。緊張していた。途中で失敗したら台無しになる。それでも、今を選んだ。
歯が浮くような、それでいて自然な告白。暫く他の人間は入り込めそうになかった。
「ま、お二人さんは幸せに浸っててくれても良いが、まだ俺は歌ってねえんだ。好きにやらせてもらうぜ」
良太郎だけは構わず自分の好きな曲を歌い始めたが。
「記憶の墓場にばら撒かれたまるで「生命のダスト」「感動の迷宮」積もり積もる骨に涙枯れて薄っぺらなメモリアルと化した「糞臭い便所こそマイホーム」フテくされるLIFEからの迷子猛烈球股間にデッドボール死体蹴っ飛ばしてゲップだすBOMB!!! ブッイキス!!てめーらブッイキス!! I wannaブッイキス!!てめーらぶっイキス!!ブッイキス!!貴様らブッイキス!!貴様らブッイキス!!貴様らブッイキス!! 」
そう、幸せは生まれ変わってもずっと……。
10番と割り振られた部屋で一番最初に歌い出したのは菜々。薄暗い空間の中、立って歌いその歌唱力を存分に発揮している。
他には緑、僧帽、良太郎・誠一郎ペアがいる。
菜々は大体何でも歌えるので一番人気の曲から選んだ。(年代としてはかなり古いのだが、荒獣侵攻後は歌を始めとした芸術活動がほぼ停滞したため、今も人気がある)
軽くウォーミングアップ程度に歌い終え、次は誰かと疑問に思って他四人を見るが……まだ次の曲を選んですらいなかった。
「……ちょっと、誰も歌わないの?」
菜々はそう言いつつも緑を見るが、どうしたのか彼女らしくなく決心がつかないようだった。
「い、いや私は……」
「俺は後で」
「私も、あまり喉の調子が良くないので……僧帽さんどうぞ」
催促は次から次へと回り、名指しされた僧帽は渋々曲を選んだ。
「えっ俺すか」
「さっさと選びなさいよー」
「うむむ……じゃあこれだ」
僧帽が曲を選び、楽し気なリズムが流れ出す。
「超天変地異みたいな狂騒にも慣れてこんな日常を平和と見間違う rambling coaster 揺さぶられながら見失えないものは何だ?」
落ち着いた低音で丁寧に歌い上げると、菜々が音のならない程度に小さく拍手した。
「あら意外と上手い」
「迷ってた癖に歌えてんな」
渋ってた割には普通に歌いきり、お鉢が残り三人に回ってくる。
「わ、私か!?」
影でじゃんけんをして負けた緑が歌うことになった。
一方11番室では、奈津美と楽、更に刀也、隼も合わさってカラオケ大合戦が起きていた。
暗いはずの部屋がなぜか眩しく見えるほど元気いっぱいに歌うのは、奈津美だ。誰かの当てつけのように胸を揺らして飛び跳ねながら叫び歌っている。
「ドュッピドュッピチュッパッパドピュドピュイェーイェー ドュッピドュッピチュッパッパドピュドピュイェー ×6 男性の皆さん奈津美のココは空いてますよ「暖めますか?」「お願いします。」今すぐチンしてぶっ込んで! あなたのバナナわたしのマンゴー皮をむいて食べちゃって まだまだ欲しいの? だけどもそれでも乱暴にしちゃ らめぇぇぇぇぇぇぇ!!イェエーーーー!!!」
「本当に歌うのかあ……」
「なんかおかしいですよ……」
「ダメだ……笑いが止まんねえ……」
(このメンツなら大丈夫と踏んで実は歌おうと思ってた)
早くも深夜テンションに入っている奈津美を楽とレモンはゲンナリとした様子で見つめ、隼はそれがツボに入ったのか笑い転げ、刀也はネタを取られて歌う曲を頑張って探している。
静かに歌う10番室とは反対に、カオスの様相を呈していた。
「うぇーい! 次楽ちんだよ! 約束通りアレな歌な!」
「……ああ、二言はない。もう決めているさ」
なぜか楽は奈津美と「奈津美が変なの歌ったら楽も変なの歌う」という約束を交わしていたのだ。交わしてしまったのだ。
こんなはずじゃなかったのに……と思いながらスッポン! で始まる曲を歌い始める。
「膨らんじゃったやばおぴ加減最高潮なのをくれてやる! 好きって言葉で嬲って迎え撃つから君のアイデンティティティティーン 侮らないで夢見がちボーイ意外とありなんだって 気づいて妄想フラストレイション毛頭暴走止まらないギガンティック よそ見厳禁見ててててね?」
低音のハスキーボイスが炸裂し、見事な歌声を披露する。しかし残念、歌の内容が内容なだけに歌手も目指せるのではないかというほどの声はただシュールさを増す要素であるばかりだった。
(はわわわ……楽様が……楽様がそんな事ぉ……!)
「いいゾ~これ。ナイスゥ!」
「くっそwww」
(歌えそうなアレな歌二曲とも歌われた……どうしよ)
レモンは顔を真っ赤にして「ボカロ」への偏った見識を持ち始め、奈津美ははやし立て、隼は笑いっぱなし、刀也は歌おうと思っていた二曲を取られて悩み……楽は心の中で涙を流した。
「奈津美くん……覚えてろ……」
「ちょっ、声のトーンガチめ!?」
レモンより顔を真っ赤にして楽は恥辱に悶える。後で奈津美に倍増して返す事だろう。
刀也は隣で腹を抱える隼の代わりに、ひとしきり悩んでから曲を入れた。
その曲名が表示されると、全員が渋い顔をする。
「……その曲は……いや知らないけど」
「名前がねー……」
「これは……」
「隊長……」
「いやいやいやいや? さっきまでアレな曲を流しといて、これはウケないとか無しだろ?」
最初は(歌詞を除いて)非常にまったりとした調子なのだが……すぐ何もかもが過激になった。
「よーしそれじゃ私が、貴様ら家畜どもをSかMかに分別してやる! 準備はいいか! よーし! 行くぞ! 縛られて嬉しいか(YES!)それならお前はMだ! 叩いて嬉しいか(YES!)それならお前はSだ! ん~特にどっちでもないかも? なんてやつは邪道だ 私から言わせれば全員***だ悦いぞ悦いぞー! *便器 *便器 肉 肉 *便器 肉** 肉便器 M奴隷ども喜べ ワハハハ」
「うっわ……」
「キツいねー」
「ちょっとこれは……」
「隊長セクハラー」
「何でだよ!」
一人だけ扱き下ろされる刀也。まあ彼も彼で、この立ち位置を気に入っている節があるのだが。
次は隼。さっさと決めるとマイクを持ち歌い出した。
アニソン好きとは言うものの、所謂萌え系は好まない。カッコイイ系のアニソン一択なのだ(もちろん他のロックやポップも普通に歌える)。
「ONE PUNCH! (Three! Two! One! Kill shot!) 参上! 必勝! 至上最強! ! なんだってんだ? フラストレーション 俺は止まらない」
そして、めちゃくちゃに上手い。思わず楽や奈津美から歓声が上がった程だ。
ともすると、彼もまた平和な時代であれば歌手を目指していたかもしれない……楽に続きそう思わせるほどである。
「おおっ! 凄い!」
「やばぁ! これは強敵の予感……!」
「私にも何となく上手いって分かります」
「あいつは何歌ってもさまになるからなあ」
こんな感じで大盛り上がりの11番であった。
さて、その頃10番はというと……。
「すーはー……い、いくぞ」
「どーんと歌っちゃいなさい!」
「う、うむ。だが期待はしないでくれよ……」
緑が曲を選び、歌い始めるところだった。
(まったく……上手くはないというのに、なぜ私はこの歌を選んでしまったのだ……)
曲が始まる。しかし緑は口を開かない。
「……」
「は、始まってるわよ」
(いいんだ、一番最初は)
緑はあえて一番最初の部分を歌わなかった。緊張していたというのもある。それに、あまり自分と合っているとは、思えなかったのだ。ただ音楽が流れるに任せる。
そうして一泊置いて、緑は歌い出した。
「あなたと出会い時は流れる思いを込めた手紙もふえる いつしか二人互いに響く時に激しく時に切なく 響くは遠く遥か彼方へやさしい歌は世界を変える ほらあなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるの ただあなたにだけ届いてほしい響け恋の歌 ほら ほら ほら 響け恋の歌」
「……み、緑?」
歌の途中から、緑は菜々に近づいていく。この歌を届けんとばかりに。
薄暗い部屋の中でも、緑の目が真剣に菜々を見ている事が見て取れた。やがて緑は菜々の座っている革張りのソファへ膝を乗せ、目の前で歌う。
「あなたは気づく二人は歩く暗い道でも日々照らす月 握りしめた手離すことなく思いは強く永遠誓う 永遠の淵きっと僕は言う思い変わらず同じ言葉を それでも足りず涙にかわり喜びになり言葉にできず ただ抱きしめる ただ抱きしめる」
「……」
歌詞にあわせて手を重ね、抱きしめる。座ったまま何も出来ない菜々に覆いかぶさるように、恋のうたを耳元で情熱的に叫ぶ。
「ほらあなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるの ただあなたにだけ届いてほしい響け恋の歌 ほら ほら ほら 響け恋の歌」
歌が区切れたところで緑は菜々を離し、もう一度目の前で歌う。今度は吐息を吐くように、切なく。
「夢ならば覚めないで……」
菜々が次の歌詞を遮る。強くハッキリと彼女らしく。
「夢ならば覚めないで!」
自然と二人は声を重ねる。
「「あなたと過ごした時永遠の星となる ほらあなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるの ただあなたにだけ届いてほしい響け恋の歌 ほらあなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるの ただあなたにだけ届いてほしい響け恋の歌 ほら ほら ほら 響け恋の歌」」
綺麗なデュエットにも終わりが来るように、二人にもいつかは終わりが訪れるだろう。それでも、緑は菜々と額を重ね合わせ、想いを伝える。
「菜々、さっき、私に好きだって言ってくれた。すごく嬉しかった。だから私も勇気を出す。女同士かもしれないが……私は……菜々、好きだ」
「……緑、あなたなんて事……うん、ありがと。おかげで私も決心付いたわ。緑! ……あなたの事、好きよ」
突然の告白にも関わらず、菜々もしっかりと愛の言葉を交わし、キスで一曲を締めくくった。
二人が抱きしめ合うと、三人から拍手が。
「ピュー!」
「幸せなこったな」
「まさか目の前で見せつけられるとは……いやはや、より一層、この仕事にやりがいが出るというものです」
それぞれに二人を祝う。
いきなりの、それも曲に合わせた告白。
緑は「好き」と言われてからどう返事をしようか考えを巡らせていた。何も人前で告白する事もないのではないかとも思ったが、帰った後では遅すぎると考えたのだ。
だから、歌に気持ちを乗せてここ一番の大勝負に出た。緊張していた。途中で失敗したら台無しになる。それでも、今を選んだ。
歯が浮くような、それでいて自然な告白。暫く他の人間は入り込めそうになかった。
「ま、お二人さんは幸せに浸っててくれても良いが、まだ俺は歌ってねえんだ。好きにやらせてもらうぜ」
良太郎だけは構わず自分の好きな曲を歌い始めたが。
「記憶の墓場にばら撒かれたまるで「生命のダスト」「感動の迷宮」積もり積もる骨に涙枯れて薄っぺらなメモリアルと化した「糞臭い便所こそマイホーム」フテくされるLIFEからの迷子猛烈球股間にデッドボール死体蹴っ飛ばしてゲップだすBOMB!!! ブッイキス!!てめーらブッイキス!! I wannaブッイキス!!てめーらぶっイキス!!ブッイキス!!貴様らブッイキス!!貴様らブッイキス!!貴様らブッイキス!! 」
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