ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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冷たくてねばねばするもの

63体目 緑の受難

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 トパリ、トパリと水気の多い雪がアスファルトを濡らす。吐いた息が白く流れる。足がかじかみ少しかゆい。今年最後の雪だと、朝見た天気予報は言っていた。

 休日の昼下がり。人通りは少なくないが、皆寒さを嫌がって外には出てきていないようだ。その分、車はいつもより多く走り、たまに雪水をはね上げて道路脇に人を寄せつけない。

 全てがいつもよりグレーに染まった皇都を、暖かな茶色の防寒着に身を包んだ菜々が颯爽と歩いていく。何よりも紅く輝く二本の長髪をなびかせながら。

 菜々は思案していた。

 緑や自分に「匹敵する」と言われた一ノ瀬鈴谷を倒した日からもうすぐ一週間が経とうとしている。
 それは同時に、緑のふたなり化における訓練最後の日を意味していた。

(私が全力を出すだけならいつもと同じ。それじゃダメね)

 精液のこぼれ落ちそうな股間を気にしつつ、緑の事も考えていると、ふと小さなショーウィンドウが目に留まった。

 そこはピンクや青で彩られた淫靡な世界。大人の玩具が所狭しと並んでいる。

(随分大胆なお店……)

 十年前までは絶対に考えられなかった、バイブやオナホールなどが展示されたウィンドウ。貧困か、ストレスか、それとも荒獣とハンターを知り始めたせいか、世の中の貞操概念は徐々に緩んできている。

 バイブやディルドでは結局は人の手に敵わないと、いつもなら素通りするであろうその店の前で立ち止まり考えを固めた。

(……よし、ここにしよ)

 菜々は人目を恥ずかしがるようにそそくさと店の中に入っていった。



「……」

 窓に付いては部屋の中の暖房に溶かされ、伝い落ちていく。頬杖をつき無数の雪の最期を見届けながら、メイド服の少女もまたセンチメンタルに思考を巡らせている。
 バタッと一際大きな雪が窓に張り付き、その音に白銀の長髪が微かに揺れた。

「最近、悩みがちだね。どうしたんだ?」

「お父様……! いえ、その……」

 不意に陸佐……鈴谷の実の父が声を掛けてくる。鈴谷は驚いたあと俯き、丸いガラステーブルにかけられた花柄の四角いテーブルクロスを見ながら言葉を紡いだ。

「あの方々……俗に四天王と、呼ばれるあの人たちは凄いですわね。私も、あの中に入って闘ってみたいと……思いまして……」

「ふうむ……」

 陸佐は悩んだ。皇都防衛を第一に考える陸佐である。戦力の確保は必須課題であり、目の前の少女が強力な戦力になる事はよく分かっている。
 しかし、実の娘なのだ。もし命を落としたら……と思うと即答はできない。ただ、娘の希望を無下にする事もできないのが父親なのである。

 それに約束をしてしまった。そう思うと、返事は自ずと決まる。

「可愛い子には旅をさせよと言うし……一度やらせてみるのも……」

「本当ですかっ!?」

 今日は曇り空だと言うのに、太陽の光をさんさんと浴びて輝く向日葵のような笑顔で陸佐に詰め寄る鈴谷。
 そんなに嬉しかったかと若干戸惑いながらも、勢いに押されてしっかりと承諾してしまった。

「う、うむ……」

「やった! ありがとうお父様! 早速ご挨拶に行ってまいります!」

 彼女は口早にそう言うが早いか、いつもの仕込み傘だけは忘れずに手に持ち部屋を出ていってしまった。



「菜々、なんだその……それは」

 ピンクの物でゴチャゴチャと埋まった袋を指差し、緑が語彙力を失った様子で苦虫を噛み潰したような顔をする。
 菜々はドチャリと袋を置き、中から玩具を取り出した。

「えーっと、ストロニックアインズターボ×2、イロハスティックデルタ×3、フリップゼロ・ハイトルクスウィッピング、ホットジェルラブ」

「ほぼ全部老舗のハイエンドモデルじゃないか」

「そうよ。で、これから何すると思う?」

「悪かった菜々朝早く睡姦から初めて散々泣かした上しかも満足して即効二度寝したの謝るからほんと許して」

「やだ」

「ひんぎゃあー!」

 暗黒微笑に恐れをなした緑の超早口謝罪は一切役に立たず、菜々はガチトーンでその謝罪を拒否しながら両手に買ってきた全ての玩具を持ち緑をひん剥きにかかった。

 一分後……。

「よし、ざっとこんなもんね」

「ふぐうー! んぐうううぅーっ! んごおぉぉぉおーーーーっ!」

 必死の抵抗虚しく全ての玩具を突っ込まれ、貼り付けられ、被せられ、おまけに手の緊縛とアイマスクにギャグボールという文明人の欠けらも無い……いやある意味文明の利器で埋め尽くされているという格好にさせられた緑がベッドの上で喘ぐ。身から出た錆というが錆で収まっている気がしない。

 一つ一つの技巧は人に劣るものの、それを多数付けられては話が別だ。どこに意識を集中しても、もしくは気を逸らしても、どこかが刺激を伝えてくる。
 疲れと限界を知らない機械の責めに、早くも頭の中が快楽で埋め尽くされてしまう。

 しかも、身体を動かせない事で被支配欲と被虐心を煽られ、視界がないことで感度が上がる。上手く発声できず快感を逃がす術がない。
 高揚感と切ない熱がすぐに全身へと回り埋めつくした。筋肉が突っ張り、布をギリギリと引く。しかし、緩む気配すらない。

「んじゃ私、外行ってくるから。じゃあね」

「おおおぉぉぉーーーっっ! あ゛あ゛ーーーーっ!」

 脳の処理能力を超えた快感が雪崩込み、複数の奔流が合流して練上がり、脳幹を駆け上がって大脳を焼く。
 ハエトリグサのような快楽が、逃げられない緑を一瞬で飲み込む。筋肉が収縮し、身体が宙に打ち上がった。

 盛大に精液と潮を吹き上げるが、テープで固定された玩具はその程度では抜けたりしない。
 機械の快楽は一度飲み込んだ緑を離すことは無く、ジュルジュルと快楽の蜜で浸し、ゆっくりと蕩かしていく。

 ドアが閉まると自分の身体以外に気を向けるものもなく、より一層深い快楽地獄が始まったのであった。



 トントンと、どこか軽やかな足取りが階段を降りていく。時折、階段が傘の重さに耐えきれず軋んだり小さな折割音を立てたりした。

(次の階、右手に進んで五部屋目が奈津美さんの部屋ですわね。「怪物」なんて呼ばれている様ですが、この前見た感じはあっけらかんとした陽気な女性にしか見えませんでしたわ)

 鈴谷は覚えている経路を頼りに、まずは奈津美の部屋を目指す。しかし階段を下りきった辺りで楽とレモンに遭遇した。

「あら」

「一ノ瀬……!? 何のようだ!」

 自分達を強襲した敵が一週間ぶりに出てきたため、楽はリベンジかと構える。だが鈴谷はフワリと踊り場に立つと、両手でスカート部分を持ち上げ丁寧に会釈をした。

「鈴谷で構いませんわよ。ご挨拶に参りました」

「挨拶……? 比喩じゃなくてか?」

「そう警戒なさらないでくださいまし。そこのレモンさんも、隠れてないで話しましょう」

「……この前はあなたに軽蔑されましたが」

 楽の背後に隠れていたレモンが怒ったように言い返すと、鈴谷は困った顔をした後、傘を隣に置いて膝を付きレモンと同じ目線になるまで腰を下げた。

「それはわざと言ったのですわ。ああ言えば食いついてくると思いまして……その節は謝ります。ごめんなさい」

「……正直、まだ君が敵か味方かも分からないのに謝られても……」

「楽様」

「レモン……?」

 レモンは食いかかろうとする楽を片手で遮り、自ら話し始めた。

「あの時、私はとても不快な思いをしました。行動でも示して頂きたい」

 今までに無いほどキツい口調で話す。と言っても、敵でないことの確認という要素を多分に含んでいるが。
 鈴谷はそう言われて迷いなく、レモンの手を取り甲にキスをした。

「……この通り軽蔑などしておりませんし、口付けなら何度でもして差し上げますわ」

 ニコリと笑い、レモンの顔を見上げる。しかしレモンはさらに厳しい要求をした。

「……では、その流れで足にキスをしてください」

 性的な意味でなければ、相手に強い屈辱を強いるこの行為。こちらに取り入る気であれば間違いなくやるだろうと踏んだ発言。
 しかし鈴谷はツンとした顔でレモンから離れる。

「それは嫌です。敬意を払うことと侮辱されることは全く違うものですから」

 それを聞いて、レモンの険しい表情が緩んだ。

 その返事は対等な関係……仲間としての扱いを望んでいるという印であるから。高圧的でもなければ無闇に卑下する態度も見られない。

「挨拶」といった言葉に嘘偽りがない。それは、少なくとも鈴谷が敵として現れたわけでないことを如実に表すものであった。

「安心しました。これからはお友達って認識でいいんですね! ですよね、楽様?」

 ぱっと、ベンジャミンのような笑顔で楽の方を向く。そんな笑顔を見せられた楽の顔は眉をへの字にしながらも口元は笑っており、仕方ないなあと言わんばかりに肩をすくめた。

「うん、いいよ。大体、この人が敵なら今頃骨抜きにされてるだろうし。よろしくね、鈴谷くん」

「こちらこそよろしくお願いしますわ。楽さん、レモンさん、それと奈津美さん」

「うげっ、バレてた……」

 鈴谷は二人から差し伸べられた手を取り、それとは別に隠れてこちらの様子を伺っていた奈津美の名前を呼ぶ。
 名前を呼ばれてしまった奈津美は壁の裏からばつが悪そうにひょこひょこと首をすくめながら出てきた。

「奈津美くん!? いつの間に……」

「いやー、なんか話してるなーって思ったのでつい」

「何が『つい』なんですか」

 ペロッと舌を出す奈津美に、レモンが力ない笑顔を向ける。更にレモンは何か言おうとしたが、鈴谷がそれを遮った。

「まあまあ、誤解も解けたようですし、本題に入らせて頂いても構いませんかしら」

 こうしてようやく、鈴谷は三人に「次の作戦から同じ部隊として行動する」ことを伝えたのだった。
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