ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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冷たくてねばねばするもの

68体目 会敵したらスライムだった件4

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 一方その頃、不穏なやり取りが菜々や鈴谷、(それと、何故かスライムの動きが緩慢になった事をいい事に休息を取っている)レモンの三人からは見えない位置で行われていた。

「そろそろ良いだろう。蜜を撒け」

『了解』

 暗い部屋にいる一人の士官が命令すると、現場にいる二人の兵士が何かの入った籠を開ける。兵士はすぐさまその場から立ち去った。

 元々草の生えやすい場所だったのか、背の高い草と低木が密集しており、籠は愚か兵士すら、上空からの目では発見困難だろう。

「ははははは……この後が楽しみだな。君たちもそう思うだろう」

 デスクワークのせいでたっぷりと脂肪を付けた士官は、その腹をゆさゆさと揺らしながら振り返った。

「ああ、これで下位種だけが引き寄せられて、あそこの人間は全滅。少なくとも耐久力の低いカムカムは確実に殺せる……なんだろ?」

「わあえげつない。最っ高ですね!」

 士官の振り返った先には二人のハンターが。
 緑にふたなりが生えたあの日、食堂でちやほやされていたレモンに鋭い嫌悪の目を向けていたハンターだ。

 この二人、自分たちと同じ考えを持つ士官を「条件付きで」言う事を聞かせているのだ。

「ああ、約束しよう。あの目障りな獣がいなくなる事はな」

「だが良いのか? 菜々さんと、もう一人は良く知らないけど大佐の娘なんだろ? 死んじまったらどうするんだ?」

 自信たっぷりに突き出されたグーサインに、当然の疑問が浮かぶ。レモンを排除したいのは共通しているが、菜々や鈴谷を邪魔だとは思っていない。
 だが、あくまで思っていないだけである。目的のためなら切り捨てられる非情さを、士官は持っていた。

「ふっふっふ。何も考えてないわけがあるまい。君達が後釜になるんだよ」

「お、おお! それはありがたい!」

「夢の四天王に食い込めるなんて……!」

 素晴らしい計画に二人は目を輝かせる。だがその希望に一つ水を差された。

「ま、その分は……」

「分かってるよ、このエロ親父。何度も言うな」

「これだけがマイナス要素なんですよねえ……」

「ぐふふ……まあまあ私も気が早かったか。成功したらでよい。勝利の美酒を朝までたっぷりと……な」

 太った士官はこの後に控える悦楽を想像し、大いにニヤけた。



『な、な、くそ! ハイウルフ55頭、デイビーズ72頭、テディーベア32頭、他にも多数の下位荒獣が戦闘域に向けて進行中! 数、なおも増えています!』

 司令室の中は蜂の巣をつついたような騒ぎになる。
 同時に榴弾砲などが準備を始めるが、荒獣の進行速度からして明らかに間に合わない。
 機甲部隊は整備中か、ヘルハウンドの近くに中位以上の荒獣が寄ってこないよう警戒している。下位荒獣を相手にしている余裕はない。
 まるでタイミングを計ったかのような攻撃に軽いパニックを起こす。

 司令部が対処に手間取っている間にも、多数の荒獣が蜜を目指して走る。
 動きの早いハイウルフが真っ先に、菜々、レモン、鈴谷のいる道路へと繋がる道に殺到した。大軍は狭い道を駆け、三人に迫る。
 俊足の狼が群れを為してビルの隙間を駆け抜けていく。一直線に、速度が伸びていく。四本の足が地面を蹴る。加速する。

 否、それは防がれる。

「着火」

 突如として鳴り響いた轟音。先頭を突き進んでいたハイウルフの集団が、三方から鉄の雨を受けて倒れる。無数の鉄球が身体を破壊し、無残に穴を開けられて生命活動を停止した。

 前と横から攻撃を受けた集団はパニックに陥る。後ろからは援軍が到着するが、前は怖がって進まない。

「発破」

 密集していた群れは爆発物で吹き飛ばされる。逃げ場のない一本道にいたハイウルフは全て、原型を留めず破壊された。

「指向性散弾とC-4の待ち伏せ攻撃。大成功だ」

「間違いないっす。けど、これで使い切りました」

「大丈夫。問題ない」

「ああ、俺達ならできるだろ」

 三人の漢は、戦姫を守るために壁となる。
 空挺三人衆は銃を取り、ハイウルフの屍の山を踏み越えて進軍してくるデイビーズを睨んだ。


「誰に許可取ってここ通ろうとしてんだ、ああん?」

 一人の男が首を45度曲げ、殺意の笑顔を向けながら荒獣に近づく。手にはサブマシンガンを揺らし、黒い黒い真っ黒なオーラを放って。

 数種類の荒獣がそれぞれに威嚇するが、怒りより獣の本能が勝り情けない声しか出ていない。

「答えねえなら……こっちから行くぞ」

 黒ずくめの男がフラリと揺れたかと思えば、その場から消え去る。脅威が気配さえ消して消失した事で、荒獣はまず安堵を、そして不安を覚えた。

 獣の直感が起こりうるだろう不幸を感じたその時、若干くぐもった「シュコココッ」と言う音が聴覚を支配する。
 同時に何匹かが倒れた。間違いなく黒ずくめの男のせいだろう。

 逃げようとする。撃たれる。

 背後に気配、だが振り向いた時には僅かな土埃を残して消えている。
 また撃たれる。集団は徐々に固まる。

 不意に金属音がした。

 足元に丸い形をした何かが落ちている。本能が逃げろと叫び、次の瞬間……。


「クリア」

 特戦群の良太郎は窓ガラスの割れたビルの一階に縮こまっていた。
 結果は分かっているものの、身を乗り出して外の景色を見てみる。

 投げた手榴弾によって荒獣は全滅。この戦闘によって彼が被った被害は、手榴弾の爆発で巻き上がった砂埃が、大好きなファー付きの黒いパーカーに思い切りかかってしまったことくらいか。

「おい使えねえHQ。三手に別れた荒獣集団の一つは潰してやったぞ。戦況を教えやがれ」

『そちらの集団は全め……』

「反復するんじゃねえ、他を教えろ」

『は、はい。直線状に向かった集団は空挺の攻撃により半数が死亡、そちらと反対方向に向かった集団は無傷で進行中』

「対策は」

『……榴弾砲による攻撃を』

「ヘリは」

『準備中……』

 煮え切らない返事にキレた良太郎は無線をそこで切った。
 そうして喚くでもなく八つ当たりするでも無く、壊れかけの階段に座って休む。

 今から自分が動いた所で間に合わないし、準備中のものは文句を言っても動かない。それが分かっているからだ。

 彼は目を閉じながら万が一にでも、スカイツリーの上で待っている誠一郎に聞こえないようボソリと呟いた。

「生きてくれよ……」

『良太郎さんは見えないところで優しいですね』

「なんで聞こえんだよっ!」



 空挺と特戦。合計五人の防衛網に捕まらなかった荒獣は道を急いでいた。
 何故だかよく分からないが本能が前へ進めと叫ぶ。同時に襲えとも言う。何をだ。きっとこの先にある。

 アスファルトの禿げた地面に溜まった水をビシャリとはね上げた。

 刹那。

 空から轟爆が降ってくる。鉄の嵐が降り注ぐ。黒煙が立ち込め何も見えなくなる。
 何が起きたか分からない。仲間が沢山死んだ。鉄の大嵐で地面に叩きつけられた。

 恐怖が体を支配するが、またすぐに動き出す。本能が叫ぶ。前へ進め、前へ進め。
 再び空が破裂する。もう一度炎が降ってくる。鉄の破片がいとも容易く厚い毛皮を引き裂いた。

 前へ進め、前へ進め。

 恐怖。

 前へ進め、前へ進め。

 青空は消えてしまった。

 前へ進め、前へ進め。

 次の瞬間、全てが黒に染まった。
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