ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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冷たくてねばねばするもの

73体目 暴走4

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 ガクガクと足が震える。怖い。殺される。今すぐにでも逃げたくなる。
 それでも、立ち向かう。大好きな人達を守るために。

 巨大なアラクネを睨みつけ、後ろを見ず菜々に退避を促す。

「菜々さん、回復したら逃げてください」

「……なんの冗談」

「逃げて、ください」

 自身の何倍もの大きさを持つ敵を見上げたレモンの表情は、固い。

「……英雄気取りは……やめなさいよ」

「でも……誰かが犠牲にならなきゃ無理ですよね」

 そう哀しげに声を震わせる。わざわざ死ぬのが分かってて、泣きながらアラクネの前に立っている。

 それが、菜々は嫌で仕方なかった。

「……わたしはっ! ねえっ! 自己犠牲って言うのが! いっっっちばん嫌いなのよっ!」

 キレた勢いを使ってガクガクと震える膝に鞭打ち、立ち上がった。

 そして親指を自分に向けて一言、言い放つ。

「英雄は私一人で十分よ」

 肩は荒い息を受け止めて上下に揺れ、秘部はまだ乾かぬ愛液とスライムの水分で濡れている。満身創痍としか言い様がない格好。
 清々しいほどの虚勢だった。思わずレモンは笑ってしまう。

「ん……ぶふっ!」

「何笑ってんのよ」

「いや……随分ボロボロの英雄だなあって」

「はー? 喧嘩売ってる? 私はピンピンしてるわよ。帰ったらお仕置きね」

「帰ったら、ですか……」

 帰れるのか、果たして。

「そういう顔しない」

 険しい顔をしていたら菜々に怒られてしまった。

「こういう時こそ笑顔よ笑顔」

 菜々はわざと明るく言って、だがその笑顔にもどこか懐かしむような感じが漂っていた。

「覚悟は決まったかしら」

 自分達を蔑むような目で見ていたアラクネが初めて口を開く。

「あら、待っててくれたの? ご丁寧にありがと……けど、あんまりナメてると痛い目見ることになるわよ」

「偉そうに……。すぐ地べたに這いつくばらせてやるわ」

 アラクネの脚が動き、アスファルトに当たるとカンカンと金属質な音が出る。

「はー? 何言ってんのかしら。もう地べたに這いつくばって生活してます。それでもしぶとく生き残るのが人間ってやつなんで、勘違いしないでよね」

「貴女と話していても埒が明かないわね。売り言葉に買い言葉で……さあ、始めましょうか」

 時間稼ぎはもう終わり。そう言わんばかりにアラクネは両手を広げ、人の形に変化し始める。

「ちっ……レモンっ!」

「菜々さん……! き、来ます!」

 アラクネが蜘蛛の脚を捨てて女体化を始めたその時だった。

「無粋なっ!」

 突如としてアラクネが女体化を中止し、その脚で音速の閃光を防いだ。
 澄んだ音が響き渡る。

 いつの間にかそこにいた男は背を向けてゆっくり立ち上がった。

「お嬢さん方、覚悟を決めた後で悪いが、泣くのは女の特権って言うじゃないですか。だから、あー、なんだ。とにかく、誰かを失って悲しい思いをするのは俺たちの仕事じゃないんですよ」

 男は若干分かりにくくて一切キマらない台詞を、恥ずかしげもなく言い切る。
 性闘攻勢部隊防衛班が隊長、高村刀也であった。

「ここは任せてください。これが俺の仕事だ」

 二人は思いもよらなかった援軍の到着に一瞬だけ期待を寄せる。しかし、刀也の持っている武器に気づいた菜々が悲鳴にも似た声を上げた。

「無理よ! 刀じゃどうしようも……」

 菜々が叫ぶ。さっきアラクネに向けて飛んできたものは銃弾では無かったか。

 アラクネの装甲を銃では射抜けないと知って、なおの愚行。銃で射抜けぬものが刀で切れるはずもない。だが刀也は不安がる二人の目を見てニッコリと笑った。

「大丈夫、泣かせないって約束しますよ」

 そう言った直後、笑顔の彼にアラクネの細くて固い槍のような脚が振り下ろされた。

「ゴタゴタうるさいわよ」

 ザシュッと音がして、液体が飛び散る。灰色の景色に、濁った赤がやけに映えた。

「……え?」

 一瞬でアラクネの左前脚が切り捨てられた。誰も、何が起きたか理解できない。
 鋼の装甲に包まれた脚は黒い地面に音を立てて転がる。

「なぜっ……!」

 そう言い終わるか終わらないかの間に右中脚も切断される。刀也の殺意に満ちた剣撃が、関節を正確に捉えて切断していた。

「貴様ァアアア!」

 流れるように右前脚も。

「ギャアアアッ!」

 懐の中を滑り左中脚を。

 前方に体勢を崩したアラクネなど敵ではなかった。ゆっくりと歩きながら刀が霞む程の速度で振り払い、後ろ脚を二本とも切断していく。

 最後に、五月蝿く喚く頭を切り落とした。

「……は?」

「……へ?」

「では、再生が終わらない内に帰りましょうか」

 刀也は何でもなかったような顔をして、向こうの方から走ってくる軽装甲機動車を指さして言った。
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