ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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冷たくてねばねばするもの

75体目 暴走6

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「く、くそ! 最悪だ! 早く……」

 レモンを陥れようとして、逆に嵌められた大尉は逃げる準備を始めていた。
 引き際を間違えた。あれだけ派手にやってバレないわけが無い。詰め込めるものを一つのカバンに詰め込み、しかしその途中でドアが蹴破られる。
 そこには見覚えのある顔が。レモンと一緒にいた空挺部隊の兵士だ。

「なっ!? き、貴様どういう了見で……ひっ!?」

 権威を振りかざそうとした大尉だったが、刀也の後ろに現れた人物を見て驚愕する。

「君こそどういう了見だね、大尉」

「りりり、陸佐殿! これは……くそっ! ええいままよ!」

 権威を振りかざすことも、弁明も不可能と見た大尉は拳銃を取り出そうとする。しかしそれよりも刀也の動きが早かった。
 パララッ! と三発の弾丸が大尉の頭部を貫く。
 暗い部屋、煌々と光るパソコンの液晶画面に赤が飛び散った。





「そんなことが……あ、あったのか菜々……んっ……」

「すごく……大変だったみた……みたいだね……んふっ」

「隠せてないわよ! これのどこが笑える話なの!? ……ああもう八雲のやつ絶対殴り飛ばす……」

 レモン含む六人は病室に集い、何があったのか話をしていた。最初は危機感ある話で真剣に聞いていたのだが、最後のくだりが笑い話になってしまい堪えるので必死だ。
 菜々は恥ずかしさもあって怒るが、一番の被害者であるレモンが笑い飛ばしているため大した牽制にはなっていない。

「す、すまん。あまりにもオチが酷くてな……」

「まあ、でも対策は考えるようだよねー」

「そうだね……僕は大尉とやらを殺さなくちゃ……」

「ら、楽? 物騒な例えよね、それ?」

「菜々くん、僕は本気だ……!」

 楽だけは烈火のごとく怒り、今この瞬間例の大尉が現れたら本当に絞め殺してしまうのではないかと思うほどの殺意に満ち満ちている。

「無理ですわあ。相手は大尉、殴り込みに行ったとして、鎮圧されるのがオチですのよ。わざわざ自分の首を絞める事になりますわ」

 鈴谷はしたり顔で、楽を止める。鎮圧されているのは大尉の方だろうと分かっていながら。

「そうだとしても……レモンを貶めるなんてっ……ああレモン! 痛かっただろう!? 怖かっただろう!? 辛かっただろう!?」

 楽は勢いよくレモンを抱きしめ、胸でヘッドロックを決めた。周りは苦しいのではないかと心配するが、本人はそこまで頭が回らないようだ。

 レモンがギブアップを示すように腕をタップして、ようやく気がついた。

「……ぁ……ごめん……」

「ぶはっ! だ、大丈夫です……」

 レモンは顔を赤くして息を大きく吸う。

 それからは暫く、各々考えるところあって話が途切れたが、ふと楽が心配した口調で緑の名を呼んだ。

「……そ、そうだ。緑、僕が見ていられない時はレモンの横に付いていてくれないか?」

「ん……別に構わないが、どうしてだ?」

「心配だからだよ。今回『向こう側』としては失敗したわけだろう? だから、また攻撃してくるんじゃないかって……」

「ふむ、なるほど。あいわかった」

 緑は二つ返事で引き受ける。それから……レモン、という事で彼女を見て何か気づいたのか立ち上がった。

「そうとなれば、早速風呂に入ろうか。レモン、行くぞ」

「あ、は、はい!」

 実はまだ顔を洗っただけでシャワーは浴びていなかったレモン。微かにだが血や埃がまだ付いており、早く洗い流したいとそわそわしていたのだ。
 かといって話をいきなり抜けるわけにも行かず、困っていたところに救いの手を差し伸べたのが緑。

 決まれば行動は早く、緑はレモンの手を引いてあっという間に病室を出ていってしまった。




 蛇口を捻り、暖かいお湯をふんだんに浴びる。シャワーによって細切れに落ちてくる水が張りのある肌を叩き、丸い水滴となって落ちていく。

 風呂、とは言ったものの、このご時世贅沢は言ってられないとの事で未だにシャワーだけのままである。実際の名前もシャワー室となっていた。

「今日は大変だったみたいだな……その、色々と」

「初めての実戦で、死んだり石を投げられたりするとは思いませんでしたよ。あはは……」

 口では笑っているが、結構疲れが溜まっている様子。

 緑は、曇りガラスの向こうにいる彼女にマッサージでもしてやろうと(ついでにイタズラしようと)自分が入っている個室の観音扉を開け、素早くレモンのところに飛び込む。

「強がりはいけないぞ。なんなら私が少しほぐし、て、ぇー……誰だ?」

「ひやあっ! 緑さん何入ってきて……はい?」

 緑は赤い目をした白いアフロヘアーの幼女と、排水溝に詰まっているモコモコの毛の山を交互に二度見三度見……大体六度見くらいしてから、自分の知識の範囲内で言葉を絞り出した。

「……換毛期か!」

「……何いってるか分からないです」

 レモンが怪訝な顔をして首を傾げ、その拍子に頭の毛も抜け落ち、排水溝の詰まりに仲間入りすると共に長い白銀の髪の毛が垂れ、レモンがそれに気づき長い長い悲鳴を上げるまで後五秒。




「緑、どういう事か説明してもらおうか」

 レモンは空気に露出した肌が人に見られるのを恥ずかしがって全身を布で覆い、緑に宥められてようやく泣きながら楽の元へ帰ってきた。
 当然、泣いているレモンを見て楽は額に青筋を浮かべる。

「まさか襲ったのがあんただったとはね。見損なったわ」

「はあー……みどりんありえねー」

「使えませんわね」

 次々に被せられる濡れ衣。もちろん緑とて黙ってはいない。いないが、未遂であったのは確かで、その点がどうしても後ろめたさを感じさせていた。

「私は何もしてな……してないぞ!」

「なぜ詰まった」

「詰まってなどいない」

「つまり未遂事件を起こしたと」

「いやっ……断じてナニかをしようなどとは……」

「ほほー?」

「ナニをしようと」

「してたのかな?」

「ちっ、違う……待て、話を聞いて……聞いてくださ……」

 何故か自分で自分の首を絞めていく緑。それを見かねたのか(見えてはいないが)、それとも本当にどうでも良くなったのか、レモンが布の下で「もう良いです」と言った。

「……抜けてしまったものは仕方ないですし、このままいつまでも包まっているわけにはいきませんから」

 覚悟を決めたレモンが布を取り払おうと動いて、だがもう一度隠れる。

「……楽様、み、見ても笑わないでくださいね?」

「僕? うん、笑わない」

「……」

 その言葉を信用して布がパサりと落ちる。

 その姿は恥部を晒しているにも関わらず清楚で可憐。元々、人間より小さかった身体は毛が抜け落ち皮膚が露出した事でより小さく見える。

 頭のてっぺんから爪先まで全身が雪のように白く、またレッドアイが白さをより一層引き立てる。
 獣耳だけはある程度毛が残っており、特に耳元はフサフサとしている。

 アルビノの幼女というべき姿は背徳的で犯罪級。だが幼女と言うには僅かに大人びた顔が妖艶を漂わせ、一糸まとわぬ事も手伝って誰もが息を呑む美しさを放っている。

 今は恥ずかしいのか俯き自信なさげな顔をしているが、もし笑ったら……薄く笑みを浮かべれば男を誘い、目を閉じ口を開けて笑えば年相応の天真爛漫な姿が見られることだろう。

「……」

 既に見ていた緑を除き全員が美しさに見とれる。

「どうですか……楽様。この恥ずかしい姿でも……見捨てないでいてくれますか?」

 レモンは目に涙さえ浮かべて懇願するように楽を見つめた。
 楽は楽で色々と聞きたい事はあるのだが、とにかくレモンを安心させるのが先だと考えた。

「ああ、見捨てるわけないだろ」

「楽様……!」

 その一言でレモンの不安は取り除かれたようだ。
 楽が大きく手を開くと胸元に飛び込んで行き、強く抱きついた。

「楽様……私の楽様!」

「うん、安心してくれて良かった。で、いくつか聞きたいことがあるんだけど」

「はい! 何でも……分かる範囲であればお答えします!」

 布の中から現れた時のような不安げな表情ではなく、天真爛漫な笑顔で楽の胸に顔を埋めながら答えてみせる。

「まず、毛はどこに行ったのかな?」

「全て抜け落ちてしまいました……今頃下水の中です」

「うん、そうか……で、その、こんな質問して悪いんだけど……何が恥ずかしいんだい?」

「……はい?」

「いや、僕達にはむしろ美しくなったようにしか見えないんだけど……」

「……」

 レモンは暫し目を丸くして考えて、軽いパニックになっていたため忘れていた人の価値観というものを思い出し、頭を抱えた。

「あー……えーっとですね、私達カムカムには、毛が抜けるという事は男性でいうところのハゲよりも恥ずかしい事なんです」

「そ、そうなの?」

 初めて知る情報に楽は目を丸くする。

「はい。凄く。毛がないことの劣等感に加えて裸で歩き回るような恥辱を味わうという事ですから」

「な、なるほど……」

「でも、皆さんはこの姿の方が美しいって言うんですね……不思議です」

「うん……少なくとも僕は自信を持っていいと思うけど」

 少なくとも、という言葉に反応したのか二人の会話に緑以下四人が割って入る。

「そうだな。レモンの体型だからこそ出せる可愛さだ」

「同感ね。自覚ないとかありえないわよ」

「私は前のモコモコしてるのが楽しかった……何でもないです。実際綺麗だと思います」

「レモンさんとの付き合いはまだ短いですが……幼さと霊妙とした美しさを併せ持っていると思いますわよ」

 それぞれの感想にレモンは僅かに目を潤ませ、頬を緩めた。

「皆さん……」

「ね、言った通りでしょ」

「……はいっ!」

 思わず嬉しさで涙が零れる。周りは一件落着と言った感じで、安堵の笑みでレモンを囲んだ。

「良かったねレモン。後で服買わなくちゃ」

「私は誤解が解けて良かったぞ……」

「あら、未遂事件の方は残ってるわよ。後で部屋に来てもらいましょうか」

「げっ!?」

「私もやるー!」

「何をだ!」

「「尋問」」

「助けてくれ!」

「……楽さん、寸法だけ測っていただければオーダーメイドで作らせますわよ」

「いいのかい? 嬉しいよ」

 緑が菜々と奈津美に連れ去られた後は喧騒が姿を消し、楽と鈴谷の二人は服の設計をどうするかでいつまでも楽しく喋っていた。
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