ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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スピードガールズ

76体目 スピードガールズトレーニングact.1

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「ふん、またか」

 瓦礫の奥で立ち上がる一つの影。太陽に照らされ光り輝く白の身体が、イラついたように震えた。
 コンクリートの隙間から芽を出した植物を踏みつけ、こちらに向かってくる。

 緑は白狼の前に立ち、余裕の顔で敵の攻撃を待った。

 いつの日か、散々泣かされ自爆させて「何とか」一人で倒した中位荒獣、白狼。
 だがあの時とは違う。ふたなりとなり、男の部分も女の部分も訓練で強化された。

 負けるわけが無い。

「さあ来い!」

 緑は逸物を勃起させて迎撃態勢を整えた。




 甲高いエキゾーストが皇都を駆ける。四台の車両が規定のテストコースを高速で走り抜けた。
 道横のビルがあっという間に過ぎ去り、橋の下を一秒もかからず完全に通り過ぎる。僅かな段差で大きく車体が浮き、だが直進姿勢を崩さずカーブへ突進していく。

 先頭をゆくのは三代目センチュリー……間違いなく高級車でVIP対応の、快適な走りをお届けするはずのセンチュリーである。

 その後にインプレッサの熱い魂を継ぐWRX STI RA、不屈のロータリーエンジンを搭載するRX-8RSが続く。

 殿を勤めるのは16式機動戦闘車。全高3mになろうかという戦車と装甲車のキメラのような大型の装甲戦闘車両もまた、エンジンを限界まで回していた。




「ううーん……」

「どうしたマッドサイエンメガネ」

「僕的にマッドサイエンティストとメガネをかけ合わせて呼ぶの、あだ名として大変非効率的だと思うんだけどね」

 荒獣研究室に整然と並ぶ据え付けの、白い机の上で頭を抱えた八雲に茶々を入れる緑。そんな彼女もフラフラの状態でレポートを出しにきていた。

「君こそどうしたんだい。手酷くやられたみたいじゃないか」

「まだ慣れきってはいないということを思い知らされた、という事だ。武器は増えたが、それは諸刃の剣だったらしい」

 緑は自分のふたなりペニスの生えている所を指さして言う。前よりは楽に白狼を、但し、やはり苦戦しながら倒したようだった。

「改良が必要かな」

 レポートにさっと目を通した八雲はそう言い、また自分の悩み事に専念し始める。

「うん、しかし……う~ん……」

「……私は質問に答えたんだ。貴様にも話してもらおうか」

 見かねた緑が、随分と不器用ながらも相談に乗った。

「そうだね……レモンくんの毛が抜けた事だ。きっと人工コアのせいだと思うんだけど、因果関係が見つからない」

「そんなもの適当でいいだろう。カムカムに換毛期は無いし、ストレスで毛が抜けることも少ないんだろう? コア以外に何が考えられるんだ」

 先にカムカムについての事前知識を持っていた緑は、そんなに悩むことは無いだろうと結論付ける。
 だが、八雲にとってそれでいいはずもない。

「研究者としてそうはいかないのさ。それに、原因が分かれば改良できるかもしれない」

 凡その検討は付いていながらも、確実な原因究明と解決を行わなければならない八雲。だが、緑の言葉で彼の苦悩は一時ながらも消滅することになった。

「ああ、それなら直す必要は無いぞ」

「なんで?」

「レモンのやつ、あれはあれで気に入ったらしい。オシャレな服が着られると喜んでいたぞ。じゃ、私はこれで失礼する」

 緑は完全に自分のタイミングで研究室を出ていく。八雲は研究難易度と必要度を考え、天秤にかけてふたなりの研究を優先した。




 背の高いコンクリートの壁が空の大部分を塞ぐ。津波を完全に食い止めたこともあるという堅牢な要塞が灰黒色にそびえ立つ。
 その下で、奈津美は自分のミニクーパーに乗り、エンジンをかけて路上に止まっていた。

 きっかけは数日前から流れている情報。なんでも四台のスポーツカーが皇都の外縁部を走り回っているという。普通の車を持つのも珍しい時代にそんな光景が見られるのは、車好きにとって天国と言っても過言ではないだろう。

 かくして、奈津美は車好きの本能と闘争心を滾らせ見にきたのだった。

「……来た」

 鋭いエンジン音が近づいてくる。同時に自分も車を出した。

 柔らかに加速していく。法定速度の60kmに達した時、バックミラーには丁度角を曲がってきたスポーツカー達が映っていた。

(……んん!?)

 奈津美は自分の目を疑う。なぜならそこに映っていたのは……。

(高級車!? センチュリー!? センチュリーが先頭!? センチュリーナンデ!?)

 後ろの三台を抑えて重厚な形の高級車が先頭に立ち、超高速で近づいてくる姿だった。
 更にさらに変なものが映り、奈津美は夢を見ているんじゃないかと疑い始める。

(後ろにいるのはインプと8だからおかしくはないとして、尻についてるのは……何? あれはもしかしなくても……MCV!?)

 センチュリーが先頭を走っていることが普通に思えてくるほど異質な装甲車が混じっていることに混乱する。

 考えがまとまらない内にセンチュリーが奈津美を追い越していった。1.8tもの車体が風に煽られ、二、三度小さく揺れる。
 その風と共にミニクーパーを打ち付けた音に、奈津美は顔をしかめた。

「……音違うし」

 それは高級車の立てる重厚で静かなものではなく、カリッカリにチューンされ、獣のような戦闘力を付加されたエンジンの音だった。
 外見と中身の一致度が崩壊しているような違和感をまとって直線をどんどん加速していく。

(こいつら全員音違う。エンジンチューンか載せ替えて、エアロ組んで、軽量化と剛性高めて、足回り改造して……でも一切派手な装飾は付けてない。基本に忠実に、戦闘力だけ叩き上げてる! 一体何者!?)

 センチュリーの後に続くWRXとRX-8を見て、恐怖さえ覚える。

 そして最後の機動戦闘車のエンジン音は、外観以上に異質だった。
 バババババッ! とどこかで聞いたような音がする。明らかに車の音ではない。

(この音……うーん、どこかで聞いたような……あっ!)

 輸送機の中で聞いた音に似ていると感じた。となれば出力は……。

(C-130はT56エンジンを使ってる。もしそれだとすれば……4100馬力!? しかもツインターボを二個、すなわちっ! クアドラプルターボ! マニュアルだったら……14速ミッション!?)

 そりゃ早いわけだと驚嘆する。しかも通常の機動戦闘車と違って車高が落とされ、低重心化されていて安定性も高そうだ。

(まあ、左手がすっごい忙しくなりそうだけど……ん、なんかえっちい。それ言うなら右手かな? いやいや中の人は左利きかも)

 変な事を考えながらも、時速100km以上に加速して機動戦闘車の後ろにつける。

 ミニクーパーのエンジンが唸り始めた。だがまだまだ余裕がある。それに、優秀な冷却機能のおかげでまずオーバーヒートには至らない。
 奈津美は気にせず追跡を続ける。

(MCVはノーマルでも最大速度100kmのはず。これだけ改造してるのに120kmって事は軽く流してる状態だね! それじゃつまらないから、煽らせてもらうよっ!)

 奈津美はアクセルを踏み込み、車間距離を詰めていく。すると、予定通り機動戦闘車が速度を上げた。見ているだけでもGを感じる加速で逃げ始める。負けじと奈津美もアクセルを踏み抜く。

(よっし! 逃げてる逃げてる~……んあれ、追いつけない)

 当たり前と言えば当たり前の話なのだが、いくら機動戦闘車が重くとも化け物のような馬力のエンジンを積んでいればかなりの加速力を持てる。

 煽った方が置いてけぼりを食らってしまった。

(うぐぐ……150kmを超えてこの加速とか信じらんない……めちゃくちゃだよ……)

 ミニクーパーの加速が鈍っていくのに対して、機動戦闘車は逆に加速が鋭くなるようにさえ感じる。
 奈津美はすぐについていけないことを悟り、警察に捕まる前にアクセルを緩めた。

 ……不幸にも、緩めるのが遅かった。

「げっ!」

 バックミラーを見ると、何やら速そうなパトカーが二台、追ってきているではないか。
 形に見覚えのある警察車両は一瞬で差を詰めてきた。

「うげえー……最悪」

 逃げ切れる気がしない。両車共に元がスポーツカーで、しかも高速取り締まり用に改造されているのだ。

(片方は「FF界の英雄」4代目インテグラタイプR、もう片方は「最速のFF」10代目シビックタイプR。両方エアロ組んでる……逃げきれないよ!)

 ドノーマルの、Sでもないミニクーパーで逃げられるわけもなく、免許停止を覚悟しながら渋々道路の脇に止めるのであった。




『緑くん、楽くん、レモンくん、鈴谷くん。至急、作戦会議室に集まってくれたまえ……ああ、後オニオンサラダも来てくれ』

「オニオンが目に染みる痛さを味あわせてやる」

 ふざけた呼び出しが耳についた瞬間、菜々は何故か冷蔵庫の中にあった玉ねぎを手の上で弾ませながら毒づいていた。

「今度は一体何だと言うんだ」

「まったく、まだ腰が痛いのに……」

「楽様、大丈夫ですか?」

「……奈津美さんだけ呼ばれてませんけど、いいのかしら」

 菜々に続き順番に緑、楽、レモン、鈴谷がそれぞれブツブツと呟きながら立ち上がる。
 そうして渋々と、溜まり場になりつつある菜々の部屋から出ていった。




「坂場八雲ぉーっ! あんた覚悟しなさいよ!」

「やあ。これで話ができるね」

「失礼しましたっ! 一ノ瀬陸佐ー!」

 真っ先に飛び込んだ菜々は薄々感づいていながらもドアを開け放って八雲の名前を呼び、案の定代わりにいた陸佐に素早く敬礼した。

「失礼します、陸佐」

「失礼します」

「し、失礼しますっ!」

「何でしょうか『陸佐』?」

「うむ、揃ったな。早速だが、君たちに作戦の概要を説明する」

 陸佐は部屋の一面に貼られたパネルの電源を入れ、解説を始める。

「我が日本国の貿易は、ほとんどが海上輸送で賄(まかな)われているのは知っているな。そのため、一つでも港を失うのは大打撃となる。現在日本が所有……正確に言えば『解放』した全ての港は要塞化されているが……。数日前大洗港からの輸送が途絶えた」

 パネルは旧茨城県大洗港の場所を示す。赤い四角形のマーカーが、無機質なオブジェクトのみで表された地図を彩った。

「無人偵察機から得られた情報により、濃い霧が発生しているということが分かった。これが自然発生したものなのか、事故によるものかは不明だ。君たちには、この霧の原因を探って来てほしい」

 大洗港の今の様子を表す航空写真と、皇都から大洗港までの道のりを示す線が引かれた。写真は説明通り、大洗港があるはずの場所が白く塗りつぶされたようになっている。

「概要に関しては、以上だ。質問は」

「奈津美さんはどこにいますか?」

 鈴谷が真っ先に、先から気になっていた事を質問する。それに対し陸佐は、少々言いにくそうに顔を背けた。

「大神くんは、だね……捕まった」

「は?」

「速度超過だ。他には」

「まっ、待ってください! 普通真っ先に伝えられるべき情報では? 拘留期間はあるのですか? あるとしたらどのくらい?」

「鈴谷、落ち着け。彼女が戦力から外れることは無い。……他には」

 不服そうな顔をしている鈴谷だが、父に逆らうような事はしなかった。

「それだけの距離となると、移動はヘリですか? それとも装甲車?」

 続いて楽が、空気を読んで別の質問をする。普通はヘリだが……。

「どちらでもない。大洗港の周辺にヘリを安全に降ろせる場所がなく、移動経路周囲には高位荒獣が多数徘徊しているため装甲車では役不足だ。と言って、戦車で運ぶわけにも行かないので装甲よりも速度と生存率を重視し、それぞれに車を運転してもらう」

 装甲車では役不足というのは、あまりノロノロと走っていると高位荒獣が寄ってきてしまうという話だ。装甲も火力も無い装甲車では高位荒獣に太刀打ちできない可能性がある。
 戦車なら火力も装甲も過剰なほどにあるが、速度は装甲車よりも遅く乗り心地は最悪。オマケに中に入るスペースは無いので吹きさらしとなる。

 結果として、このような移動方法を取ることになったのだが……。

「車? 陸佐、悪いけど私達は運転慣れてないわよ。装甲車だって100kmくらいは出るでしょう? それを超えるスピードで走り続けるのは、奈津美を除いて無理だわ」

 運転と言われて、苦手な菜々が即座に反論した。

「勿論、いきなり運転していけと言うわけじゃない。幸い時間はたっぷりある。大洗港の無線連絡は途絶えたが、代わりに強力なモールス信号が発信されている」

 陸佐がリモコンのボタンを押すと、ツーツーツーツー、トトッツートッ、トトトッ……と特有の音が流れた。

「彼らは生きている上に、食料の備蓄が続く限り生活にも何ら問題は無いそうだ。ただ、何故か霧の外に出られないと言っている」

「……つまり、練習しておけってこと?」

 苦虫を噛み潰したような顔で、陸佐の意図を汲み取った菜々がそれを恐る恐る言語化した。

「話が早くて助かる。他の疑問は歩きながら聞こう。取りあえず、後をついてきてくれ」

 陸佐は、話すべきことは全て話したとでも言わんばかりに堂々と部屋を出ていき、また緑達五人は顔を見合わせた後に、立ち上がって彼を追った。

「全く、それにしても作戦開始前に邪魔が入るとはな……」

 ボソリと小さく呟いた声には気づかずに。




「うっわあ~!」

 緑達が部屋を出た頃、一足先に作戦概要を聞き終えていた奈津美はとある倉庫に連れられて来ていた。
 薄暗く、少しだけ油臭い空間に流線型が整然と並ぶ。

 奈津美を捕まえた警察官は、奈津美の一歩後ろに下がって監視を続けた。

「何これ何これ!? 一生拝めないと思ってた車ばっかり! 86! ロードスター! NSX! R35! エボテン! フェアレディ!」

 名だたる国産スポーツカーがずらりと並んだ光景に、小さな子供のように走り回る。
 その中でも一際異質な車が、一番奥に控えていた。

「これっっっ……! なんで……200台限定品が……!」

 奈津美のために置かれていたような一台に、彼女は目を奪われた。
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