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スピードガールズ
78体目 スピードガールズトレーニングact.3
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「じゃあ、どこか変更してほしいところがあったら気兼ねなく言ってね。うちのメカニックが何とかするから」
後に控えるメカニックから「何とかってなんだ!」と声が聞こえてきそうだが、西は軽い感じでそう言った。
一同それぞれ感謝の言葉を述べ、また別の所に連れていくと言う陸佐についていく。
次に連れていかれたのは、モニタールームだった。大型パネルが部屋の一面に配置されているのは作戦会議室と同じだが、それより大きくまたヘルメットと運転席を模したような見慣れない機械が複数置かれている。
「これ、ヘルメット?」
「VRってやつよ。それ被ると目の前に仮想空間が表示されるの」
「ほー!」
よく分かってなさそうな奈津美に教える奈々。
「その通り。いきなり本物を運転させるわけにはいかないのでね、段階を踏んで慣れていってもらうことにした。監視と採点は針金くんに行ってもらう。点数が一定になったら、次の段階に移れるというシステムだ」
「まどろっこしい事を……」
「何を言うんだ紅菜くん! これは君たちのためなんだよ!」
「ぎゃーっ!」
自分達の他には陸佐しかいないと思っていたのに、突如として現れ耳元で叫んでくる八雲のせいで悲鳴を上げてしまう。
「最新の研究で、車の運転とセックスの上手さはある程度比例し、相関関係がある事が分かっているんだ! 車の様子を感じ取る事と相手の様子を感じ取る事で使う脳の分野は似ていて、どちらかが強化されればもう片方も上手くなる可能性がある! あくまで可能性だけども、今後またこういう事があるかもしれないからやっておいて損は無いのさ!」
などと、嘘か誠かよく分からない情報を声高に言い切る。
「坂場くんの言う通りだな。それに、実はこの作戦、政治的な意図も絡んでいる。日本の技術の復帰と発展を車として見せつける事で、外交に役立てようとしている。その時、いくら君たちが美少女であったとしても、下手な運転をされては評価されなくなってしまうのだ」
大佐も、なんとなく説得力がありそうな話にこれ幸いと乗っかり自分の意見も押し通した。
「大佐の言う通りだよ! では僕はこの辺で……」
「ところで坂場くん。研究費用超過の件だが……」
やけに爽やかな笑顔を残して去ろうとする八雲に、大佐が声をかける。
「大佐。我々人類が再度繁栄するには敵である荒獣の途切れない研究が必要だと、そう思いませんか?」
「今の生活も大事だろう? 坂場くん。おい、待て逃げるな! 待あぁぁぁぁあああてえぇぇぇえええええええ!」
「うおおわあああああああああああああ!」
八雲が全力で逃げると陸佐まで、引き止める暇もなくどこかへ走り去ってしまい、後にはなんの説明も受けてない六人が取り残された。
「行っちゃったね……」
「どうしましょうか」
途方に暮れる楽とレモン、鈴谷だったが、もう半分の考える事は違った。
「ふ……ふふ……運転技術と性技の上手さは比例する? 言ってくれるじゃない……私のテクは一番! だから運転テクニックも一番よ! 私が最速ってこと証明してあげるわ!」
「ふん、そんな研究結果初めて聞いたが、なるほど考えれば考えるほどそんな気がしてきたな。面白い! 奈々っ! 勝負だ!」
「私も二人に負けない……っつーか私が一番速いし! ぜってー負けねー!」
予想通りと言うべきか、いつも通りと言うべきか。緑、菜々、奈津美は八雲の言葉を真に受けてしまっていた。
「……バカ三人」
「楽様!?」
楽が吐いた毒も聞こえずに、三人共VRの世界に入り込んでいく。
楽はやれやれといった様子で首を振った。
「勝負事になるとすぐ見境無くなるんだから……僕達もやってみようか」
「見境無いといいつつも、楽さんが一番やってみたいのではなくて?」
愚痴った次の瞬間には、鈴谷をチラリと見ていた楽に呆れたような口調で言葉が飛んでくる。
「んんー……そうかもね」
「まあ」
レモンが画面を凝視する隣で、二人はクスクスと笑いながらヘッドセットを被り運転席についた。
VRの中、太陽の光が気持ちよさそうに降り注ぎ青々とした草が幅の広いコースの両端を彩る。
緑達はサーキットの開始地点で、自分の選んだ車に乗ってレース開始の時を待っていた。五人全員がログインし、カウントダウンが始まる。
三秒経って、開始地点に据えられた信号機が青く光った。
「よし行け!」
緑が吠え、アクセルを全開で踏む。エンジンが一瞬でレッドゾーンまで吹き上がり……。
「ひぇ……!」
ビビってアクセルを緩めた。空気を震わせる振動を残し、唸り声が収まっていく。
その様子に気づいた奈津美がミニクーパーを止め、逆走して戻ってきた。
「……あれ、みどりん? ななちー? 何やってんの?」
「いいいいやそのなんだ! 少し様子を確かめようとだな!」
「そそそそんなところね私も!」
慌てふためいてごまかす二人に、思わずジト目になる。
「……だっせえ。どうせ音にびっくりしてアクセル抜いたとかそんなところでしょ」
「なっ、何を言って……」
「ち、違うわよ!」
「じゃあ止まってないで、100kmくらい出してみなよ」
「う、くっそー……!」
「そんなに言うならやってやるわよ!」
図星を突かれ煽られた二人はもう一度アクセルを踏み抜くが、エンジンがビリビリがなるだけでまったく動かない。
「あ、あれ?」
「何これ、ポンコツ?」
威勢だけはいいが、全く運転のできない二人に奈津美は呆れてしまう。
「ポンコツはななちーの頭だよ」
「なんですって!?」
「まずさあ……クラッチって言葉知ってる?」
「クラッチ?」
「何よそれ」
「……ちょっといいかな」
オートマ以外に乗ったことのない(実は、緑と奈々は普通の免許さえ持っていない。軍所有の乗用車だけは特権的に乗れる)二人に、奈津美の自動車教習が始まったのだった。
後に控えるメカニックから「何とかってなんだ!」と声が聞こえてきそうだが、西は軽い感じでそう言った。
一同それぞれ感謝の言葉を述べ、また別の所に連れていくと言う陸佐についていく。
次に連れていかれたのは、モニタールームだった。大型パネルが部屋の一面に配置されているのは作戦会議室と同じだが、それより大きくまたヘルメットと運転席を模したような見慣れない機械が複数置かれている。
「これ、ヘルメット?」
「VRってやつよ。それ被ると目の前に仮想空間が表示されるの」
「ほー!」
よく分かってなさそうな奈津美に教える奈々。
「その通り。いきなり本物を運転させるわけにはいかないのでね、段階を踏んで慣れていってもらうことにした。監視と採点は針金くんに行ってもらう。点数が一定になったら、次の段階に移れるというシステムだ」
「まどろっこしい事を……」
「何を言うんだ紅菜くん! これは君たちのためなんだよ!」
「ぎゃーっ!」
自分達の他には陸佐しかいないと思っていたのに、突如として現れ耳元で叫んでくる八雲のせいで悲鳴を上げてしまう。
「最新の研究で、車の運転とセックスの上手さはある程度比例し、相関関係がある事が分かっているんだ! 車の様子を感じ取る事と相手の様子を感じ取る事で使う脳の分野は似ていて、どちらかが強化されればもう片方も上手くなる可能性がある! あくまで可能性だけども、今後またこういう事があるかもしれないからやっておいて損は無いのさ!」
などと、嘘か誠かよく分からない情報を声高に言い切る。
「坂場くんの言う通りだな。それに、実はこの作戦、政治的な意図も絡んでいる。日本の技術の復帰と発展を車として見せつける事で、外交に役立てようとしている。その時、いくら君たちが美少女であったとしても、下手な運転をされては評価されなくなってしまうのだ」
大佐も、なんとなく説得力がありそうな話にこれ幸いと乗っかり自分の意見も押し通した。
「大佐の言う通りだよ! では僕はこの辺で……」
「ところで坂場くん。研究費用超過の件だが……」
やけに爽やかな笑顔を残して去ろうとする八雲に、大佐が声をかける。
「大佐。我々人類が再度繁栄するには敵である荒獣の途切れない研究が必要だと、そう思いませんか?」
「今の生活も大事だろう? 坂場くん。おい、待て逃げるな! 待あぁぁぁぁあああてえぇぇぇえええええええ!」
「うおおわあああああああああああああ!」
八雲が全力で逃げると陸佐まで、引き止める暇もなくどこかへ走り去ってしまい、後にはなんの説明も受けてない六人が取り残された。
「行っちゃったね……」
「どうしましょうか」
途方に暮れる楽とレモン、鈴谷だったが、もう半分の考える事は違った。
「ふ……ふふ……運転技術と性技の上手さは比例する? 言ってくれるじゃない……私のテクは一番! だから運転テクニックも一番よ! 私が最速ってこと証明してあげるわ!」
「ふん、そんな研究結果初めて聞いたが、なるほど考えれば考えるほどそんな気がしてきたな。面白い! 奈々っ! 勝負だ!」
「私も二人に負けない……っつーか私が一番速いし! ぜってー負けねー!」
予想通りと言うべきか、いつも通りと言うべきか。緑、菜々、奈津美は八雲の言葉を真に受けてしまっていた。
「……バカ三人」
「楽様!?」
楽が吐いた毒も聞こえずに、三人共VRの世界に入り込んでいく。
楽はやれやれといった様子で首を振った。
「勝負事になるとすぐ見境無くなるんだから……僕達もやってみようか」
「見境無いといいつつも、楽さんが一番やってみたいのではなくて?」
愚痴った次の瞬間には、鈴谷をチラリと見ていた楽に呆れたような口調で言葉が飛んでくる。
「んんー……そうかもね」
「まあ」
レモンが画面を凝視する隣で、二人はクスクスと笑いながらヘッドセットを被り運転席についた。
VRの中、太陽の光が気持ちよさそうに降り注ぎ青々とした草が幅の広いコースの両端を彩る。
緑達はサーキットの開始地点で、自分の選んだ車に乗ってレース開始の時を待っていた。五人全員がログインし、カウントダウンが始まる。
三秒経って、開始地点に据えられた信号機が青く光った。
「よし行け!」
緑が吠え、アクセルを全開で踏む。エンジンが一瞬でレッドゾーンまで吹き上がり……。
「ひぇ……!」
ビビってアクセルを緩めた。空気を震わせる振動を残し、唸り声が収まっていく。
その様子に気づいた奈津美がミニクーパーを止め、逆走して戻ってきた。
「……あれ、みどりん? ななちー? 何やってんの?」
「いいいいやそのなんだ! 少し様子を確かめようとだな!」
「そそそそんなところね私も!」
慌てふためいてごまかす二人に、思わずジト目になる。
「……だっせえ。どうせ音にびっくりしてアクセル抜いたとかそんなところでしょ」
「なっ、何を言って……」
「ち、違うわよ!」
「じゃあ止まってないで、100kmくらい出してみなよ」
「う、くっそー……!」
「そんなに言うならやってやるわよ!」
図星を突かれ煽られた二人はもう一度アクセルを踏み抜くが、エンジンがビリビリがなるだけでまったく動かない。
「あ、あれ?」
「何これ、ポンコツ?」
威勢だけはいいが、全く運転のできない二人に奈津美は呆れてしまう。
「ポンコツはななちーの頭だよ」
「なんですって!?」
「まずさあ……クラッチって言葉知ってる?」
「クラッチ?」
「何よそれ」
「……ちょっといいかな」
オートマ以外に乗ったことのない(実は、緑と奈々は普通の免許さえ持っていない。軍所有の乗用車だけは特権的に乗れる)二人に、奈津美の自動車教習が始まったのだった。
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