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スピードガールズ
82体目 スピードガールズトレーニングact.7
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「何故ここにいる」
「乙女の園になんの用?」
いきなり入ってきた良太郎に緑と菜々の二人は少々の不信感を抱き、疑問する。
「ひでえ言われようだなおい! ……あのな、俺達も同行すんだよ。お前達ハンターと、お偉いさんに何かあったら大変だからっつー話だ」
「同行? ……ん、まあ確かに下位荒獣の相手はしてもらった方がいいか……。それにしても、あなた達までスポーツカーに乗るのか」
「おうよ……ん? どうした大神の」
良太郎は自分たちを見つめ、細かく震える奈津美に声をかけた。
「……ら、ランサーエボリューション ファイナルエディション! それにそっちはフェアレディZ NISMO!」
「お、おお。よく知ってんな」
興奮が頂点に達し、思わず叫ぶ奈津美。予想だにしない反応で、良太郎の身体が少しだけ後ずさる。
「Zもエボも知らない人はいないよ! 特にエボ! このゴッツイ顔! 313馬力で高トルクなエンジン! これで1.5t! 10代目にして最後と言われたランエボがこのファイナルエディションだよ! ギャラン顔は直らなかったけどね!」
「ギャラン言うのやめろ。シャシー共有のおかげで一番ごつくはなっただろうが」
「私はエボIVとエボⅨが一番好きだったの」
口をへの字に曲げてそういうと、良太郎もそれに同調した。
「俺もだ。あんたとはいい酒が飲めそうだぜ……」
「良ちゃんお酒飲めるの? そんなにちっちゃいのに」
「良ちゃんってなんだ! 歳20超えてるよ! 悪かったな小さくて!」
「ところでZはですね……」
「振っといて無視するんじゃねえ!」
良太郎のツッコミはわざとガン無視で、話を進めていく。
「これはZ34、フェアレディ6代目のZだね! 355馬力でエボと同じ1.5t。これで空力性能が高いって言うんだから期待しちゃうね! NISMOはいつものニスモカラーで、白と黒を基調にニスモレッドを線状に入れてるよ! おかげでカッコよくなったよやったね! 因みに私は一世代目と五世代目が好き」
「やっぱりいい酒が飲めそうだ」
「良ちゃんお酒飲めるの?」
「その下りもうええわ」
「「どうも、ありがとうございました」」
「なんやねんこれ……あ、伝染ったわ」
車談義も雑談も、おふざけも息ぴったりな二人である。
「……と、言うことで俺達も練習に参加させてもらうぜえ。見た感じ、あんたらはもう走り慣れたみたいだから一番難しいやつにさせてもらった。事故って死ぬんじゃねえぞ?」
「ふっふっふー、大口叩いてそのエボで私の走りに付いてこれなかったら無茶苦茶恥ずかしい思いをすることになるけど、いいの?」
「ふん、一度覚醒を経た私に不可能はない!」
「……あれ、まさか私が一番遅いかもしれない……?」
(実は良太郎さん、運転が下手なのですが……)
それぞれ自信と不安を抱えながら、超難関コースのスタート地点につく。
信号が赤から青に変わるのを待って、一斉にスタート。最初の直線でいきなりトップに躍り出たのは良太郎操るランサーエボリューションだった。
そのガタイからは想像もつかないほどしっとりと、きめ細やかな肌と肌を合わせるように車と地面が吸い付いたまま唸り声を上げて直進する。度々シフトアップ(ギアを上げる事)で揺らめきながら消えるエンジン音は、極地に住まう獣の野太い遠吠えのよう。
不安感を一切感じさせないその走りは、精巧ながらに激しく。長き歴史の中で鍛え上げられた筋肉の塊のような老兵が、曇り空の下でひときわ輝く。
「はん! 雑魚どもは後から付いてこい!」
「なんて速さなの!?」
「やっぱエボは速いかあ……この子じゃ加速は負けるなあ」
「……ん? 私が一番遅くないか?」
それぞれに加速勝負の感想を言いながら速度を上げていくが、ここで緑が異変に気付いた。86が、あまりにも遅いのだ。
しかし、それは単なる性能の差なのである。
「みどりん、86の加速はね、この中で一番遅いんだよ」
「そんな馬鹿な!?」
「でも確かに私のロードスターに負けてるのよね」
「自然吸気だから低速域がかったるいのは仕方ないね。今いる車で速い順に、エボ、Z、ロードスター、ジョンクーパー、86だよ」
なんと最下位。スポーツカーの中ではおっとりとして見える奈津美のジョンクーパーワークスより遅い。エンジンが中々本領を発揮しない。
とはいえ、集団から離されるほど遅くもなかった。
「だ、だが、大してお前との違いはないが? ふふん、これは私のしふとちぇんじが上手い証左だな!」
「いや、確かに速いとは言ったけど、ジョンクーパーと86の加速にそこまで違いがあるわけじゃないんだよね。コンマ一秒だから」
覚えたての言葉を使ってみたが、あえなく「そんなことはない」と返されて首をガクリと落とす。
「なんだ、実質同じか……って、あいつ速度落とさずに突っ込んでいくぞ」
「少し左に逸れてからの右回りだから、フェイントかけるためにわざとじゃないかな」
「いや……私はランエボというのを知らないから確実な事は言えないが……曲がりきれないと思う」
緑が冷静に考察し、ランサーエボリューションがドリフトの準備に入った時だった。
「うおおおおっ! 曲がれエボっ! 今日からお前は……」
車体が森の奥に消えて行き、ゴシャアッという鈍い音がして良太郎の叫びが途切れる。木に激突したようだ。
「やはり……」
「なんて言おうとしたのかしら……」
「オフロード車って言おうとしたんじゃない?」
「……」
まあこんな事もあるだろうと、三人は疑いもせずにひしゃげたランエボが幽霊の如く消えていくのをバックミラーで見ていたのだが……。
「うぉおおおおおっ! 曲がれぇぇぇぇっ……」
「でいやああああああ……あっ」
「もう一回! ここだ……遅かった!?」
慣らし運転でゆっくりとニュルブルクリンク北コースを走る傍らで何度も聞こえてくる絶叫に、早くも一つの確信を抱きつつあった。
「誠一郎さん、質問なのだが……」
「もしかして……」
「良ちゃんって運転……下手?」
「はい」
「「「……」」」
即答のせいで良太郎に対する好感度が若干下がったのは言うまでもない。
「乙女の園になんの用?」
いきなり入ってきた良太郎に緑と菜々の二人は少々の不信感を抱き、疑問する。
「ひでえ言われようだなおい! ……あのな、俺達も同行すんだよ。お前達ハンターと、お偉いさんに何かあったら大変だからっつー話だ」
「同行? ……ん、まあ確かに下位荒獣の相手はしてもらった方がいいか……。それにしても、あなた達までスポーツカーに乗るのか」
「おうよ……ん? どうした大神の」
良太郎は自分たちを見つめ、細かく震える奈津美に声をかけた。
「……ら、ランサーエボリューション ファイナルエディション! それにそっちはフェアレディZ NISMO!」
「お、おお。よく知ってんな」
興奮が頂点に達し、思わず叫ぶ奈津美。予想だにしない反応で、良太郎の身体が少しだけ後ずさる。
「Zもエボも知らない人はいないよ! 特にエボ! このゴッツイ顔! 313馬力で高トルクなエンジン! これで1.5t! 10代目にして最後と言われたランエボがこのファイナルエディションだよ! ギャラン顔は直らなかったけどね!」
「ギャラン言うのやめろ。シャシー共有のおかげで一番ごつくはなっただろうが」
「私はエボIVとエボⅨが一番好きだったの」
口をへの字に曲げてそういうと、良太郎もそれに同調した。
「俺もだ。あんたとはいい酒が飲めそうだぜ……」
「良ちゃんお酒飲めるの? そんなにちっちゃいのに」
「良ちゃんってなんだ! 歳20超えてるよ! 悪かったな小さくて!」
「ところでZはですね……」
「振っといて無視するんじゃねえ!」
良太郎のツッコミはわざとガン無視で、話を進めていく。
「これはZ34、フェアレディ6代目のZだね! 355馬力でエボと同じ1.5t。これで空力性能が高いって言うんだから期待しちゃうね! NISMOはいつものニスモカラーで、白と黒を基調にニスモレッドを線状に入れてるよ! おかげでカッコよくなったよやったね! 因みに私は一世代目と五世代目が好き」
「やっぱりいい酒が飲めそうだ」
「良ちゃんお酒飲めるの?」
「その下りもうええわ」
「「どうも、ありがとうございました」」
「なんやねんこれ……あ、伝染ったわ」
車談義も雑談も、おふざけも息ぴったりな二人である。
「……と、言うことで俺達も練習に参加させてもらうぜえ。見た感じ、あんたらはもう走り慣れたみたいだから一番難しいやつにさせてもらった。事故って死ぬんじゃねえぞ?」
「ふっふっふー、大口叩いてそのエボで私の走りに付いてこれなかったら無茶苦茶恥ずかしい思いをすることになるけど、いいの?」
「ふん、一度覚醒を経た私に不可能はない!」
「……あれ、まさか私が一番遅いかもしれない……?」
(実は良太郎さん、運転が下手なのですが……)
それぞれ自信と不安を抱えながら、超難関コースのスタート地点につく。
信号が赤から青に変わるのを待って、一斉にスタート。最初の直線でいきなりトップに躍り出たのは良太郎操るランサーエボリューションだった。
そのガタイからは想像もつかないほどしっとりと、きめ細やかな肌と肌を合わせるように車と地面が吸い付いたまま唸り声を上げて直進する。度々シフトアップ(ギアを上げる事)で揺らめきながら消えるエンジン音は、極地に住まう獣の野太い遠吠えのよう。
不安感を一切感じさせないその走りは、精巧ながらに激しく。長き歴史の中で鍛え上げられた筋肉の塊のような老兵が、曇り空の下でひときわ輝く。
「はん! 雑魚どもは後から付いてこい!」
「なんて速さなの!?」
「やっぱエボは速いかあ……この子じゃ加速は負けるなあ」
「……ん? 私が一番遅くないか?」
それぞれに加速勝負の感想を言いながら速度を上げていくが、ここで緑が異変に気付いた。86が、あまりにも遅いのだ。
しかし、それは単なる性能の差なのである。
「みどりん、86の加速はね、この中で一番遅いんだよ」
「そんな馬鹿な!?」
「でも確かに私のロードスターに負けてるのよね」
「自然吸気だから低速域がかったるいのは仕方ないね。今いる車で速い順に、エボ、Z、ロードスター、ジョンクーパー、86だよ」
なんと最下位。スポーツカーの中ではおっとりとして見える奈津美のジョンクーパーワークスより遅い。エンジンが中々本領を発揮しない。
とはいえ、集団から離されるほど遅くもなかった。
「だ、だが、大してお前との違いはないが? ふふん、これは私のしふとちぇんじが上手い証左だな!」
「いや、確かに速いとは言ったけど、ジョンクーパーと86の加速にそこまで違いがあるわけじゃないんだよね。コンマ一秒だから」
覚えたての言葉を使ってみたが、あえなく「そんなことはない」と返されて首をガクリと落とす。
「なんだ、実質同じか……って、あいつ速度落とさずに突っ込んでいくぞ」
「少し左に逸れてからの右回りだから、フェイントかけるためにわざとじゃないかな」
「いや……私はランエボというのを知らないから確実な事は言えないが……曲がりきれないと思う」
緑が冷静に考察し、ランサーエボリューションがドリフトの準備に入った時だった。
「うおおおおっ! 曲がれエボっ! 今日からお前は……」
車体が森の奥に消えて行き、ゴシャアッという鈍い音がして良太郎の叫びが途切れる。木に激突したようだ。
「やはり……」
「なんて言おうとしたのかしら……」
「オフロード車って言おうとしたんじゃない?」
「……」
まあこんな事もあるだろうと、三人は疑いもせずにひしゃげたランエボが幽霊の如く消えていくのをバックミラーで見ていたのだが……。
「うぉおおおおおっ! 曲がれぇぇぇぇっ……」
「でいやああああああ……あっ」
「もう一回! ここだ……遅かった!?」
慣らし運転でゆっくりとニュルブルクリンク北コースを走る傍らで何度も聞こえてくる絶叫に、早くも一つの確信を抱きつつあった。
「誠一郎さん、質問なのだが……」
「もしかして……」
「良ちゃんって運転……下手?」
「はい」
「「「……」」」
即答のせいで良太郎に対する好感度が若干下がったのは言うまでもない。
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