百鬼怪異夜行

葛葉幸一

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第三十三夜 鹿島さん─カシマサン─

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怪奇現象が多発するこの大学で、新たに発生した怪異の話し。

夢で、かしまれいこ、と名乗る体が欠損した女性が現れ。
「右足が欲しい」
「頭が欲しい」というのだ。
その後、数日の内に欲しいと言われた箇所を怪我するという。
都市伝説としては有名だ。
この話も聞いてから3日以内に現れるというが、今回のように通りすがりのに聞こえた場合はどうなのだろう。

1日目。
夢の中で怪しい気配を感じた。
恐らく例の鹿島さんだろう。
2日目。
これはヤバイ。
未だに大怪我をした人はいないが、もう数日たてば命に関わる人も出て来るだろう。

祖父曰く。
怪異も時代によって変わってくる、つー話は前もしたな。
ネットが普及した世の中で、怪異はどう広がって行くのか。
呪いのビデオなんてのと同じに、増えていくのか。
それとも、単一のモノは単一のままなのか。

話を聞いた全員の元に同時に行くのか。
話をした人の親しい人の所に行くのか。
一つの怪異が増えていくのか。
中には聞いた人全員の所に出る妖しもいるし、増えていく怪異もいる。
この鹿島さんにそれは当てはまるのか?
今のところ、この2日間に鹿島さんが夢に出てきた、という話はきかない。
僕だけがその夢を見た。
僕が能力者だからなのかも知れない。
だから、試すことにした。

あるトークアプリ。
複数で会話がする事もできるし、ただROMって話を聞くだけもできる。
全員コメントできるし、見る事だけもできる。
僕が出入りしてるのは「能力者の集い」
自分が能力者だと自称する人たちが集まるルームだ。
鹿島さんが能力者を優先して現れるなら、複数の能力者に話したらどうなるのか。
ネットでは他人に話した内に入るのか。
僕はトークアプリで全員に、鹿島さんのことを話した。
有名でみんな聞いたことのある都市伝説。
面白がる人、真剣に止める人。反応は様々。

3日過ぎても僕の元に鹿島さんは現れなかった。
ということは、ネットのトークでも条件はクリアできた訳だ。
もう1つ。1人の所に現れるのか、同時に複数人の所に現れるのかという検証。

結論から言うと、このアプリで話を聞いて、人に話さなかったメンバー全員の所に現れた。
ただ。
「足!」「右手!」「お腹!」
と一言叫び、慌ただしく消えたという。
同一の怪異が、複数人の元に忙しく出現するという結果が出た。
怪異もネット社会では大変だ。
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